ヘバーデン結節 手の変形性関節症の一種です。手の第1関節に見られるものをヘバーデン結節(Heberden結節)、第2関節に見られるものをブシャール結節(Bouchard結節)と言います。30歳代後半からみられるようになり、以後加齢とともに増加します(50歳代で30-50%が罹患)。 日本の一般人口を対象とした調査では、70歳以上の男女ともに手指のなかで少なくとも1つの関節にレントゲンで変形を認めた症例はほぼ100%であったと報告されています。但し、レントゲンの重症度は必ずしも症状と一致せず、変形があっても痛くない方もおられます。 他に重要な知見として、他部位の変形性関節症を合併しやすいという報告もありますのでご留意ください。 症状 人差し指から小指にかけての第1関節に、赤みや腫れ、痛みが生じ、指が曲がったままになるといった症状が現れることがあります。これにより、第1関節の可動域が制限され、動きが悪くなり、強く握ることが難しくなることもあります。さらに、指を使った動作、例えば食器洗いやパソコンでの入力、箸を持つといった日常的な動作の際に痛みを感じることが多く、じっとしていても痛みが続く場合があります。症状は主に人差し指から小指にかけて発症しますが、稀に親指にも影響が及ぶことがあります。 原因 発症の経緯は大きく2つに分かれます。1つ目は外傷に続いて発症するケースで、2つ目は特発性、つまり明確な原因がわからないケースです。外傷を除いた場合、裁縫や刺しゅう、農作業など、手作業を頻繁に行う職業や生活習慣を持つ人に多く見られることが知られています。また、へバーデン結節は「更年期以降の女性に多く発生」し、特に「女性は男性に比べて約2倍以上の確率で発症する」ことがわかっています。このことから、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が減少することが一因と考えられています。遺伝性についてはまだ証明されていませんが、母娘や姉妹など家族内で複数例見られることがあるため、遺伝的要因が関連している可能性も示唆されています。 治療 一般的な治療方法としては、保存療法(手術を伴わない方法)が挙げられます。これには、安静(固定を含む)、消炎鎮痛薬の使用、局所へのテーピングなどが含まれます。また、急性期には少量の関節内ステロイド注射が有効な場合もあります。保存療法で痛みが改善しない場合、手術を検討することもあります。手術には主に「関節固定術」と「関節形成術」があり、最近では人工関節の置換も行われています。それぞれの手術にはメリットとデメリットがあるため、専門医と十分に相談してから決定することが重要です。 モヤモヤ血管治療 従来の保存療法とは異なる、より積極的なアプローチとして、炎症の持続に関与している病的新生血管を減少させる微細動脈塞栓術、いわゆるモヤモヤ血管の治療という方法があります。詳細は別項をご参照ください。 理学療法 理学療法では関節の休息とバランスをとりながら、多くの関節を用いて運動させることで関節への負荷を分散し、大きい関節を安定した位置で使用することなどを指導します。タオルを絞る際には掌全体を使って手全体で絞る、書字に際してはグリップの太い器具を用いるようにする、瓶やペットボトルの蓋は滑り止めシートを用いて開けるなどといったことです。関節可動域と筋力の強化も行いましょう。握りこぶしをつくる、親指の腹を人差し指から小指に順に付ける、手のひらを机に置いた状態で手指をできるだけ広げるなどです。 予防 遺伝や体質的なこともありますが、当該関節の負担を減らすことは予防につながります。別項の理学療法についてご参照ください。また、変形関節症はどの部位であってもより早期に介入することが治療後の予後向上につながっています。薬や治療法の開発においても、変形初期の段階で食い止めるという点に注力されています。最新の治療法であるモヤモヤ血管の治療については、まだ始まったばかりで科学的な検証がこれからも必要ですが、炎症を持続させる原因となっている病的新生血管を減少させるので、ひょっとしたら変形の進行を予防できるのではないかと期待されています。いずれにしても、我慢しすぎず、早めに対処していくことが重要です。 ヘバーデン結節にもモヤモヤ血管が関係しているのでしょうか? 手指に限らず、変形性関節症にともなう炎症には必ずモヤモヤ血管が関与しています。 モヤモヤ血管治療について教えてください。 通常はカテーテルという細長い管を用いて当該モヤモヤ血管のすぐ近くから薬を投与する必要がありますが、手の場合は手首の動脈からの少量投与で、手及び手指全体に十分な量を浸透させることができます。つまり、手首の動脈に直接一時塞栓物質を注射する治療となります。所要時間5分程度、日帰り治療です。治療に伴い、熱感や疼痛を感じるほか、一過性に手指の色調が変化したり腫れたりしますが時間経過で改善します。刺激の少ない薬を選ぶことも可能ですので、治療をお受けになる際はご相談ください。治療は比較的簡易に受けられますが、手は非常に敏感な部位であり個別に投与方法や薬液調整が必要となることがあります。経験豊富な医師のもとで治療をお受けになることをおすすめいたします。 モヤモヤ血管治療を受けた後の経過について教えてください。 他部位に比べて改善は比較的早期にみられることが多いです。2週間~4週間ほどで症状の改善を実感できるでしょう。変形が治ったりはしませんが、腫れが引いた、赤みが消えた、圧したときの痛みや当たった時の痛みが改善した、四六時中ジンジンしていた痛みが無くなった、手全体の浮腫みがなくなった、浮き出ていた血管(静脈)が目立たなくなった、指が以前よりも曲げられるようになった、血行がよくなったせいか手に赤みが出て以前よりも温かくなったなどといった声をお聞きしております(個人差があります)。 モヤモヤ血管 顔・首 肩・腕・肘・手 胸 腰臀部股関節 膝 足 その他