扁平足

扁平足とは、足裏にある土踏まずが低下し、足裏全体が平らになった状態を指します。激しい運動をする人にとっては痛みが生じることもありますが、一般的には重大なトラブルを引き起こすわけではありません。乳幼児期には誰もが扁平足であり、成長とともに土踏まずが徐々に形成されていきます。
大人になってからの扁平足の主な原因として、加齢による腱の変性や、体重増加による足への負担が挙げられます。扁平足では、かかとの骨が内側に傾いているため、足にうまく体重を乗せられず、バランスが悪くなり、片足立ちが難しいことが特徴です。
扁平足自体は病気とまではいえませんが、放置して重症化すると、外反母趾やその他の足のトラブルを引き起こすリスクが高まることもあります。

原因

扁平足には、先天性(生まれつき)と後天性(成長後に発生する)があります。

先天性扁平足
遺伝的要因や胎児期の発育過程で足のアーチが十分に形成されなかった場合に起こります。

後天性扁平足
肥満や運動不足、足のケガ、加齢など、さまざまな要因によって発症します。

症状

扁平足の状態では、土踏まずが崩れ、足が内側に倒れ込むことがあります。これを専門用語で過回内(オーバープロネーション)と呼びます。

過回内が起こると、次のような運動連鎖(キネティックチェーン)が引き起こされます。

扁平足 = 足部の過回内(足首が内側に倒れ込む)
→下腿部の内旋(すねが内側に捻れる)
大腿部の内旋(太ももが内側に捻れる)
骨盤帯の前傾(骨盤が前に傾き、腰が反る)

この一連の動きが、姿勢や歩行に影響を及ぼすことがあります。

治療

治療には、アーチを支えるインソールや装具の使用が一般的です。しかし、改善が見られない場合や変形が進行している場合には、腱移行術や骨切り術、関節固定術などの手術が行われることがあります。

1. 腱移行術+踵骨骨切り術

擦り切れた後脛骨筋腱を別の腱で再建する手術です。長母趾屈筋腱を舟状骨(足の甲の内側にある骨)に縫い付けて後脛骨筋の役割を果たします。また、踵骨骨切り術では、外側に傾いてしまった踵の骨を内側に矯正し、スクリューで固定します。これらの手術は、主に軽度の変形がある患者さんに行われます。

2. 外側支柱延長術

扁平足が進行し、足先が外側を向いてしまう場合には、腱移行術や踵骨骨切り術に加えて外側支柱延長術が行われることがあります。これは、踵の骨を外くるぶしの前で延長し、外側に向いていた足先を真っすぐ前に向ける手術です。当院では人工骨を使用して行います。

3. 三関節固定術

扁平足が進行し長期間放置されると、変形が固定され、腱移行術などでは矯正が難しくなります。この場合、崩れた骨を再構築し、固定する「三関節固定術」が行われます。具体的には、距骨下関節、距舟関節、踵立方関節の3つの関節を固定し、アーチを再形成します。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防とセルフケア

足指の筋肉は、足のアーチを支えるために非常に重要です。これを強化するためには、裸足で過ごす時間を増やし、足指を積極的に使うよう心掛けましょう。また、適正な体重を維持することも、足への負担を減らし、予防につながります。さらに、アキレス腱が硬くなりやすいため、定期的にストレッチ体操を行い、柔軟性を保つことが大切です。

Q&A

Q1. 扁平足とは何ですか?

扁平足とは、足のアーチが低下している状態で、足の裏全体が地面に接触することを指します。これにより、足にかかる負担が大きくなり、痛みや疲れを感じやすくなります。

Q2. どのような原因で発生しますか?

遺伝的な要因や、足の筋肉や靭帯の弱さ、過度の体重負荷などが原因で発生します。また、長時間立ち仕事をする人やスポーツ選手にも多く見られます。

Q3. 遺伝しますか?

遺伝的な要因が関与することがあります。家族に扁平足の人がいる場合、同様の足の形状を引き継ぐ可能性がありますが、環境要因も大きく影響します。

Q4. 年齢によって悪化しますか?

年齢とともに悪化することがあります。特に筋力が低下する高齢者や、長時間立つ仕事を続けている人は、足のアーチがさらに低下する可能性があります。

Q5. どのような靴を選ぶと良いですか?

扁平足の方には、足のアーチをサポートするクッション性の高い靴がおすすめです。また、インソールや専用の足底板を使うことで、足にかかる負担を軽減できます。

Q6. スポーツにどのように影響しますか?

扁平足の人は、走る際に足のアーチが十分にサポートされないため、足や膝、腰に負担がかかりやすく、ケガをしやすくなります。適切なサポートが重要です。

Q7. 扁平足の人はランニングやウォーキングを続けられますか?

適切なサポートや専用の靴を使用すれば、扁平足の人でもランニングやウォーキングを続けることができます。インソールの使用やストレッチが負担軽減に役立ちます。

Q8. どのようなエクササイズで改善できますか?

底筋を鍛えるエクササイズや、足のアーチを支える筋肉を強化する運動が効果的です。特に足の指を使ったトレーニングが役立ちます。

Q9. 悪化するとどのようなリスクがありますか?

足や膝、腰に負担がかかり、変形性関節症やアキレス腱炎、足底筋膜炎などのリスクが高まります。早期にケアを行うことが重要です。

Q10. 手術で治すことができますか?

軽度の扁平足は手術を必要としませんが、重度の場合や保存的な治療が効果を示さない場合には、手術が検討されることがあります。手術によってアーチを修正することが可能です。

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