帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹の後遺症の一つであり、非常に痛みの強い神経痛を引き起こす疾患です。PHNは、帯状疱疹の主な合併症の一つであり、皮膚に発生した水疱が治癒しても、神経線維にダメージを残し、長期的な神経痛を引き起こすことがあります。

PHNは、年齢を重ねた人や免疫力が低下した人によく見られます。帯状疱疹の発症後、PHNが発生する可能性があるため、帯状疱疹の早期診断と治療が重要です。

PHNの症状は、患部さんに痛みやしびれ、痒み、感覚異常が現れます。PHNの痛みは、慢性的で、日常生活に大きな影響を与えることがあります。PHNの痛みは、一般的に帯状疱疹が発生した部位に沿って広がります。痛みは、刺すような痛みや、鈍い痛み、ピリピリとした痛みなど、様々な種類の痛みを引き起こします。

PHNの治療には、鎮痛剤や抗うつ薬、抗てんかん薬などが使用されます。また、局所的な鎮痛薬やステロイド剤の注射も行われます。しかし、これらの治療法が十分な効果を発揮しない場合もあります。

最近では、PHNの治療に対するアプローチとして、神経ブロックや電気神経刺激療法などの治療法もあります。これらの治療法は、神経痛を軽減する効果があります。

PHNの予防法として、帯状疱疹ワクチンがあります。帯状疱疹ワクチンは、60歳以上の人々に推奨されています。帯状疱疹ワクチンを接種することで、帯状疱疹の発症率を大幅に減少させることができます。帯状疱疹ワクチンの接種は、PHNの発生率も低下させます。

PHNの症状は、長期的な神経痛を引き起こすため、患者さんの日常生活に大きな影響を与えます。PHNの痛みは、治療が難しいため、早期診断と治療が非常に重要です。また、PHNの予防法として、帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されています。

PHNによる痛みは、長期にわたり患者さんの日常生活に大きな影響を与えるため、PHNの治療法の開発が求められています。現在、PHNの治療法に対する研究は進んでいますが、治療法の完全な解決策はまだ見つかっていません。

痛みの軽減には、患者さんの生活習慣の改善も大切です。ストレスや不規則な食生活、睡眠不足などが痛みを悪化させることがあるため、健康的な生活習慣を維持することが重要です。

最後に、PHNに苦しむ患者さんとその家族にとって、専門的な医療チームのサポートが非常に重要です。PHNの痛みは、患者さんの日常生活に大きな影響を与えるため、痛みに対する理解や助言、治療法の提供などが必要です。患者さんが最も適切な治療法を受けるためには、医師や医療チームと積極的にコミュニケーションを取り、情報を収集することも重要です。

帯状疱疹後神経痛を早く治すにはどうしたらいいですか?

上記とは別に、近年注目されている運動器カテーテル治療という方法があります。痛みを長引かせている微細な病的新生血管(いわゆるモヤモヤ血管)に直接アプローチする方法です。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は検討されるとよいでしょう。

Q帯状疱疹にかかる確率はどれくらいですか?

年間約60万人が帯状疱疹を発症すると推定されていて、50歳以上が約7割を占めます。80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を経験するという報告があります。さらに、近年において50歳以上の発症率は増加傾向です。
1)外山 望. 日本臨床皮膚科医会雑誌 29;2012:799-804.

Q帯状疱疹に気を付ける季節や流行の特徴はありますか?

子供の水疱瘡(水痘)が流行すると、発症頻度が低下するため、水疱瘡が多い冬には少なく、夏に増加します。これは水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の曝露により既感染者の免疫が増強するためです。尚、水痘予防接種が定期化された2014年10月以降、水痘の流行が著明に減少していますが、それによる成人の帯状疱疹の増加が観察されています。今後も増加することが懸念されています。

Q帯状疱疹にかかるとどれくらいの割合で神経痛を発症してしまうのですか?

国内の大規模疫学調査、SHEZスタディ(2009~2012年)によりますと、帯状疱疹患者の19.7%に発症、60代で13.6%、80代で32.9%と報告されています。国内外のデータから、加齢により発症頻度が高くなることが示されています。
Takao Y, et al. Incidences of Herpes Zoster and Postherpetic Neuralgia in Japanese Adults Aged 50 Years and Older From a Community-based Prospective Cohort Study: The SHEZ Study. J Epidemiol 2015; 25(10): 617-25

Q帯状疱疹後神経痛になりやすい要因はありますか?

