種子骨障害とは?

種子骨障害(しゅしこつしょうがい)とは、足の親指(母趾、第一趾)の先端に位置する「種子骨」と呼ばれる小さな骨に、成長や再生の不調が生じ、痛みや歩行困難などの症状を引き起こす疾患です。スポーツやダンス、長時間にわたるハイヒールの着用など、足の親指に長期間負荷がかかることで発症することが一般的です。また、成長期の子どもにも見られることがあり、発育期における負担が要因になることもあります。

原因

種子骨障害の原因には、過度な運動や負荷、加齢、足の形状の異常、筋力不足、運動不足、誤った運動動作などが挙げられます。例えば、ランニングやバスケットボールなど、急激なダッシュやジャンプ、着地が頻繁に行われるスポーツでは、足の裏にある種子骨に強い負荷がかかり、炎症が起こることがあります。また、フラットフット(扁平足)の人や、日常的に爪先立ちの姿勢をとる習慣がある人、過去に同様の痛みを経験した人もリスクが高いとされています。

症状

荷重時や歩行時に踏み返し動作で母趾を上に反らす際、MTP関節の足底側に痛みが生じ、その結果、歩行やスポーツに支障をきたします。MTP関節の足底側には腫れや赤みが見られ、押した時に強い痛みを感じることがあります。そのため、母趾を上に反らす動作が難しくなることが特徴です。

治療

種子骨障害の保存治療

まずは保存療法を行います。安静を保ち、アイシングや抗炎症薬の服用、装具療法を併用します。骨折の治療プロトコルとしては、母趾を足底に軽く屈曲させた状態で4~6週間固定し、その後、部分荷重の歩行を経て徐々に通常の活動に戻す方法が一般的です。装具療法としては、母趾球部を柔らかい素材にしたインソールや、船底状に整形した靴型装具が使用されます。

難治性のケースに対しては、体外衝撃波療法、自己多血小板血漿(PRP)注入療法、濃縮骨髄液吸引注射療法などの新しい治療法も報告されていますが、これらはまだ一般的な治療法にはなっていません。

種子骨障害の手術治療

手術療法に関しては、種子骨障害に対する標準的な術式は確立されていません。病態に応じて、術者が最適な術式を選択することが一般的です。代表的な術式には、種子骨切除術、自家骨移植術、観血的固定術などが含まれます。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防

1. アライメントの問題を解消する

偏平足、外反母趾、ハイアーチなど足の形状に問題がある場合、そのバランスを整えることで種子骨障害のリスクを軽減できます。これは種子骨障害だけでなく、足部のアライメントの不整が全身のバランスに影響を及ぼし、足の怪我だけでなく腰痛などの全身の問題にもつながるためです。

2. 足部や下腿部の筋肉を柔らかく保つ

特に、土踏まずの内側の筋肉は種子骨障害に大きく関与します。青竹踏みやゴルフボールなどを用いて足裏をマッサージすると効果的です。また、ふくらはぎから足裏にかけてつながっている筋肉も関係しているため、ふくらはぎのストレッチを行い、柔軟性を保つことも重要です。

QA

Q1. 種子骨障害とは何ですか?

種子骨障害は、足の親指の下にある小さな骨(種子骨)が炎症を起こし、痛みや不快感を引き起こす状態です。特に、ジャンプやランニングなど足に大きな負担をかける動作で発症しやすいです。

Q2. 主な原因は何ですか?

足の親指に繰り返し負荷がかかることで発症します。特に、高いヒールを履くことや、硬い地面でのランニングなどが原因となることがあります。

Q3. どのような年齢層に多いですか?

若年層から中年層まで幅広く見られますが、特にスポーツをする若者や足に過度な負担をかける職業に従事する人に多く発症します。

Q4. 男女どちらに多く見られますか?

特に女性に多く見られます。これは、ハイヒールなどの不安定な靴を履くことで、足にかかる負担が大きくなるためです。

Q5. 種子骨障害に適した靴の選び方は何ですか?

種子骨障害を予防・緩和するためには、足のアーチをサポートするクッション性の高い靴を選ぶことが推奨されます。また、硬い靴底を避け、足底にかかる圧力を分散できる靴を選びましょう。

Q6. 種子骨障害は運動選手にどのような影響を与えますか?

ランナーやジャンプを多用するスポーツ選手にとって大きな問題となります。痛みや炎症が進行すると、スポーツパフォーマンスが低下し、競技活動に支障をきたす可能性があります。

Q7. どのように予防できますか?

種子骨障害を予防するためには、足底の筋肉を強化するトレーニングや、適切な靴の使用が有効です。また、長時間立ちっぱなしの作業を避けることや、足にかかる負担を軽減することも重要です。

Q8. 自然に治ることがありますか?

休養や負担の軽減により自然に改善することがありますが、症状が続く場合や悪化する場合は、専門的な治療が必要です。

Q9. 手術が必要になるのはどのような場合ですか?

手術は、保存療法(安静、インソール、物理療法)で症状が改善しない場合に検討されます。手術では、炎症を起こしている組織を取り除き、痛みを和らげます。

Q10. 種子骨障害と似た症状を持つ他の足の疾患には何がありますか?

種子骨障害と似た症状を持つ疾患には、足底筋膜炎やモートン病などがあります。足の痛みやしびれが続く場合は、専門医による正確な診断が重要です。

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