四十肩 「四十肩」は、40~50代を中心に多く見られる肩関節の痛みや運動制限が特徴で、腕が上がらない、手が後ろに回せないといった症状を伴います。年齢が上がると「五十肩」とも呼ばれますが、最近では40代で発症するケースが増えたため、「四十肩」という呼称が主流となっています。四十肩は、一般人口の約2~5%が罹患するとされ、女性(特に非利き手側)にやや多く見られます。両肩同時に発症することはほとんどありませんが、片側が発症した後に反対側も発症するケースが6~34%の割合で報告されています。また、糖尿病患者の10~30%が四十肩を発症するというデータもあります。 原因 四十肩は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節周辺の組織に炎症が起こっている状態を指します。この炎症により、肩周りの筋肉や腱に強い痛みや可動域の制限が生じます。 四十肩の原因は、医学的にまだ明確に解明されていませんが、肩関節周辺に炎症を引き起こす要因として、いくつかの仮説が考えられています。 ● 関節や腱の変性 長年の使用により、関節や腱が徐々にすり減り、変性が進むことがあります。この変性によって、動かすたびに組織が擦れ合い、炎症を引き起こし、四十肩の症状へとつながることがあります。 ● 運動不足や加齢 運動不足や加齢により、関節周辺の筋肉や腱の柔軟性が低下することがあります。硬くなった筋肉に日常的な負担が蓄積し、ある日突然、炎症を起こす可能性が考えられます。 ● 不良姿勢 猫背や巻き肩などの不良姿勢によって、肩周りの筋肉に余分な負荷がかかり、筋肉の緊張や血行不良が発生しやすくなります。血流が悪くなると、組織の修復に必要な栄養が行き渡らず、結果的に炎症を引き起こしやすくなります。 症状 主な症状は以下の通りです。 腕を上げると痛みが出て、硬くて動かしにくい 腕を背中に回すと痛みが出て、動かしづらい 肩を開こうとすると痛みがあり、可動域が制限される 特に肩の前側に痛みを感じることが多い 四十肩は炎症や癒着が肩を全周囲で取り囲む関節包に起こる病気です。そのため、典型的な四十肩の症状は「全方向性の痛みと動かしづらさ」が特徴で、腕を上げる、背中に回す、肩を開くなど、どの方向への動きでも痛みや硬さが感じられます。 特に初期段階では、肩の前側にある「腱板疎部」に強い痛みが出やすいのが特徴です。四十肩は通常、炎症期、凍結期、回復期という3段階を経て進行します。最初は強い炎症による痛みが現れ、次第に痛みが軽減して関節が硬くなり(拘縮)、その後、徐々に拘縮が解消されていきます。 ただし、四十肩の症状は個人差が大きく、すべての患者がこの典型的な進行パターンに当てはまるわけではありません。最初から強い痛みを感じない人もいれば、痛みが長期間続く人や、強い拘縮により日常生活が不便になる人もいます。また、痛みがあっても可動域が保たれているケースもあります。さらに、数ヶ月で回復すると思われがちな四十肩ですが、実際には1年、2年、場合によってはそれ以上の期間、苦しむ方もいます。症状が多様であるため、四十肩の場合は一度医師の診察を受け、症状に合った治療を相談することをおすすめします。 治療法 加齢によって引き起こされる疾患であり、老化による腱板や周囲の組織の損傷を元通りに回復させることは難しいです。そのため治療では、腱板や周辺組織の炎症が自然に収まるのを待ちつつ、現在の症状を緩和させることが主な目的となります。治療の基本は薬物療法とリハビリテーションです。薬物療法では、痛みを抑える湿布や内服の鎮痛薬、関節や滑液包(かつえきほう)にヒアルロン酸を注射するヒアルロン注射が行われます。ヒアルロン酸は関節の痛みを和らげ、関節の動きをスムーズにする作用があり、患部に直接注射することで症状の改善が期待できます。特に痛みが強い急性期には、さまざまな薬剤を使用して痛みを和らげていきます。一度の来院で内服薬のみで症状が改善する方もいれば、複数回の通院が必要な方もいます。治療内容や来院回数は、患者様の症状や反応によって異なります。 また、一部の患者様はご自身の判断で市販薬を服用していることもあります。医師が処方する薬も、市販薬も、同じ症状でも患者様によって効果が異なる場合があります。つらい症状が緩和されるのであれば、市販薬を使用し続けても問題はありません。ただし、持病や他の薬を服用している場合は、薬の相互作用に注意が必要です。必ず医師や薬剤師に相談することをおすすめします。 モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療 近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。 治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態 治療費用:税込324,500円 主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。 運動器カテーテル治療のメリット 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。 Q&A Q1. 肩を動かすと痛みや違和感があるのはなぜですか? 肩を動かしたときに痛みや違和感を感じるのは、肩周辺の筋肉や関節に炎症や硬直がある可能性があります。早期の治療が症状の改善につながります。 Q2. 肩が上がりにくくなる原因にはどんなものがありますか? 肩が上がりにくい状態は、肩関節の可動域が制限されていることが原因で、筋肉や腱の炎症や硬化が影響していることがあります。 Q3. 夜間に肩の痛みが強くなることがあるのはなぜですか? 夜間に肩の痛みが増すのは、肩の炎症や筋肉の緊張が原因で、特に安静時に痛みが強くなることが一般的です。 Q4. 肩を動かすときに引っかかるような感覚を感じるのはどうしてですか? 肩を動かす際に引っかかる感じがする場合、肩関節の炎症や硬直が関与している可能性があります。早期のリハビリや治療が効果的です。 Q5. 肩の痛みが長期間続く場合、どのような治療が必要ですか? 肩の痛みが長く続く場合、理学療法やリハビリ、場合によっては注射や手術が考えられます。専門医に相談することで最適な治療を受けられます。 Q6. 肩の可動域が制限されると日常生活にどんな影響がありますか? 肩が自由に動かせないと、日常生活で物を持ち上げたり、髪をとかすなどの動作に支障が出ることが多くなります。早めの対策が重要です。 Q7. 肩の痛みを和らげるために日常的にできるストレッチはありますか? 肩の痛みを和らげるためには、軽いストレッチや肩周辺の筋肉をほぐすエクササイズが効果的です。無理のない範囲で行うことが大切です。 Q8. 肩が動かしにくい場合、どのようなリハビリが有効ですか? 肩が動かしにくい場合、肩関節をゆっくりと動かすリハビリが有効です。専門の理学療法士による指導を受けることで、安全かつ効果的な運動が可能です。 Q9. 年齢とともに肩の柔軟性が低下することがありますか? 年齢を重ねると、肩関節や筋肉が硬くなりやすく、柔軟性が低下することがあります。定期的な運動やストレッチが予防に効果的です。 Q10. 肩の痛みや硬直を予防するためのセルフケアはありますか? 肩の痛みや硬直を予防するには、普段から肩周りの筋肉を動かすストレッチや適度な運動を取り入れることが大切です。また、姿勢にも気をつけましょう。 四十肩の実例紹介 モヤモヤ血管 顔・首 肩・腕・肘・手 胸 腰臀部股関節 膝 足 その他