手の動脈注射治療

手や指は、家事や仕事、スマートフォンの操作、パソコン作業など、日常生活の中で繰り返し使う部位です。

「ペットボトルのふたを開けると親指が痛い」
「指を曲げ伸ばしすると痛む」
「朝起きると指がこわばっている」
「指の関節が腫れて痛い」
「ばね指や腱鞘炎がなかなか治らない」

こうした手・指の症状が長く続いている場合、その背景には関節や腱、腱鞘などに残った慢性炎症が関係していることがあります。さらに近年、慢性炎症が続いている場所には「病的新生血管」と呼ばれる異常な細い血管が増え、痛みを長引かせる要因の一つとなっていることが分かってきました。
なごやEVTクリニックでは、この病的新生血管、いわゆる**「モヤモヤ血管」**を減らすことを目的とした「手の動脈注射治療」を行っています。手首にある動脈から薬液を投与するため、痛みのある指や関節へ一つひとつ注射する必要がなく、複数の指に症状がある場合にも治療できることが特徴です。

手の動注費用

自由診療になっております。
費用は片側27,500円(税込み30,250円)両側40,000円(税込み44,000円)になります。
*主なリスク・副作用等:針を刺した場所が出血により腫れや痛みを生じたり、感染したりすることがあります(穿刺部合併症)。アレルギー(皮膚のかゆみ・赤み・息苦しくなるなどの症状)が出ることがあります。

なぜ手・指の痛みが改善するのか

手や指の痛みには、関節の変形、腱や腱鞘の炎症、外傷など、さまざまな原因があります。その中でも、なかなか治らない慢性的な痛みに関係していると考えられているのが**慢性炎症とモヤモヤ血管(病的新生血管)**です。身体の組織が傷つくと、その場所を修復するために新しい血管が作られます。本来であれば、組織の修復が進むにつれて炎症は治まり、新しく作られた血管も減少していきます。ところが、手や指への負担が繰り返されるなどして炎症が長引くと、本来は減少するはずの新生血管がその場所に残り続けることがあります。これが「モヤモヤ血管」と呼ばれる病的新生血管です。さらに、こうした異常な血管の周囲には痛みを感じる神経も一緒に増えることが知られています。

慢性炎症が続く

モヤモヤ血管が増える

周囲に痛みを感じる神経も増える

痛みが続く

さらに炎症が長引く

という悪循環が形成され、痛みが慢性化していくと考えられています。手の動脈注射治療では、このモヤモヤ血管を減少させることで慢性炎症と痛みの悪循環を断ち切り、手や指が本来持っている修復過程が進みやすい状態へ戻していくことを目指します。

手の動脈注射治療の特徴

痛い指へ直接注射しません

一般的な関節注射や腱鞘内注射では、痛みのある関節や腱鞘へ直接針を刺します。一方、手の動脈注射治療では、手首の動脈から薬液を投与します。炎症を起こしている関節そのものへ針を刺さないため、複数の指に症状がある場合でも、一つひとつの関節へ注射する必要がありません。

複数の指をまとめて治療できます

ヘバーデン結節やブシャール結節では、複数の指に同時に症状が現れることがあります。手の動脈注射では、手首の動脈から投与した薬液が血流に乗って手指へ広がるため、複数の指や関節に症状がある場合にも一度の治療で広い範囲へ作用させることができます。

切開・縫合を必要としません

手の動脈注射は手術ではありません。極細径の針を使用して動脈から薬液を投与するため、皮膚を切開したり縫合したりする必要はありません。

エコーで血管を確認しながら治療します

手首には動脈だけでなく、神経や腱などの重要な組織があります。なごやEVTクリニックでは、エコー(超音波)を用いて動脈の位置・太さ・走行や周囲組織との位置関係を確認しながら穿刺します。針先が動脈内に入っていることを確認したうえで薬液を投与することで、安全性と確実性に配慮して治療を行います。

日帰りで治療できます

入院は必要ありません。治療後は穿刺した部分を圧迫して止血し、体調に問題がないことを確認したうえで、その日のうちに帰宅できます。

このような手・指の症状でお悩みではありませんか?

  • 指を曲げたり伸ばしたりすると痛い
  • 手を握ると痛い
  • 物をつまむと指や親指の付け根が痛い
  • ペットボトルや瓶のふたを開けにくい
  • タオルや雑巾を絞ると痛い
  • ドアノブや鍵を回すと痛い
  • 箸やペンを持つと痛い
  • パソコンやスマートフォンを使うと指が痛む
  • 朝起きたときに手や指がこわばる
  • 指の関節が腫れている
  • 手や指に熱感がある
  • 夜、手や指が痛くて目が覚める
  • 複数の指が痛い
  • 湿布や痛み止めを使っても改善しない
  • ステロイド注射を受けても再発する
  • 手術以外の治療方法を探している

