その他:帯状疱疹後など

【70代:女性】あやうく寝たきりに、帯状疱疹感染に合併した坐骨神経痛(帯状疱疹後神経痛、坐骨神経痛)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1ヶ月前に、急性気管支炎で4日間入院していましたが、退院後に帯状疱疹を発症しました。それとともに、左臀部から足の裏まで背側に痺れと痛みを生じました。ペインクリニックでは脊柱管狭窄症と言われましたが、紹介された病院でMRI・CT検査を受けたところ問題はありませんでした。対症療法でブロック注射を受けていますが、一時的に効いても半日ほどで戻ってしまい、ジーンと痺れたような強い痛みのために歩行困難な状態となっていました。ひどい夜間痛のために眠れないのが特に辛い一方、アロディニアはなく、入浴で身体が温まると楽になるとのことでした。

内服薬;プレガバリン75mg/日 トラムセット1錠/日 ゾルピデム5mg/日

診察時の所見

強い疼痛のため、入室時も左下肢をかなりかばっておられました。症状は典型的な坐骨神経痛でした。腰椎疾患は否定されている一方、明らかに帯状疱疹をきっかけに出現している症状であり、帯状疱疹ウイルスにより坐骨神経が侵されたことが原因と考えられました。感染を契機とした神経痛であり、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)の適応と判断し治療を受けていただきました。

治療の所見

腰椎レベル~股関節周囲に至るまで、左坐骨神経の経路に関連する箇所に対して広く治療を行いました。

治療後の経過

治療直後から少し楽になりました。カテーテル治療には本来即効性はありませんが、一定程度症状が軽減されることがあります。痛み物質が一旦洗い流されるからではないかと考えられます。また、炎症が強い場合ほど症状改善の実感は早く得られやすい傾向があります。翌日からは歩けるようになり、足裏の痺れが気になるものの、左腰~大腿の痛みはかなり楽になりました。治療後1ヶ月、さらに改善し、足裏のしびれについても、以前は趾先(ゆびさき)までしびれがあったのがそれは無くなり、足首から足裏の痺れに範囲が狭くなってきました。治療後2ヶ月、土踏まずにピンポン玉が挟まっているような感覚があったのが無くなりました。土踏まずのしびれはまだ残っていました。足関節周囲や膝裏でハイドロリリース注射を追加しました。治療後3ヶ月、残っていたしびれも軽減してきました。その後も日に日に楽になり、ご家族からみても歩き方が改善しているとのことでした(身体が傾いて歩くということが無くなった)。治療後4ヶ月、まだ一定の足裏のぴりぴりとした痺れは残っていましたが、『気持ちが上向き気持ちの洗濯もしてもらったようだ。以前は出かけようという気も起らなかったが、友人に誘われ出かけるようにもなった』と言われました。治療後5ヶ月、はつらつとして歩けるようになりました。痺れはのこっているものの、辛い感じではなく、違和感に近い感覚と捉えられるくらいになりました。左足を上にして組めるようにもなりました。買い物にも楽しく出かけられるようになりました。夫からは、『家が明るくなった。一人が塞ぎこんでいるとどうしても家の中も暗くなりがちだったが、家族全体が明るくなった』と言われました。腰~膝までの症状が比較的早期にとれた後、足裏の症状がしつこく残っていましたが、ハイドロリリース注射を行う度に改善してきたため長期間通院していただきましたが、十分な改善がえられたため終診としました。原因に拘わらず、一旦固定化された足裏のしびれというのはとれにくいことが多く、完治には至っていませんが、年単位では回復していく可能性があります。

帯状疱疹を契機に、歩行困難にまで陥ってしまうという大変な状態でしたが、ご家族の献身もあり大変喜ばしい結果となって何よりでした。劇的に改善させることができたのには、何と言っても発症早期に治療できたことが非常に大きかったです。帯状疱疹後の坐骨神経痛は比較的頻度は少ないですが、身体活動を大きく損なってしまう重大な合併症です。お悩みの方はとにかく早くご相談いただければと思います。

帯状疱疹後神経痛の詳しい病状説明はこちら

 
 

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