関節リウマチ 関節リウマチは、免疫の異常により、主に手足の関節が腫れたり痛んだりする病気です。進行すると、骨や軟骨が破壊され、関節の動きが制限されるため、日常生活にも大きな支障が出ることがあります。また、炎症は関節にとどまらず、目や肺など全身に広がることもあります。初期症状としては、微熱、体のだるさ、食欲不振などが続き、特に朝方に関節がこわばることがあります。やがて、小さな関節が腫れ始め、手首や肘、肩、足首、膝、股関節など全身の関節に症状が広がっていきます。なお、「リウマチ熱」という病気は、溶連菌感染によって引き起こされるもので、関節リウマチとは異なる病気です。 症状 1. 全身に起こる症状 リウマチには、症状が活発に現れる「活動期」と、そうでない時期があります。活動期には、体のあちこちに症状が出やすく、微熱、体重減少、貧血、リンパ節の腫れが見られることがあります。さらに、目や口が乾燥する、息切れ、だるさ、疲労感なども感じることがあります。 2. 関節に起こる症状 (1) 朝のこわばり リウマチの特徴的な症状の一つで、特に朝方に関節や周辺が強くこわばります。症状が進行すると、こわばりが長時間続くこともあります。 (2) 関節炎 関節が熱を帯びて腫れますが、赤くなることはまれで、動かすと痛みが増します。手首や指の関節、足の指の関節など小さな関節に多く見られますが、足首、肩、肘、膝、股関節などにも起こり、左右対称に現れることが特徴です。 (3) 関節水腫 関節に炎症が起こると、関節内に液体が溜まり、膝関節などでは腫れや袋状の膨らみが生じることがあります。 (4) 腱鞘炎 腱や腱鞘に炎症が起こることで、腫れて指や手首の動きが悪くなります。「ばね指」と呼ばれる状態も、腱が腱鞘内で引っかかることが原因です。 (5) 滑液包炎 関節周囲にある滑液包に炎症が起こり、滑液が過剰に溜まって腫れや痛みが発生します。肘や膝、足関節によく見られます。 (6) 関節変形 リウマチが進行すると、関節が破壊され、筋肉が萎縮し、関節が変形します。外反母趾や指の変形などが代表的で、これらはリウマチ特有の変形と呼ばれます。 3. 関節以外に起こる症状 (1) リウマトイド結節 ひじやひざに米粒大から大豆ほどの結節ができることがあり、痛みはほとんど感じません。 (2) 肺障害 リウマチでは肺にも影響が出ることがあり、間質性肺炎や肺線維症が発生し、息切れや空咳などの症状が見られます。また、胸膜炎によって肺に水がたまることもあります。 (3) 悪性関節リウマチ まれに、リウマチによって血管に炎症が起こり、心筋梗塞や腸間膜動脈血栓症、神経炎など、重篤な症状を引き起こすことがあります。 (4) 二次性アミロイドーシス リウマチの炎症が長期間続くと、アミロイドというタンパク質が体内に蓄積し、下痢、心不全、腎不全などの原因になります。 原因 関節リウマチの原因は完全には解明されていませんが、患者の免疫系(体を細菌などから守るシステム)に異常があることは広く知られています。この異常は、遺伝的な要因、微生物(ウイルスや細菌)の感染、またはその両方が関与していると考えられています。また、喫煙や歯周病も関節リウマチの発症リスクを高めることがわかっています。 免疫系の異常により、関節周辺の毛細血管が増え、白血球の一種であるリンパ球やマクロファージが関節の滑膜(関節内を覆う組織)に集まります。これらの細胞が生成するサイトカイン(TNFαやIL-6など)という物質が炎症を引き起こし、滑膜細胞の増殖を促進します。この結果、関節に痛みや腫れが生じ、関節液が増加し、軟骨や骨が徐々に破壊されていきます。 診断 関節リウマチの診断は、1987年に定められたアメリカリウマチ学会の診断基準に基づいて行われます。この基準は、臨床症状5項目、血清リウマトイド因子、X線(レントゲン)写真上の変化を含む計7項目から成り、4項目以上が該当する場合に関節リウマチと診断されます。ただし、これらの臨床症状は6週間以上継続していることが条件です。「血清リウマトイド因子が陽性」という結果は、診断基準の一つに過ぎず、この検査結果だけで関節リウマチの確定診断を下すことはできません。 治療 関節リウマチの治療は、症状や進行具合に応じて、薬物療法、リハビリテーション、手術療法などが選択されます。 1. 薬物療法 薬物療法の目的は、関節の腫れや痛みを軽減し、関節の破壊を防ぐことです。抗リウマチ薬や消炎鎮痛剤などが使用され、症状の進行を抑制します。 