こうした症状が長引いている場合、関節や腱などに慢性炎症が残っている可能性があります。

手の動脈注射治療の対象となる主な疾患

手の動脈注射治療は、特定の一つの疾患だけを対象とした治療ではありません。慢性炎症やモヤモヤ血管が痛みに関与していると考えられる、さまざまな手・指の疾患が対象となります。

ヘバーデン結節

指先に最も近い第1関節(DIP関節)に生じる変形性関節症です。痛み、腫れ、熱感、こわばり、曲げ伸ばしのしにくさなどがみられます。手の動脈注射によって慢性炎症を鎮めることで、痛みや腫れ、こわばりなどの改善を目指します。ただし、すでに生じている骨や関節そのものの変形を元の形へ戻す治療ではありません。

ブシャール結節

指の中央にある第2関節(PIP関節)に生じる変形性関節症です。痛みや腫れだけでなく、指の曲げ伸ばしがしにくくなることがあります。病状が進行して関節が硬くなると改善しにくくなるため、関節の動きが保たれている段階で治療を検討することが重要です。

母指CM関節症

親指の付け根にあるCM関節に生じる変形性関節症です。「ペットボトルのふたを開ける」「タオルを絞る」「物をつまむ」「鍵を回す」など、親指に力を入れる動作で痛みが出やすくなります。慢性炎症やモヤモヤ血管が痛みに関与している場合には、手の動脈注射による改善が期待できます。

ばね指

指を動かす腱と、その腱が通る腱鞘に炎症が起こり、指の曲げ伸ばしで引っかかりや痛みが生じる疾患です。特に、腱や腱鞘の構造的な変化がまだ進んでいない早期では、炎症を抑えることで症状の改善が期待できます。一方、指が曲がったまま伸びないなど高度に進行している場合には、外科的治療が必要になることがあります。

腱鞘炎・ドケルバン病

手や指を繰り返し使うことで腱や腱鞘に炎症が生じ、痛みや腫れ、動かしにくさなどが現れます。慢性炎症が主体となっている場合には、手の動脈注射によって症状の改善を目指すことができます。

外傷・手術後に残った痛み

骨折や捻挫、手術そのものが治癒したにもかかわらず、痛みや腫れ、こわばりだけが長期間残ることがあります。こうした外傷後・手術後の慢性疼痛にもモヤモヤ血管が関与している場合があり、治療対象となることがあります。このほか、手関節の変形性関節症、TFCC損傷、軽症の手根管症候群、関節リウマチなどに伴う局所的な痛み・炎症などについても、病状を評価したうえで治療を検討します。


関節注射・ステロイド注射との違い

一般的な関節注射や腱鞘内注射では、局所麻酔薬やステロイドなどを痛みのある関節や腱鞘へ直接投与します。炎症を速やかに抑える効果が期待できる一方、効果が一時的で再発することもあります。また、ステロイドを同じ部位へ繰り返し注射する場合には、腱や靱帯などの組織への影響にも注意が必要です。一方、手の動脈注射治療はステロイドを使用する治療ではありません。手首の動脈から一時的な塞栓作用を持つ薬液を投与し、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管を減少させます。

つまり、

一般的な局所注射
→ 痛みや炎症がある場所へ直接薬剤を投与する

手の動脈注射
→ 動脈から薬液を届け、慢性炎症に関与するモヤモヤ血管を減らす

という違いがあります。

運動器カテーテル治療との違い

手の動脈注射治療と運動器カテーテル治療は、いずれもモヤモヤ血管を標的とする治療であり、基本となる考え方は共通しています。大きな違いは、薬液を届ける方法です。

運動器カテーテル治療では、血管内に細いカテーテルを挿入し、血管造影を行いながら病変を栄養している血管の近くまでカテーテルを進めて治療します。一方、手の動脈注射ではカテーテルを挿入せず、手首の動脈へ極細径の針を刺して薬液を投与します。そのため、通常の手・指の症状では、より簡便で身体への負担が少ない手の動脈注射を選択できる場合があります。ただし、手首そのものに病変がある場合や、病変が広範囲に及んでいる場合、重症例などでは、より選択的に血管を治療できる運動器カテーテル治療が適していることがあります。なごやEVTクリニックでは、病変の場所や重症度に応じて適切な治療方法を判断します。

手の動脈注射治療 FAQ

1.手の動脈注射の基本

Q1. 手の動脈注射とはどのような治療ですか?

