SIRVA:コロナウイルスワクチン接種後の疼痛

【50代:女性】コロナウイルスワクチン接種後の後遺症?副反応?接種後から3ヶ月続いた手指の激痛

受診までの経過

コロナウイルスワクチン(モデルナ社製)接種から3ヶ月になります。接種後の夜から両手、特に指は激痛でした。リウマチや膠原病の検査はひととおりしましたがすべて異常ありませんでした。右手は中指がソーセージ様で第2関節の皮膚が盛り上がり、その他の指も紫色に腫れ上がっています。左手は親指、人差し指にワクチン接種後2週間でアッヘンバッハ症候群が起こり1週間で紫斑は消失したものの親指の第1関節が白く盛り上がり痛みとこわばりで動きが悪いです。カロナール500mgを服用で様子をみるのみですが、24時間激痛があり日常生活も普通に送れません。左肩ワクチン接種時に出血があり内出血もひどく残っていました。肩と首の痛みが続きましたが少し落ち着いてきました。時々ピリピリした痛みは残っていました。指を切り落としたくなる痛みに心が折れています。モヤモヤ血管に該当するのかはわかりませんがどこを受診したらよいのかもわかりません。治る日は来るのでしょうか。(ほぼ原文どおり)
上記のようなご相談のメールをいただきました。詳細をお聞きしたところ、元々、右手中指の腱のガングリオン手術を2年前に受けた後少し神経痛が残っている状態でした。皮膚科ではステロイド軟膏が処方されましたが特に効き目はない、カロナールを飲むと少し痛みが軽減しますが効き目が切れた時の痛みは強い。左上腕の痛みはだいぶ落ち着いてきたが、とにかく右手全指と左親指・人指し指がつらい痛い時は右中指の腱が腫れてくる。入浴など温めると増悪するため、普段から炊事では冷たい水を使用するようにしている。左親指の第一関節やCM関節周囲には水泡ができていたとのことでした。尚、以前から難聴および内耳性めまいがありました。

診察時の所見

来院時にはアッヘンバッハ症候群は改善しており色調変化は観察されませんでした。エコー診察を行ったところ、左肩関節には明らかな異常所見はありませんでした。症状の性質を含めてSIRVAは否定的でした。一方、CM関節や左母指の第1関節には関節変形を認めましたがそれほど高度の変形ではありませんでした。手術の既往のある右中指は腱および腱鞘の肥厚を認めました。診断としては、CM関節症、左母指ヘバーデン結節、右3指腱炎・腱鞘炎を含めた手指の慢性炎症がワクチン接種により賦活化され、難聴や内耳性めまい及び過大なストレスと関連した知覚過敏により疼痛が増強された病態ではないかと推察されました。慢性炎症が痛みに関与していることは明らかでしたので、微細動脈塞栓術の適応と判断して手の動脈注射治療(動注治療)を受けていただきました。

治療の所見

手の動注治療とは、手首の橈骨動脈から直接一時塞栓物質を投与する治療であり5分とかからない簡易の治療です(詳細は、令和の痛み治療Q&A手指へのモヤモヤ血管治療を御参照ください)。本症例の場合、元々一定の知覚過敏が存在していた状態に加えて強い心理的ストレスにさらされていましたので、投与に際しては極めて緩徐に、通常よりも少量で治療を行いました。

治療後の経過

注射後1週間は変化がなかったものの、その後徐々に痛みが和らぎ、1ヶ月の再診時点では6-7割方改善しました。以前は入浴もままならないほどの痛みでしたがそれが良くなりました。痛みを忘れている時間ができるようになったほか、指がまっすぐ伸びるようになりました。天気が悪いとジンジンしていましたがそれも改善しました。右4,5指の痛みはほぼ消失、右3指の痛みおよび左母指のピリピリする痛みだけ残っていました。残存する痛みに対して2回目の動注治療を行いました。初回は帰りの電車でも痛みが強くて切符など駅員さんに出してもらわないといけないほどでしたが、2回目治療後の痛みはだいぶ軽くなりました。さらに1ヶ月後、左手指はほとんど痛みがなくなり、右手の中指(3指)が時々痛む程度とのご連絡をいただきましたがご事情によりまだ診察には来られておりません。自然経過でさらに改善することを期待しています。

新型コロナワクチン接種による合併症「SIRVA」の詳しい説明はこちら

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