SIRVA:コロナウイルスワクチン接種後の疼痛

【70代:男性】新型コロナウイルスワクチン接種後、歩けないほどの膝の痛みを患った症例(新型コロナウイルスワクチン接種後遺症、変形性膝関節症)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

10ヶ月前に新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を受けた後、2週間くらいしてから腰~下肢に痛みが生じ両膝を曲げられなくなりました。半年ほどの経過で腰は徐々に良くなり、右膝は曲げられるようになりましたが、左膝は仕事で膝をついて作業をしているうちに痛みが増悪してしまいました。四六時中、差し込まれるような痛みがあり、ついには痛みで歩けなくなりました。テレビを観て横になっているばかりで、やる気も元気もなくし、周囲からは認知症も心配されていました。整形外科では左膝にステロイド注射を3回、ヒアルロン酸注射を5回してもらいましたが、全く効果はありませんでした。

診察時の所見

レントゲンでは膝関節の変形は軽微でしたが、エコー検査では軽度~中等度の変形性関節症の所見を認めました。炎症に伴い増生した病的新生血管を反映した、血流信号の増強も散見されました。一方、明らかな腱損傷や膝蓋骨の異常は認められませんでした。変形性膝関節症の所見としては軽症である一方、本人の主張では明らかにワクチン接種後からの痛みであるとのことでした。これまでワクチン接種後に膝の慢性疼痛を後遺症として訴えられるという事例はありませんでしたが、おそらく、元々の軽度の変形性膝関節症による慢性炎症状態が、ワクチン接種により助長されたのではないかと考えられました。いずれにしても、慢性炎症が原因であることは明白でしたので、モヤモヤ血管(病的新生血管)に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を受けていただきました。

治療の所見

特に左膝の内側の血管において、モヤモヤ血管が造影剤の濃染像として描出されましたが、やはり典型的な変形性膝関節症と比べるとその程度はややおとなしい印象がありました。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管
治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療費用:税込324,500円
主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

治療後の経過

治療後10日くらいから改善し、治療後2週間では7割方症状が改善しました(3/10)。まだ、半月板の下の方に痛みを感じる、曲げると楽だが、足をずっと伸ばしていると膝の上の方に痛みを感じるなどの症状が残っていました。治療後1ヶ月、痛みが全くなくなりました。特に問題なく歩けるようにもなりました。非常に経過良好であり、その後も順調に過ごしています。

ワクチン接種後遺症として、首肩、上肢の痛みの他、全身の不調などの訴えなどがありますが、膝が痛いというのはあまり経験しません。本症例では、実際に変形性膝関節症も有していたことから、やはり両者の合併によるものと思われます。一方、治療後の反応としては変形性膝関節症の治療後よりも遥かに早期から劇的に改善しました。これはやはり、ワクチン接種による異常免疫反応が何かしら役割を果たしていたのではないかと強く示唆されました。非常に興味深い症例でした。ひょんなことをきっかけにして、危うく寝たきり・認知症にまで至るところでしたが、すっかり元の日常を取り戻されて本当に良かったです。

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