足:アキレス腱炎、足底筋膜炎、踵骨棘など

【70代:男性】10年以上苦しんだ踵の痛み。パーキンソン病合併で治らないと言われたが・・(外傷後遺症、足底筋膜炎、パーキンソン病)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

11年前に砂利交じりの石畳を洗っていたところ、右踵に小さな切り傷を受傷しました。出血なく痛みも軽度であったため様子を見ていましたが、翌月になると夜に痛みが生じるようになったため皮膚科や形成外科、整形外科を受診しました。CT、MRI、エコー検査を受けましたが特に異物の混入は無く、その他の異常も認められませんでした。以後10数か所の病院にかかりましたがやはり原因は特定できませんでした。7年前頃に体外衝撃波治療を7回受けましたが効果はありませんでした。3年前からはストレスが重なり鬱病にもなりました。さらに1年前からパーキンソン病を発症し、右足の痛みが増しました。痛みの専門院にも受診しましたが、パーキンソン病を合併していると治らない可能性が高いと言われ治療を断られました。自身では足底筋膜炎ではないかと思いましたが、足底筋膜炎は10年も続くものではないと言われ、もう諦めようかと思っていました。そうした時に当院のことを知り、ご相談されました。

診察時の所見

痛みは右足の踵に限局しており、圧痛もありました。疼痛部位の識別(痛む箇所と痛くない箇所の区別)も明瞭でした。レントゲンでは足底側・アキレス腱側の両方に踵骨棘を認め長期の負担がかかっていたことは明白でした。典型的な扁平足であり、痛みの原因の一つと考えられました。疼痛部位において長期に亘る負荷を背景とした限局性の炎症/損傷が関わっていると言えました。長期に及ぶ罹病期間、パーキンソン病(さらに服薬も多数あり)という因子は確かに治療抵抗要因として挙げられますが、治療する意義は十分あると判断されました。典型的な足底筋膜炎とは様相が異なるため無効である場合もあることをご了承いただいたうえで、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)治療を受けていただきました。

治療の所見

疼痛部位に一致するような病的新生血管(モヤモヤ血管)は特に描出されませんでした。しかしながら、治療前後の血管造影を比べてみると見え方にかなり大きな変化が起きていることは分かります。病的新生血管は、本来肉眼で全貌を確認することは困難であり、その一部が血管造影で描出されているに過ぎません。映らないから無いということではありません。わかりやすい画像は得られませんでしたが、通常どおり薬液を投与して治療を終えました。治療後は正常血管が鮮明に描出されています。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後しばらくは変化がありませんでしたが、2週間経つ頃に芯の痛みが消えました。7割の痛みは改善しました(3/10程度)。あまりにも改善したので、周りの人も半信半疑で驚いていると言われました。あつらえたインソールを出来るだけ使うようにして過ごしていました。その後も走るような痛みは無くなり、思い切って治療を受けてよかったと言われました。治療後3ヶ月時点では、ほぼ痛みが無くなり(1/10程度)何も支障がないということです。現在半年以上に亘り順調に過ごしておられるようです。大変長く苦しんでおられましたが、改善されて本当に良かったです。実際のところ、外傷後遺症なのか足底筋膜炎の一形態なのか、あるいはその両方なのかはっきりと診断はできませんし、血管造影からも特徴的な所見は得られませんでした。しかしながら、何よりも『治った』ということ、『痛みから解放された』ということ、この事実こそがご本人にとり重要なことです。(医療機関も含めて)パーキンソン病だからと諦めてしまっている方も多いですが、こうした事実もあるということを知っていただきたいと思います。

足底筋膜炎の詳しい病状説明はこちら

 
 

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