ジャンパー膝(膝蓋腱炎)

ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は、ジャンプや着地、ダッシュ、ストップといった急激な動作の繰り返しによって膝蓋腱に負荷がかかり、発生するオーバーユース障害の一つです。特にジャンプや着地動作を頻繁に行うスポーツでよく見られ、男性に多く発症することが特徴です。競技レベルが上がる中学・高校生の時期に発症リスクが高まる傾向があり、バスケットボールやバレーボールなどのスポーツ選手に多いです。

原因

ジャンパー膝の主な原因は、ジャンプやダッシュなど、膝の曲げ伸ばしを繰り返す動作によるものです。これらの動作は多くのスポーツで行われますが、特にバスケットボール、バレーボール、サッカー、野球、そして陸上競技の短距離走、長距離走、走高跳の選手に多く見られます。これらの競技では、膝にかかる負荷が大きいため、膝蓋腱に負担がかかりやすく、発症リスクが高まります。

症状

最初に現れる症状は痛みで、膝蓋骨のすぐ下に痛みを感じることが多いです。初期段階では、動き始めや特定の動作の際にのみ痛みを感じますが、時間が経つにつれて痛みが強まり、運動全般に痛みが伴うようになることがあります。最終的には、日常生活にも支障をきたし、階段の上り下りや椅子からの立ち上がりなどでも痛みが生じるようになります。

治療

物理療法
血行を促進し、痛みを軽減する目的で行われます。使用する物理療法機器によっては、細胞の修復を促進する効果も期待できます。

リハビリテーション
大腿四頭筋の柔軟性を高めることや、股関節や体幹の筋力トレーニングは、再発予防に非常に有効とされています。

体外衝撃波治療
衝撃波を患部に照射することで、短期的には痛みの緩和、長期的には組織の修復を期待します。ただし、現在の日本では、体外衝撃波治療が保険適用となるのは足底腱膜炎のみで、膝蓋腱炎に対しては自費診療となります。海外では、腱板炎や偽関節・腱付着部炎による疼痛緩和に広く使用されています。

PRP療法
患者自身の血液から抽出加工したPRP(多血小板血漿)を患部に注射する治療法です。PRPに含まれる成長因子が、損傷した組織の修復を促進します。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

ジャンパー膝のカテーテル治療後の経過を教えて下さい。

単回の治療で大幅に炎症を鎮め、異常血流は消失、腱の腫れも引いていきますが、腱の部分断裂を合併するなど重症の場合は組織の修復により長い期間を要します。痛み自体は治療後2-4週間でかなり楽になります。エコーで定期診察を行いますが、異常血流は治療後にみられなくなるものの、腫れの縮小などの組織の修復には数か月以上を要します。痛みが引いたころは、まだ組織の修復過程にありますので、この時期に無理をするとぶり返しやすいです。特にジャンパー膝の場合は炎症が強いので注意が必要です。運動は痛みが伴わない範囲で徐々に再開していくことが肝要です。主治医とよくご相談ください。

予防

膝を酷使するスポーツをしている方は、ジャンパー膝を予防するために、日頃から次の対策を心がけましょう。

1. ウォーミングアップ

運動を開始する前に、筋肉が硬いままだと膝周りに負担がかかり、怪我をしやすくなります。軽いジョギングや体操などで入念にウォーミングアップを行い、筋肉の柔軟性を高めましょう。

2. ストレッチ

ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋のストレッチが重要です。普段から継続して行うことで柔軟性を維持できます。また、腸腰筋のストレッチも効果的です。方法は、足を前後に広げ、後ろ足の膝を床につけ、背中を伸ばしたまま前に重心を移動させます。左右それぞれ20〜30秒ずつストレッチしましょう。

3. 正しい姿勢の維持

体幹や股関節を鍛えることで下半身の安定性が向上し、膝への負担が軽減されます。体幹は体幹トレーニング、股関節はスクワットで強化できますが、正しく股関節を曲げることが重要です。

4. 姿勢改善

悪い姿勢は骨盤の歪みを引き起こし、下半身のバランスが崩れやすくなります。これがジャンパー膝の原因となることもありますので、日頃から正しい姿勢を意識することが大切です。

QA

Q1. ジャンパー膝とは何ですか?

膝蓋腱(膝の前側にある腱)が繰り返しのジャンプ動作などで負担を受け、炎症を起こすことによって生じる状態です。バスケットボールやバレーボール選手に多く見られます。

Q2. 主な症状は何ですか?

主な症状には、膝の前側や膝蓋腱の周辺に痛みや腫れを感じることがあります。特に、ジャンプや走る動作で痛みが悪化することが多いです。

Q3. どのように診断されますか?

痛みの位置や症状の確認、または超音波やMRIなどの画像検査を通じて診断されます。膝蓋腱の状態を詳細に確認することが重要です。

Q4. 治療にはどのような方法がありますか?

治療には、まず安静とアイシングが有効です。リハビリテーションや物理療法を行い、膝蓋腱への負担を減らすことが重要です。場合によっては、痛みを和らげるためにテーピングやサポーターを使用します。

Q5. 痛みを和らげるためのセルフケア方法はありますか?

セルフケアとしては、膝蓋腱を冷やすアイシングや、膝に負担をかけないストレッチ、または膝を保護するサポーターの使用が効果的です。

Q6. 予防するためにはどのようなエクササイズが効果的ですか?

予防には、膝周りの筋肉を強化するエクササイズが有効です。特に、大腿四頭筋やハムストリングの筋力トレーニングが膝の安定性を高め、負担を減らします。

Q7. 痛みが悪化する前に医師に相談すべき症状は何ですか?

痛みが日常生活に影響を与えたり、運動中に膝の痛みが強くなる場合は、早めに医師に相談することが重要です。放置すると症状が悪化し、治療が長引く可能性があります。

Q8. 治療には手術が必要ですか?

多くの場合、手術は必要ありません。リハビリや物理療法で改善することが多いですが、症状が重度で改善しない場合には、手術が検討されることもあります。

Q9. 再発を防ぐためにはどのようなトレーニングが有効ですか?

膝の再発を防ぐためには、膝周りの筋肉を鍛えるトレーニングと柔軟性を高めるストレッチが有効です。適度なウォームアップとクールダウンを心がけ、膝に負担をかけないトレーニングが重要です。

Q10. リハビリにはどのようなプログラムが効果的ですか?

リハビリプログラムには、膝の柔軟性を高めるストレッチや、筋力を強化するエクササイズが含まれます。理学療法士の指導のもと、段階的にリハビリを行うことが回復の鍵です。

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