野球肘 野球肘とは、野球の投球動作などを繰り返すことで発症するスポーツ障害です。肘の痛みが発生する部位によって、内側型野球肘(肘の内側)、外側型野球肘(肘の外側)、後方型野球肘(肘の後ろ)の3種類に分類されます。野球以外にも、ソフトボールやテニス、やり投げなど、投げる動作やラケットを振る動作を繰り返すスポーツが原因となることがあります。特に少年野球など子どもの選手に多く発症しますが、10代後半や成人になってからも見られるケースがあります。 原因 ボールを投げる際、肘には大きな力が加わります。速球を投げたり、肘が下がったり手投げと呼ばれる悪いフォームで投げたりすると、1回の投球で肘にかかる負担が大きくなります。また、投球数が増えると、その負担(疲労)も蓄積します。つまり、「肘の負担」=(1回の投球による負荷)×(投球数)という関係になります。 1回の投球による負荷が過度に大きいと、骨や靭帯にダメージを与え「怪我」につながります。また、投球数が増えることで肘への総合的な負担が大きくなり、「故障」を引き起こす可能性も高まります。逆に、負担の少ないフォームで投球することで、同じ球数を投げても肘への負担を軽減することができます。 症状 野球肘の主な症状は、ボールを投げる際や投げた後に肘に痛みを感じることです。痛みは、1球で急に発症して投げられなくなる場合や、徐々に痛みが出て慢性化する場合があります。多くのケースでは、日常生活で痛みを感じることは少ないですが、症状が進行すると、肘の曲げ伸ばしでも痛みを感じるようになり、場合によっては肘が突然動かせなくなることもあります。 また、頻度は少ないものの、手の小指側(尺側)にしびれや力が入りにくいといった症状が現れることもあります。これにより、全力でボールを投げられなくなったり、遠くにボールを投げるのが難しくなることがあります。 治療 野球肘の治療では、どのタイプであっても「痛みが強い場合は投球を休止する」ことが基本です。休止と併せて、肘周囲の筋肉をストレッチし、肘への負担を軽減させます。痛みが強い場合には、ステロイド注射を行うこともありますが、腱の付着部に複数回注射を行うと断裂のリスクがあるため、注射は限られた回数にとどめます。痛みが軽減してきたら、投球動作のチェックやリハビリテーションを開始します。 多くの場合、安静やストレッチによる治療で野球肘は改善しますが、改善せず難治性となるケースもあります。特に、「内側側副靭帯損傷(MCL損傷)」や「離断性骨軟骨炎」の重度の場合は、手術が必要になることがあります。 モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療 近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。 治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態 治療費用:税込324,500円 主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。 運動器カテーテル治療のメリット 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。 予防 肘の関節や靭帯を守るためには、運動前の準備が非常に大切です。野球肘を予防するためには、プレー前に関節をしっかり伸ばすストレッチを行いましょう。スポーツの前後にストレッチを行うことは重要ですが、肘周りだけに集中するのではなく、全身の柔軟性を高めることも必要です。以下に、野球肘の予防に役立つストレッチをご紹介します。 野球肘を予防するストレッチの種類 ストレッチや準備運動は、運動前に一般的に行われますが、野球肘の予防においても非常に効果的です。肘周り、肩回り、下半身と全身をしっかりとほぐし、柔軟性を高めることで、ケガや故障を防ぐことが可能になります。野球肘は肘の酷使が原因ですから、まずは肘の負担を軽減するために、肘周りの関節をしっかりほぐしましょう。痛みがある場合は、無理をせず専門家に相談することをお勧めします。 手首・肘の内側を伸ばすストレッチ 片手を前にまっすぐ伸ばし、手の甲を天井に向け、手首と腕が90度になるようにします。反対の手で指先を体の方に引き寄せ、しっかりと伸ばします。その後、手のひらを反時計回りに180度回転させ、手の甲を地面に向け、平らな面に置きながら体重をゆっくりかけていきます。 肩・肩甲骨をほぐすストレッチ 投球では肩にも大きな負担がかかるため、肩甲骨周りの可動域を広げることが、理想的な投球フォームの形成に繋がります。 肩回りのストレッチ 肘を直角に曲げ、手の平から肘までをぴったりと体の前で合わせます。肩甲骨を開き、ゆっくりと胸を張るように腕を後ろに引いて、肩甲骨同士を内側に寄せるイメージで行いましょう。 体幹と下半身のストレッチ 投球時に肘への負担を軽減するためには、足を大きく踏み込んで体の回転をボールに伝えることが重要です。そのため、体幹のストレッチも忘れずに行いましょう。 体幹と股関節のストレッチ 足を開いて座り、片方の足を体側に引き寄せます。腕を頭上にまっすぐ伸ばし、曲げた足側の手を反対の手で引っ張りながら、体を伸ばしている足の方に倒します。反対側も同様に行います。 効果的なストレッチのコツ ストレッチを行う際には、適切なテクニックが重要です。正しい方法でストレッチを行うことで、野球肘の予防効果がさらに高まります。次に紹介するポイントを守って、より効果的なストレッチを実践しましょう。 Q&A Q1. 肘に痛みを感じるのはどんな原因が考えられますか? 肘に痛みを感じる場合、投げる動作や繰り返しの運動によって肘の筋肉や腱に負担がかかっている可能性があります。早めに休養を取ることが大切です。 Q2. 肘を曲げたり伸ばしたりすると痛みが出るのはなぜですか? 肘を曲げたり伸ばしたりすると痛む場合、関節や腱に炎症が生じていることが考えられます。特に投球や過度の運動が原因となることが多いです。 Q3. 投球動作で肘に痛みがあるとき、どのような治療が必要ですか? 投球動作で肘に痛みを感じる場合、リハビリやアイシング、適切な休養が有効です。必要に応じて、専門医の診断を受けることが重要です。 Q4. スポーツで肘を痛めた場合、どのように対処すれば良いですか? 肘を痛めた場合、まずは安静にし、痛みを抑えるために冷却を行います。痛みが引かない場合は、専門医の診察を受けるべきです。 Q5. 長期間にわたって肘に違和感がある場合、どんな治療法が効果的ですか? 肘の違和感が長期間続く場合、リハビリや物理療法が有効です。痛みが慢性化する前に、早めの診断と治療を受けることが大切です。 Q6. 肘の痛みを予防するためにはどんなストレッチが効果的ですか? 肘の痛みを予防するためには、投球前後に適切なストレッチを行うことが重要です。肩や腕全体をほぐす運動を取り入れると良いでしょう。 Q7. 投球時に肘に負担をかけないフォームやテクニックはありますか? 投球時に肘への負担を軽減するためには、正しいフォームを身につけることが重要です。専門家の指導を受けることで、負担の少ない投げ方を学べます。 Q8. 肘の痛みが激しい場合、どのタイミングで医師に相談すべきですか? 肘の痛みが強くなり、日常生活やスポーツに支障をきたす場合は、できるだけ早く専門医に相談することが重要です。早期の診断が回復を促進します。 Q9. 肘の痛みが引かない場合、どの科を受診すれば良いですか? 肘の痛みが続く場合、整形外科やスポーツ医療専門の医師を受診するのが適切です。適切な診断と治療が症状の悪化を防ぎます。 Q10. 肘の痛みが再発しないように日常生活でできるケア方法は? 肘の痛みを再発させないためには、適度なストレッチや筋力トレーニングを行い、無理な動作を避けることが重要です。定期的に肘をケアする習慣をつけましょう。 野球肘の実例紹介 モヤモヤ血管 顔・首 肩・腕・肘・手 胸 腰臀部股関節 膝 足 その他