ギックリ腰

ぎっくり腰は医学的な正式名称ではなく、「急性腰痛症」として知られています。これは、突然発症する強い腰痛を指し、欧米では「魔女の一撃」と表現されることもあります。ほとんどの場合、1週間から10日程度で自然に回復しますが、2週間以上経っても改善が見られない、または症状が悪化している場合や、一度治まっても繰り返す場合は注意が必要です。これらのケースでは、椎間板ヘルニアや圧迫骨折など、他の疾患が隠れている可能性があるため、医師の診察を受けることをお勧めします。

原因

ぎっくり腰は特定の一因で発生するわけではなく、原因は個々に異なります。主な原因は、腰椎周囲の関節や筋肉、靭帯、椎間板などの組織にダメージが生じることです。これらの損傷は、筋肉の疲労や姿勢の乱れ、急な無理な動きなどで引き起こされます。ぎっくり腰の誘因となりやすい動作には、以下のようなものがあります。

  • 重い荷物を持ち上げる
  • 前かがみの姿勢から体を起こす
  • 腰をひねる動作
  • くしゃみをした瞬間

普段から腰に負担がかかっている状態で、これらの動作が引き金となり、ぎっくり腰を発症することがあります。

症状

ぎっくり腰は、急激に発症する強い痛みが特徴です。何かの動作をきっかけに、瞬時に激しい痛みが走ることが多く、時には脂汗をかくほどの激痛を伴います。ぎっくり腰の痛みは、通常数日から10日ほどで自然に回復します。ただし、痛みが2週間以上続く場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎分離症など、他の疾患が原因である可能性があるため、整形外科を受診することが重要です。

病院を受診すべきぎっくり腰の症状

次のような症状が見られた場合、病院での診察が推奨されます。

  • 何度もぎっくり腰を繰り返す、またはなかなか治らない
    痛みが一時的に治まっても、繰り返しぎっくり腰になる、または2週間以上痛みが続く場合は、椎間板ヘルニアなどが疑われます。
  • 下肢に痛みやしびれがある
    足に痛みやしびれが出る場合は、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの可能性があります。この場合は整形外科での診察が必要です。
  • 下肢の麻痺や排尿・排便障害がある
    こうした症状は、神経に重大な障害が発生しているサインです。早急に治療が必要で、場合によっては手術が求められることもあります。
  • 安静にしていても腰痛が悪化する
    骨粗鬆症による圧迫骨折や内臓の問題、まれにがんの脊椎転移などの可能性があるため、早期の診察が必要です。
  • 発熱、嘔吐、血尿がある
    これらの症状は、感染症や内臓疾患の可能性を示唆している場合があり、迅速な受診が推奨されます。

セルフケアで改善が見られれば特に受診の必要はありませんが、繰り返し発症する場合は、他の病気の可能性を確認するため、受診が勧められます。

治療

安静にする

痛みが強い間は、無理に動かさずしっかり安静にしてください。痛みが和らいだら、無理のない範囲で日常生活を少しずつ再開しましょう。動けるようになったら、一度医療機関での受診をお勧めします。

鎮痛剤や湿布の処方

軽度の痛みの場合は、消炎鎮痛剤(西洋薬や漢方薬)や湿布を処方して治療を進めます。鎮痛剤や湿布では痛みが和らがない場合、神経ブロック治療を選択することもあります。

神経ブロック治療

安静にしても痛みが取れない場合は、硬膜外ブロックや椎間関節ブロックなどの神経ブロック注射を行います。この治療法は、炎症を抑えるだけでなく血流を促進し、二次的な痛みも軽減します。短期間で痛みを和らげる効果が期待できるため、多忙で長く休めない方におすすめです。注射に抵抗がある方には、漢方薬の処方も可能です。

コルセットの着用

痛みが強い時期には、腰を固定するためにコルセットの着用が推奨されます。コルセットを使うことで、起き上がる際や立ち上がる時の動作が楽になります。長期間の使用は筋力の低下を招く恐れがありますが、強い痛みの時期に短期間のみ使用するので、基本的に長期間の装着は必要ありません。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防とセルフケア

ぎっくり腰の再発予防としておすすめなのが「体幹トレーニング」です。体幹とは、顔と手足を除く胴体部分を指し、特に体の深部にあるインナーマッスルを鍛えることで、仙腸関節の動きを筋肉で支え、ぎっくり腰の予防につながります。

