肩こり

肩こりとは、首から肩にかけての筋肉が姿勢を保つために緊張し、血行が悪くなり、重だるさや不快感を感じる症状です。首や肩周辺には多くの筋肉が集まっており、二足歩行の人間にとって、首や腰はもともと負担がかかりやすい部位です。特に、重い頭や腕を支える肩には大きな負荷がかかっています。この負担により、肩や背中の筋肉は常に緊張し、疲労が蓄積しやすい状態になります。筋肉が硬くなることで血行不良が起こり、末梢神経が圧迫されるなど、さまざまな要因が重なって肩こりを引き起こします。筋肉の緊張が続くと、疲労物質(乳酸など)がたまり、筋肉が硬くなり、さらに血管を圧迫して血流が悪化します。この結果、こりや痛みが生じ、末梢神経が傷つくこともあります。血行不良により、筋肉に十分な酸素や栄養が届かなくなり、疲労が蓄積してさらに筋肉が硬くなるという悪循環が起こります。また、長時間のデスクワークや不適切な椅子と机の高さ、歪んだ姿勢を続けることで筋肉の疲労と緊張がさらに悪化します。カバンを同じ手で持ったり、ショルダーバッグを掛けた肩が無意識に上がっていると、左右の肩の高さに差が生じ、片側の肩こりがひどくなることもあります。さらに、冷房の効いた部屋で長時間過ごすと体が冷え、血行不良が進行し、肩こりを引き起こしやすくなります。

原因

肩こりの主な原因は「筋肉疲労」と「血行不良」です。肩周りの筋肉には多くの血管が通っており、筋肉の伸縮が血液の循環を促し、全身に酸素や栄養を届ける役割を担っています。しかし、肩に負担がかかると筋肉が硬直し、血管を圧迫することで血行が悪化します。これにより、疲労物質である乳酸が蓄積し、神経を刺激してこわばりや重だるさ、肩こり特有の症状が現れます。肩こりが慢性化すると、痛みを伴うようになり、その痛みがさらに筋肉の緊張を助長し、血行不良が悪化するという悪循環に陥ります。

「筋肉疲労」と「血行不良」が起こる原因

肩こりを引き起こす「筋肉疲労」と「血行不良」の原因には、次のようなものがあります。

1. 同じ姿勢の維持

長時間のデスクワークやパソコン作業、スマホの使用などで同じ姿勢を続けると、首や肩に負担がかかります。特に首が前に出る姿勢は、頭の重みで筋肉が硬直し、肩こりを引き起こします。スマホを使う際は、目線と同じ高さに持ち上げるようにしましょう。

2. 運動不足

運動不足により筋肉が衰えると、肩にかかる負担が大きくなります。筋肉の緊張が続くことで血流が悪化し、肩こりが生じやすくなります。適度な運動で筋力を保つことが重要ですが、過度な運動は逆に肩こりを引き起こすことがあるため、無理のない範囲で行いましょう。

3. 眼精疲労

目の疲れが肩こりの原因となることがあります。現代では目を酷使しがちで、パソコン作業などを長時間行う際は、1時間に1回は休憩を取り、目を休ませることが大切です。

4. ストレス

肩こりはストレスとも密接に関連しています。過度なストレスは自律神経の乱れを引き起こし、筋肉の緊張や血行不良を招いて、肩のこりや痛みを引き起こすことがあります。適度なストレス解消法を見つけることが、肩こり予防に役立ちます。

症状

肩や首周辺の筋肉が緊張し、重だるさを感じる状態を指すのが肩こりです。人によっては「痛い」「重い」「だるい」「張っている」「ジンジンする」「冷たい」など、さまざまな症状として現れます。また、肩こりの原因も個人差があり、長時間の無理な姿勢、肥満、なで肩などの体型、生活習慣、老化、ストレスなど、さまざまな要因が関与しています。肩こりの原因が人それぞれ異なるため、対処法もそれに合わせて変わってきます。適切な治療や対策を行うことが、肩こりの改善には重要です。
肩こりは、背中の表面にある僧帽筋エリア、特に肩上部から痛みが始まり、慢性化しやすいです。進行すると痛みが広がり、筋肉の緊張が続くとインナーマッスルにまで「こり」が広がり、芯からくるような重い痛みを感じることがあります。
部位によって痛みの感じ方は異なります。たとえば、首から肩上部のこりは、重いものが乗っているような違和感として感じられることが多く、肩甲骨と脊柱の間のこりは、肩甲骨の内側に鉄板が入っているかのような硬い痛みとして現れることがよくあります。
特に、重い痛みを放置すると緊張性頭痛や顔面、上肢(肩から手にかけて)の関連痛が併発することがあるため、注意が必要です。頭全体の筋肉が緊張し、頭痛や目の奥の痛み、肩から手にかけての痛みやしびれなどが発生するリスクもあります。

治療

肩こりは、他の病気が関連して発症することもあるため、肩こりや頭痛、手や腕の痛みやしびれ、話しにくさなどの症状がある場合は、医療機関で検査を受けることをおすすめします。ここでは、一般的な治療法をご紹介します。

