SIRVA:コロナウイルスワクチン接種後の疼痛

【70代:女性】躁うつ病患者に生じた、新型コロナウイルスワクチン接種後の肩の痛み (躁うつ病、SIRVA)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

3週間前に4回目の新型コロナウイルスワクチン接種を受けました。2-3日は何ともなかったのですが、その後痛むようになり病院を受診したところ、ロキソニンを処方されました。夜間痛もありましたが、ロキソニンを内服することで何とか寝られました。躁うつ病の既往があり、元々多数の服薬がありロキソニンを飲み続けることが心配であること、体温調節が困難となり下痢や頭痛などの体調不良も続くため早期治療を希望して当院を受診されました。
内服薬;スルピリド、ロラゼパム、炭酸リチウム、レンドルミン、レスリン、サインバルタ

診察時の所見

比較的発症から間もないこともあり、左肩関節の可動域は保たれていました。内旋動作で痛みがありました。エコーでは滑液包水腫を認めたほか、肩甲下筋腱の部分断裂および周囲の異常血流信号の増強を認めました。有痛性の腱板損傷を一部伴っており、典型的ではないものの症状経過(時系列)よりSIRVAとして矛盾しないと判断しました。糖尿病(炎症体質)や躁鬱病(痛みを制御する機能の低下が内在している可能性あり)があるなど、治療抵抗要因がいくつかあり症状の改善に時間を要する可能性がある一方で、発症早期であり治療による早期の改善が期待できると判断し、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。首肩こりもあり併せて治療を行いました。

治療の所見

肩甲上動脈造影にて、病的新生血管(モヤモヤ血管)が造影剤の濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。その他複数の血管を治療して終了しました。

治療後の経過

治療後10日ほどで痛みは改善してきました。治療後3週間の再診時には痛みは完全に消失していました。首のツッパリなども無くなりました。『気力が無くなっていて、何もする気にならなかったが意欲が出てきた。料理もできるようになった。本当にうれしい。首肩も軽くなった。』と言われました。その後も再発することなく順調に経過しています。

本症例は発症して1か月以内であり、通常であれば自然に回復する可能性を考慮して対症療法で様子をみるところですが、既に夜間痛を生じていて痛みは増悪していっていること、糖尿病があり炎症が持続しやすいこと、何より持病として躁うつ病があり痛みの制御機構の破綻により病状が悪化したり、破局的思考に陥っていく懸念があることなどより微細動脈塞栓術による積極的治療を行いました。こじれることなく、非常に早期に完治して本当に良かったです。心療内科・精神科に通院して投薬を受けている方は、ひとたび痛みが悪化し持続すると、難治の状態に陥り、原疾患の病状まで悪化してしまうことがあります。同様の方は、こじらせずに早めに解決することをおすすめします。

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