石灰沈着性腱板炎

石灰沈着性腱炎は、腱の周囲に石灰が蓄積し、痛みを引き起こす病気です。腱は筋肉の先端が硬くなった部分で、筋肉の動きを腕や脚に伝える役割を担っています。体のさまざまな部分に存在していますが、特に関節周囲や手足に多く見られます。この腱の周囲に、白いチョークのような石灰成分がたまることで、腫れや熱を伴い、強い痛みを引き起こすことがあります。石灰沈着性腱炎は炎症の一種と考えられていますが、なぜ石灰が蓄積する炎症が発生するのかは、まだ完全には解明されていません。特に肩関節にある「腱板」という部位に起こることが多く、その場合は「石灰沈着性腱板炎」と呼ばれます。

症状

肩の前方または後方に痛みを感じ、肩に力が入りづらくなることがあります。また、多くの場合、肩の可動域が制限され、特に腕を上げる際に痛みが生じます。さらに、痛みや違和感が腕全体に広がる(放散する)こともあります。痛みが強い時期には、睡眠を妨げることもあります。この症状は、突然発症することもあれば、徐々に痛みが増していくケースもあります。慢性化すると、筋肉の萎縮が進行することもあります。

原因

肩関節の主要な筋肉である腱板内にリン酸カルシウムが沈着し、時間の経過とともにそれが蓄積して膨らむことで、痛みが増していきます。さらに、腱板から滑液包内にカルシウムが破れ出ると、肩の動きに伴って激しい痛みが生じ、運動制限を引き起こします。しかし、このリン酸カルシウムがなぜ沈着するのか、その原因はまだ特定されていません。

治療

急性の場合、激しい痛みを早く和らげるために、腱板に針を刺して沈着した石灰を破り、ミルク状の石灰を吸引する方法がよく行われます。また、三角巾やアームスリングを使って安静を保ち、消炎鎮痛剤の内服や、水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤を滑液包内に注射する治療が有効です。多くのケースでは、保存療法で症状が軽快しますが、亜急性型や慢性型では、石灰が石膏のように硬くなることがあり、強い痛みが再発することもあります。硬くなった石灰が肩の動きに伴って周囲と接触し、炎症が消えず痛みが続くこともあります。痛みが強く、肩の動作に大きな支障がある場合は、手術による摘出が検討されることもあります。痛みが軽減した後は、温熱療法(ホットパックや入浴)や運動療法(拘縮予防や筋力強化)を行うリハビリテーションが推奨されます。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防

1. 予防策と生活習慣の見直し

石灰沈着を予防するためには、肩を過度に使いすぎないようにしつつ、痛みのない範囲で肩を様々な方向に動かす運動を取り入れることが大切です。例えば、ラジオ体操やヨガ、ダンスなどを楽しみながら、肩の柔軟性を保ちましょう。肩を酷使する仕事やスポーツをする場合は、定期的に休息を取り、無理をしないよう心がけることが重要です。

2. 肩の石灰化に対する食べ物の影響

肩の石灰化に特定の食べ物が直接的な影響を与えるという証拠はありませんが、抗炎症効果のある食品(果物、野菜、ナッツ、脂肪の多い魚など)の摂取は、全身の炎症を軽減する助けとなります。例えば、オメガ3脂肪酸を豊富に含む魚やナッツ類、ビタミンCやEが豊富な果物や野菜は、炎症を抑える効果が期待できます。

Q&A

Q1. 肩の突然の痛みが出た場合、どのような原因が考えられますか?

突然の肩の痛みは、肩の腱や筋肉に炎症が発生している可能性があります。特に急激な動きや負荷が原因となることが多いです。

Q2. 肩の痛みが夜間に悪化するのはなぜですか?

肩の痛みが夜間に強まる場合、肩の内部に炎症や腱の異常が原因となっていることがあります。安静時に痛みが増す場合は注意が必要です。

Q3. 肩の炎症が原因で痛みが生じる場合、どのように対処すべきですか?

肩の炎症による痛みを感じた場合、まずは安静にし、痛みが続く場合は冷却や適切な医療機関での診察が必要です。

Q4. 肩に何かが引っかかるような感覚を感じるのはなぜですか?

肩に引っかかるような感覚がある場合、肩関節や腱に問題があることが考えられます。動かすたびに違和感がある場合は、専門医の診察を受けることをおすすめします。

Q5. 肩に強い痛みがある場合、すぐに治療を受けるべきですか?

肩に強い痛みを感じる場合、炎症や腱の損傷が進行している可能性があるため、できるだけ早く医師の診断を受けることが重要です。

Q6. 肩の痛みを和らげるための簡単なセルフケア方法はありますか?

肩の痛みを軽減するためには、適度なストレッチやアイシングが有効です。また、無理をせずに痛みがひどい場合は早めに医師の診察を受けることが必要です。

Q7. 肩の痛みが慢性化した場合、どのような治療法が効果的ですか?

肩の痛みが慢性化した場合、リハビリや物理療法、薬物治療が有効です。専門医による適切な治療計画を受けることが回復に役立ちます。

Q8. 肩の痛みが仕事や日常生活に影響を与える場合、どう対処すべきですか?

肩の痛みが日常生活に支障をきたす場合、痛みを和らげるためのリハビリや治療が必要です。早めの対応で症状の悪化を防ぐことができます。

Q9. 肩の痛みが急に悪化した場合、どの専門科を受診すべきですか?

急激な肩の痛みが発生した場合、整形外科やスポーツ医療の専門医を受診することが適切です。適切な診断と治療が早期回復につながります。

Q10. 肩の可動域が狭くなったり痛みが強くなったりした場合、どのような治療が考えられますか?

肩の可動域が狭くなったり痛みが増す場合、リハビリや物理療法が効果的です。場合によっては注射や手術も選択肢となることがあります。

石灰沈着性腱板炎の実例紹介

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