痛風

痛風とは、関節に尿酸の結晶が蓄積し、激しい炎症を引き起こす疾患です。その名前は「風が吹いただけで痛むほどの痛み」と形容されたことから「痛風」と名付けられました。

痛風患者の増加は、高尿酸血症の患者数の増加とともに特に男性を中心に進んでおり、2013年の調査では100万人を超えるとされています。発症しやすい年代は30代が最多で、次いで40代、50代が続きます。特に30歳以上の男性では、有病率は約1%とされ、100人に1人が痛風を発症することになります。これは決して珍しい病気ではありません。

痛風の症状は通常、1つの関節に限って発生し、特に痛みが生じやすい場所としては以下の部位が挙げられます。

  • 足の親指の付け根
  • 足の甲
  • 足首や手首
  • アキレス腱の周辺
  • ひざやひじ
  • 指の関節

中でも最も典型的な症状は「足の親指の付け根」の腫れと激痛です。関節が赤く腫れ、痛みで足を地面につけることすらできないこともあります。また、痛風が進行すると、耳やひじなどに「痛風結節」と呼ばれるこぶのようなものができるケースもあります。

原因

痛風の原因となるのは「尿酸」という物質です。尿酸は体内の新陳代謝によって発生する老廃物で、通常は尿や便として体外に排出され、その濃度は一定に保たれます。しかし、何らかの理由で尿酸の代謝や排出がうまくいかず、血中の尿酸濃度が高くなることがあります。
この状態を「高尿酸血症」と呼びます。高尿酸血症の原因は多岐にわたり、腎臓の処理能力が低下して尿酸の排出がうまくいかない場合や、暴飲暴食や肥満などの生活習慣が関与することがあります。また、ストレスや激しい運動、特定の薬の使用も要因となることがあります。
尿酸値が高い状態が長期間続くと、尿酸が尿に溶けきれず飽和状態となり、「尿酸塩結晶」が形成されます。この結晶は針のように細い形状をしており、関節に蓄積します。結晶が関節に沈着すると、それを白血球が処理しようとして炎症が起こり、激しい痛みが発生します。これが「痛風発作」と呼ばれるものです。

症状

痛風は、その名前の通り、「風にあたっても痛む」と表現されるほどの激痛を伴う疾患です。痛みの特徴は次のような点にあります。

痛風の痛みの特徴

  • 突然の激痛: 痛風の痛みは予告なく現れ、その強烈さは非常に激しいものです。何かにぶつけたり、捻挫したわけでもないのに、突然痛みが襲います。
  • 痛みの部位: 最も一般的なのは足の親指の付け根(中足趾節関節)ですが、足の甲や足首、かかとにも痛みが生じることがあります。まれに、手の関節に痛みが出ることもあります。
  • 夜間に痛みが強まる: 痛風発作は夜間に起こりやすく、眠れないほどの痛みを伴います。これは横になることで関節内の体液が減り、尿酸の濃度が高まるため、結晶が形成されやすくなるからです。
  • 痛みの経過: 痛みや腫れが始まると、数時間以内に急速に悪化し、24時間以内に痛みのピークに達します。発作は1〜2週間ほど続き、自然に和らいでいきますが、その後再発しやすくなります。放置しておくと、痛風が慢性化し、発作の間隔が短くなることもあります。

痛風発作の兆候

  • 激しい痛み: 最も特徴的な症状で、特に足の親指、膝、足首、手首などの関節に痛みが生じます。
  • 局所の熱感: 痛みのある部分が熱を持ちます。
  • 発赤: 炎症を起こしている部位が赤くなります。
  • 腫れ: 関節が腫れ上がります。

2回目以降の発作では、前兆を感じることがあり、関節のムズムズ感やピリピリとした違和感、ほてり、かゆみが起こることがあります。これを「前兆期」と呼び、夜間に感じることが多く、発作の場所は足が多いものの、手首など他の関節にも発症することがあります。

治療

痛風発作が発生した際は、まず尿酸値を下げる尿酸降下薬を使用せず、発作専用の治療薬を用いて、痛みや腫れを抑えます。発作が治まった後、痛風の根本原因である高尿酸血症の治療を開始します。この際、生活習慣の改善を進めながら、少量から尿酸降下薬を導入し、徐々に尿酸値を低下させます。また、尿酸が尿路で結晶化して結石になるのを防ぐため、尿アルカリ化薬を併用することもあります。生活習慣の見直しは治療の基礎です。薬で尿酸値が下がったとしても、日常生活の改善を怠ってはいけません。

※すでに尿酸降下薬を服用している場合、痛風発作が起きても薬を中止せず、継続して服用してください。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防とセルフケア

