脊柱管狭窄症

脊柱管とは、椎骨が連なって形成されたトンネル状の構造で、この中には脳から延びる脊髄神経が収まり、脳脊髄液に満たされています。特に腰椎部では、脊髄神経が馬尾神経や神経根に分かれています。脊柱管狭窄症とは、背中側の黄色靭帯が厚くなったり、椎間板が突出してヘルニアを引き起こしたり、骨が変形して突出することで、脊柱管が狭くなる状態を指します。このような脊柱管の狭窄により、内部の神経が圧迫されることが特徴です。これらの変化は主に加齢に伴うもので、高齢者に多く見られます。しかし、狭窄があってもすべての人に症状が出るわけではなく、画像診断で狭窄が確認されても、痛みやしびれなどの症状が現れないこともあります。

原因

腰部脊柱管狭窄症の原因は複数あり、主に腰への負担が繰り返される作業や肥満が要因となり、黄色靭帯が肥厚し神経を圧迫することが一般的な原因とされています。その他にも、骨粗鬆症による圧迫骨折や側弯症による骨の変形が原因で、骨や椎間板が神経を圧迫するケースもあります。また、喫煙や糖尿病、ストレスの影響が関与しているという報告もあります。

症状

歩行時に下肢のしびれや足のもつれが生じることが、腰部脊柱管狭窄症の特徴の一つです。この病気では、腰痛が強くない場合が多いものの、背筋を伸ばして立ったり歩いたりすると脊柱管が狭まり、馬尾神経が圧迫されて、下肢にしびれや足の動きに不調を感じることがあります。200〜300m歩いただけでこれらの症状が現れるため、長時間歩行するのが難しくなります。

初期症状から進行時の症状で特徴的なのは、前かがみになってしばらく休むと症状が治まり、再び歩けるようになる点です。この繰り返しの状態を「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」と呼び、特に朝や寒い季節に症状が出やすい傾向があります。通常、歩行は筋力を強化するため推奨されますが、この病気では逆に症状が悪化することがあります。病気が進行すると、仰向けでの寝姿勢でも足のしびれが発生し、横向きで背中を丸めないと眠れなくなることがあります。また、排尿・排便障害が現れることもあります。

治療

画像検査の結果や症状の程度に応じて、まずは保存療法(手術以外の治療)が行われます。具体的には、痛みを和らげる鎮痛薬、血液循環を促進する薬、ブロック注射、リハビリテーションなどによって症状の緩和を図ります。もし保存療法で十分な効果が得られない場合や、症状が強く生活に大きな支障が出ている場合、足が動きにくい、尿が出にくいなどの神経症状が現れた場合には、手術が検討されます。

ブロック注射
主に「仙骨部硬膜外ブロック」という方法で、尾骨付近から薬を注射し、脊柱管内に薬液を流し込む治療です。この注射は、痛みを伝える信号を遮断し、痛みを一時的に和らげる効果があります。効果は一時的ですが、神経の癒着を改善したり、痛みを引き起こす物質を洗い流すことで症状が大幅に改善することもあります。通常、複数回行うことが多いです。

薬物治療
鎮痛薬としてはロキソニン®、ボルタレン®、バファリン®、カロナール®などが使われるほか、神経痛に効くリリカ®やサインバルタ®、血流を改善するオパルモン®、さらには痛みに対して効果のある抗うつ薬も処方されることがあります。

手術治療
手術を検討するのは、保存療法が効果を示さず、日常生活に重大な支障が出ている場合や、足の動きが悪くなる、歩行困難といった進行した症状が現れた場合です。

モヤモヤ血管と運動器カテーテル治療

近年注目されている治療法として、運動器カテーテル治療があります。この方法は、痛みを長引かせている微細な病的新生血管、通称「モヤモヤ血管」に直接アプローチすることで症状を改善します。モヤモヤ血管が発生するとなぜ痛みが生じるのかについてご説明します。損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより炎症が起きている部位には、その修復の過程で血管が増えます。痛みの原因部位にできてしまう異常な血管が、血管造影画像では、かすんでぼやけて見えるため、この新生血管をわかりやすいように“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管は通常、出来ては消え、出来ては消え、ということを繰り返していますが、何らかの原因で消えなくなった病的新生血管のそばには病的な神経も増殖していることが分かっています。これらが痛み信号を発するほか、病的血流が増えることで局所の組織圧が高まることなどにより、五十肩や腰痛、膝の痛みなどの長引く痛みが引き起こされると考えられています。一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。微細な血管は通常の治療ではアクセスが難しい部位に存在します。運動器カテーテル治療では、これらの血管にカテーテルを用いて薬剤を直接注入し、炎症を抑えます。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は、この治療法を検討されるとよいでしょう。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込357,500円〜434,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