マッサージ療法

多くの肩こりは血行不良が原因で起こります。マッサージ療法では、筋肉の血流を改善し、筋肉の緊張を緩めることで肩こりを和らげます。

温熱療法

血行促進には温めることも効果的です。温熱療法では、音波や温湿布を使用して患部を温め、血流を改善させます。

運動療法

筋肉の緊張を解消するのに役立つのが運動療法です。肩こりに効果的なストレッチや、日常生活における姿勢や動作の指導が行われます。

薬物療法(筋弛緩剤や鎮痛消炎剤)

肩こりが起きている際には、肩周辺の筋肉が緊張し、血流が悪くなっています。この筋肉の緊張を和らげるために使用されるのが筋弛緩剤です。肩こりに使用される筋弛緩剤は、比較的作用が緩やかなものが処方されます。また、鎮痛消炎剤は、血行不良の部位で発生する痛みを引き起こす物質に働きかけ、痛みを和らげる「痛み止め」として使用されます。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防

正しい姿勢を習慣化する

背骨のS字カーブを意識し、常に正しい姿勢を保つことを心がけましょう。たとえば、猫背になると頭が前に出てしまい、重心も前方に移動します。デスクワークで首を前に傾けて作業を続けることも、頭の重心を前に保ったままの姿勢を長時間維持することになります。

このような姿勢では、肩や首の筋肉に通常より大きな負担がかかります。普段から背筋を伸ばし、首や肩の筋肉がリラックスできる姿勢を意識しましょう。また、長時間前かがみの姿勢で作業をするときには、定期的に休憩を取り、首を回したり肩を動かしたりして筋肉をほぐすように心がけてください。

運動・スポーツで筋力アップと気分転換を

運動やスポーツを取り入れ、肩周りの筋力を強化し、頚椎や肩関節をよく動かすことが大切です。水泳、バレーボール、テニス、エアロビクス、ヨガなど、全身を使う運動がおすすめです。また、軽いジョギングやウォーキングなど、気分転換になりやすい運動も取り入れて、定期的にリフレッシュしましょう。精神的な緊張をほぐし、ストレスを軽減することも肩こりの解消に効果的です。

習慣を見直すことも重要

いつも同じ肩にかばんをかけていたり、同じ場所に座って同じ方向からテレビを見たり、片足だけを組むなど、偏った筋肉の使い方をしていないか確認しましょう。たとえば、かばんを反対側の肩にかけるなど、日常の癖を修正するだけでも、肩こりの予防につながります。

Q&A

Q1. 首や背中の重だるさが続く原因は何ですか?

首や背中の重だるさは、長時間のデスクワークやスマホの使用による姿勢の崩れや筋肉の緊張が原因で起こることがあります。

Q2. デスクワーク中に肩や首が疲れやすいのはなぜですか?

長時間同じ姿勢を続けると、筋肉が緊張しやすくなり、首や肩周りに疲労が溜まることが多いです。姿勢の改善や定期的な休憩が重要です。

Q3. 首や肩に圧迫感や痛みを感じるのはどうしてですか?

首や肩に圧迫感や痛みを感じるのは、筋肉の緊張や神経の圧迫が原因であることが多く、特に長時間の悪い姿勢が原因となることがあります。

Q4. パソコンやスマホの使用が首や背中に与える影響は?

パソコンやスマホを長時間使用すると、前かがみの姿勢になり、首や背中に負担がかかります。この姿勢を改善することが、疲労を和らげるために大切です。

Q5. 長時間同じ姿勢でいると、首や肩が張るのはなぜですか?

長時間同じ姿勢でいると、首や肩周辺の筋肉が硬くなり、血流が悪化します。これが張りや不快感を引き起こす原因となります。

Q6. 首や背中の筋肉の疲労を感じたとき、どうすればよいですか?

首や背中の筋肉が疲れていると感じたら、適度なストレッチや温かいタオルを使ったリラックスが効果的です。また、姿勢改善も重要です。

Q7. 運動不足が原因で首や肩に違和感が出ることはありますか?

運動不足が続くと、筋力が低下し、首や肩に負担がかかりやすくなります。軽いエクササイズや定期的な運動が違和感を解消する助けとなります。

Q8. 首や肩の疲れを軽減するために有効なセルフケアは何ですか?

セルフケアとしては、首周りのストレッチや軽いマッサージが有効です。また、デスクワーク中には定期的に休憩を取ることが推奨されます。

Q9. 頭痛や目の疲れが首や肩の緊張と関連していることがありますか?

頭痛や目の疲れは、首や肩の筋肉の緊張が原因で発生することがあり、適切な姿勢やリラックスが症状の改善に役立つことがあります。

Q10. 日常生活で首や肩の負担を減らすための方法はありますか?

日常生活で首や肩への負担を減らすためには、正しい姿勢を保ち、定期的なストレッチを行うことが効果的です。また、長時間のスマホやパソコン使用を避けることも重要です。

肩こりの実例紹介

 

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腰臀部股関節

 

 
 

 
 

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