高齢、急性期の痛みの強さ、皮膚の重症度、皮膚の知覚異常などがリスク因子となります。他にも、免疫力が低下している場合、神経痛を経験したことがある場合はリスクが高くなります。
Cohen JI. Clinical practice: Herpes zoster. N Engl J Med 2013; 369(3): 255-63.

Q帯状疱疹後神経痛がいつまでも治りません。どれくらい続くのでしょうか?

帯状疱疹罹患後の半数以上で、発症時(初診時)から中等度以上の強い痛みを自覚します。皮膚症状は、抗ウイルス薬の投与によって2週間程度で軽減し、4週間程度で消失に至ることが多い一方で、疼痛残存率は21日後で50%、90日後で12.4%、1年後で4.0%という報告があります。別の研究では、下記棒グラフのように1年以上の持続となるとだいぶ少なくなってくる一方で、4年経っても一定の割合で慢性神経痛に苦しむ方がいることを示しています。当院に受診された方の中には10年以上という方もおられました。

Imafuku S, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2014;28:1716-1722
Johnson RJ. Postherpetic Neuralgia. N Engl J Med 2014; 371:1526-33.

Q帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛はどこにできますか?

三叉神経節から分岐する3本の分枝による前額部・頬部・下顎部の他、頸髄・胸髄・腰髄・仙髄の左右の支配領域に皮膚病変を作ります。神経支配領域に沿いますので、帯状に分布します。通常は片側にできますが、免疫抑制者(末期癌、HIV感染、免疫抑制剤の使用など)では両側広範囲に発症することもあります。

図;デルマトーム。何番の脊髄がどの範囲の皮膚を支配しているかを示している。帯状疱疹は通常、神経支配領域に沿い片側に生じることが多い。

Q帯状疱疹と診断されて抗ウイルス薬の治療を受けたのに、神経痛が残るのですか?

抗ウイルス薬投与により、ウイルス排出期間の短縮、新規皮膚病変の出現抑制、皮膚病変の治癒の促進効果、疼痛期間の短縮と重症度の低減効果、帯状疱疹後神経痛の発症頻度減少効果などが認められます。しかし、早期の抗ウイルス治療により皮膚病変は治癒することが多いものの、凡そ半数に痛みは残ります。時間経過とともに、1ヶ月で30%、2ヶ月で20%、3ヶ月で10%と痛みを訴える人の割合は減っていきますが、高齢者や重症者では長期に残りやすいです。

Q帯状疱疹と言われ点滴治療を受けましたが、それでも神経痛になるのですか?

重症の場合などで点滴静注療法が行われますが、それでも一定の確率で神経痛を合併することは避けられません。

Q帯状疱疹とすぐに診断してもらえなくて、治療が遅れました。そのせいで神経痛がこんなにつらいのでしょうか。

帯状疱疹の皮疹ができてから72時間以内に、遅くとも5日以内に抗ウイルス薬を1週間投与することが勧められていますが、72時間以上経過していても効果は期待できます。治療の遅れは神経痛発症リスクの一つではありますが、適切な治療を受けられたとしても『高齢』『急性期の強い痛み』『皮膚病変の重症度』『皮膚の知覚異常』などが神経痛合併のリスク因子と考えられています。複合要因ですので、一つだけのことで必ず合併するというわけではありません。起きてしまった原因に固執するよりも、現実の痛みと適切に向き合い可能な対処を講じていきましょう。

Q発疹が出た覚えがないのですが、神経痛で受診したところ帯状疱疹後神経痛と言われました。こんなこともあるのでしょうか?

神経痛のみで皮疹が出現しないこともあり、無疱疹性帯状疱疹と言われています。

Q帯状疱疹後神経痛によくみられるアロディニアとは何ですか?

アロディニアとは、痛み刺激に対する過敏症のことで、通常の痛み刺激に対しても、その強さが増したり、長時間持続したりする現象を指します。衣服がこすれたり冷風にあたったりするだけで痛みます。異痛症とも呼ばれます。アロディニアは、神経系の障害や疾患、炎症、外傷、手術などが原因となることがあります。帯状疱疹後神経痛はアロディニアをきたしやすい疾患の一つです。アロディニアの治療には、痛みの原因に応じた治療法が用いられます。通常の痛みに比べて、治癒に時間を要することが多いです。

Q帯状疱疹後に痛みが続き、最初はブロック注射も効いていて少し和らぎましたが、だんだん効かなくなってしまいました。

帯状疱疹に関連した痛みをZAP;Zoster-Associated Pain(帯状疱疹関連痛)と言います。前駆痛、急性帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛の3つに区分されますが、急性帯状疱疹痛の時期にはブロック注射の効果が出やすいものの、帯状疱疹後神経痛には効きにくくなってきます。一般的には投薬を併用して対処されます。

Q帯状疱疹後神経痛の診断について教えて下さい。

帯状疱疹後神経痛は画像診断で診断する病気ではありません。発症経過、特徴的な疼痛分布その他の痛みの性質や身体診察から診断します。

Q受診する際に重要なことはありますか?

