股:変形性股関節症など 【10代:男性】サッカー中の辛い鼠径部痛、高校生に生じたグロインペイン症候群 2023.02.22 鴨井院長による動画解説 受診までの経過 高校のサッカー部に所属していました。3ヶ月前から両側股関節が痛むようになり、安静にすると改善するものの、サッカーをやり始めると再発するということを5回以上繰り返していました。ひどい時は歩くだけでも痛みがありました。サッカーをやると痛くなるためウォーミングアップにしか参加できないという状態でした。整形外科ではインソールを作ってもらい、安静や超音波療法などで様子をみていましたが一向に改善されないため当院にご相談いただきました。 診察時の所見 股関節には概ね問題なく、鼠径部や恥骨結合~内腿の各部位で両側性に圧痛を認めました。症状の性質と併せてグロインペイン症候群と診断しました。グロインペイン症候群は微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)の適応疾患であり治療を受けていただきました。 治療の所見 疼痛部位に一致して、閉鎖動脈、内側大腿回旋動脈の各造影にてモヤモヤ血管(病的新生血管)が造影剤の濃染像として描出されました。10歳代ではモヤモヤ血管があまり目立たないことも経験されますが、本症例では非常に明瞭に確認されました。治療後は画像上速やかに消失しました。 治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態 治療費用:税込324,500円 主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。造影剤によるアレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。 治療後の経過 治療後1週間で痛みが改善し、2週間の再診時には消失していました。治療後1ヶ月まで安静を続けた後にボールを蹴る動作を再開しましたが、痛みが出る一歩手前のような感覚がしたため、中断しました。元々、2ヶ月後には完全復帰したいという強い希望がありましたが、無理をしないよう自重していただきました。その後、実際に治療後2ヶ月時点では、試合には出ていないものの、ドリブルなどは問題なくできるようになり、トレーニングで走ることも可能となりました。受診自体はこれが最終となり、その後は順調に改善され4ヶ月時点のご報告では、すごく調子が良くてサッカーも全力で出来ている、サッカーを諦めないといけないかと思っていたので本当に感謝しているとのことでした。その後も練習が過酷だと痛みが出ることはあるものの、何日か休むと治るため受診するには至らず過ごすことができています。高校生の男の子がサッカーを諦めなければならないかと思っていたとお聞きして、何とも言えず胸が詰まる思いがいたしましたが、復帰することができて本当に良かったです。復帰を焦る気持ちをこらえて自重していただいたことがその後の順調な経過につながりました。辛い経験を乗り越えたことは今後の困難に立ち向かう大きな糧となったことでしょう。今後のさらなる活躍を願ってやみません。 グロインペイン症候群の詳しい病状説明はこちら 【70代:女性】ダンサーに生じた先天性臼蓋形成不全が原因の典型的な変形性股関節症 前の記事 【60代:女性】CM関節症と言われるも、手の動脈注射治療により完全に痛みが取れた腱鞘炎の症例 次の記事