腰:椎間関節炎など

【80代:男性】脊柱管狭窄症、圧迫骨折と診断された腰臀部痛。治療により痛みだけでなく浮腫みや糖尿病コントロールまで改善した症例(脊柱管狭窄症、仙腸関節障害、筋・筋膜性疼痛症候群、変形性股関節症、糖尿病)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年半前頃から、腰が重たくて足が前に出なくなり、杖や歩行器を使用するようになり常に前傾姿勢で過ごしていました。四六時中ではないものの強い腰痛もあり痛み止めで対処していました。しびれはあるものの痛みが主体であり、膝より下に及ぶ症状はありませんでした。整形外科では、腰部脊柱管狭窄症(腰椎2/3,3/4,4/5)および第3腰椎圧迫骨折と診断を受けているものの、高齢・糖尿病・脳梗塞既往(後遺症はなし)などの他、抗血栓薬等多くの服薬もあることから手術リスクが大きいと言われていました。当院のことを知りご相談されました。

診察時の所見

レントゲンでは第3腰椎圧迫骨折を含めた腰椎の高度変形に加えて胸椎にも変形進行を認めたほか、股関節や大転子の変形(股関節腔狭小化、骨棘形成、骨硬化像等)を認めました。大転子を含めて大腿骨頭周囲には多くの筋肉が付着していますが、その付着部に長期に亘る相応の負担がかかっていたことが強く示唆されました。こうした変化がみられる方は身体が非常に硬い場合が多いですが、実際に腰の可動域をチェックしてみると、前屈は何とかできるものの、その他の動き(後屈・側屈・回旋)は非常に高度に制限されていました。股関節も同様に内旋外旋動作とも高度の制限されていました。腰臀部における圧痛ポイントのチェックでは腰椎椎間関節を含めて多くの部位に圧痛がみられましたが、後上腸骨棘(PSIS)近傍や梨状筋・中臀筋などの骨盤以下の部位においても顕著でした。筋肉自体もかなり硬く、筋緊張の亢進や線維化所見もみられました。腰部脊柱管狭窄症や圧迫骨折は指摘されているものの、下肢に及ぶ強い神経症状は合併しておらず、一方で梨状筋症候群・中臀筋症候群や仙腸関節障害、変形性股関節症、その他筋・筋膜性疼痛症候群を合併するなど改善の余地のある障害を多数抱えていると判断されました。モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)は骨の変形を修正することはできませんので、絶対的な外科手術適応と診断されている場合に代わりになる治療ではありませんが、逆に外科手術では変えることのできない骨以外の組織に広く働きかけることができます。本症例のように高度の変形に至っている場合、全ての症状を改善することは困難ですが、一定の改善効果が期待できると判断し治療を受けていただきました。

治療の所見

治療中、仰臥位(仰向け)で安静にできるかどうか懸念がありましたが、事前に注射を行い、工夫して仰向けになっていただくことで何とか治療を行うことができました。腰椎レベル~股関節周囲レベルに亘り左右20ヵ所以上の血管を治療しました。

治療後の経過

治療後10日くらいから症状が改善してきて、特に起きた時の痛みが軽減されました。何より、体重が2kgくらい痩せて、下肢の浮腫みがとれたことに大変驚かれました。微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)は病的新生血管を大幅に間引くことにより、炎症を鎮めるだけでなく血行を改善させる作用、代謝を促進させる作用などが期待できるのですが、まさにそうした効果によるものではないかと推察されました。治療後2ヶ月時点では、たまに痛みが出る程度でほとんどの痛みが改善していました。多量に汗をかくようなり、浮腫みは解消されたままでした。糖尿病の状態も改善されてきて、むしろ血糖値が低いときがあるとのことでしたので、インスリン量の調整について糖尿病主治医とご相談いただくようお話しました。治療後3ヶ月、ほとんどの痛みは消失し、やはり浮腫みは解消されたまま、糖尿病はHbA1c値 7.9→7.5と改善していました。表情、口調とも大変明るくお話いただいたのが印象的でした。経過良好であり、終診となりました。痛みだけでなく、浮腫みや糖尿病コントロールまで改善されてなによりでした。

脊柱管狭窄症の詳しい病状説明はこちら

 
 

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