帯状疱疹後神経痛は画像診断で重症度や治療による改善の見込みを調べることが困難です。問診が非常に重要になってきますが、受診前に自身の状態についてよく整理しておくと状態が伝わりやすいです。当院では以下の事項についてチェックしていますのでご参考にしてください。
① 発症時期(いつ発症したのか)
② 皮膚の発疹はどのようにみられたのか(程度や拡がりについて)
③ 発症初期に抗ウイルス薬による治療を受けたかどうか
④ 発疹ができた部位はどこで、今はどの部位が痛いのか
⑤ アロディニアがあるかどうか(少し触れたり衣服が擦れたりしただけでも痛いかどうか)
⑥ 言葉で表現するとどのような痛みなのか;焼けるよう、ジンジン、チクチク、針で刺されるよう、など
⑦ 痛みは四六時中、常にあるのか。忘れられる時間もあるか
⑧ 入浴などで身体が温まると楽になるか
⑨ 痛み止めは有効か(内服薬、ブロック注射を含めて)
⑩ うつ状態の有無、心療内科・精神科の通院の有無
⑪ 睡眠状態;就寝、起床時間ほか睡眠の質について
⑫ 体重変化について;特に、食欲低下などによる体重減少があるかどうか
⑬ 日常生活について;活動性の評価;仕事をしている、あるいは自宅で引きこもりがちなど
⑭ これまでどのような治療をしてきたか
⑮ その他の持病、既往歴について

Q帯状疱疹後神経痛に効く塗り薬はありますか?

唐辛子から抽出したカプサイシン軟膏や局所麻酔薬であるリドカイン軟膏、抗炎症成分の入ったフェルビナク軟膏、漢方薬では紫雲膏(しうんこう)などに効果がある場合があります。

Q帯状疱疹後神経痛に運動器カテーテル治療は有効ですか?

他疾患に比べると有効性は劣りますが、既存の医療において決定的な治療法が確立されていない中、検討に値する有用な選択肢の一つだと思います。発症後の経過が短いほど、有効性が高い傾向があります。できるだけ早期に治療を受けていただくことをおすすめします。

Q帯状疱疹後神経痛以外の注意するべき合併症について教えてください。

合併症としても最も多いのは帯状疱疹後神経痛(PHN)ですが、他に眼合併症(ブドウ膜炎、角膜炎、結膜炎、視神経炎など)、ラムゼイ・ハント症候群(Ramsay Hunt Syndrome;顔面神経麻痺,耳痛)、脊髄炎、遅発性脳梗塞、髄膜炎、脳炎、運動神経炎などの合併症が知られています。

Q帯状疱疹ワクチンについて教えて下さい。

2016年4月に水痘ワクチンを50歳以上に帯状疱疹ワクチンとして使用することが認可されました。生ワクチンで、発症抑制効果51.3%、神経痛抑制効果66.5%であり5年程度で効果が減弱します。2018年には97%という高い発症予防を可能とした新しく効果の高い不活化ワクチンのシングリックスが認可されました。筋肉内に2回接種します。発症抑制効果97.2%(70歳以上は89.8%)、神経痛抑制効果100%(70歳以上は85.5%)であり9年以上効果が持続するとされています。さらに2022年の最新の報告では、ワクチン接種後最長10年に亘り有効性が81.6%、ワクチン2回目接種後1ヶ月から数えた場合には89.0%と高い予防持続効果が示されています。いずれにしても、自然経過の場合の高い発症頻度、発症による多岐にわたる症状やその重症度を考慮すると、非常に有意義で効果の高いワクチンと言えるでしょう。

Q帯状疱疹ワクチンは受けた方が良いですか?

帯状疱疹は罹患率の高い疾患であり、さらに加齢に伴い発症率が増加します。帯状疱疹後神経痛の合併率も高く、ひとたび起こると耐え難い慢性の神経痛に長期に亘り襲われることとなります。帯状疱疹後神経痛はあらゆる痛みの中で最も治療が難しい部類の痛みですので、第一に予防、第二に早期発見、早期治療が重要です。現在主流の不活化ワクチンであるシングリックスは極めて効果の高いワクチンですので、痛み治療の専門医師と言う立場からはぜひ接種することを推奨します。

Q帯状疱疹になったことがあれば、ワクチンは不要ですか?

