TFCC損傷

TFCC(三角線維軟骨複合体)は、手首の小指側に位置し、橈骨と尺骨という2つの骨を結んでいる靭帯、腱、軟骨などの軟部組織が複雑に絡み合った構造を指します。この部位は、専門的には「三角線維軟骨複合体」と呼ばれ、その英語表記である “Triangular FibroCartilage Complex” の頭文字を取ってTFCCと呼ばれています。正常な状態のTFCCは、手首の小指側に安定性や支持を提供しています。また、手首を回す動作(ドアノブを回す、あるいは手首を回すような動作)において、力を伝達し、分散・吸収する役割を担っています。

原因

TFCCの損傷の主な原因は外傷です。手首に強い衝撃が加わったり、手首に繰り返し負荷がかかることで、TFCCが傷つくことがあります。具体的には、転倒によるケガや作業中の外傷による靭帯損傷が挙げられます。スポーツでは、野球、テニス、ゴルフなどの動作が原因となることが多いです。また、加齢に伴い、手首の関節が徐々に劣化してTFCCを損傷するケースも見られます。

症状

具体的には、タオルを絞る、車の鍵を回す、ドアノブを回すといった手首を捻る動作を行った際、手首の特に小指側(尺骨側)に痛みが顕著に現れます。一般的に、物を持つ際に手首に強い痛みを感じ、力が入らなくなることもありますが、掌を上向きにすると症状が少し軽減することが知られています。症状が進行すると、安静時でも患部に痛みを感じることがあり、動作を開始する際に手が抜けそうな感覚や、手首の腫れ、可動域の制限といった症状が現れることもあります。

治療

保存療法

初期段階であれば、ほとんどの場合、保存療法での治療が可能です。サポーターなどで患部を安静に保ち、必要に応じてステロイドや消炎鎮痛剤の注射を行います。

リハビリテーション

痛みが軽減した後は、積極的にリハビリテーションを行います。患部以外の筋力や柔軟性を強化することで、再発予防につなげます。

動注治療(動脈注射治療)

炎症によって異常な新生血管が形成されている場合には、動注治療を行います。動脈に細い針を刺し、新生血管を塞ぐことで炎症と痛みを軽減します。

手術療法

保存療法で十分な効果が得られない場合は、手術を検討します。内視鏡を使用したTFCC縫合術や、尺骨短縮術が行われることがあります。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円〜357,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防

FCC損傷を予防・改善するためには、手首のケアが非常に大切です。以下に、予防と改善に役立つ方法を紹介します。

適切な体の動かし方

スポーツや重い物を持ち上げる際には、手首に負担がかからない正しいフォームを心がけましょう。これにより、手首への不必要なストレスを防ぎ、症状の悪化を防ぐことができます。

手首のストレッチと強化

定期的に手首のストレッチや強化エクササイズを行うことで、手首の筋肉や靭帯を強化し、怪我のリスクを低減します。

適度な休息

長時間同じ姿勢で手首を酷使する場合は、適度に休息を取り、手首をリラックスさせましょう。休息を挟むことで手首の負担を軽減できます。

適切なサポート器具の使用

手首に負担をかける作業を行う際は、サポーターや適切な器具を使用することで、手首への負荷を減らし、怪我のリスクを下げられます。

日常生活の調整

日常の手首の使い方に注意し、必要に応じて作業環境や活動の方法を見直すことが、予防や改善につながります。

Q&A

Q1. 手首の小指側に痛みを感じる原因は何ですか?

手首の小指側に痛みがある場合、手首の関節や腱に損傷や炎症が起きている可能性があります。特に手首を酷使する動作が影響を与えていることがあります。

Q2. 手首を回したときに痛みや違和感を感じるのはなぜですか?

手首を回した際に痛みや違和感を感じる場合、手首の内部にある軟骨や腱が影響を受けていることがあります。これには、過度の使用や怪我が原因になることがあります。

Q3. 手首に力を入れると痛みが出る場合、どんな治療が必要ですか?

手首に力を入れたときに痛む場合、まずは安静にして痛みが引かない場合はリハビリや物理療法が効果的です。必要に応じて専門医に相談することが重要です。

Q4. スポーツや日常生活で手首に負担がかかるのを防ぐ方法はありますか?

手首に負担をかけないためには、手首のストレッチや適切な使い方を心がけることが大切です。特に重いものを持つ際は、手首のサポートを強化することが重要です。

Q5. 手首をひねったときに痛みがある場合、どのように対処すれば良いですか?

手首をひねった際に痛みを感じたら、まずは安静にし、冷却を行います。痛みが続く場合は、専門医による診察を受けましょう。

Q6. 手首の違和感や痛みが長引く場合、どのような治療法がありますか?

手首の痛みや違和感が長期間続く場合、リハビリや理学療法が有効です。専門医による診断を受け、適切な治療計画を立てることが重要です。

Q7. 手首のサポートを強化するために日常的にできる運動やストレッチはありますか?

手首のサポートを強化するためには、軽いストレッチや筋力トレーニングが効果的です。特にスポーツをする前後に、手首を柔軟に保つ運動が推奨されます。

Q8. 手首に痛みを感じたときに避けるべき動作はありますか?

手首に痛みを感じた場合、無理に重いものを持ち上げたり、手首を回す動作は避けましょう。痛みが悪化する可能性があるため、無理な動きは控えるべきです。

Q9. 手首の痛みや腫れが続く場合、どのタイミングで医師に相談すべきですか?

手首の痛みや腫れが数日続く場合、できるだけ早く専門医に相談することが重要です。早期の診断と治療が、症状の進行を防ぐために役立ちます。

Q10. 手首の動きが制限されている場合、どのようなリハビリが効果的ですか?

手首の動きが制限されている場合、適切なリハビリやストレッチが効果的です。専門家の指導のもとで行うことで、手首の可動域を回復させることが期待できます。

TFCC損傷の実例紹介

 
 

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