SIRVA:コロナウイルスワクチン接種後の疼痛

【40代:女性】3回目の新型コロナウイルスワクチン接種後に生じ、半年悩み続けた肩から肘の痛み(SIRVA)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

半年前、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種後1週間くらいから急に左肩の痛みが出始めました。当初は筋肉痛がひどくなったような痛みでしたが、その後さらに増悪して可動域が狭まり、腕を動かすと激痛がするようになりました。症状は左肩~左肘に及び、乳酸が溜まったような鈍い怠さを感じることもありました。ワクチン接種後の肩の痛みであるSIRVAを疑い当院を受診されました。

診察時の所見

左肩関節の可動域制限(外転90度、外旋45度、結帯動作困難)を認めました。レントゲンでは異常ありませんでしたが、エコー検査では随所に病的新生血管(モヤモヤ血管)を反映した異常血流信号を認めました。写真では、肩甲下筋腱周囲に異常血流信号を伴っているのが観察できます。強い肩関節周囲炎が起きている一方で、明らかな組織損傷は認められず、時系列(経過)と併せてSIRVAとして矛盾しないものと判断しました。微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)の適応であり治療を受けていただきました。

治療の所見

左肩関節を取り囲むように治療を行いました。血管造影を行うと、肩甲上動脈、烏口枝、前上腕回旋動脈にて病的新生血管(モヤモヤ血管)が造影剤の濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後2週間で痛みの程度は4割ほど減少しました。その後順調に改善し、治療後2ヶ月時点では左肩の痛みは完全消失、可動域もほぼ全快していました。動作時の痛みがわずかに残っているのみでした。その後も順調に経過し、特に再発はみられていません。SIRVAの場合、改善の経過には個人差があり幅がありますが、本症例は半年経過しているにもかかわらず痛みのみならず、可動域まで非常に早期に改善しました。本当に良かったと思います。尚、SIRVAでは肩だけでなく、上腕~肘、前腕まで広く痛みを感じていることも少なくありませんが、ほとんどの場合で肩の治療をすることにより上腕から肘の症状もとれます。

新型コロナウイルスワクチン接種後遺症の詳しい病状説明はこちら

関連記事