強剛母趾

「強剛母趾」は、発作的に母趾の付け根に痛みが生じるため、症状のみを伝えると痛風と診断されることが少なくありません。強剛母趾は、足の骨格の異常やゆがみ(遺伝や他の疾患も含む)によって発症しますが、外反母趾とは異なります。外反母趾は母趾が外側に変形するため、関節内のダメージは起こりにくいのに対し、強剛母趾は見た目の変形は少ないものの、関節内部のダメージが大きいことが特徴です。重症化すると、炎症を繰り返した結果、関節が破壊され、母趾が全く曲がらなくなることがあります。

原因

強剛母趾の主な原因は、足の親指関節に起こる変形性関節症や足の構造的な異常による機能障害です。この関節炎は、足や親指の骨格に問題がある人に多く見られます。例えば、アーチの低下や足首の過度な回内(足首が内側に倒れる動き)などが関与します。また、関節リウマチや痛風といった炎症性疾患が引き金となる場合もあります。こうした要因により、関節が摩耗しやすくなり、強剛母趾が発症しやすくなります。

症状

症状は足の親指の付け根にあたる母趾中足趾節関節(MTP関節)周辺の痛みや腫れです。親指を上に反らす(伸展)際に強い痛みを感じ、歩行時の蹴り出しや踏み返し動作で痛みが生じるため、歩行が困難になります。これにより、他の足の部分にも負担がかかり、二次的に痛みが広がることもあります。
関節の変形が進行すると可動域が狭くなり、動きが制限され痛みが増加します。また、関節に骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のトゲのようなものが形成され、それが靴に当たり痛みを引き起こす場合もあります。さらに重症化すると、軟骨がすり減り、関節の隙間がなくなり、強い痛みや親指が全く曲がらなくなることもあります。

治療

保存療法

  • 局所の安静が最優先です。 痛みを増幅させる行動は避け、親指が圧迫されない余裕のある靴を選びましょう。また、親指が反りにくいように靴底が硬いタイプの靴を使用することを推奨します。
  • 痛みが改善しない場合には、保存療法を検討します。 足の型を取って、足底挿板(インソール)や靴型装具(ロッカーボトムと呼ばれるつま先が上がった靴底)を使用し、親指への負荷を軽減します。痛みが強い場合、注射による痛みの緩和も考えられますが、効果は一時的なことが多いです。

手術療法

保存療法で効果が見られない場合や、変形が進行している場合には手術が選択肢となります。

  • 軽度から中等度の変形 には、関節縁切除術(カイレクトミー)が適用されます。この手術では、骨棘や損傷した軟骨の背側部を切除し、動きを改善して痛みを軽減します。
  • 重度の変形 では、関節を固定する手術が一般的です。ただし、年齢や活動レベルに応じて、関節の可動性を保つ手術が選ばれることもあります。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

Q&A

Q1. 強剛母趾とは何ですか?

強剛母趾は、足の親指の関節が硬くなり、動かしにくくなる状態です。関節の軟骨がすり減ることで、痛みや可動域の制限が生じます。

Q2. 主な原因は何ですか?

長期間にわたる関節への負担が原因で発生します。例えば、スポーツや立ち仕事などで足の親指を頻繁に使うことで、関節が徐々に損傷します。

Q3. 特定の年齢層に多いですか?

40代以上の中高年に多く見られますが、若年層でも足に大きな負担をかける生活を送っていると発症することがあります。

Q4. 遺伝的な要因が関係しますか?

遺伝的な要因は強剛母趾に影響を与える可能性がありますが、主な原因は生活習慣や関節への負荷です。遺伝によって足の形状が影響を受ける場合もあります。

Q5. 強剛母趾に適した靴の選び方は何ですか?

強剛母趾の方には、硬い靴底や狭い靴は避け、クッション性が高く、つま先に余裕のある靴を選ぶことが推奨されます。足への負担を軽減するために、インソールを使用することも効果的です。

Q6. 進行するとどのような症状が出ますか?

親指の関節が完全に硬直し、動かすことができなくなる場合があります。また、痛みが増し、歩行や日常動作が困難になることもあります。

Q7. 治療には手術が必要ですか?

軽度の強剛母趾は、物理療法や専用インソールなどの保存療法で改善することがありますが、症状が重度の場合、手術が必要になることがあります。

Q8. 強剛母趾はスポーツや運動に影響しますか?

強剛母趾は、親指の関節の可動域を制限するため、ランニングやジャンプなどの動作が困難になります。適切な治療やサポートがなければ、スポーツ活動に支障をきたすことがあります。

Q9. 予防するためにはどのような対策が有効ですか?

足に過度な負担をかけない生活習慣が重要です。適切な靴選び、足のストレッチ、体重管理が予防に効果的です。

Q10. 自然に治ることがありますか?

自然に治ることはありませんが、早期の治療や対策を講じることで進行を遅らせ、症状を軽減することが可能です。痛みを感じたら早めに医師に相談することが重要です。

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