足底筋膜炎 足底には、かかとの骨から足の指の付け根にかけて、強靱な繊維で構成された腱が膜状に広がっています。これが足底腱膜です。 足底腱膜は、土踏まず(縦アーチ)を支え、歩行やランニング時の衝撃を吸収する役割を果たしています。さらに、吸収したエネルギーを蹴り出す力に変換する「巻き上げ(ウインドラス)機構」にも関与しています。そのため、足底腱膜の機能が低下すると、着地時の衝撃吸収や蹴り出す際のバランスが崩れ、走りづらさや歩行の不快感が生じます。 原因 ふくらはぎやアキレス腱が硬い方、足を引き上げる力が弱い方、スポーツや激しい運動で足に過度な負担をかけている方、足のアーチが崩れている方は、足底腱膜に負担がかかりやすく、足底腱膜炎を発症するリスクが高くなります。さらに、加齢や肥満も影響し、足を踏み返す際に足底腱膜に大きな負荷がかかるため、炎症を引き起こしやすくなります。通常、ふくらはぎやアキレス腱が柔軟な場合は、痛みが生じにくいです。 10~20代の若年層では、激しいスポーツや運動の繰り返しによって足底腱膜が強い衝撃を受け、ダメージを負いやすくなります。特に、アスファルト舗装された硬い道路を長距離で走るマラソンやジョギングは注意が必要です。長時間の立ち仕事も疲労が蓄積し、足底腱膜に負担がかかりやすくなります。一方、高齢者は、加齢に伴って足底腱膜の線維が弱くなり、激しい運動をしていなくても足底腱膜炎を発症しやすくなります。肥満も足への負荷を増やすため、足底に強い衝撃がかかる運動には注意が必要です。 また、足のアーチが崩れている場合、特に扁平足の方は、足底腱膜炎のリスクが高まります。アーチが低い足では、足底腱膜の起始部である踵骨に大きな負荷がかかりやすくなります。さらに、ヒールのある靴を履くのが楽だと感じる方は、アキレス腱が硬く、かかとに重心がかかりやすいことが考えられます。これにより、足首が硬くなり、前傾姿勢が取りづらくなる傾向があります。加えて、サイズの合わない靴を履き続けることも、足底腱膜炎を引き起こす原因になるため、靴の選び方にも注意が必要です。 症状 足底腱膜炎は、足底腱膜に沿ったさまざまな部位に痛みが生じる可能性がありますが、特に多く見られるのは、足底腱膜がかかとの骨の下部に付着している部分です。患者さんは、朝起きて最初に足に体重をかけた際に、鋭い痛みを感じることが多いです。この痛みは通常、5~10分程度で一時的に和らぎますが、その後、再び痛みが現れることがあります。特に、かかとで地面を蹴る動作(歩行や走行時など)や長時間安静にしていた後に痛みが悪化しやすいです。痛みは、かかとの下部からつま先に向かって広がることもあり、歩行中に足裏の内側沿いに焼けるような感覚や刺すような痛みを伴う場合もあります。このような症状が出た場合は、専門的な治療や適切なケアが必要です。 治療 基本的な治療法としては保存療法が中心です。 スポーツ現場での対応 痛みの強さに応じて運動制限を行います。症状が軽減するまで無理をしないことが重要です。 理学療法 運動療法や徒手療法を通じて、足底筋膜の機能を改善させることを目指します。 装具療法 インソールの作成によって足部アーチを安定化させ、足底筋膜への負担を軽減します。これにより、足底筋膜炎の症状緩和が期待されます。 注射療法 ステロイド注射:強力な抗炎症作用があり、痛みを即座に軽減します。 PRP療法:血小板成長因子を活性化させ、自然治癒を促進し、足底筋膜の修復を助けます。 体外衝撃波療法 2012年以降、難治性足底筋膜炎に対する保険適用が認められています。この治療は、衝撃波の物理的特性を活用し、痛みの軽減や組織修復の促進、筋・筋膜の柔軟性改善などが期待できます。 モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療 近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。 治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態 治療費用:税込324,500円 主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。 