モヤモヤ血管とは何ですか?

痛みの部位に一致して生じている病的新生血管のことです。血管撮影検査をすると、モヤモヤと見えることからそう呼ばれるようになりました。50μm(0.05mm)程度の非常に小さな血管です。20年以上前から、顎関節、肩、肘、膝、アキレス腱など様々な場所での慢性疼痛において、小さな血管が増えていることが指摘されていますが、それらを血管造影検査でとらえたものをモヤモヤ血管と呼んでいるわけです。

モヤモヤ血管はどうしてできるのですか?

組織が傷ついて炎症を起こすと、それを修復するために血管が増えます。通常は治る過程で新しく増えた血管は減っていきますが、何らかの理由で負担をかけ続けて組織の損傷が続くとその中の一部がとどまるようになります。このようにして留まるようになった病的新生血管(モヤモヤ血管)が様々な形で悪さをするようになるわけです。

モヤモヤ血管は加齢による変化ですか?

年齢にかかわらず、誰の身体にもモヤモヤ血管はできますが、特に40歳を過ぎるとモヤモヤ血管が減りにくくなります。わかりやすい例が四十肩、五十肩ですね。よく言ったもので、40未満の方にはめったなことでは起きません。広い意味では、モヤモヤ血管は加齢による変化と言えるでしょう。

モヤモヤ血管があるとどうして痛いのですか?

主に以下の3つの機序で悪さをすると考えられています。
①痛み物質を血管外に漏らしてしまう(病的新生血管は構造がいびつであるため)
②正常な血管から血液を盗み取ってしまう(盗血現象により、局所では酸素不足に)
③病的新生血管の周囲には、異常な神経が伸びてきて痛み信号を発する

モヤモヤ血管が関与している痛みの特徴を教えて下さい。

『押すと痛い』『夜痛くなる』『お酒を飲むと痛くなる』『気温や気圧の変化で痛くなる』『じっとしても四六時中痛みを感じる』『ズキズキ、ジンジン、チクチク、ズーンとする痛み』『古傷の痛み』などが挙げられます。

モヤモヤ血管を減らすにはどんな方法がありますか?

軽症の場合、痛いところを押してあげるだけでも減ってくれます。押圧に弱いのです。一定時間(20秒以上)、適度に強い力で押してください。その後楽になるのが実感できると思います。ストレッチにもモヤモヤ血管を減らす効果があります。それでもよくならなければ注射です。ステロイド注射には減らす効果があります。モヤモヤ血管を減らすのに効率の良い注射部位もあります。痛みの部位により異なりますので、運動器カテーテル治療の専門施設でご相談ください。一方、3ヶ月以上とどまるようになったモヤモヤ血管はそう簡単には減りません。前述の注射でも無効な場合、あるいは明らかに重症な場合はカテーテルを用いて血管の中から薬を投与することで直接モヤモヤ血管を減らします。運動器カテーテル治療の項をご参照ください。

モヤモヤ血管があるかどうかどうやって調べるのですか?

専門医師による問診、丁寧な身体診察、エコー検査で大方わかります。実際に見たいというご希望が多いですが、血管造影検査はコストがかかりますし、造影まで行うとそのまま治療も可能な状態となりますので、検査だけのための血管造影は行われていません。将来保険診療が可能になった場合は、検査目的の血管造影手技も保険償還される可能性はあります。

モヤモヤ血管はどこにでもできるのですか?

肩、腰、膝、肘などいわゆる慢性疼痛が生じる部位にはできる可能性があります。帯状疱疹後神経痛や坐骨神経痛においても、治療の有効性からできていると考えられています。一方、撮影をするとすべて見えるわけではありません。首・肩・肘・膝などは比較的よく観察されます。一方、腰部・臀部・胸部などは骨盤や肺と重なるため、また、組織自体に厚みがあるため観察困難です。今後、医療機器の進歩によりすべての部位において視認可能となることが期待されます。そうなるとより分かりやすいですね。但し、治療については見た目で判断して行うわけではなくあくまでも補助情報に過ぎないことを申し添えておきます。

モヤモヤ血管はレントゲンやMRI、CTでわかりますか?

レントゲンやCTではわかりません。重症になるとMRIでもわかる場合がありますが、多くの場合はMRIでもわかりません。

モヤモヤ血管ができやすい体質について教えてください。

糖尿病、脂質異常、高血圧などのいわゆる生活習慣病や、喫煙、肥満、甲状腺の病気、がん、抗がん剤の使用などとの因果関係が指摘されています。これらに該当する方は、同じ負担が加わっても炎症を助長しやすいというわけです。

モヤモヤ血管

 

顔・首

 
 
 

肩・腕・肘・手

 

 

腰臀部股関節

 

 
 

 
 

その他