筋膜性疼痛症候群

筋膜性疼痛症候群とは、筋肉や骨格系の異常に起因する慢性疼痛を特徴とする症候群のことです。一般的には、特定の部位に痛みが生じ、その周囲の筋肉や軟組織にも痛みが広がることがあります。
この症候群は、慢性的な疼痛を経験する患者さんにとっては非常に辛いものとなっており、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。ここでは、筋膜性疼痛症候群について、その症状、原因、診断方法、治療法について詳しく解説します。

症状

筋膜性疼痛症候群の主な症状は、慢性的な疼痛です。この疼痛は、特定の部位に限定される場合もあれば、複数の部位に広がる場合もあります。疼痛の程度は、患者さんによって異なりますが、慢性的に続くことが多く、長期間にわたって日常生活に支障をきたすことがあります。
筋膜性疼痛症候群の症状は、痛みだけではありません。多くの場合、筋肉の硬直感やこわばり、痙攣、筋肉の疲労感、筋力低下などの症状も伴います。また、疼痛部位の周囲には、腫れや熱感が生じることもあります。

原因

筋膜性疼痛症候群の原因は、筋肉や骨格系の異常によるものが多いとされています。一般的に、以下のような原因が考えられています。
・筋肉の過剰な使用
・長時間の同じ姿勢での作業
・外傷や骨折などによる損傷
・ストレスや精神的な負荷
・代謝異常などの身体的な異常

このような原因により、筋肉や軟組織に炎症が起こり、疼痛を引き起こすとされています。

診断方法

筋膜性疼痛症候群の診断は、患者さんの症状や身体の状態を詳しく調べることで行われます。具体的には、以下のような方法が用いられます。
・身体検査:疼痛部位の触診や動きの制限などを調べることで、筋膜性疼痛症候群の可能性を判断することができます。
・X線検査:骨折や関節の変形、異常などを確認することができます。
・MRI検査:筋肉や軟組織の異常を詳しく調べることができます。

これらの検査を行うことで、疼痛の原因や病態を詳しく調べることができます。

治療法

筋膜性疼痛症候群の治療法は、症状の程度や原因によって異なりますが、以下のような方法が用いられることが多いです。
・薬物療法:痛みや炎症を抑えるための薬物を用いることがあります。一般的には、鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられます。
・理学療法:筋肉の強化やストレッチ、マッサージなどを行うことで、疼痛を緩和することができます。
・電気療法:電気刺激を用いることで、筋肉の緊張や疲労感を緩和することができます。
・手術療法:症状の程度が重い場合には、手術が必要な場合もあります。

これらの治療法を用いることで、疼痛の軽減や日常生活の改善が期待できます。ただし、治療法は患者さんの症状や身体の状態によって異なるため、必ず医師と相談して適切な治療法を選ぶようにしましょう。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

Q&A

Q1. 筋膜性疼痛症候群とは何ですか?

筋膜性疼痛症候群は、筋肉や筋膜(筋肉を覆う薄い膜)にできる痛みの原因となるしこり(トリガーポイント)が引き起こす痛みのことを指します。特定の部位を押すと痛みが広がる特徴があります。

Q2. 主な原因は何ですか?

長時間の姿勢不良や過度な運動、ストレスなどが原因で筋肉が緊張し、筋膜にしこりができることによって発症します。

Q3. 特定の年齢層に多く見られますか?

年齢に関係なく発症することがありますが、特にデスクワークや立ち仕事が多い中高年層に多く見られます。慢性的な姿勢の悪さが影響します。

Q4. どのように診断されますか?

診断は、問診と身体検査で行われ、痛みの部位やトリガーポイントを確認します。MRIやX線などの画像検査では見つかりにくいので、臨床的な診断が主です。

Q5. 筋膜性疼痛症候群と他の痛みの疾患との違いは何ですか?

筋膜性疼痛症候群は、トリガーポイントが原因となる局所的な筋肉の痛みが特徴です。他の痛みの疾患とは異なり、筋肉のしこりや圧痛点が直接的な痛みの原因になります。

Q6. 治療にはどのような方法がありますか?

治療には、物理療法(ストレッチ、マッサージ)、トリガーポイント注射、姿勢改善が有効です。慢性化しやすいため、早期治療が大切です。

Q7. 筋膜性疼痛症候群は運動やスポーツに影響しますか?

筋膜性疼痛症候群が発症すると、運動やスポーツ中に筋肉が痛み、パフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。適切な治療で早期に改善を図ることが重要です。

Q8. どのように予防できますか?

予防には、日常的なストレッチや正しい姿勢を保つこと、過度なストレスを避けることが効果的です。定期的な筋肉ケアがトリガーポイントの形成を防ぎます。

Q9. 再発することがありますか?

筋膜性疼痛症候群は再発しやすい疾患です。特に姿勢や生活習慣が改善されない場合、トリガーポイントが再び形成され、痛みが再発することがあります。

Q10. 筋膜性疼痛症候群は心理的なストレスと関係がありますか?

心理的なストレスは筋肉の緊張を引き起こし、筋膜性疼痛症候群のリスクを高める要因となります。ストレス管理も予防や治療に役立ちます。

筋膜性疼痛症候群の実例紹介

 

モヤモヤ血管

 

顔・首

 
 
 

肩・腕・肘・手

 

 

腰臀部股関節

 

 
 

 
 

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