ジャンパー膝と言われました。どんな病気ですか?

正式には膝蓋腱炎と言います。膝蓋腱とは、膝蓋骨(膝のお皿)から脛骨(すねの骨)に付着する腱のことで、膝のお皿の下を押すと触れることができます。幅3cm、長さ5-6cm、厚さ4-5mmほどで、主に膝の伸展機構に作用します。ここに炎症を生じるのがジャンパー膝ですが、その名の通り繰り返しのジャンプにともなう膝の伸展動作などが原因で起こります。バレーボールやバスケットボールなどで多く認められます。膝蓋腱のoveruse(使いすぎ)が原因です。

ジャンパー膝はどうやって診断されるのですか?

身体診察では、圧痛の部位や程度を確認します。レントゲンやCTでは、膝蓋腱のつなぎ目(膝蓋骨付着部)の石灰化や、遊離した骨片がみられることがあります。MRIでは炎症を起こした腱が腫れて白く光る像が確認できますが、断裂を伴っているかどうかも併せて確認します。これらのような大掛かりな検査を行わなくても、この場所はエコーでも詳しく観察できるので、エコーで正確に診断することも可能です。経時的な観察も簡便に行うことができますので、むしろ必須と言ってもよいかもしれません。エコーでは、腱の腫れ、エコー輝度の変化、腱付着部の石灰化や断裂の有無なども見えますが、モヤモヤ血管を含む異常血流増生の存在も確認できます。

ジャンパー膝の治療を教えて下さい。

Overuseによる損傷全般に言えることですが、安静が最も重要です。大腿四頭筋(太ももの筋肉)の柔軟性が低下していることが多いので、ストレッチを行い、膝伸展機構の柔軟性を獲得することも有効です。通常の保存治療で治らなければ、手術が検討されますが、そこまで要することは稀です。比較的炎症が激しいため、慢性化するケースも多いです。腱を温存するため、ステロイド注射は慎重に使用する必要があります。非常に有効なのは、炎症の持続に関与している病的新生血管(モヤモヤ血管)に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)です。種々の腱炎に対して有効であることが報告されていますが、膝蓋腱炎のような激しい炎症に対しても効果的です。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

ジャンパー膝のカテーテル治療はどのように行うのですか?

足の付け根(鼠径部の大腿動脈)より下向きに管を入れて、そこから細い管(カテーテル)を膝まで進めていきます。標的血管を選択して血管撮影を行い、モヤモヤ血管を確認したうえで、一時塞栓物質を投与します。投与後、直ちにモヤモヤ血管は造影上消失します。この時に、膝のお皿の下が熱く、あるいは痛く感じますが数分で改善します。複数の標的血管の治療の後、管を抜いて圧迫止血します。治療時間は20-30分程度、日帰り治療です。

 

ジャンパー膝のカテーテル治療後の経過を教えて下さい。

単回の治療で大幅に炎症を鎮め、異常血流は消失、腱の腫れも引いていきますが、腱の部分断裂を合併するなど重症の場合は組織の修復により長い期間を要します。痛み自体は治療後2-4週間でかなり楽になります。エコーで定期診察を行いますが、異常血流は治療後にみられなくなるものの、腫れの縮小などの組織の修復には数か月以上を要します。痛みが引いたころは、まだ組織の修復過程にありますので、この時期に無理をするとぶり返しやすいです。特にジャンパー膝の場合は炎症が強いので注意が必要です。運動は痛みが伴わない範囲で徐々に再開していくことが肝要です。主治医とよくご相談ください。

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