スマホ首(ストレートネック) 人間の首を支える頸椎(けいつい)は、7つの骨から構成されています。横から見ると、頸椎は体の前方に向かって緩やかなカーブを描き、その後、後方にもカーブして生理的な曲線を形成しています。これを生理的前弯(ぜんわん)と呼びます。頭部の重さは約4~6kgありますが、頸椎の前弯によってその重さが分散され、衝撃を和らげる役割を果たしています。しかし、「前かがみ」や「下を向く」といった動作を行うと、前弯が減少し、首のカーブが直線的(ストレート)になり、場合によっては後弯気味になります。例えば、頭を15度前に傾けると、首には約12kgの負荷がかかります。つまり、うつむく角度が大きくなるほど、首への負担も増加するのです。 原因 首の骨である頚椎は、通常、前方に向かって緩やかにカーブしており、これが頭の重さを適切に支える役割を果たしています。しかし、スマートフォンを操作するときは、頭を前に垂らして下を向くことが多く、その結果、頚椎の自然なカーブが失われてまっすぐな状態になります。これがいわゆる「スマホ首」です。この状態が長時間続くと、頚椎が直線的なまま固定されてしまい、これが「ストレートネック」と呼ばれます。つまり、スマホ首はストレートネックの大きな原因のひとつです。 症状 肩や首、肩甲骨のこりや痛み 頭痛、めまい、耳鳴り 吐き気 手足の冷え 頸椎の関節圧迫による神経障害 目の疲れや集中力の低下 猫背になりやすい 全身のだるさ 腕や手のしびれ 後頭部が壁に触れない これらの症状は、ストレートネックの進行度に応じて現れます。軽度では「肩こり・首こり」や「背中・腰のこり」、中等度では「頭痛」や「吐き気・めまい」、「手足の冷え」などが見られ、重症になると「腕や手のしびれ」や「壁に後頭部がつかない」といった症状が顕著になります。 ストレートネックが悪化すると、単なる首の痛みを超えて、全身に影響を及ぼす深刻な状態に進展することがあります。初期の軽いこりや痛みが悪化し、しびれや椎間板ヘルニア、耳鳴りに加え、視力低下や自律神経の乱れ、さらにはうつ病を引き起こすケースも少なくありません。特に視神経への影響は、眼精疲労や視力低下として現れ、日常生活において視界の不調や目の痛みを伴うことがあります。 改善方法 ▶ スマホ使用時間の制限と姿勢の改善 スマホの使用時間をあらかじめ決め、使用する際はスマホを目の高さに合わせる工夫をしましょう。また、片手で持つのではなく、両手で支えるようにするのもおすすめです。 ▶ デスクワーク中の姿勢改善 自分に合ったデスクと椅子を選び、正しい姿勢でパソコンに向かうことが大切です。作業の合間には簡単なストレッチを取り入れ、体をリフレッシュさせましょう。 ▶ 睡眠時の枕選びに注意 枕が高すぎると、首が下向きの不自然な姿勢になり、ストレートネックを助長するため避けましょう。また、柔らかすぎる枕は頭部が安定せず、首が緊張状態になり負担がかかります。適度な高さと硬さの、首や頭にフィットした枕を選び、必要に応じてタオルなどで高さを調節することが大切です。 モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療 近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。 治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態 治療費用:税込324,500円〜357,500円 主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。 運動器カテーテル治療のメリット 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。 予防方法 ストレートネック(スマホ首)の予防には、横になって首を休めるのが最も効果的ですが、忙しい時や外出先では難しいこともあります。そのような場合におすすめなのが、「ネックリラクゼーション」です。背もたれのある椅子に座り、両手を首の後ろに当てて、首を30秒間後ろに倒すだけで簡単に行えます。理想的には15分に1回程度行うと良いですが、時間がない場合は30分に1回、1分程度でも効果があります。このエクササイズは筋肉を伸ばすストレッチではなく、首の筋肉をリラックスさせることを目的として行いましょう。さらに効果を高めたい場合は、ネックリラクゼーションに加えてホットタオルやドライヤーを使って首の上半分を温め、副交感神経を刺激し、血行を促進すると良いでしょう。 Q&A Q1. 長時間のスマホ使用で首に痛みを感じる原因は何ですか? 長時間スマホを使用することで、首が前に傾き、筋肉や関節に負担がかかります。この姿勢が長引くと、首に痛みを感じることがあります。 Q2. パソコンやスマホを使っていると肩こりが悪化する理由は何ですか? 前かがみの姿勢が続くと、首や肩の筋肉が緊張し、肩こりや首の痛みが悪化することがあります。定期的に姿勢を見直し、ストレッチを取り入れることが重要です。 Q3. 首や肩の痛みを感じた場合、どのように対処すればよいですか? 首や肩の痛みを感じた場合、姿勢を正して、定期的にストレッチやマッサージを行うことが効果的です。また、専門医に相談することもおすすめです。 Q4. デスクワーク中に首に負担がかかるのはなぜですか? デスクワークでは、長時間同じ姿勢でいることが多く、首に過度な負担がかかります。特に、前かがみの姿勢が続くと、筋肉や関節に影響が出やすいです。 Q5. スマホやパソコンの使い過ぎによる首の痛みを予防する方法は? スマホやパソコンの使い過ぎによる首の痛みを予防するには、姿勢を改善し、画面を目の高さに合わせることが有効です。また、定期的な休憩も重要です。 Q6. 首の痛みが悪化した場合、どのような治療法がありますか? 首の痛みが悪化した場合、物理療法やリハビリ、場合によっては専門医による診察や治療が必要です。早期の対処が回復を促進します。 Q7. 前かがみの姿勢が続くと、首や背中にどのような影響が出ますか? 前かがみの姿勢が長時間続くと、首や背中の筋肉が硬直し、痛みやこりが発生します。姿勢の改善やストレッチが必要です。 Q8. スマホやパソコンの使用時に注意すべき姿勢のポイントは何ですか? スマホやパソコンの使用時には、首が前に出ないようにし、画面を目の高さに合わせることが大切です。また、背筋を伸ばすことを意識しましょう。 Q9. 首の痛みを防ぐためのエクササイズやストレッチにはどのようなものがありますか? 首の痛みを防ぐためには、首回しや肩甲骨を動かすストレッチが効果的です。これにより、首や肩の緊張をほぐすことができます。 Q10. 日常生活で首に負担をかけないための工夫はありますか? 日常生活で首に負担をかけないためには、スマホやパソコンの使い方を見直し、定期的に休憩を取ることが大切です。適度な運動や姿勢改善も重要です。 モヤモヤ血管 顔・首 肩・腕・肘・手 胸 腰臀部股関節 膝 足 その他