SIRVA:コロナウイルスワクチン接種後の疼痛

【50代:女性】新型コロナウイルス感染後遺症(Long COVID)に新型コロナウイルスワクチン接種後遺症(SIRVA)を合併した症例

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年9ヶ月前に新型コロナウイルスに感染し、自宅療養で軽快しましたが(咳・咽頭痛・倦怠感・軽度の味覚障害)、全身倦怠が残りうつ状態となったため後遺症外来に通院後心療内科に継続して通院していました(デュロキセチン(サインバルタ)40mg/day内服継続中)。半年前に3回目の新型コロナウイルスワクチン接種を受けた直後から脇がかなり腫れてしばらく続きました。五十肩かと思っていましたが、2ヶ月経つと腕が痛くなり左上肢のしびれや力の入りにくさまで感じるようになりました。可動域がだんだん狭くなり、常に痛みを感じるほか夜間痛も生じていました。整形外科を受診しましたが、肩関節には異常がないと言われるのみでした。当院のことを知り受診されました。

診察時の所見

レントゲンでは頸椎や左肩関節には異常ありませんでした。エコー検査では左肩関節に一定の炎症所見を認めた一方で、腱板断裂などの組織損傷はみられませんでした。症状の性状やワクチン接種後の経過と併せてワクチン接種後の肩の痛みであるSIRVAと診断しました。一方、通常よりもかなり広い範囲に痛みやしびれを自覚しており、全身の倦怠感など新型コロナウイルス感染後遺症、いわゆるLong COVIDを合併している状態と判断されました。いずれも慢性炎症が関わっており、SIRVAおよびLong COVIDの治療として、両首肩および左肩関節に対する微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。

治療の所見

特に、腫れていたという左脇に関係した血管でモヤモヤ血管が造影剤の濃染像として描出されました。通常の肩関節の範囲を超えて側胸部や脇から背中にかけての血管、さらには頸部や肩の血管を治療しました。同様に多量のモヤモヤ血管が確認されました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

治療後2週間くらいで夜の痛みは改善し、左を下にして寝られるようになりました。首も楽になってきました。以後も順調に経過し、2ヶ月後には痛みはほとんど消失しました。一定のこりはまだ残っていますが、心理的な状態や睡眠についてもずいぶんと改善しました。新型コロナウイルス感染後遺症(Long COVID)と新型コロナウイルスワクチン接種後遺症(SIRVA)の合併でずいぶんと辛い思いをされたことと思いますが、お身体だけでなく心理的にも改善されて本当によかったです。Long COVIDはSIRVA以上に手強い病気ですが、当院では解決の糸口を探り工夫を凝らして治療を行っています。

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