SIRVA:コロナウイルスワクチン接種後の疼痛

【60代:女性】4回目の新型コロナウイルスワクチン接種後に生じた左腕の耐え難い痛み(SIRVA)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

1年3ヶ月前に4回目の新型コロナウイルスワクチンを接種してから左腕の痛みが続いていました。3回目までは接種後2-3日で痛みが退いていたのですが、今回は退きませんでした。病院では湿布と痛み止め(ロキソニン)を処方されました。ロキソニンを服用すると一時的には多少楽になりますが、半年前からは可動域が悪化し、3ヶ月前からは夜間痛も伴うようになりました。手に力を入れたり伸ばしたりすると痛く、常に重い感じがしていました。最近は眠れないほどの痛みと指先にかけての痺れが出たこともあり当院を受診されました。

診察時の所見

左肩関節に可動域制限を認めました(外転80度、外旋45度、反対の肩に手を回せない、後ろに手を回せない)。エコー検査では、左肩関節前方からの観察において、モヤモヤ血管(病的新生血管)を反映した異常血流信号を豊富に認めました。レントゲンでは特に異常はありませんでした。典型的なSIRVA(ワクチン接種後の肩の痛み)と診断されました。微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)の適応であり、治療を受けていただきました。

治療の所見

血管造影を行うと、肩甲上動脈、烏口枝、前上腕回旋動脈、後上腕回旋動脈の各血管にてモヤモヤ血管が濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

治療後1週間くらいから改善してきて、治療後2週間では服の着脱で顔をしかめるようなことは無くなりました。寝返りができるようになりました。上腕の重たい感覚もとれました。治療後1ヶ月半、85%の痛みはとれました(1.5/10程度)。可動域も劇的に改善し、後ろに手を回す動作以外は全快しました。プールでビーチボールに腕を伸ばした際に痛めることがありましたが(軽微の腱板損傷疑い)、その後も順調に経過されほぼ痛みは消失しました。後ろに手を回す動作も改善傾向です。残存症状については自然軽快が見込まれるため終診としました。SIRVAの症例は、ひと頃より頻度は少なくなってきていますが、まだ時々ご相談いただいています。よくあるご質問の一つに、『腕が痛いのに肩を治療するだけで治るのですか?』といったことがあります。同じ肩関節周囲炎である五十肩と比較して、SIRVAでは腕~手指の症状を伴う頻度が高いのですが、ほとんどの場合、肩関節を治療することで腕~手指の症状も一緒に改善されます(腕の治療を併施することもあります)。
予防するためのワクチン接種で辛い症状を患ってしまうのは本当に不幸なことですが、実際に一定の頻度で生じます。カテーテル治療の良い適応ですので、お悩みの方はお気軽にご相談いただければと思います。

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