抗体を獲得しているとはいえ、再発する可能性のある病気です。再発予防効果も期待できますので、ワクチン接種が推奨されています。

Q新型コロナウイルスワクチン接種と帯状疱疹発症は関係がありますか?

これまで関係があるとするいくつかの報告がなされてきました。例えば、下記論文では接種しない場合に比べて1.8倍の発症率があるとしていましたが、最近の2つの大規模研究の結果では無関係であると結論づけられています。一つ目は米国の医療請求データベースを用いて203万人の接種者を追跡した報告です。二つ目はニュージーランド保健省による報告で、400万人以上を対象として調べられたものです。帯状疱疹以外の併発症も含めて、新型コロナウイルスが流行する以前(2014年~2019年)との比較検討を行っています。結果、心筋炎・心膜炎、急性腎障害の発生には関係があったものの、帯状疱疹、多形紅斑、ギランバレー症候群、動脈血栓症、静脈血栓塞栓症、急性肝障害など他の併発症はワクチン接種との関連は認められませんでした。発症頻度が極めて少ないことから、まだ答えが出るには時間がかかりそうですが、過剰に心配する必要はなさそうです。

Hertel M, et al. Real-world evidence from over one million COVID-19 vaccinations is consistent with reactivation of the varicella-zoster virus. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022 Aug;36(8):1342-8 doi: 10.1111/jdv.18184. Epub 2022 May 13.

Akpandak I, et al. Assessment of Herpes Zoster Risk Among Recipients of COVID-19 Vaccine. JAMA Netw Open. 2022 Nov 1;5(11):e2242240. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.42240.

Walton M, et al. Adverse Events Following the BNT162b2 mRNA COVID-19 Vaccine (Pfizer-BioNtech) in Aotearoa New Zealand. Preprints with the Lancet. Posted: 20 Jan 2023. Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=4329970

Q新型コロナウイルス感染(COVID-19)と帯状疱疹は関係ありますか?

新型コロナウイルス感染症による免疫機能の低下が、帯状疱疹の発症リスクを高める可能性があります。新型コロナウイルス感染症が引き起こす免疫反応により、身体の免疫力が低下することが懸念されていますが、この免疫力の低下が、帯状疱疹のウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus, VZV)の再活性化を引き起こす可能性があるのです。さらに、新型コロナウイルス感染症によるストレスや不安も、帯状疱疹の発症リスクを高めるとされています。ストレスや不安が身体に与える影響は複雑で、免疫力の低下や神経系のバランスの乱れ、血行不良などの症状を引き起こすことがあります。これらの影響が、帯状疱疹のウイルスを再活性化させることがあると考えられています。実際のデータとしては、ブラジルにおいて、2017年〜2019 年のCOVID-19 流行前の同じ間隔と比較して,COVID-19 流行時(2020年3月~8月)の帯状疱疹患者数は35.4% 増加したことが報告されています。帯状疱疹不活化ワクチン『シングリックス』を販売している製薬企業、GSK(英グラクソスミスクライン)からは、米国人約200万人の医療費請求データ(2020年3月~2021年2月)を元に解析した結果として、COVID-19診断後最長6ヶ月に亘り、帯状疱疹発症リスクが15%上昇、入院を要した重症患者では21%上昇とさらにリスクが高くなることが報告されました(レトロスペクティブ・コホート研究)。一方、国内では、宮崎での帯状疱疹大規模疫学研究(Miyazaki Study)において、2020 年のCOVID-19 の拡大は帯状疱疹発症率に影響を与えなかったと報告されています。今後、さらに明らかにされていくことでしょう。

鴨井院長が本当に伝えたいこと

帯状疱疹後神経痛の辛さはまだまだ広く認知されていません。一方、帯状疱疹については最近はテレビのCMでもワクチン接種の呼びかけが流れるようになっていますし、新型コロナウイルス感染症後に増加するという一部のデータや、元々それとは関係なく年々実数として増えていることにより身近に感じられるようになっていると思います。皆さんのご家族や知人の方にも患ったという方は少なくないでしょう。しかし、帯状疱疹が怖いのはその合併症なのです。特にやっかいなのが帯状疱疹後神経痛です。半年程度である程度落ち着く方もおられますが、当初の痛みよりはましになったけれどもずっと治らないということが少なくありません。当院のような慢性痛専門のクリニックにかかられる方は、飲み薬や注射など何をやっても治らない状態で、『もう治らない、一生付き合っていくしかない』と既に言われてしまった方も多いです。ご家族からは、以前はあれほど元気で笑顔にあふれていたのに、人が変わったように気持ちが塞がりどこにも出かけることなく引きこもってしまっていると相談されることもあります。このような状態になり、初めて病気の深刻さに気付かれるのですが、帯状疱疹は加齢とともに誰もがかかる可能性がある病気であり、一定の確率で帯状疱疹後神経痛を合併します。以下、それぞれの方の状況に合わせて大切なメッセージをお伝えしたいと思います。

