梨状筋症候群

坐骨神経は骨盤から足へと伸びる際、骨盤の出口で梨状筋という筋肉の下を通過します。通常、この筋肉は柔軟ですが、過度の負担がかかると硬くなり、お尻に痛みを引き起こしたり、隣接する坐骨神経を圧迫してしびれが生じることがあります。この状態を「梨状筋症候群」と呼びます。

原因

梨状筋は股関節の回旋運動に関与しており、ゴルフや野球など体をひねるスポーツ、中腰での草むしりなどの肉体労働、長時間のデスクワークや長距離運転といったオーバーユース(使いすぎ)により、筋肉の柔軟性が低下し、坐骨神経を圧迫することがあります。さらに、股関節の異常や人工股関節の使用に関連した障害も、梨状筋症候群を引き起こす原因となることがあります。

症状

慢性的な持続的な痛みやピリピリ感、しびれが最初にお尻に現れ、その後太ももやふくらはぎの裏側全体、さらには足先にまで広がることがあります。梨状筋が坐骨神経を圧迫すると、痛みが増しやすく、特にトイレや車の座席に座ったとき、狭いサドルの自転車に乗ったとき、走行中などの場面で痛みが強く感じられることがあります。

治療

梨状筋やその周囲の筋肉をストレッチしたり、ブロック注射などの治療を行うことで、多くの場合は症状が改善します。しかし、難治性のケースでは、梨状筋を切開する手術が必要となることもあります。梨状筋症候群は、治療よりも診断が難しいことが多く、適切な治療を選ぶためには、椎間板ヘルニアなど他の坐骨神経痛を引き起こす疾患との鑑別が重要です。レントゲンやCT、MRIなどの画像診断と、経験豊富な専門医の診断によって、症状の正確な原因を特定することが大切です。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防とセルフケア

梨状筋症候群を予防するためには、以下のポイントが役立つと考えられます

  1. 正しい姿勢を保つ
    長時間同じ姿勢でいることを避け、座る際には背筋を伸ばし、デスクワークでは体に合ったデスクや椅子を使用しましょう。
  2. 適度な運動習慣
    腰や臀部の筋肉を強化するため、日常的にストレッチや軽い運動を取り入れ、筋肉を柔軟に保つことが重要です。
  3. 定期的な休憩
    座り仕事が続く場合は、定期的に立ち上がって体を動かし、筋肉をリフレッシュさせましょう。
  4. 体重管理
    適正な体重を維持することで、股関節や筋肉への負担を軽減できます。
  5. ストレスのコントロール
    ストレスが筋肉の緊張を引き起こすことがあるため、リラクゼーションやストレス管理の技術を取り入れることが大切です。

予防策を実践する際は、医師に相談し、自分に合った方法を取り入れることが推奨されます。

Q&A

Q1. お尻や太ももの裏に痛みを感じるのはなぜですか?

お尻や太ももの裏に痛みが出るのは、梨状筋が坐骨神経を圧迫しているためです。この状態は梨状筋症候群と呼ばれ、特に運動や長時間座ることで悪化します。

Q2. 長時間座っているとお尻や足にしびれが出るのはどうしてですか?

長時間座っていると、お尻の筋肉が坐骨神経を圧迫し、しびれや痛みを引き起こすことがあります。この状態が続くと梨状筋症候群の原因となることがあります。

Q3. 梨状筋症候群はどのように診断されますか?

梨状筋症候群は、症状の問診や触診、場合によってはMRIや超音波検査を通じて診断されます。坐骨神経がどのように圧迫されているかを確認することが重要です。

Q4. 梨状筋症候群の初期症状にはどのようなものがありますか?

初期症状には、お尻の深部に鈍い痛みや、長時間座ったり運動後に足にしびれを感じることがあります。早期に診断して治療を開始することが大切です。

Q5. 梨状筋症候群の治療にはどのような方法がありますか?

治療方法には、物理療法やストレッチ、マッサージが含まれます。痛みが強い場合は、痛みを軽減するための薬物療法や注射も効果的です。

Q6. 梨状筋症候群の痛みを軽減するセルフケア方法はありますか?

セルフケアとしては、梨状筋を伸ばすストレッチや軽いマッサージが効果的です。また、無理な姿勢を避け、定期的に運動を行うことが推奨されます。

Q7. 梨状筋症候群を予防するためにはどのようなエクササイズが効果的ですか?

予防には、梨状筋を柔軟に保つストレッチや、股関節の筋肉を強化するエクササイズが効果的です。特に、ランニングや運動の前後にストレッチを行うことが重要です。

Q8. お尻や太ももの痛みが悪化する前に医師に相談すべき症状はありますか?

痛みが強くなり、日常生活や運動に支障が出る場合は、早めに医師に相談することが重要です。症状が進行すると治療に時間がかかることがあります。

Q9. 梨状筋症候群のリハビリにはどのような運動が有効ですか?

リハビリには、梨状筋を緩めるストレッチや、股関節の柔軟性を高めるエクササイズが有効です。理学療法士の指導のもとで行うことで、症状の改善が期待できます。

Q10. 梨状筋症候群の再発を防ぐためにはどんな生活習慣が必要ですか?

再発を防ぐためには、定期的にストレッチを行い、長時間座ることを避けることが大切です。また、筋肉を柔軟に保つための運動習慣を取り入れることが効果的です。

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