SIRVA:コロナウイルスワクチン接種後の疼痛

【70代:男性】キャッスルマン病患者に生じた新型コロナウイルスワクチン接種後の肩関節周囲炎(SIRVA、キャッスルマン病、肩関節周囲炎)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

9ヶ月前に、7回目の新型コロナウイルスワクチンを接種したところ、2ヶ月くらいしてから左腕や肩が痛むようになりました。以前に四十肩や五十肩も経験がありましたが、その時とは異なる痛みを感じました。朝起きた瞬間が特に痛みました。持病として、キャッスルマン病があり2週間毎にアクテムラの点滴注射を受けていました。

診察時の所見

左肩関節では一定の可動域制限がありました(真横には水平までしか挙げられない、反対の肩に手を回せない、後ろには臀部までしか手を回せないなど)。首の可動域制限の他、肩甲骨周囲では強い圧痛を認めるなど、比較的高度の首肩こりも合併していました。エコー検査では肩関節前方の観察において、モヤモヤ血管を反映した異常血流信号を認めたほか、肩甲下筋腱腫脹および部分断裂、僧帽筋および周囲筋膜の線維化所見を認めました(硬さを反映して白く映る)。レントゲンでは、肩関節や頸椎は保たれていたものの、後頸部において石灰所見を認めました。以上より、左肩関節周囲炎、首肩こりと診断されました。肩関節周囲炎の中でも、ワクチン接種後の肩の痛みであるSIRVAおよび、有痛性腱板損傷の合併が疑われました。強い炎症が起きていることは明らかでしたので、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)の適応と判断し治療を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、首こりの主要な責任血管である深頸動脈、肩関節においては肩甲上動脈および胸肩峰動脈にて特にモヤモヤ血管(病的新生血管)が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

治療後2週間でほとんど痛みは無くなりました。可動域制限はまだ残っていました。治療後1ヶ月半、可動域も大幅に改善し、後ろに手を回す動作以外はほぼ全快しました。ゴルフも問題なくできていました。順調に経過され、以後受診されていません。半年以上悩まされていた症状でしたが、非常に早期から快復されました。キャッスルマン病は、リンパ節腫脹と慢性炎症を特徴とする希少疾患であり難病指定されています。今回の肩関節周囲炎の発症は一つにはワクチン接種がきっかけであり、もう一つにはこうした持病が関係していた可能性があります。いずれにしても、運動器カテーテル治療の良い適応であり、本症例では強い炎症を反映して、効果が早期から現われました。

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