運動器カテーテル治療のメリット 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。 予防とセルフケア 足の負担を軽減する 足裏への負担を減らすために、日常から正しい歩行フォームを意識しましょう。自分の足に合った靴を選び、運動は可能な限り土の上で行うことが推奨されます。また、適正体重を維持することも重要で、足裏の負担を大幅に軽減することができます。 ふくらはぎの筋力強化・柔軟性の維持 ふくらはぎの筋力を鍛えたり、アキレス腱や足首の柔軟性を保つことで、足底への負荷を軽減することができます。年齢とともに筋力や柔軟性は自然に低下していくため、日頃からストレッチや運動を取り入れ、適切な栄養を摂取し、十分に休養を取ることが大切です。 自宅でできるストレッチ・マッサージ アキレス腱のストレッチ このストレッチは、学校の体育やスポーツの準備運動でよく行われるものです。 立った状態で片脚を後方に引き、重心を前に移動させます。 後ろ足の踵を地面にしっかりつけ、アキレス腱を伸ばします。反動をつけずに、ゆっくりと行いましょう。 1分間その状態を維持し、反対側の脚も同様に行います。 ※反動をつけるとアキレス腱を痛める可能性があるので、ゆっくりと伸ばしてください。バランスが不安な場合は、柱やしっかりしたテーブルなどを支えに使いましょう。 足底筋膜マッサージ 座った状態で片脚の膝を曲げ、その足の指を5本まとめて反らします。 反対の手で足裏をよく揉みほぐし、1分ほどマッサージを行います。 反対側の脚も同じように行い、足底筋膜をしっかりとケアしましょう。 これらの方法を取り入れることで、足底腱膜炎の予防や症状の緩和が期待できます。 QA Q1. 足底筋膜炎とは何ですか? 足の裏にある足底筋膜という組織が炎症を起こし、痛みを引き起こす状態です。特に朝起きたときや長時間の歩行後にかかと周辺に痛みを感じることが多いです。 Q2.主な症状は何ですか? 足の裏、特にかかとに強い痛みを感じることです。朝一番や長時間座ってから立ち上がったときに痛みが増すことが一般的です。 Q3. どのように診断されますか? 医師による問診や触診で診断されます。必要に応じて、X線やMRIで他の原因を除外し、足底筋膜の炎症の状態を確認します。 Q4. 治療にはどのような方法がありますか? 治療には、安静、ストレッチ、アイシングが効果的です。さらに、足底板(インソール)や特別なシューズを使用することで、足にかかる負担を軽減することが推奨されます。 Q5. 痛みを和らげるためのセルフケア方法はありますか? セルフケアとしては、足底筋膜を伸ばすストレッチ、アイシング、そして柔らかい靴を履くことが効果的です。痛みが強い場合は、安静にすることも重要です。 Q6. 予防するためにはどのようなエクササイズが効果的ですか? 予防には、足底筋膜を柔軟に保つストレッチや、ふくらはぎやアキレス腱の筋肉を強化するエクササイズが効果的です。これにより、足への負担が軽減されます。 Q7. 悪化する前に医師に相談すべき症状は何ですか? 足の痛みが数週間続く、または痛みが強くなり歩行が困難になる場合は、早めに医師に相談することが重要です。早期の治療が回復を早めます。 Q8. 治療には手術が必要ですか? 軽度の足底筋膜炎は通常、保存的治療で改善しますが、保存的治療で効果が見られない場合には手術が検討されることがあります。 Q9. 再発を防ぐためにはどのようなトレーニングが有効ですか? 足底筋膜やふくらはぎの柔軟性を高めるストレッチが再発防止に効果的です。特に日常的なエクササイズで足にかかる負担を軽減することが推奨されます。 Q10. リハビリにはどのようなプログラムが効果的ですか? リハビリには、足底筋膜を柔軟に保つためのストレッチや、足底筋膜に負担をかけない歩行方法の指導が含まれます。 足底筋膜炎の実例紹介 モヤモヤ血管 顔・首 肩・腕・肘・手 胸 腰臀部股関節 膝 足 その他