半月板損傷

半月板は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(スネの骨)との間にある軟骨で、内側と外側にそれぞれ存在します。この軟骨は、関節にかかる体重を分散させ、関節の安定性を保つ重要な役割を果たしています。日常生活やスポーツなどで半月板に過度な負荷がかかり、損傷や傷が生じた状態を「半月板損傷」といいます。

原因

半月板損傷は、体重がかかった状態で膝をひねったり、強い衝撃が加わることで発生します。また、前十字靭帯損傷と併発するケースも多く見られます。スポーツによる外傷が主な原因ですが、加齢に伴って半月板は脆くなり、高齢者では軽いケガや日常生活での動作でも損傷することがあります。このような場合は、外傷性ではなく非外傷性の半月板損傷として分類されます。

症状

膝の痛みとともに、曲げ伸ばしの際に引っかかるような感覚(キャッチング)が生じ、重症化すると膝が動かなくなる「ロッキング」状態になることがあります。この状態では、膝が曲げられず伸ばすことも困難になり、歩行が困難になるほどの激しい痛みが伴います。また、関節内で炎症が起きると水が溜まって膝が腫れたり、出血によって関節内に血液が溜まることもあります。

治療

半月板損傷の治療法は、手術を行わない「保存療法」と手術を行う「手術療法」の2つに大別されます。損傷の程度や場所、靭帯損傷の有無、不安定性などを考慮して治療方法が選択されます。

保存療法(手術以外の治療)

軽度の損傷や、血流のある部分で回復が期待できる場合には、保存療法が選択されます。以下の方法が一般的です。

内服薬・注射療法
痛みや炎症を抑える薬の服用や、関節内に溜まった水を抜く注射(関節穿刺)を行います。また、ヒアルロン酸や局所麻酔剤、ステロイドなどを注射して痛みを軽減し、膝を動かしやすくすることもあります。

装具治療
膝の不安定性を補うために、専用の装具を使用して膝をサポートします。装具によって膝への負担を軽減し、痛みの緩和や治癒の促進が期待できます。

リハビリテーション
膝の筋力や可動域の改善を目指し、リハビリを行います。再発や悪化を防ぐためにも、リハビリは重要な治療の一環です。

手術療法

手術療法には、損傷部分を縫い合わせる「半月板縫合術」と、損傷部分を切除する「半月板切除術」があります。どちらも、通常は関節鏡を使用した「鏡視下手術」によって行われます。

半月板縫合術
裂けた半月板を専用の器具で縫い合わせて修復する方法です。特に血流が豊富な外側1/3の部分が損傷している場合に適用されます。必要に応じて一部を切開することもありますが、半月板を温存できるため、将来的な関節変形のリスクが低くなります。

半月板切除術
損傷した半月板の部分を切除する方法です。縫合が難しい場合や回復が見込めない場合に選択されます。スポーツ復帰が比較的早い一方で、半月板を切除するため、将来的な関節変形のリスクが高まることがあります。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防とセルフケア

膝周りのストレッチや筋力トレーニングを実施することで、筋力と柔軟性を保ち、さらに向上させることが可能です。筋力トレーニングに取り組む際は、痛みがある場合は無理をせず、症状に応じてトレーニングの強度を調整することが重要です。

Q&A

Q1. 半月板損傷とは何ですか?

半月板損傷は、膝関節のクッションである半月板が、過度な負荷や突然の動きによって裂ける状態です。スポーツや日常生活でのひねり動作が主な原因です。

Q2. 主な症状は何ですか?

膝の痛み、腫れ、膝が引っかかる感じやロックされる感覚、そして膝を動かすときの違和感や不安定さがあります。

Q3. どのように診断されますか?

問診や触診、膝の動きを確認するテスト、そしてMRIや関節鏡検査などの画像診断を使用して確認されます。

Q4. 治療にはどのような方法がありますか?

治療には、安静やアイシング、リハビリテーションが一般的です。重度の場合には、関節鏡手術で損傷した半月板の修復や切除が行われることがあります。

Q5. 痛みを和らげるためのセルフケア方法はありますか?

セルフケアとしては、患部を冷やすアイシングや、膝を固定して負荷をかけないようにすることが有効です。痛みが続く場合は、専門医に相談することが重要です。

Q6. 予防するためにはどのようなエクササイズが効果的ですか?

予防には、膝周りの筋肉を強化するエクササイズが効果的です。特に大腿四頭筋やハムストリングの筋力を鍛えることで、膝への負担を軽減できます。

Q7. 悪化する前に医師に相談すべき症状は何ですか?

膝に強い痛みがある、膝がロックされる、歩行が困難になるといった症状が見られた場合は、早めに医師に相談することが重要です。

Q8. 治療には手術が必要ですか?

軽度の損傷はリハビリや保存療法で回復することが多いですが、重度の損傷や症状が長引く場合は、関節鏡手術が必要となることがあります。

Q9. 再発を防ぐためにはどのようなトレーニングが有効ですか?

膝の安定性を高めるために、膝周りの筋肉を強化するトレーニングが有効です。また、膝に過度な負担をかけない適切なフォームでの運動が再発防止につながります。

Q10. リハビリにはどのようなプログラムが効果的ですか?

リハビリには、膝の柔軟性を高めるストレッチや、筋力を強化するエクササイズが含まれます。理学療法士の指導のもと、段階的にリハビリを進めることが重要です。

モヤモヤ血管

 

顔・首

 
 
 

肩・腕・肘・手

 

 

腰臀部股関節

 

 
 

 
 

その他