足:アキレス腱炎、足底筋膜炎、踵骨棘など

【60代:女性】右大腿の感覚が無い・・外側大腿皮神経障害(外側大腿皮神経障害、モヤモヤ血管)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

半年前から右大腿前面に痺れや感覚麻痺を生じるようになりました。常に痺れていて、一定の痛みも伴っていました。整形外科で精査を受けたところ、腰椎には原因がないと言われ、ブロック注射も種々試したものの一時的に少し緩和されたかなという程度でした。複数の医師にかかったものの、原因はよくわからないと言われ、最終的には神経剥離術をしてみるかと提案されました。しかしながら、自分としては手術は怖いので別の治療を受けたいと思い当院を受診されました。以前から慢性腰痛があるためコルセットを巻いていますが、それにより右外側大腿皮神経痛が生じたのではないかと思っていました。ぎっくり腰は2-3回したことがありました。

診察時の所見

上前腸骨棘近傍の圧痛やtinel signなどはみられませんでした。しびれ・疼痛の範囲は右大腿前面に広く及んでいましたが、同部位に限局しており外側には症状はありませんでした。明らかな知覚麻痺も合併していました。腰の可動域は全ての動作において非常に高度に制限されていました。一方、股関節に問題はありませんでした。レントゲンでは、腰椎の直線化、L4/L5椎間板腔の狭小化などを認めました。その他の診察所見(複数箇所での圧痛の確認など)と併せて、筋・筋膜性疼痛症候群、仙腸関節障害、外側大腿皮神経障害が合併している状態と推察されました。一定の硬さや血流障害が関係していることは明らかであり、それらの結果として神経障害が生じているものと思われました。感覚麻痺などの一部の長期に亘り固定された神経症状は改善しない可能性があることを十分ご理解いただいたうえで、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

骨盤領域はモヤモヤ血管が描出できることはほとんどありませんが、該当する責任血管を一つ一つ選択して治療していきます。写真は、右側の腰動脈、上殿動脈、深腸骨回旋動脈、外側大腿回旋動脈を示しています。一定の再現痛を確認し終了しました。
*再現痛とは薬液投与等に伴い普段の症状が一定程度再現される現象です

治療後の経過

治療後1週間くらいから改善してきて、2週間時点で刺すような痛みは無くなりました。右大腿の痺れも緩和され、麻痺していた感覚が戻ってきました。元の領域の2/3くらいになりました。併せて腰痛もすごく楽になりました。治療後1ヶ月半、以前は右半身で寝ると痛かったのですが、それが無くなりました。感覚麻痺の範囲はさらに狭くなり、半分以下となりました。治療後2ヶ月半、痛みは消失し、しびれがぼんやりと残る程度になりました。非常に経過良好であり、終診となりました。通常長期に亘り固定された神経障害は、たとえ外科手術を行ったとしても改善しないこともありますが、まだ完全ではないにせよ、3ヶ月で感覚麻痺の部位も含めて症状が回復したのは驚異的な経過でした。残存症状の自然軽快も期待できます。こうした神経障害は事前に改善効果を予測することは困難であり、無効である場合の話を必ず事前にさせていただきますが、改善されて本当に良かったです。

外側大腿皮神経障害の詳しい病状説明はこちら

 
 

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