体幹トレーニングは、ぎっくり腰だけでなく、肩こりや慢性腰痛にも効果的です。

体幹を鍛えるトレーニング5選

① スクワット

  • 両足を肩幅に広げて立ち、両手は首の後ろに置きます。
  • 背筋を伸ばし、胸を張りながらお尻を後ろに引き、ゆっくり膝を曲げます。
  • 膝が足先より前に出ないように気をつけ、呼吸を止めずに行いましょう。

初心者は、できる範囲の回数から始めて徐々に増やしましょう。

② 片足バランス

  • 両手をT字に広げ、片足を90度に曲げて膝を上げます。
  • その姿勢で20秒間キープ。左右交互に繰り返します。

バランスを保ちながら、腕や足が上がり過ぎないように意識しましょう。

③ プランク

  • 腕立て伏せの姿勢から、肘を曲げて90度に固定し、肘で体を支えます。
  • お尻を天井に突き出さないようにし、20秒間キープします。

慣れてきたら秒数を増やすのではなく、セット数を増やしましょう。

④ ダイアゴナルバック

  • 四つん這いの姿勢で、右手を前へ伸ばし、同時に左足を後ろに伸ばして20秒キープします。
  • 左手と右足も同様に行い、これを1セットとして繰り返します。

⑤ ドローイン

  • 仰向けに寝て膝を立て、両手をお腹の上に置きます。
  • 口から息を吐きながらお腹を凹ませ、同時にお尻の穴を締めます。吐ききったら、鼻から息を吸い、再度繰り返します。

トレーニングの目標

全てのトレーニングをまずは3セット行うことを目標にしましょう。毎日続けるのが難しい場合は、週に3日程度から無理のないペースで始めてみてください。

Q&A

Q1. 急に腰に強い痛みを感じたのはなぜですか?

ぎっくり腰は、腰の筋肉や靭帯が急激に緊張し、損傷することで発生します。重い物を持ち上げたときや不意な動きが原因となることが多いです。

Q2. ぎっくり腰の典型的な症状は何ですか?

ぎっくり腰の主な症状には、腰に突然の激痛が走り、動けなくなることが挙げられます。また、痛みが数日から数週間続くことがあります。

Q3. ぎっくり腰になったとき、どのように対処すれば良いですか?

ぎっくり腰の際は、まず安静を保ち、冷やすことが重要です。痛みが引かない場合や、症状が長引く場合は、専門医に相談することが推奨されます。

Q4. ぎっくり腰の原因となる要因は何ですか?

ぎっくり腰は、重い物を持ち上げたときの誤った姿勢や、腰に負担がかかる動作、さらには長時間の座り仕事などが原因となることがあります。

Q5. ぎっくり腰の治療にはどのような方法がありますか?

初期段階では、アイシングや安静が有効です。痛みが引いてからは、リハビリやストレッチ、筋力トレーニングが再発防止に役立ちます。

Q6. ぎっくり腰を予防するためにはどんな生活習慣が必要ですか?

予防には、腰に負担をかけない姿勢を心がけることや、日常的にストレッチを行い、筋力を強化することが大切です。特に腰周りの筋肉を鍛えることが効果的です。

Q7. ぎっくり腰の痛みが続く場合、どのタイミングで医師に相談すべきですか?

痛みが数日経っても治まらない場合や、しびれや足に痛みが広がる場合は、早めに医師に相談することが必要です。早期診断が回復を早めます。

Q8. ぎっくり腰の治療には手術が必要ですか?

ぎっくり腰は、通常は手術を必要としません。多くの場合、適切な安静と治療で回復しますが、症状が重度の場合にはさらなる検査や治療が必要となることもあります。

Q9. ぎっくり腰の再発を防ぐためにできるエクササイズはありますか?

腰の筋力を強化するエクササイズや、柔軟性を高めるストレッチが有効です。特に、腰や腹筋を鍛えることで、再発を予防することができます。

Q10. ぎっくり腰のリハビリにはどのような運動が効果的ですか?

リハビリには、腰の柔軟性を向上させるストレッチや、コアを鍛える筋力トレーニングが効果的です。専門家の指導のもとで、無理のない範囲で行うことが推奨されます。

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