SIRVA:コロナウイルスワクチン接種後の疼痛

【50代:女性】交通事故後遺症に新型コロナウイルスワクチン接種後遺症を合併・・治療により、痛みだけでなく滑舌も改善した症例(交通事故後遺症、むち打ち症、新型コロナウイルスワクチン接種後遺症、SIRVA、構音障害)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

6年前に交通事故でむち打ち症となり首を痛めました。その後も一定の症状は残っていました。新型コロナウイルスワクチン3回目接種までは一時的に腕が痛くなっても3日ほどで治っていましたが、4回目接種後、肩からちぎれそうな激痛、腕を外側に開くことができない、左半身がビリビリと痺れたり震えたりするなどの症状のほか、交通事故後遺症である首の症状も悪化してきました。交通事故後から雨の日には頭痛がひどかったのですが、特に頭部左側のこめかみのあたりがズキンズキンと痛むようになりました。食いしばりや顎関節症はありませんでした。2ヶ月以上経過しても改善しないため、新型コロナウイルスワクチン接種後遺症や、交通事故後遺症の加療目的で当院を受診しました。

診察時の所見

首の可動域が特に左側の側屈・回旋動作などで著しく制限されていたほか、後屈も中等度の制限がありました。左肩関節にも、外転90度、外旋45度など(その他後ろには臀部までしか手を回すことができない)一定の可動域制限がみられました。レントゲンでは肩関節に異常なく、頸椎も一定程度の変形にとどまっており臨床所見からも頸椎症の関与は否定的でした。エコー検査では腱板などの明らかな組織損傷はなく、水腫(水の溜まり)もありませんでした。異常血流信号は散見されました。肩関節周囲炎が生じていることは明白であり、組織損傷を伴っていないことやワクチン接種と密接に関係している経過より、SIRVA(ワクチン接種後の肩の痛み)、およびそれに伴い増悪した以前からの交通事故後遺症(むち打ち症後遺症)として微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただくこととしました。

治療の所見

首の障害は左に偏っているものの、通常両側に存在していることから両側頸部および左肩関節に対して治療を行いました。頸部では、特に後頸部の責任血管の一つである上行頸動脈造影において病的新生血管(モヤモヤ血管)が造影剤の濃染像として描出されました。肩関節では、烏口枝、前上腕回旋動脈において腱板粗部領域や腋窩嚢領域などで同様にモヤモヤ血管を認めました。治療後は画像上速やかに消失しました。
*頸部の治療は特有の注意点がありますので、十分経験のある施設にてご相談ください

治療後の経過

治療後2週間、まだ左肩の痛みは残っていた一方で、『滑舌が良くなった。れぎゅらーなどの言葉が言えるようになった。早い歌も歌えるようになった』といった特徴的な改善経過を認めました。以前から、後頸部を押したときだけうまく話すことができていたそうで、治療後はそうしなくてもスムーズに言えるようになったとのことでした。後頸部における何らかの悪影響が改善されたことによるものと思われますが、思わぬ改善でした。治療後1ヶ月半で左肩関節の痛みも7割程度改善されました(3/10程度)。まだ動作時の強い痛みは残っていました。ひどくうずくまるような激痛は減ってきて、家事に伴う痛みも改善されてきました。仕事の都合などあり、治療後5ヶ月が最終受診となりましたが、左上腕の痛みのほか、リハビリを重ねることで可動域も改善し、頭痛の程度も軽くなり、滑舌も改善したままで再増悪することなく順調に経過されています。
ワクチン接種後遺症と、交通事故後遺症が混在していて多岐にわたる広範囲の症状を生じていましたが、改善されて本当に良かったです。後遺症の場合、すぐにすっきりというわけにはいきませんが、残った症状も自然経過で快復することが期待されます。本症例では滑舌が良くなった、早い歌を歌えるようになったという特徴的な回復経過がありましたので、それも含めて呈示しました。交通事故の衝撃で何らかの可逆的な神経障害が生じていたものがカテーテル治療により改善したものと思われます。改めて、頸部障害の影響の大きさを実感した症例でした。

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