痛風予防のための食事

  1. 1日3食を腹八分目で、食べ過ぎを避ける
    バランスの取れた食事を心がけ、過剰なカロリー摂取を避けましょう。
  2. 高カロリー食品や料理は控えめに
    油を多く使った料理や、スイーツ、アルコール類の摂取は控えましょう。
  3. 同じものばかり食べ続けない
    バランスの良い食事を心がけ、偏食は避けることが大切です。
  4. アルコールは適度に
    休肝日を設けたり、量を減らすことで予防に繋がります。

痛風・高尿酸血症と診断された場合の食事

  1. 動物の内臓を控える
    内臓や高タンパク質の食事にはプリン体が多く含まれています。適量を守りましょう。
  2. 高脂肪料理は控える
    油を多く使う食品はカロリーが高く、肥満の原因となります。
  3. 野菜や海藻をたくさん食べる
    尿をアルカリ性にすることで尿酸の排泄を促進します。さまざまな調理法で摂取しましょう。
  4. アルコールを制限する
    特にビールはプリン体が多いため、禁酒が理想ですが、量を減らしたり休肝日を設けましょう。
  5. 水分補給をしっかりと行う
    水やお茶を多く飲むことで尿量を増やし、尿酸の排出を促します。ただし、甘い飲み物は控えましょう。
  6. 塩分は控えめに、薄味を心がける
    塩分の摂りすぎも健康に悪影響を与えるため、できるだけ控えめにしましょう。

食品中のプリン体含有量(100gあたり)

  • 極めて多い(300mg以上)
    鶏レバー、干物(マイワシ)、白子、あんこうの肝、太刀魚、健康食品(ビール酵母、クロレラなど)
  • 多い(200~300mg)
    豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正えび、オキアミ、干物(マアジ、サンマ)
  • 中程度(100~200mg)
    肉類の一部(豚、牛、鶏)、魚類、ほうれん草の芽、ブロッコリースプラウト
  • 少ない(50~100mg)
    肉類の一部(豚、牛、羊)、魚類、加工肉、ほうれん草の葉、カリフラワー
  • 極めて少ない(50mg以下)
    野菜類全般、米、卵、乳製品、豆類、きのこ類、豆腐

これらの食事管理を通じて、痛風の予防や進行を抑制することができます。

Q&A

Q1. 痛風の名前の由来は何ですか?

痛風は、体内に蓄積された尿酸が関節に結晶化し、激しい痛みを引き起こすことから、「痛風」と呼ばれています。風が当たるだけでも痛みを感じるほどの痛みがあるため、この名前が付けられました。

Q2. 食生活と関係がありますか?

痛風は、プリン体を多く含む食品(例:肉類や魚介類)を摂取すると、体内で尿酸が増加し、発症リスクが高まります。アルコールの摂取も尿酸値を上げる原因となります。

Q3. 男女どちらに多いですか?

特に中年男性に多く見られますが、女性も閉経後に発症リスクが高まります。これは、女性ホルモンが尿酸の排出を助けるため、閉経後にその効果が減少するためです。

Q4. 痛風の発症は季節と関係がありますか?

冬や寒冷な環境で発症することが多いです。寒さが体の代謝を変化させ、尿酸の排出が滞ることが原因とされています。

Q5. 痛風の歴史的な背景はありますか?

痛風は古代から知られている病気で、かつては「富裕病」と呼ばれていました。豊富な食事やアルコールを摂取する富裕層が発症しやすいと考えられていたためです。

Q6. 運動とどのような関係がありますか?

運動不足は尿酸の蓄積を促し、痛風のリスクを高めます。逆に、激しい運動も尿酸値を急激に上昇させるため、適度な運動が痛風予防に有効です。

Q7. 遺伝しますか?

痛風そのものは遺伝しませんが、尿酸値が高くなる傾向は遺伝することがあります。家族に痛風の患者がいる場合は、発症リスクが高まる可能性があります。

Q8. 痛風と他の関節炎との違いは何ですか?

尿酸結晶が関節に蓄積して痛みを引き起こしますが、他の関節炎(例:リウマチ性関節炎)は、免疫系の異常が原因で炎症を引き起こします。原因や治療法が異なる点が特徴です。

Q9. どの年齢層で最も発症しやすいですか?

30代から50代の男性に最も多く見られますが、女性は閉経後にリスクが上昇します。若年層でも、食生活や生活習慣によって発症することがあります。

Q10. 再発を防ぐためにはどのようなライフスタイルが必要ですか?

再発を防ぐためには、プリン体を控えた食事、適度な運動、アルコールの制限、そして十分な水分補給が重要です。規則的な健康管理が再発防止に役立ちます。

痛風の実例紹介

 
 

モヤモヤ血管

 

顔・首

 
 
 

肩・腕・肘・手

 

 

腰臀部股関節

 

 
 

 
 

その他