その他:帯状疱疹後など

【70代:女性】1年以上悩まされた、顔面および頭部に生じた帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹後神経痛)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年1ヶ月前に帯状疱疹に罹患し、その後左瞼の上あたりから前頭部および頭頂部にかけて、痛みと痺れを感じるようになりました。当初3ヶ月はのたうち回るような激しい痛みでしたが、今は常にチクチクするような痛みとなっていました。触れると痛みが増悪し、リリカ、ノイロトロピン、アセトアミノフェンの各種鎮痛薬は無効でした。入浴で痛みが軽くなることはなく、4時間ほどしか寝られず、鬱(うつ)状態に陥っていました。ブロック注射など各種注射治療も受けましたが全く効果はありませんでした。

診察時の所見

生きているのが辛いと思うくらいと言われましたが、会話ではある程度明るく前向きな様子も感じられ、いわゆる破局的思考とは一線を画している状態でした。罹病期間が1年以上と長く、鬱(うつ)、睡眠障害もともなっていること、症状が顔面を含むことなどから治療しても一部の症状改善にとどまる、あるいは無効である可能性もありました。こうしたことをよくご説明しご理解いただいたうえでご希望により微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

頭や顔面の不快な疼痛に長期間さらされていると、一定の首こりは必発ですが、首こりは全身の不調に関係することが多いため併せて治療を行いました。まず頸部の深頸動脈造影を行うと、予想どおり病的新生血管(モヤモヤ血管)が濃染像として豊富に描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。続いて、頭部および顔面の治療に進みました。特に浅側頭動脈およびそこからの前頭枝において再現痛(薬液投与時に感じられる、普段の症状が再現されたような一定程度の痛みや灼熱感)を確認できました。治療に伴う強い痛みや治療後の不快感などは特に認めず終了しました。

治療後の経過

治療後2週間、あまり変化はありませんでした。治療後1ヶ月半、やや改善しているように感じてきました。治療後2ヶ月半、痛みが遠のいてきて、我慢できないことはなくなりました。夜も眠れるようになり、7時間程度寝られるようになりました。痛みが半分以下にはなったとのことでした。特に頭頂部の痛みはほとんど気にならなくなりました。首のこりも特に気になりませんでした。ご遠方ということもあり、その後の通院はしておられません。

帯状疱疹後神経痛は病状が幅広く、これまでも様々な症例を掲載してきていますが、今回は1年以上経過した顔面を含む神経痛を取り上げました。同部位は治りづらい部位の一つであり、罹病期間もが長いことから治療効果に懸念がありましたが、3ヶ月で半分以下にすることはできました。まだまだ一定の症状は当分続く可能性がありますが、半分以下になればだいぶ楽に過ごせます。『生きているのが辛くなるほどの痛み』ではなくなってきますのでまずは本当に良かったと思います。尚、頭部と顔面を両方治療した場合、頭部のほうがより早期に治っていく傾向があります。罹病期間が長い、鬱(うつ)や高度の睡眠障害が続いているなど悪条件が重なる場合、治療後の目標設定としては3ヶ月や6ヶ月で元の症状の3-5割減を目指すことになるなど低く設定せざるを得ません。頭部や顔面の帯状疱疹後神経痛でお悩みの場合は他部位よりもより早い段階で治療をご検討されることをおすすめします。

帯状疱疹後神経痛の詳しい病状説明はこちら

 
 

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