2. リハビリテーション リハビリテーションには、関節の可動域を広げ、血流を改善して痛みや筋肉のこわばりを解消する運動療法や、患部を温めて症状を和らげる温熱療法などがあります。これにより、関節機能の改善と症状緩和を図ります。 3. 手術療法 手術療法としては、増殖した滑膜を取り除く滑膜切除術や、破壊された関節を人工関節に置き換える機能再建術などがあります。これらの手術は、関節機能の回復や痛みの軽減を目指して行われます。 モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療 近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。 運動器カテーテル治療のメリット 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。 予防 リウマチの発症や症状の悪化には遺伝的な要因が影響しますが、以下の生活習慣も発症や悪化のきっかけになることが考えられています。 1. 十分な睡眠をとる 質の高い睡眠を確保することは重要です。目安としては8時間以上の睡眠を心がけましょう。 2. ストレスを減らす ストレスはリウマチの発症や悪化に影響を与えます。特に、人間関係、仕事、家族の問題などが引き金になることがあります。過度なプレッシャーや頑張りすぎにも注意が必要です。 3. 栄養バランスの良い食事を心がける 新鮮な野菜や根菜類、豆類、魚介類、フルーツ、ヨーグルトなどを積極的に摂取しましょう。一方、加工食品や添加物が多い食品、揚げ物の作り置き、カロリーゼロを謳うダイエット食品などは控えましょう。 4. 楽しみながら生活を送る 笑うことやリラックスすることは、心身の健康に良い影響を与えます。カラオケ、ダンス、運動、趣味など、気分転換を大切にしましょう。 5. 口腔内を清潔に保つ 口腔内の衛生状態と腸内細菌はリウマチの発症に影響する可能性が示唆されています。毎食後や就寝前のデンタルフロスの使用を推奨します。また、ピロリ菌の検査を受け、陽性の場合は除菌しましょう。 6. 禁煙を心がける 喫煙はリウマチの発症リスクを高めるため、自分だけでなく家族が喫煙している場合も禁煙を促しましょう。 Q&A Q1. 朝起きたときに関節がこわばるのはなぜですか? 朝に関節がこわばるのは、関節内の炎症が原因で、特に夜間の動きが少ない間に症状が進行することがあります。この症状は早期のリウマチの兆候かもしれません。 Q2. 指や手首の痛みが続く場合、どんな治療が必要ですか? 指や手首に痛みが続く場合、リウマチが疑われます。専門医による診断を受け、薬物療法や理学療法が必要になることがあります。 Q3. 関節の腫れが見られた場合、どう対処すれば良いですか? 関節が腫れたり痛んだりする場合、冷却や安静を保ち、専門医に相談することが重要です。早期の治療が症状の進行を防ぐ助けになります。 Q4. 関節リウマチはどのようにして診断されるのですか? 関節リウマチは、血液検査やX線、超音波などを用いた画像診断によって確認されます。早期発見が予後の改善に繋がります。 Q5. リウマチの症状が悪化する要因には何がありますか? リウマチの症状が悪化する要因には、ストレスや過労、気候の変化などが影響します。生活習慣を見直し、症状をコントロールすることが大切です。 Q6. 関節リウマチの治療にはどのような選択肢がありますか? 関節リウマチの治療には、薬物療法、リハビリ、場合によっては手術が選択されます。症状の進行や患者の状態に応じて適切な治療法を選ぶことが重要です。 Q7. リウマチの痛みを和らげるためのセルフケア方法はありますか? リウマチの痛みを和らげるためには、適度な運動や関節の保温、ストレス管理が有効です。無理をせずに専門家の指導を受けることが大切です。 Q8. リウマチの初期症状はどのようなものですか? リウマチの初期症状には、関節のこわばりや痛み、軽い疲労感があります。特に朝に症状が強く出ることが多いので、早めに医師に相談しましょう。 Q9. 関節リウマチの進行を遅らせるためには何が必要ですか? 関節リウマチの進行を遅らせるためには、早期診断と適切な治療が欠かせません。また、生活習慣の改善やストレス管理も症状のコントロールに役立ちます。 Q10. リウマチ治療における食事の役割はどのようなものですか? リウマチ治療には、炎症を抑える効果がある食事が役立ちます。 関節リウマチの治療実例 モヤモヤ血管 顔・首 肩・腕・肘・手 胸 腰臀部股関節 膝 足 その他