開胸術後疼痛症候群

開胸術後疼痛症候群(post-thoracotomy pain syndrome, PTSP)は、胸郭を切開して手術を受けた患者さんに生じる疼痛の症状です。手術後数週間から数か月にわたって持続的な疼痛を引き起こすことがあります。本稿では、開胸術後疼痛症候群について詳しく解説します。

症状

・胸部や肩甲骨周辺の疼痛
・鋭い痛みや刺すような痛み
・熱感やしびれ感
・運動制限
・睡眠障害
・不快感や不安感

これらの症状は、手術後すぐに現れる場合もあれば、手術後数か月経ってから出現する場合もあります。また、症状の程度は個人差があります。

原因

・手術による神経損傷
・炎症や感染
・手術中の姿勢や麻酔法

手術による神経損傷が原因となる場合、神経が切断されたり、圧迫されたり、または牽引されたりすることで疼痛が引き起こされます。炎症や感染が原因となる場合、炎症反応が疼痛を引き起こすことがあります。手術中の姿勢や麻酔法が原因となる場合、手術中に胸郭を支えるために使用される器具が神経に圧迫をかけ、疼痛を引き起こすことがあります。

治療

・鎮痛剤の投与
・神経ブロック
・物理療法
・心理的アプローチ

鎮痛剤の投与は、最初の治療法として一般的に使用されます。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やオピオイド鎮痛剤が使用されますが、オピオイド鎮痛剤は依存症や乱用のリスクがあるため、適切な管理が必要です。
神経ブロックは、疼痛の原因となる神経をブロックすることで痛みを軽減する方法です。局所麻酔薬を使用して神経を麻痺させることができます。この方法は、神経障害性疼痛に対して有効であることが報告されています。
物理療法は、筋肉の強化やストレッチング、マッサージ、温熱療法などを行うことで、疼痛を軽減する方法です。この方法は、慢性疼痛に対して有効であることが報告されています。
心理的アプローチは、認知行動療法やリラクゼーション法、マインドフルネスなどを用いて、疼痛への対処能力を向上させることを目的としています。疼痛の発生原因が神経障害性疼痛である場合には、この方法が有効であることが報告されています。

まとめ

開胸術後疼痛症候群は、開胸手術を受けた患者に生じる持続的な疼痛の症状です。原因は複数考えられますが、神経損傷が一因とされています。治療には鎮痛剤の投与や神経ブロック、物理療法などがあります。患者さん自身も、手術前に疼痛管理の計画について医師と相談することや、手術後のリハビリテーションに積極的に取り組むことが必要です。また、ストレスマネジメントや認知行動療法を取り入れた心理的アプローチも有効です。
開胸術後疼痛症候群は、症状が長期にわたって持続することがあり、患者さんの生活に大きな影響を与えることがあります。早期の診断と適切な治療、予防が重要であり、患者さん自身も積極的に取り組むことが必要です。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

Q&A

Q: 一般的にどれくらいの期間続くことがありますか?
A: 症状は個人によって異なりますが、通常は数週間から数ヶ月続くことがあります。

Q: 主な原因は何ですか?
A: 開胸手術による胸部の組織へのダメージや神経の切断です。

Q: 治療法にはどのような選択肢がありますか?
A: 鎮痛剤、物理療法、神経ブロック、心理的支援、リハビリテーションなどが含まれます。

Q: 症状を緩和するために自宅でできることはありますか?
A: 定期的な軽度の運動、痛み管理のための薬物の適切な使用、リラクゼーション法の実践が役立ちます。

Q: 症状が悪化した場合、どのように医師に連絡すればよいですか?
A: 症状が悪化した場合は、すぐに担当の医師に連絡し、状況を説明し、適切なアドバイスや治療の調整を受けるようにしましょう。

Q: 再発する可能性がありますか?
A: 再発する可能性がありますが、適切な治療や管理方法を実践することで、症状の軽減や再発の予防が可能です。

Q: 他の疾患とどのように区別できますか?
A: 他の疾患と類似することがありますが、診断は医師による詳細な検査と評価によって行われます。

Q: 症状が日常生活にどのような影響を与えることがありますか?
A: 活動制限、睡眠障害、うつ状態、社会的・感情的な影響をもたらすことがあります。

Q: 治療において、薬物療法はどのような役割を果たしますか?
A: 症状の軽減や痛み管理に役立ちます。鎮痛剤や抗うつ薬などが使用されることがあります。

Q: リハビリテーションはどのようなプログラムを含んでいますか?
A: 身体的な運動療法、筋力トレーニング、呼吸法、ストレッチング、姿勢の改善などが含まれます。

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