鼠径部痛症候群とはなんですか?

鼠径部痛症候群はグローインペイン症候群とも呼ばれ、鼠径部や下腹部に痛みが生じるものを言います。サッカーやラグビー、アメリカンフットボールなどボールを蹴る競技で発症することが多く、なかなか治りにくいのも特徴の1つです。痛みがあるまま無理に運動を続けていると慢性化してしまうこともあり、痛みと機能障害の悪循環となることがあります。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)の症状は?

圧痛、運動痛、時に鼠径部や大腿内側(内転筋付着部)、下腹部にまで放散する疼痛が特有です。慢性化すると鼠径部が常に痛みます。特に下肢を伸展して挙上、外転する動作で誘発されやすく、股関節の可動域制限、筋力低下が見られます。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)の原因はなんですか?

他の競技と比べサッカー選手に多く見られ、一度なると治りにくいのが特徴です。体幹から股関節周辺の筋や関節の柔軟性(可動性)の低下による拘縮や骨盤を支える筋力(安定性)低下による不安定性、体幹と下肢の動きが効果的に連動すること(協調性)が出来ず不自然な使い方によって、これらの機能が低下し、痛みと機能障害の悪循環が生じて症状が慢性化していきます。何らかの原因で可動性、安定性、協調性に問題が生じたまま、無理にプレーを続けると、体幹から股関節周辺の機能障害が生じやすくなります。また、片足で立ってキックを多くするサッカーの動作そのものが発症の誘因になります。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)はどのように診断しますか?

鼠径部痛や股関節痛の診断に、単純X線検査や骨形態評価は必須です。単純X線検査では、股関節内の骨の変形を確認できます。MRIでは、骨髄浮腫や筋損傷に伴う出血や浮腫性変化などを描出する事が可能で、関節唇損傷などの診断も可能です。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)の治療はどのようなものですか?

急性期例や発症後半年以内例では、保存療法が第1選択です。疼痛が強い場合は、約2週間のスポーツ休止が必要です。疼痛部位の局所安静(ランニング、キック禁止)、アイシング、時に温熱療法(ホットパック)、消炎鎮痛剤投与、ステロイドホルモンの局所注射(多用は避ける)などが用いられますが、長期的には運動療法が奏功します。
初期のリハビリテーションは股関節の外転可動域訓練、筋力強化、内転筋のストレッチングから開始して水中歩行、エアロバイクによる免荷訓練、その後ジョギング、2ヵ月でボールキック練習を行います。疼痛が消失したからといって、いたずらな早期復帰はかえって再発を繰り返します。慢性化すると長期間(2~3ヵ月以上)スポーツ休止を余儀なくされるので注意を要します。保存療法に抵抗して長期間疼痛が消失しない場合は、手術治療が考慮されます。しかし原因がはっきりしないため以前からさまざまな方法が行われ、薄筋腱切離、骨片摘出術、恥骨結合の固定術、内転筋内の血腫除去、ヘルニア修復術など、主病変を特定して原因に対処してきました。適応は各国さまざまです。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)を早く治すにはどうしたらいいですか?

上記とは別に、近年注目されている運動器カテーテル治療という方法があります。痛みを長引かせている微細な病的新生血管(いわゆるモヤモヤ血管)に直接アプローチする方法です。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は検討されるとよいでしょう。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)のリハビリはどのようなものですか?

痛みが生じる原因として鼠径部への過度なストレスが挙げられますが、そもそもの原因として骨盤や股関節、ひいては身体全体の使い方に問題があることで鼠径部へのストレスが増強してしまっている可能性があります。その原因として、股関節周囲筋の硬さや筋力低下、体幹の不安定性が考えられます。それらの問題点を改善するために、股関節周囲筋のストレッチや筋力トレーニングを行い、徐々に立位でのバランス訓練やキック動作時の身体の使い方の指導へと進めていきます。痛みがなくなり次第、できるだけ早期に運動を再開させることが大切になります。ただ、痛みがなくなったからといって安定した動作を獲得しないうちに運動を再開してしまうと、再発のリスクが高くなってしまうため注意が必要です。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)の実例紹介

 

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腰臀部股関節

 

 
 

 
 

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