腰:椎間関節炎など

【60代:女性】杖歩行から劇的に改善した高度の腰椎変形を伴う腰椎性腰痛(変形性腰椎症、腰椎椎間関節炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

元々脊椎の変形などを指摘されていましたが、4年前頃から腰痛が増悪し、内臓まで締め付けられているように感じていました。整形外科ではコルセットおよび鎮痛薬を処方されていて、ロキソニンを常に内服していましたが、2か月前からは1日に3,4錠飲むようになってしまいました。身体が思うように動かないことに悩み、当院を受診されました。尚、睡眠時間は4時間半ほど(1:00-5:30)と睡眠習慣が破綻していたほか、今は通院するほどの状態ではないものの以前にうつ病・強迫性障害での精神科通院歴がありました。

診察時の所見

杖歩行で歩容が不安定であり、いわゆる動揺性歩行を呈していました。前屈で高度の可動域制限を認めたほか、後屈・側屈・回旋などその他の動作でも中等度の制限を認めました。全体的にかなり身体が硬い状態でした。疼痛は主として腰椎レベルにあり、比較的高位から広範囲に存在していました。第2腰椎~第5腰椎(L2-L5)における腰椎椎間関節に右優位にかなり強い圧痛を認めました。その他の部位の痛みは比較的軽度であり、股関節動作なども問題ありませんでした。また、体位変換には強い痛みが生じ困難を伴うものの、仰臥位での静止は十分可能な状態でした。一方、下肢のしびれなどの神経症状は認められませんでした。レントゲンでは、腰椎変形が非常に高度であり、圧迫骨折、椎間板腔狭小化、偏位、骨棘形成、骨硬化増などが多数認められました。10年間で腰椎変形が高度に進行している様子がよくわかります。以上から、痛みの局在が明確であり過度の筋緊張や血流障害が内在することが示唆され、慢性炎症や血流障害が存在することは明らかであり微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)の適応がある一方で、構造的な異常を高度に認めており症状改善に一定の限界があると思われました。最重症の変形性腰椎症であり、3-6か月の通院が必要であること、運動器カテーテル治療のみではなく、注射・内服治療や日常生活の改善も行っていく必要があることなどを十分ご理解いただいたうえで、治療を受けていただきました。

治療の所見

動脈硬化が非常に高度で、大動脈・内腸骨動脈の高度屈曲・蛇行のためにカテーテル操作に難渋しました。写真では、主たる疼痛部位と関係している左右の腰動脈、腸腰動脈を示しています。それぞれ治療を行いました。*腰臀部はモヤモヤ血管が画像上よく見える部位ではないため、お示ししていません

治療後の経過

2週間後、うそみたいに、すたすたと歩けるようになりました。起き上がるときのぴりっとする神経の痛みも良くなりました。まだ腰椎周囲の痛みは残っていました。治療後1か月半、痛みはほとんど消失しました。朝起きて1,2歩目は少し痛みがあるもののすぐに消えました。長い時間立ち仕事をすると痛みは出るものの、以前のようなつらい痛みにはならず、その後自然に回復するようになりました。寝る時間はやはり遅いものの、寝付いた後はぐっすりと寝られるようになりました。当初の状態を考えると私も驚くほどの回復ぶりでしたが、腰椎椎間関節炎が微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)により劇的に改善することはよく経験します。治療後2か月半、痛みが消失したため一旦終診としましたが、治療後半年の追跡調査でも痛みは消失したままで調子が良いとのことでした。高度の腰椎変形にもかかわらず治療により劇的に症状が改善しましたが、長くその状態を維持するためには日常生活の改善が欠かせません。負担軽減、睡眠習慣改善のほか一定の運動も取り入れて再発防止に努めていただきたいと思います。

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