膝:変形性膝関節症など

【10代:男性】難治性のジャンパー膝からバレーボール早期完全復帰を果たした高校3年生(ジャンパー膝、大腿四頭筋腱炎、膝蓋腱炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

高校3年生です。中学1年生からバレーボールを続けています。5ヶ月前から両膝を痛めるようになりました。痛みは膝のお皿の上や下に感じていました。整体に通い、痛みをこらえながらバレーボールは練習・試合とも何とか続けていましたが、試合から帰ってくると『膝が爆発しそう』と口にしていました。日常生活でも階段昇降などで痛みが出ていました。2ヶ月前にPRP注射を受けましたが、全く効果が得られなかったため当院を受診されました。

診察時の所見

レントゲンでは特に異常はありませんでした。エコー検査をすると、お皿の上の痛みに該当する右大腿四頭筋腱が腫れていて内部が黒く映りました。変性/損傷所見です。左側と比較すると一目瞭然です。さらにお皿の下の痛みに該当する膝蓋腱膝蓋骨付着部を観察すると、同様に腫脹・変性/損傷所見を認めました。モヤモヤ血管を反映した、腱内部の異常血流信号も認められました。左側の方がより腫れていますが、膝蓋腱は健常ですと4-6mm程度ですから、両側ともかなり腫れていることがわかります。以上より、大腿四頭筋腱炎(右>左)、膝蓋腱炎と診断しました。いずれもモヤモヤ血管治療が有効な疾患ですので、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

膝蓋動脈造影を行うと、大腿四頭筋腱付着部に一致してモヤモヤ血管(病的新生血管)が明瞭に描出されました。側面像ではよりはっきりわかります。次に膝蓋腱炎の主要責任血管である外側下膝動脈造影を行うと、同様に膝蓋腱膝蓋骨付着部においてモヤモヤ血管が明瞭に描出されました。左膝も同様です。それぞれ、治療後は画像上速やかに消失しました。治療残しのないよう関与しうる他の全ての血管を確認、治療のうえで終了しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後2日で日常生活に支障ないレベルまで改善しました。治療後3週間の再診時には8割程度の症状は改善し(2/10)、圧痛はなく異常血流信号も消失していました。大腿四頭筋腱の腫脹および低エコー変化も改善し、エコー輝度が高く(白く)なっていました。わずか3週間で腱の性状まで大幅に改善するとは驚きです。10代ならではの回復力ですね。徐々に運動再開可とし、実際に治療後1ヶ月を経過したくらいから運動を再開しました。治療後1ヶ月半、さらに改善し、他の部員と変わらない運動強度で練習をこなしジャンプもできていました。運動中に少し痛みを感じるものの、翌朝にはリセットされるとのことでした。エコーでは膝蓋腱のエコー輝度低下も改善しました。右膝蓋腱においては腫脹も大幅に減少していましたが、左膝蓋腱はまだ8.0mm程度とまだ予断を許さない状態でした。治療後3ヶ月、バレーボール完全復帰を果たしてから一定の期間が経過していましたが、特に再発することなく順調に経過していました。しかしながら、この時点でもまだ左膝蓋腱の腫れは同程度に残っていたため現状を良くご理解いただいたうえで、注意点など種々アドバイスしました。その後、エコー計測は行っておりませんが、再治療を要することなく過ごしておられます。いわゆるジャンパー膝の症例でした。通常、膝蓋腱付着部の炎症/損傷であることが多いのですが、本症例のように大腿四頭筋腱付着部の炎症/損傷も合併していることがあります。それだけ重症度が高かったわけですが、10歳代ならではの回復力により早期のバレーボール完全復帰を果たすことができてなによりでした。

ジャンパー膝の詳しい病状説明はこちら

 
 

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