腰:椎間関節炎など

【20代:男性】車と車が衝突!交通事故後遺障害により苦しんだ腰臀部痛および下肢のしびれ(腰椎椎間関節炎、仙腸関節障害、交通事故後遺症)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

10ヶ月前に車対車の交通事故に遭いました。側方からぶつけられて、右側面を強打(シートベルトは着用)しました。病院での精査では、レントゲンやMRIでは異常がなく、頸椎捻挫(いわゆるむち打ち症)、右肩関節症、腰椎捻挫、両側仙腸関節捻挫と診断されました。複数の医療機関で10回程度の仙腸関節注射を受けましたが、事故後5ヶ月経過しても腰の痛みやしびれがとれないとのことで当院にご相談されました。詳細にお聞きすると、注射後1日は効果がありしびれもとれるとのことでした。長時間の立位や座位、起床時などに特に痛みが生じていました。物損事故については解決済みであり、人身事故の保険請求については同月に打ち切ると言われているとのことでした。交通事故後の慢性疼痛に対処していく場合、保険請求期間内であると被害者側に疾病利得が生じるため(治らない方が利益を生じるということ)、かえって治りにくいというデータがあります。医療機関としてはジレンマにも陥るわけですが、当院でご提供する運動器カテーテル治療というのは現状自費診療ということ、対象は慢性痛であることなどを踏まえて、原則保険請求期間内にはカテーテル治療のご提供は行わないこととしております。現状の治療をもうしばらく続けていただいて、改善しなければ再度ご相談いただくようお話ししました。4ヶ月後、右肩が歩いていてもポキポキとなり、可動域制限はないものの動作時痛が残っていました。左側は仙腸関節注射でだいぶ改善しましたが、右腰は安静時にも痛みがあり夜も寝られないほどでした。起床時や、長時間座位後などに腰臀部~大腿背側/内側に痺れが出るほか、立ち上がりに痛みが出る状態でした。腰の方が痛みは強いものの他院で加療中であり、右肩の診察希望で当院初診となりました。精査の結果、右肩腱板損傷を認めましたが、直ちにカテーテル治療を検討するほどではなく自然軽快も期待できたため、まずは腰痛治療に専念していただくようお話しました。その後、肩は改善傾向でしたが、事故後10ヶ月経ち、注射を20回以上受けても腰臀部および同部位~大腿のしびれが治らないため、当院での治療を希望されて改めて受診されました。

診察時の所見

腰の可動域をチェックすると、前屈および後屈で中等度の制限を認め、それぞれ動作時の疼痛誘発も認められました。右側のL4/5腰椎椎間関節、後上腸骨棘に強い圧痛があり、右仙腸関節に対する負荷テストが陽性でした。レントゲンでは腰椎変形があるものの比較的保たれていました。股関節は特に問題ありませんでした。前医のレントゲン・MRI所見も併せて、右腰椎椎間関節炎、右仙腸関節障害と診断しました。両疾患ともモヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)の良い適応ですので、治療を受けていただきました。交通事故後遺症ですが、心理的にこじれておらず、保険請求上は症状固定とみなされていることからも適応として問題ないと判断しました。

治療の所見

特に鍵となったのは、腰動脈、腸腰動脈関節枝、外側仙骨動脈でした。薬液投与時に、典型的な再現痛を認めました。腰椎~骨盤は通常モヤモヤ血管を描出することが難しい部位ですので、予め当たりをつけた責任血管における再現痛が一つの治療指標となります。その他いくつかの血管も治療したうえで終了しました。

治療後の経過

治療後2週間、まだ大きくは変化がないもののスムーズに起きられるようになりました。仕事は中等度以上の労働作業を伴うものであったため長期に亘り休んでいました。治療後1ヶ月、起床時の痛みが2割ほど減り(8/10)、痛みの持続時間も減ってきました。その後、日中の痛みが大幅に改善されてきて鎮痛薬は使用しないでよくなりました。心理的にも安心できるようになってきました。治療後2ヶ月、順調に経過し痺れも消失しましたが、2時間座りっぱなしの後などは痛くなったり、ラジオ体操程度の運動を2回程度やると痛みが出たりすることがありました。治療後3ヶ月、7割の痛みが改善しました(3/10)。日中はほとんど問題なく過ごすことができており、週に3,4回起床時や就寝時に少ししんどくなったり、3-4km歩くとしんどくなったりという症状が残っていました。仕事は結局退職しました。治療後4ヶ月になると、仙腸関節に由来する痛みはほとんど良くなり、痛みの部位はほぼ右L4/5椎間関節に限局するようになりました。治療後7ヶ月、まだ一定の症状が残ってはいましたが、ぶり返すことはなく、追加のカテーテル治療を検討するほどでもなかったため、運動療法を続けることで残存症状の改善を図ることとして当院での診療は一旦終了としました。

まだまだこれからという年代で大きな事故に遭い、大変辛い思いをされました。振り返ってみると、結果的にはもう少し早いタイミングで当院の治療介入を行うことができたかとも思い悩みますが、事故後遺障害に対する比較的早期からの自費診療による介入ついては慎重にならざるを得ませんでした。何はともあれ、日常生活を支障なく過ごすことができるようになり本当に良かったです。元々身体を酷使するようなハードな仕事であったことから転職を決断されたわけですが、まだまだ若くて再チャレンジが十分可能なご年齢ですので、心機一転頑張っていただきたいと思います。少しでも、その一助となっていれば幸いです。

椎間関節炎の詳しい病状説明はこちら

 
 

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