変形性肘関節症

変形性肘関節症は、スポーツや仕事などによる肘の酷使により、肘関節内の軟骨が徐々に摩耗し、最終的には骨が変形する疾患です。初期段階では肘に負荷がかかると痛みを感じますが、進行すると「骨棘(こつきょく)」と呼ばれる骨の突起ができ、肘の動きが制限され、日常の動作でも痛みが生じるようになります。場合によっては、関節の軟骨が剥がれ、関節内で「遊離体」として引っかかることがあります。さらに進行が進むと、安静時でも痛みが続くほか、肘を通る神経が圧迫され、手のしびれや力が入りにくくなることもあります。

原因

変形性肘関節症は、肘関節を過度に使用することで発症することがあります。肘を頻繁に使う仕事やスポーツによって、肘に継続的な負担がかかり、その結果、軟骨が徐々に損傷されて発症につながります。また、肘に強い外力が加わり骨折した際、後遺症として変形性肘関節症が発生することもあります。加えて、細菌感染による関節炎が引き金となって発症するケースも報告されています。さらに、加齢に伴い関節の軟骨や周囲組織が脆弱になるため、年齢的な要因もこの疾患のリスクを高める要素の一つと考えられています。

症状

初期段階では、安静にしていると痛みはほとんど感じられず、肘を曲げ伸ばしした際にのみ痛みが発生します。しかし、変形が進行するにつれて、服の着替えや食事といった日常動作でも痛みが現れるようになります。さらに、変形が進んで神経が圧迫されると、手にしびれや筋力低下が生じます。特に影響を受けやすいのが尺骨神経で、この神経が圧迫されると手の小指側にしびれが生じます。症状が悪化すると、手の筋肉が萎縮し、物をつまむ力が低下します。この状態は「肘部管症候群」と呼ばれます。

治療

治療方法は、大きく分けて保存療法と手術療法に分かれます。

保存療法
肘の安静を保ち、必要に応じて三角巾や副木で固定します。痛みの緩和には、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の内服や湿布、塗り薬が使用されます。また、症状が重い場合にはステロイド剤を関節内に注射することもあります。さらに、肘関節の変形や不安定性がある場合は、肘を安定させるための固定装具の使用が推奨されます。

手術療法
保存療法で効果が得られず、変形や痛みが進行して運動機能の制限や日常生活に支障が出ている場合、手術が検討されます。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防とセルフケア

予防・改善には、日常生活での工夫が重要です。

  • 肘を冷やさないようにし、同じ姿勢を長時間続けないように心がけましょう。
  • 適度な運動やストレッチで関節の柔軟性を保つことが大切です。
  • また、肘関節を支える周囲の筋肉を鍛えることで、肘への負担を軽減することが期待できます。

Q&A

Q1. 肘を動かすと痛みを感じるのはなぜですか?

肘を動かす際に痛みを感じるのは、関節内の軟骨がすり減り、骨同士が直接触れていることが原因です。特に繰り返しの動作や加齢が影響します。

Q2. 肘が硬くなり動かしにくいのはどんな原因がありますか?

肘の動きが制限される原因には、関節の炎症や軟骨の摩耗が考えられます。特に長期間の使用や負荷が加わることで症状が進行することがあります。

Q3. 肘の痛みが長引く場合、どのような治療法が効果的ですか?

肘の痛みが長期間続く場合、物理療法やリハビリテーションが効果的です。さらに、症状が重い場合は、専門医による注射や手術が必要になることもあります。

Q4. 肘の動きに違和感があるとき、どのように対処すれば良いですか?

肘の違和感を感じた場合は、まずは安静にし、痛みが引かない場合は医師に相談することが重要です。早期治療が症状の進行を防ぐ助けになります。

Q5. 肘の炎症を抑えるためのセルフケアはありますか?

肘の炎症を抑えるためには、アイシングや痛み止めの使用が効果的です。無理に動かさず、安静にすることが回復を早めるポイントです。

Q6. 肘に痛みがある場合、どのようなリハビリが有効ですか?

肘の痛みを軽減するためには、適度なストレッチや筋力トレーニングが効果的です。専門家の指導のもとで行うことが、長期的な改善につながります。

Q7. 肘を使う作業をしている際に痛みが出た場合、どのように対処すべきですか?

作業中に肘に痛みが出た場合、すぐに作業を中断し、安静にすることが大切です。無理をせず、痛みが続く場合は専門医の診察を受けましょう。

Q8. 肘の軟骨がすり減るのを予防するための生活習慣はありますか?

軟骨の摩耗を予防するためには、無理な動作を避け、定期的に肘をストレッチすることが効果的です。また、過度な負荷をかけないようにすることも大切です。

Q9. 肘の痛みが強くなった場合、どのタイミングで医師に相談すべきですか?

肘の痛みが強くなり、日常生活に支障をきたす場合は、できるだけ早く専門医に相談することが重要です。早期診断が症状の進行を抑えるのに役立ちます。

Q10. 肘の動きが悪くなった場合、どの治療法が選択肢になりますか?

肘の動きが悪くなった場合、リハビリや物理療法が有効です。進行した場合には、手術が選択肢に含まれることがありますので、専門医と相談し適切な治療を受けましょう。

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