タナ障害

膝関節を包む関節包の一部に存在するひだ状の構造は、滑膜ヒダと呼ばれます。この中で特に膝蓋骨(お皿の骨)の内側縁近くに位置する内側滑膜ヒダは、関節鏡で見ると棚のように見えることから「タナ」と呼ばれます。タナが大きい場合、スポーツや外傷がきっかけとなり、膝の屈伸時に膝蓋骨と大腿骨の間で挟まったり摩擦を起こしたりすることがあります。このような摩擦や圧迫によって炎症が生じ、痛みを引き起こす状態を「タナ障害」といいます。

原因

『タナ障害』は、膝の曲げ伸ばしを頻繁に行うスポーツ、特に野球、バレーボール、バスケットボール、ハンドボールなどの運動選手に多く見られます。しかし、運動習慣のある人なら誰でも発症する可能性があり、特に中高生の部活動でよく見られる症状です。この障害は、膝の曲げ伸ばしや捻る動作を繰り返すことで『滑膜ヒダ』が圧迫され、炎症を引き起こすことが原因です。大きな外傷がなくても、同じ動作を繰り返すことで徐々に痛みが増していくことがあります。

症状

症状としては、膝の伸ばしたり曲げたりする際に引っかかる感覚や、膝蓋骨内側に痛みを伴うクリック音が生じることがあります。また、膝の内側に触れる索状物や圧痛が感じられることもありますが、軽度の場合は違和感や重だるさといった軽い症状を訴えることも少なくありません。

治療

まずは保存的治療を優先します。急性期の炎症がある場合は、アイスパックを使用して患部を冷やすといった物理療法を行います。同時に、膝関節の柔軟性を高めるために、大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)やハムストリングス(太もも後面の筋肉)のストレッチを中心としたリハビリテーションも行います。これらの保存療法で十分な効果が得られない場合は、滑膜ヒダの切除手術が検討されます。手術は関節鏡を使用するため、体への負担が少なく、傷口も小さく目立たないのが特徴です。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防

予防策としては、膝関節周囲の筋肉を柔軟に保ち、筋力を強化することが重要です。特に、大腿部の柔軟性を高め、筋力をアップさせることが膝の安定性を向上させ、負担を軽減します。練習や試合の前には、患部を温めて血行を促進することも有効です。さらに、安静を保てずに試合や練習に参加しなければならない場合は、テーピングで膝をサポートし、練習後にはアイシングなどのセルフケアをしっかり行うことが大切です。

Q&A

Q1. タナ障害とは何ですか?

膝関節内の滑膜ひだ(タナ)が厚くなり、膝の動きに伴って摩擦を引き起こすことで炎症や痛みを生じる状態です。特にスポーツ選手に多く見られます。

Q2. 主な症状は何ですか?

膝の前側に痛みや違和感があり、膝を動かすとクリック音や引っかかる感覚を感じることがあります。また、膝を曲げ伸ばしする際に痛みが出ることが多いです。

Q3. どのように診断されますか?

医師による問診や触診、膝の動きを確認するテストに加え、MRIや関節鏡検査を通じて診断されます。滑膜ひだの肥厚や炎症の有無を確認します。

Q4. 治療にはどのような方法がありますか?

治療には、まず安静を保ち、炎症を抑えるための薬物療法や物理療法が効果的です。痛みが続く場合は、関節鏡手術で滑膜ひだを取り除く治療が行われることもあります。

Q5. 痛みを和らげるためのセルフケア方法はありますか?

セルフケアとしては、アイシングや膝に負担をかけないストレッチが有効です。また、膝をサポートするためにサポーターを使用することも効果的です。

Q6. 予防するためにはどのようなエクササイズが効果的ですか?

予防には、膝周りの筋肉を強化するエクササイズや、柔軟性を高めるストレッチが効果的です。特に大腿四頭筋やハムストリングの筋力を鍛えることが膝の安定性を高めます。

Q7. 悪化する前に医師に相談すべき症状は何ですか?

膝の痛みが強くなり、歩行やスポーツに支障が出る場合や、膝を動かすたびにクリック音や引っかかる感覚が強まる場合は、早めに医師に相談することが重要です。

Q8. 治療には手術が必要ですか?

軽度のタナ障害は手術を必要としませんが、炎症が長引く場合や、保存療法で改善が見られない場合には、関節鏡手術が検討されることがあります。

Q9. 再発を防ぐためにはどのようなトレーニングが有効ですか?

再発を防ぐためには、膝周りの筋肉を強化するトレーニングや、柔軟性を高めるストレッチが有効です。特に膝の安定性を保つための筋力トレーニングが重要です。

Q10. リハビリにはどのようなプログラムが効果的ですか?

リハビリには、膝の柔軟性を高めるストレッチや、大腿四頭筋とハムストリングの筋力を強化するエクササイズが含まれます。理学療法士の指導のもと、適切なリハビリを行うことが回復を助けます。

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