運動器カテーテル治療のメリット

  • 有効性:薬剤を内側から直接患部に届けるため、高い有効性が期待できます。
  • 即効性:夜間痛・強い安静時痛については早期から改善します。
  • 安全性:ステロイドのような副作用がなく、長期的な使用が可能です。血管から作用させるのみであり、組織を傷つける心配がありません。
  • 低侵襲:負担の少ない治療であり、当日から治療後の特別な制限は不要です(日帰り手術)。小児~高齢者まで幅広く気軽に受けていただけます。
  • 効果の持続:治療効果が長期間持続するため、再発のリスクが低減されます。

予防とセルフケア

腰部脊柱管狭窄症の予防には、腰に負担をかけない姿勢や動作を心がけ、背骨を適度に動かすことが重要です。

腰に負担をかけない姿勢や動作
過度な腰への負担は、脊柱管狭窄症の原因になるため、避けることが大切です。長時間デスクワークをする場合、猫背の姿勢が続くと椎間板に負担がかかり、ずれてしまう可能性があります。1時間に1回は立ち上がって軽く歩くなど、姿勢をこまめに変えるようにしましょう。逆に、長時間の立ち仕事で腰を反らす姿勢が続くと、椎間板に逆方向の負担がかかります。重い荷物を持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて腰を落とし、正しいフォームで持ち上げるようにしましょう。

背骨を適度に動かす
背骨を適度に動かすことで、椎間板のずれや背骨の変形を予防することができます。仰向けで膝を抱えて腰を曲げたり、うつ伏せで腰を反らすストレッチを行うことで、背骨の柔軟性を維持しましょう。

Q&A

Q1. 腰や背中に痛みを感じる原因は何ですか?

腰や背中の痛みは、脊柱管が狭くなり神経が圧迫されることで起こることがあります。特に、加齢による関節や靭帯の変化が影響している場合が多いです。

Q2. 長時間立ったり歩いたりすると足がしびれるのはなぜですか?

長時間立ったり歩いたりした際に足がしびれるのは、脊柱管が狭くなり神経が圧迫され、血流が悪くなるためです。この症状は特に脊柱管狭窄症でよく見られます。

Q3. 座ると痛みが和らぐのはどうしてですか?

脊柱管狭窄症では、座ったり前かがみになると脊柱管が広がり、神経への圧迫が軽減されるため、痛みが和らぐことがあります。

Q4. 腰の痛みが長引く場合、どのような治療法が効果的ですか?

腰の痛みが続く場合、物理療法やリハビリが有効です。症状が重い場合には、薬物療法や手術が検討されることがあります。

Q5. 腰痛を予防するために日常的にできるストレッチはありますか?

腰痛を予防するためには、腰や背中の筋肉を柔軟に保つストレッチが効果的です。適度な運動も腰の健康を維持するのに役立ちます。

Q6. 歩行中に足の痛みやしびれが出た場合、どう対処すれば良いですか?

歩行中に痛みやしびれが出た場合、無理に歩き続けず、座って休むことが推奨されます。症状が続く場合は、専門医に相談しましょう。

Q7. 脊柱管狭窄症の初期症状にはどのようなものがありますか?

初期症状には、長時間の歩行や立位での足のしびれ、腰の痛みがあります。早期に対応することで、症状の進行を抑えることができます。

Q8. 脊柱管狭窄症の進行を遅らせるためにはどのような生活習慣が重要ですか?

進行を遅らせるためには、無理のない範囲での適度な運動や、姿勢の改善が大切です。特に腰に負担をかけない生活習慣を心がけましょう。

Q9. 脊柱管狭窄症の治療には手術が必要ですか?

軽度の症状の場合は、非手術的な治療が効果的ですが、症状が重い場合や痛みが日常生活に支障をきたす場合は、手術が必要になることがあります。

Q10. 脊柱管狭窄症のリハビリにはどのようなエクササイズが効果的ですか?

リハビリでは、腰や背中の筋肉を強化し、柔軟性を高めるエクササイズが効果的です。専門家の指導のもとで行うことで、症状の軽減が期待できます。

脊柱管狭窄症の実例紹介

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