モートン病

モートン病は、足の指に向かう神経が、足の指の付け根部分で圧迫されることによって発生する神経障害です。神経が圧迫される原因として、つま先が細くヒールの高い靴(特にハイヒール)を履くことや、外反母趾など足の骨格異常が挙げられます。さらに、ガングリオン(ゼリー状の液体が入った腫瘍)などが神経を圧迫することもあります。この症状は特に40〜60歳の女性に多く見られ、最もよく発症する部位は第3趾(中指)と第4趾(薬指)の間で、次いで第2趾(人差し指)と第3趾の間でも発生することが多いです。

原因

モートン病の主な原因は、足の指の付け根に繰り返し加わる負荷です。歩行時に足裏で地面を蹴る際、指が背屈(上に反る動き)することで付け根部分に負担がかかり、そこにある神経や周囲の軟部組織が圧迫されます。これが長期にわたって続くと、年齢とともにその部位が線維化し、モートン病が発生します。

■ リスクファクター

  • 過去の足のケガ
  • 前足に繰り返し負担がかかる運動(ジョギングなど)
  • ヒールの高い靴を頻繁に履くこと
  • 外反母趾
  • 関節リウマチ
  • 偏平足

症状

個人差はありますが、主に第3趾と第4趾の間にしびれや疼痛、灼熱感など、多様な神経症状が現れることがあります。また、前足部の足底に小さな有痛性の腫瘤ができ、これを訴えて来院されることもあります。障害部位は、第2-3足趾間や第4-5足趾間で起こることもあります。痛みは非常に強くなることがあり、場合によっては下腿にまで広がることもあります。

治療

靴の変更(ソールを柔らかくし、ヒールを低くする)、薬物療法、足底挿板(中敷き)の作成などが治療法として考えられます。また、痛みを軽減するために局所神経ブロック注射を行うことがあり、これは治療の一環であると同時に、診断の確定を目的に行われることもあります。これらの保存療法で改善が見られない場合には、神経剥離術や神経切除術などの手術療法が検討されることがあります。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

自宅でのケア

・つま先に余裕があり、かかとの低い靴を選びましょう。また、紐やテープで足幅を調整できる靴もおすすめです。
・足底が厚く、衝撃を吸収する靴を選び、余計な圧力がかからないインソールを使うことで、足への負担を軽減します。
・ハイヒールの着用は避けましょう。
・足を休ませ、マッサージを行い、痛みがある場合は氷で冷やすと痛みが軽減します。
・軽度の神経腫であれば、厚底でつま先が広い靴を履くだけで症状が改善することがあります。症状が重い場合は、専門外来での治療や神経腫の切除手術が必要になることもあります。
・市販の靴用パッドを使用して、圧力を軽減することも効果的です。

Q&A

Q1. モートン病は女性に多いと聞きますが、その理由は何ですか?

女性に多く見られる理由として、ヒールの高い靴や先が狭い靴を履くことが多い点が挙げられます。これにより足の神経に圧力がかかりやすくなります。

Q2. 名前の由来は何ですか?

モートン病という名前は、19世紀にこの疾患を初めて報告したアメリカの医師トーマス・G・モートンに由来しています。彼が足の神経圧迫による痛みを初めて詳細に記述しました。

Q3. 特定のスポーツと関係がありますか?

ランニングやバスケットボール、テニスなど、足に強い負担がかかるスポーツをする人に多く見られます。足の指に圧力が集中する運動が関係しています。

Q4. モートン病と他の足の疾患を区別するために何を考慮すべきですか?

モートン病は神経圧迫が原因ですが、同じく足に痛みを感じる他の疾患(外反母趾や足底筋膜炎など)と区別するためには、痛みの場所や発症タイミングをよく観察することが重要です。

Q5. モートン病の研究はどのくらい進んでいますか?

モートン病は比較的よく知られた疾患で、研究も進んでいます。特にインソールや手術などの治療法に関する研究が多く行われています。

Q6. 子どもにも発生する可能性がありますか?

一般的には成人に多く見られますが、足に強い負担がかかる場合、子どもや若年層にも発生する可能性があります。特に成長期の足への負担には注意が必要です。

Q7. 遺伝する可能性がありますか?

モートン病そのものが遺伝するという証拠はありませんが、足の形や骨格の遺伝的要因が、発症リスクを高める可能性はあります。家族に足の問題がある場合は注意が必要です。

Q8. 手術はどのような方法で行われますか?

手術は、神経の圧迫を解消するために、圧迫されている靭帯や周辺の組織を切除する方法が一般的です。手術は通常、局所麻酔下で行われ、術後の回復期間は数週間程度です。

Q9. 発症率は地域によって違いますか?

靴の履き方や生活習慣の違いによって地域差が見られることがあります。特にヒールの高い靴や先の細い靴を履く習慣がある地域では、発症率が高くなる傾向があります。

Q10. モートン病と仕事環境には関連がありますか?

長時間立ち仕事をする方や、狭い靴を長時間履く職業に従事する方は、モートン病のリスクが高まる可能性があります。適切な靴選びや足のケアが重要です。

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