CRPS(複合性局所疼痛症候群) 複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、神経系の病気の一種で、痛み、腫れ、熱感、冷感などの症状を引き起こします。これらの症状は、怪我や手術後、または神経障害などの原因によって発生することがあります。CRPSは、痛みや不快感などの症状が慢性的に続くため、患者さんの生活に大きな影響を与えることがあります。この記事では、CRPSについて詳しく説明し、症状、診断、治療について解説します。 CRPSの症状 CRPSの症状は、個人によって異なる場合がありますが、一般的に以下のような症状が見られます。 痛み – 疼痛が最も一般的な症状です。痛みは、常に存在するか、時々発生するかのいずれかです。痛みは、触れられたり、動かされたり、または温度の変化に反応することがあります。 腫れ – CRPSには、局所的な浮腫が見られることがあります。腫れは、皮膚の赤みや温度の上昇とともに発生することがあります。 熱感・冷感 – CRPSには、局所的な温度の変化が見られることがあります。手足が異常に熱くなったり、逆に冷たくなったりすることがあります。 運動機能の障害 – CRPSの進行に伴い、患部の運動機能が低下することがあります。手足の動きが制限されたり、筋肉が弱くなったりすることがあります。 血行障害 – CRPSには、局所的な血行障害が見られることがあります。患部がひきつれたり、指が硬直することがあります。 CRPSの診断 CRPSの診断は、医師によって行われます。病歴や身体検査、さらには画像検査(レントゲン、MRIなど)を通じて診断が行われます。診断に必要な情報には、以下のようなものがあります。 症状 – 医師が問診を行います。 既往歴 – CRPSの発症には、怪我や手術などの既往歴があることが多いため、そのような情報が重要です。 身体検査 – 患部の状態を評価するため、触診や動きの制限などの身体検査が行われます。 画像検査 – レントゲン、MRIなどの画像検査を行い、骨や筋肉、神経の状態を確認します。 CRPSの治療 CRPSの治療は、患者さんの症状や状態に応じて個別に決定されます。以下は、CRPSの治療に一般的に使用される方法です。 薬物療法 – 疼痛や炎症を軽減するため、鎮痛剤、抗炎症剤、抗うつ薬などが使用されます。 神経ブロック – 痛みを軽減するために、神経に麻酔剤やステロイドを注射する方法です。 物理療法 – 患部の可動域を増やすために、物理療法(ストレッチ、マッサージなど)が行われます。 心理療法 – CRPSには、精神的ストレスやうつ病などの精神的側面が関連していることがあります。心理療法は、ストレスの軽減や自己効力感の向上などを目的として行われます。 手術 – 重度の場合は、神経を切断するなどの手術が行われることがあります。 モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療 近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。 運動器カテーテル治療のメリット 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。 Q&A Q. CRPSの発症は特定の年齢層に制限されますか? CRPSはあらゆる年齢層で発症する可能性があります。子供から高齢者まで、誰にでも発症する可能性がある疾患です。 Q. ストレスがCRPSの発症に関与することはありますか? ストレスがCRPSの発症に関与する可能性がありますが、個人によって異なる場合があります。ストレスが重要な要因となる場合もあれば、他の要因が主な役割を果たす場合もあります。 Q. CRPSは遺伝するのでしょうか? CRPSは遺伝的な要素が関与する可能性がありますが、完全に遺伝性であるわけではありません。研究は現在進行中であり、遺伝的な要因がCRPSの発症にどのように関与しているのかを理解するための取り組みが行われています。 Q. CRPSは他の痛みの状態とどのように区別されますか? CRPSの診断は他の痛みの状態との区別が重要です。診断は主に症状、臨床所見、および他の状態を排除することに基づいています。医師の評価と適切な検査が行われることで、CRPSと他の疾患との違いを明確にすることができます。 Q. CRPSの治療には手術が必要ですか? CRPSの治療には手術が必要な場合もありますが、全ての患者さんにとって適切な治療法ではありません。治療は個々の症状と状態に基づいて決定されるべきです。まずは非侵襲的な治療法が試みられ、手術は最後の手段として検討されることが一般的です。 Q. CRPSの症状は一生続くのでしょうか? CRPSの症状は個人によって異なります。一部の患者さんでは症状が一時的であり、経時的に改善することがありますが、他の患者さんでは症状が長期間続くことがあります。早期の診断と治療は、症状の管理と改善に役立ちます。 Q. CRPSは他の部位にも広がることがありますか? CRPSは初めに発症した部位から他の部位にも広がることがあります。これを広がり(spread)と呼びます。広がりは個人によって異なり、早期の治療と管理が重要です。 Q. CRPSの治療には物理療法が効果的ですか? 物理療法はCRPSの治療の一部として効果的なアプローチです。物理療法には運動療法、温熱療法、電気療法、マッサージなどが含まれます。ただし、個人の症状に応じた適切な治療法を選択することが重要です。 Q. CRPSは自然に治ることがありますか? 一部の患者さんではCRPSが自然に解消することがありますが、全ての患者さんに当てはまるわけではありません。早期の診断と適切な治療が症状の管理と改善に重要な役割を果たします。 Q. CRPSは精神的な側面にも影響を与えるのでしょうか? CRPSは痛みや身体的な制限だけでなく、精神的な側面にも影響を与えることがあります。慢性的な疼痛や日常生活への制約は心理的な負担を引き起こすことがあり、うつ病や不安障害などの精神的な健康問題を引き起こす可能性があります。総合的なアプローチで症状の管理が行われるべきです。 CRPS(複合性局所疼痛症候群)の実例紹介 モヤモヤ血管 顔・首 肩・腕・肘・手 胸 腰臀部股関節 膝 足 その他