椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間にあるクッションの役割を果たす椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで手足に痛みやしびれが生じる病気です。椎間板は、背骨の柔軟な動きを支える重要な構造で、脊柱管と呼ばれる骨で囲まれた空間の中には、脳と手足をつなぐ神経が通っています。椎間板が飛び出し、脊柱管内で神経を圧迫すると、その神経が伸びている手足に痛みやしびれを感じるほか、手足の動きが制限されることもあります。

原因

椎間板ヘルニアの主な原因は、椎間板に過剰な圧力がかかることです。椎間板は、中心部の柔らかい「髄核」と、それを取り囲む「線維輪」という硬い部分で構成されています。過度な負担がかかると、線維輪が破れて髄核が飛び出し、それが神経に触れることで痛みやしびれなどの症状を引き起こします。主な要因は椎間板への負荷ですが、喫煙や遺伝も発症リスクに関連しているとされています。椎間板は10歳頃から老化が始まり、加齢とともにその機能が低下します。重い物を急に持ち上げたり、中腰の姿勢で作業をしたりすることが、椎間板ヘルニアの引き金となることが多いです。さらに、喫煙や遺伝的要素(同じ家系で発症しやすい傾向)、精神的・社会的要因(不安や抑うつ、職場のストレス、失業など)も、発症に関与することが指摘されています。

症状

急性型から慢性型に移行する腰椎椎間板ヘルニアの特徴
腰椎椎間板ヘルニアには、急性型と慢性型の2つのタイプがあります。急性型は、重い荷物を突然持ち上げた際や、くしゃみなどの衝撃で発生します。痛みが非常に強く、歩行が困難になることもありますが、時間の経過とともに症状が軽減することが一般的です。しかし、適切な治療を行わず放置してしまうと、椎間板から髄核がさらに突出して神経を圧迫し、慢性的な痛みに移行する可能性があります。

膝や足の痛み・しびれを伴う症状
腰椎椎間板ヘルニアでは、腰の痛みに加えて、左右どちらかの太ももから膝、足にかけて強い痛みやしびれが現れることがよくあります。これは坐骨神経痛と呼ばれる症状で、ヘルニアが神経を圧迫することで発生します。特にヘルニアが起こりやすいのは、第4腰椎と第5腰椎の間、および第5腰椎と仙骨の間です。前者ではふくらはぎの外側から足の親指にかけて、後者では膝の裏側から足の裏にかけて痛みやしびれが生じるのが特徴です。

腰椎椎間板ヘルニアでは、背中を伸ばしている姿勢や仰向けに寝ているときは比較的痛みが和らぎますが、背中を丸めたり、前かがみになると神経が圧迫され、痛みやしびれが悪化する傾向があります。

治療

治療法は大きく分けて保存療法と手術療法があります。

保存療法
症状が軽度である場合、保存療法を行い経過を観察します。この治療法では、内服薬やブロック注射、コルセットを用いた装具療法、牽引療法、椎間板内酵素注入療法などを行います。これにより、痛みや痺れの軽減を図りつつ、身体が自然に治癒するのを待ちます。

手術療法
保存療法で十分な改善が見られない場合や、歩行障害などの重篤な症状が現れた場合は手術を検討します。手術では、背中側から切開を行い、神経を圧迫している椎間板の突出部分を取り除きます(後方椎間板切除術)。場合によっては、スクリューを使って椎骨を固定する椎間固定術を併用することもあります。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込357,500円〜434,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防

腰痛の原因は、脊椎や椎体を支える筋肉、骨盤の異常、内臓疾患、心因性など多岐にわたります。日常生活における「悪い姿勢」や「長時間同じ姿勢」を続けることは腰に大きな負担をかけ、腰痛を引き起こす要因となります。腰痛予防の基本は「良い姿勢を保つこと」です。同じ姿勢で仕事をする方は、適度な休憩やストレッチを取り入れることが重要です。また、腰を支える筋肉を鍛えることも効果的な予防策です。
椎間板ヘルニアに対しては、世界的に推奨されているのがMcKenzieの伸展・屈曲エクササイズです。この運動は椎間板内圧を減少させ、髄核の前方移動によって症状を改善させる効果が報告されています。
腹筋を鍛えることも腰痛予防に効果的ですが、急性期に無理な腹筋運動(上体起こしなど)は控えるべきです。近年では、コアエクササイズや腰部安定化トレーニングといった深部筋を強化する運動が推奨されています。

Q&A

Q1. 腰や背中に強い痛みを感じるのはなぜですか?

椎間板が突出して神経を圧迫すると、腰や背中に強い痛みが生じます。この状態は、椎間板ヘルニアでよく見られる症状です。

Q2. 足にしびれや痛みが広がるのはどうしてですか?

腰の神経が圧迫されると、足にしびれや痛みが広がることがあります。これは、椎間板が飛び出して神経を刺激するためです。

Q3. 長時間座っていると腰が痛むのはなぜですか?

長時間座っていると腰に負担がかかり、椎間板が圧迫されるため、痛みが出ることがあります。椎間板ヘルニアの初期症状の一つです。

Q4. 椎間板ヘルニアはどのように診断されますか?

椎間板ヘルニアは、MRIやCTスキャンなどの画像診断を通じて確認されます。症状や神経の圧迫具合に応じて診断が下されます。

Q5. 腰の痛みを和らげるためのセルフケア方法はありますか?

腰の痛みを和らげるためには、アイシングや適度な休息が効果的です。また、腰に負担をかけない姿勢を心がけることも重要です。

Q6. 椎間板ヘルニアが悪化しないようにするためには、どんな予防策がありますか?

予防策としては、正しい姿勢を保つことや、腰に負担をかけない動作を心がけることが大切です。定期的なストレッチや運動も予防に役立ちます。

Q7. 椎間板ヘルニアが進行した場合、手術が必要ですか?

症状が軽い場合は非手術的な治療が効果的ですが、神経の圧迫が強く、痛みやしびれが改善しない場合には、手術が検討されることがあります。

Q8. 椎間板ヘルニアの初期症状を見逃さないためにはどんなサインに注意すべきですか?

初期症状としては、腰の痛み、足のしびれ、長時間座っていると痛みが強くなるなどがあります。これらのサインに気づいたら、早めに専門医に相談しましょう。

Q9. 椎間板ヘルニアのリハビリにはどのような運動が効果的ですか?

リハビリでは、腰の柔軟性を高めるストレッチや筋力を強化するエクササイズが効果的です。専門家の指導のもとで無理のない範囲で行うことが大切です。

Q10. 椎間板ヘルニアを予防するための日常生活での注意点は何ですか?

日常生活での予防策としては、重いものを持ち上げるときには腰に負担をかけない姿勢を心がけ、長時間同じ姿勢を続けないようにすることが重要です。

椎間板ヘルニアの実例紹介

 
 

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