肋軟骨炎とは?

肋軟骨接合部痛、ティーツェ病、下部肋骨疼痛症候群などとも言いますが全て同じ原因です。両側の第1から第12番の全ての肋軟骨部に起こり得ます。肋軟骨部の圧痛を主訴とし背部にかけての放散痛がともない、せき、くしゃみや深呼吸など胸郭の運動によって増悪します。一般の方々にはあまりなじみのない病名だと思いますが、この病気では比較的鋭くて、強い胸の痛みを感じますので、いかにふだん元気な若い方でも、心臓や肺の重大な病気ではなかろうかと心配して受診されます。しかし、この病気は、心臓や肺には関係なく、それより外側にある外壁の問題ですから、生命にかかわることはほぼありません。

肋軟骨炎の原因は何ですか?

原因は不明ですが、胸肋靭帯へのストレス、付着部炎などが考えられています。鎮痛剤などで自然と軽快しますが緩解、再燃をくりかえします。狭心症、心筋梗塞、乳がん、肺がん、初期の帯状疱疹など胸痛をきたしやすい病気と鑑別することが大事です。

肋軟骨炎はどのような症状が出ますか?

風邪などで咳がひどいときや激しいスポーツをした後などにみられることが多く、前胸部から側胸部にかけてのある特定の部位に鋭い痛みが出現します。この痛みは咳をしたり、深呼吸をしたり、笑ったり、くしゃみをしたりした際に増強し、寝返りなど上半身の動きや腕の動きなどでも痛みが誘発されることがあり、あたかも肋骨骨折のような症状です。

・胸の痛みがある
・患部が腫れている
・痛む場所を押すと激しく痛む
・深く息を吸った時やせきで強まる、鋭い胸の痛みがある
などが挙げられます。

肋軟骨炎はどのように検査しますか?

胸部レントゲン、CT、MRI検査などでは異常を認めません。1~数カ所の肋軟骨接合部のピンポイントの圧痛が特徴のため、その診断には超音波検査(表在エコー検査)が必要です。この痛みの出る部位というのがほぼ決まっていて、その部位に一致して痛みが再現できるようであれば、より疑い濃厚となります。おもしろいことに、押さえる場所を数センチずらしただけで圧痛は消失~軽減するので、これも診断のポイントです。実は前胸部の肋骨の部分には骨ではなく肋軟骨という軟骨が存在していて、背中から前のほうへまわってくる肋骨と、胸の真ん中にある胸骨とをつないでいます。この肋軟骨はレントゲンにうつりませんから、胸部レントゲンをとると肋骨が胸から脇の下のあたりで終わっているように見えます。肋軟骨炎はこの背中からまわってくる肋骨と肋軟骨とのつなぎ目、または肋軟骨と胸の真ん中にある胸骨とのつなぎ目のどこかに炎症が起こるために痛みが発生するわけです。

肋軟骨炎の治療法は?

治療は、まずこの病気が生命にかかわる重大なものではないことを説明して患者さんに安心してもらうことから始まります。それだけで安心して薬も希望されずに帰られる方も多いですが、通常は1-2週間分の痛み止めのお薬を処方することが多いです。同時に運動を控えてもらったり、咳止めを併用したりして経過観察します。肋骨骨折と似た症状のため、それに準じてバストバンドやリブバンドといわれる胸部固定帯の使用をお勧めしたりすることもあります。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

肋軟骨炎の実例紹介

モヤモヤ血管

 

 
 
 

肩・腕・肘・手

 

 

腰臀部股関節

 

 
 

 
 

その他