仙腸関節障害とはどのような病気ですか?

仙腸関節は、骨盤の骨である仙骨と腸骨の間にある関節であり、周囲の靭帯により強固に連結されています。仙腸関節は脊椎の根元に位置し、画像検査ではほとんど判らない程度の3~5mmのわずかな動きを有しています。日常生活の動きに対応できるよう、ビルの免震構造のように根元から脊椎のバランスをとっていると考えています。中腰での作業や不用意な動作、あるいは繰り返しの負荷で関節に微小な不適合が生じ、痛みが発生します。仙腸関節障害は決して稀ではありません。一般的に、出産後の腰痛に仙腸関節障害が多いといわれますが、老若男女を問わず腰痛の原因となります。

仙腸関節は、どこにありますか?

腰椎の下に位置する骨が仙骨です。腰骨にあたるのが腸骨です。仙骨と腸骨の間の関節を仙腸関節と言います。

仙腸関節障害は、どのような症状がありますか?

片側の腰臀部痛、下肢痛が多くみられます。仙腸関節障害で訴えられる“腰痛”の部位は、仙腸関節を中心とした痛みが一般的ですが、臀部、鼠径部、下肢などにも痛みを生じることがあります。局所の痛みにとどまらず、関連痛を多く引き起こすのがこの障害の特徴です。また、ぎっくり腰のような急性腰痛の一部は、仙腸関節の捻挫が原因と考えられます。仙腸関節の捻じれが解除されないまま続くと慢性腰痛の原因にもなります。長い時間椅子に座れない、仰向けに寝られない、痛いほうを下にして寝られない、という症状が特徴的で、歩行開始時に痛みがあるが徐々に楽になる、正坐は大丈夫という患者さんが多くいらっしゃいます。腰臀部、下肢の症状は、腰椎の病気(腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニア)による神経症状と似ているので注意が必要です。下肢の痛みは一般的に坐骨神経痛と呼ばれますが、仙腸関節の動きが悪くなり、周囲の靭帯が刺激されることでも、下肢の痛みを生じてきます。また、腰椎と仙腸関節は近くにあり、関連していますので、腰椎の病気に合併することもあり得ます。腰椎の病気に対する手術後に残った症状の原因となる場合もあります。

仙腸関節障害はレントゲンでわかるの?

仙腸関節炎は、整形外科で行われる様な一般的なレントゲンやMRI、CT検査において異常がみられないため、診断が難しく見逃されることが多々あります。痛みが強くでているのにどんな状態かわからなければ不安になりますよね。ただ、仙腸関節の役割や機能そのものについてまだわかっていないことも多く、治療方法も予後もさまざまな面において研究途上にある病気です。状態を細かく見ていく事が非常に重要になってきます。

仙腸関節障害の治療はどのようにするのですか?

炎症が強い時期には負荷をかけるような動きは制限して、場合によってはコルセットを装着して安定性を高めます。そして、湿布や内服薬の使用、ブロック注射、リハビリテーションなどを行うことで痛みの緩和を図っていきます。重症例で日常生活に支障をきたす例では、仙腸関節を固定する手術を行うこともあります。しかし、通常は保存療法で経過をみることが多く、手術を行うことはめったにありません。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

仙腸関節障害を治療したあとは、どのようなリハビリテーションを行ったらいいの?

骨盤周囲筋のストレッチや筋力トレーニングで仙腸関節にかかるストレスの緩和を図っていきます。筋の問題としては、脊柱起立筋群や大殿筋など骨盤の動きをコントロールする筋のインバランスや機能不全などが考えられます。そのため、これらの筋の緊張に偏りがなく適切な位置に骨盤を保つことが仙腸関節にかかる負荷を軽減することに繋がります。筋肉の作用以外では、肥満などによりお腹が出てきてしまうと腰を反るような姿勢をとりやすくなります。それにより仙腸関節の圧迫を強めてしまい、変性を強めてしまう可能性が高くなります。そういった方に対しては栄養指導を行い、体重コントロールを図っていきます。体重を減らすためには、活動的なスポーツでもされていない限り、通常では食事を中心とした体重管理を行った方が有効です。特に糖質の過剰摂取が体重増加を招いてしまうケースが多くみられるため、まずはごはんやパン・麺類、あるいはお菓子やアイスなどの甘いものを控えると良いでしょう。

仙腸関節障害の実例紹介

モヤモヤ血管

 

顔・首

 
 
 

肩・腕・肘・手

 

 

腰臀部股関節

 

 
 

 
 

その他