鴨井院長による動画解説
受診までの経過
元々、新型コロナウイルスワクチン接種後、左肩関節の可動域が狭くなっていました。1年前から左肩の上げにくさや、後ろに回した時の痛みを感じていましたが、10日ほど前に朝から激しい痛みが生じ、それが一日中続くようになりました。整形外科ではレントゲンを撮り偽痛風と言われました。ロキソニンを飲むと多少痛みが和らぐものの、腎臓への負担からあまり飲みたくはありませんでした。接骨院で施術を受けるとかえって悪化してしまいました。夜間痛も伴い日常生活に大きく支障をきたすようになったため当院を受診されました。
診察時の所見
左肩関節の可動域を確認すると、外転45度、外旋15度、水平内旋動作は全く行うことができず、後方動作は臀部に手を触れることもままならない状態でした。レントゲンでは多角的に評価しても腱板部の石灰沈着は小さく認める程度でしたが、エコー検査をすると肩甲下筋腱において粗大な石灰沈着を認めました。腱板自体がかなり腫れており、腱板粗部や上腕二頭筋長頭腱周囲の異常血流信号を多数認めました。棘上筋腱に部分断裂を認めましたが、特に炎症所見は伴っておらず陳旧性のものと考えられました。当初から関節腫脹や発熱などは見られず、血液検査でも白血球やCRP値の上昇は認めず、偽痛風の診断根拠は不明でしたが、受診時に何か別の情報があったのかもしれません。当院としては、石灰沈着性腱板炎と診断しました。治療適応と判断し、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。首肩こりの治療もご希望されたため、併せて治療を受けていただきました。
治療の所見
血管造影を行うと、肩甲上動脈、前上腕回旋動脈、後上腕回旋動脈などでモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数箇所の治療を行い終了しました。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:治療する部位によって費用が異なりますのでこちらをご参照ください。
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。
治療後の経過
治療後2週間くらいから改善し、治療後3週間では痛みがだいぶ取れて、腕を水平までは上げられるようになりました。首のツッパリが無くなりました。さらに改善が進み、治療後1ヶ月半を過ぎてくると、ほとんど日常生活に支障が無くなりました。治療後2ヶ月、可動域は外転160度、外旋60度、反対の肩に手を回すなどの水平内旋動作も回復し、後方の結帯動作では第4腰椎レベルまで腕を後ろ手に回せるようになりました。回復の速さに周囲からも驚かれたそうです。エコー検査をすると、石灰はほぼ消失、腱板の腫脹も大幅に減少して周囲の(炎症を反映した)異常血流信号も消失していました。画像上も劇的に改善しました。非常に経過良好でしたので、特段の注射加療を行うこともなく治療後3ヶ月の再診としました。その再診時、痛みはほぼ消失していました。首の張りも無くなり、一緒に治療を受けて良かったと言われました。この時点で終診となりました。
粗大な石灰沈着がどのタイミングで起きたかは不明ですが、比較的新鮮なものであったことは間違いありません。こうした場合、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)により炎症を強力に鎮めると、完全に石灰が吸収されることをよく経験します。本症例でも典型的な良好な経過を辿りました。石灰が残っても痛みがおさまった後は特に支障がないことが多いですが、中には残存した石灰が動作に伴うインピンジメント(肩関節内の衝突)を起こして新たな損傷/炎症を惹起することがありますので、無いに越したことはありません。石灰を指摘された場合は、あまり長く放置せずに早めにカテーテル治療を検討されることをおすすめします。