まだかかったことのない方へ
一生を通してみると、かかる頻度の高い疾患です。そして、ひとたび罹ると大変厄介な病気です。新しい不活化ワクチン(シングリックス)の有効性は非常に高く10年に亘り予防効果が期待できます。50歳以上の方はぜひワクチン接種により予防することをおすすめします。ストレスや他の免疫に関わる病気にも影響を受けますので、常日頃、十分な休息をとりリラックスして大らかに楽しく過ごすようにしてください。

帯状疱疹が疑われる方へ
3日以内、遅くとも5日以内に抗ウイルス薬治療を受けることがその後の合併症発症の予防や発症した場合の重症度を下げるために重要です。迷わず医療機関を受診してください。

帯状疱疹を発症した方へ
診断のうえ抗ウイルス薬による適切な治療を受けられたことと思います。しかし、油断はできません。発症した神経領域により生じやすい合併症があります。発疹や痛み以外に気になる症状がある場合は、関係ないように思えても全て主治医に伝えてください。どれだけ早期に適切な治療を受けても合併症が起こる可能性はあります。起こった際には自然に治るだろうと自己判断せず、医療機関にて適切な検査および治療を受けてください。

帯状疱疹後神経痛を発症した方へ
とにかく早く、積極的に治療することをおすすめします。自然経過で良くならなかった場合に受ける心身のダメージが非常に強く長く続く病気です。病的新生血管(モヤモヤ血管)に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)は最も強力な治療だと思いますが、鎮痛薬・注射治療も初期には有効性が高いですので、ためらわず治療を開始してください。ここで胃腸に負担がかかるのが気になる、薬は元々あまり好きではないという理由で躊躇していると、かえってこじらせることにもなりかねません。他の慢性痛とは明らかに異なりますので、できることは何でもやっておくべきです。一方、医療行為の逐次投入というのは本疾患についてはおすすめできません。ほとんどの慢性痛は数ヶ月放置したからと言って、(少なくとも運動器カテーテル治療においては)治りにくくなるということはありませんが、帯状疱疹後神経痛においては時間経過とともに不利になり、治る場合も治癒に時間を要するようになります。検討可能な場合は、より早期にカテーテル治療を受けることをおすすめします。

帯状疱疹後神経痛を発症して1年以上経過している方へ
当初のように焼けるような耐え難い痛みが1年以上続いているということは少なくなり、一定の不快感が常にとれないということが主となってきます。しかし、抑うつや不安、睡眠障害、自己肯定感の低下、痛みの破局化(死んだほうがまし、生きている意味がないと感じる状態に陥ってしまう)など、生活でのさまざまな苦痛を感じるようになります。何をするにもやる気にならず引きこもるようになっていたり、周囲の人から性格が変わったようだと言われたりもします。皮膚症状が治まった後も残っている疼痛のつらさは、家族や周りの人から理解されにくい面があり、より一層追い込まれることになります。仕事をしなくなりコミュニティが狭くなってきますと、特に、痛みの事しか話題にしなくなりがちであり、家族の方もいつも同じ話ばかり聞いていられないということにもなってきますが、ある程度は聞いてあげてください。そして、それ以外ではできるだけ別の話題について話すようにしてください。何か夢中になれるような趣味や人と接する時間があれば尚良いです。少しでも痛みから意識を離すことが重要です。それから、体重を急激に落とさないように気を付けてください。痩せると増々痛みに対する抵抗力が低下してしまいます。医療機関では、一連の治療をしても効果がないので漫然と鎮痛薬だけが続けられていたり、逆に、もう一生治らないと言われ治療を打ち切られていたりする場合もあります。1年以上経過してくると、そして高齢になればなるほど治療効果が減弱しますが、実例紹介でもお示ししていますように長期間経過していても微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)により改善できる症例は確かに存在します。既存の医療とは全く異なる治療メカニズムを持っていますので、検討する価値はあります。諦めずに、前向きな気持ちを持ち続けてください。

帯状疱疹後神経痛の実例紹介

モヤモヤ血管

 

顔・首

 
 
 

肩・腕・肘・手

 

 

腰臀部股関節

 

 
 

 
 

その他