慢性痛の治療として、痛みを長引かせる原因の一つと考えられている**モヤモヤ血管(病的新生血管)を大幅に減少させる「微細動脈塞栓術」**という治療方法が、世界に先駆けて日本で開発されました。これは、安全性の高い一時塞栓物質を用いて、痛みのある部位に生じた異常な細い血管を減らす血管塞栓術の一種です。

肩や腰などに対しては、カテーテルや血管撮影装置などの特殊な医療機器を用いる運動器カテーテル治療として行われています。この治療の考え方を応用し、体表から直接動脈に極細径の針を刺して薬液を投与することで、より簡便かつ低コストで行えるようにしたものが**「動脈注射治療」**です。

動脈注射治療は、体表から安全かつ効果的に治療できる部位に限られますが、その中で最初に治療方法が確立されたのが手の動脈注射治療です。

手の動脈注射は、手首にある橈骨動脈または尺骨動脈に極細径の針を刺し、そこから薬液を投与します。投与された薬液は血流に乗って手や指の痛みのある部位に到達し、モヤモヤ血管を減少させることで、長引く痛みの改善を目指します。

国内での手の動脈注射の症例数は、2025年末時点ですでに1万例以上に達しています。開発者が創業したオクノクリニックや、そのパートナークリニックとして発足した**なごやEVTクリニック(当院)**をはじめ、ライセンス契約によって導入施設が広がり、20268月時点では全国約190施設で受けられる治療となっています。

治療そのものに要する時間は非常に短く、熟練した施設では薬液の投与は数十秒程度で終了します。その後、穿刺した部分を止血し、問題がなければそのまま帰宅できる日帰り治療です。

 

Q2. 手の動脈注射は、どのような手の痛みに行う治療ですか?

手の動脈注射は、手や指に痛みや炎症が長く続いている方を主な対象とする治療です。特に、関節や腱などに慢性的な炎症が生じている病態や、外傷・手術後などに痛みが長引いている場合が治療の対象となります。

主な対象疾患・病態には、以下のようなものがあります。

  • 手指の変形性関節症
    ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症など
  • 腱・腱鞘の疾患
    腱鞘炎、ばね指など
  • 炎症性疾患
    関節リウマチに伴う手指の痛み・こわばりなどの諸症状、その他の膠原病に伴う手の症状など
  • 外傷・手術後の慢性痛
    骨折や捻挫などの外傷後に残った痛み、手術後に長期間続く痛みなど
  • 特殊な病態に伴う痛み
    CRPS(複合性局所疼痛症候群)、感染症後に長引く手の痛み(long COVIDなど)など

また近年、特に更年期(閉経前後)の女性にみられる**手や指の痛み、こわばり、しびれなどのさまざまな不調を「メノポハンド(Menopausal Hand)」と呼ぶことがあります。**これは一つの特定の疾患を指す名称ではなく、女性ホルモンの変化などを背景として生じる手の症状を包括的に捉えた概念です。

メノポハンドには、ヘバーデン結節やブシャール結節、母指CM関節症、腱鞘炎など、上記に挙げた病態が含まれることもあります。手の動脈注射では、こうした更年期前後に生じる手の症状についても、痛みや炎症の状態を診察したうえで治療適応を判断します。

 

Q3. 手の動脈注射は、一般的な関節注射や腱鞘内注射と何が違いますか?

一般的な関節注射や腱鞘内注射と手の動脈注射では、注射する場所だけでなく、使用する薬剤や治療の目的、効果の現れ方が大きく異なります。

一般的な関節注射や腱鞘内注射では、痛み止めとしての局所麻酔薬や、炎症を抑えるステロイドなどを、痛みのある関節や腱鞘に直接注射します。比較的即効性が期待できる一方で、効果は一時的であることが多く、ステロイド注射についても、文献上その効果は主として短期的で、長期間持続する治療ではありません。

また、ステロイド注射を同じ部位に繰り返すと、腱や靱帯などの組織を弱くする可能性があり、腱断裂などの合併症にも注意が必要です。このため、症状が強い場合に回数を限定して使用されることが一般的です。

一方、手の動脈注射は、痛みのある場所そのものに鎮痛薬やステロイドを注射する治療ではありません。手首の動脈から薬液を投与し、慢性炎症や痛みを長引かせる原因の一つと考えられているモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることを目的としています。

動脈注射で使用する薬剤は、血管内で一時的に非常に小さな粒子として働き、病的新生血管を一時的に塞ぎます。その後、粒子は溶解・代謝されていきます。病的新生血管は正常な血管と比べて構造が未熟で脆弱であるため、一時的に血流を遮断するだけでも退縮しやすいという性質があります。正常な血流を保ちながら、こうした血管構造の違いを利用して病的新生血管を選択的に減少させていくのが、この治療の特徴です。

現在、動脈注射で最も広く用いられている薬剤が、抗菌薬の一種であるイミペネム・シラスタチンです。この治療では抗菌作用を目的として使用するのではなく、薬剤が血液中で形成する微細な粒子を一時塞栓物質として利用します。長年医療現場で使用され、安全性に関する情報が蓄積されている薬剤であることから、多くの実施施設で用いられています。

効果の現れ方にも違いがあります。局所麻酔薬などを用いる一般的な注射のような即効性は通常ありませんが、治療後、数週間から1か月ほどかけて徐々に症状が軽くなっていくことが多く、その後も長期間にわたる効果が期待できます。

これは単に一時的に痛みを抑えるのではなく、慢性炎症や痛みを長引かせているメカニズムの一つである病的新生血管そのものにアプローチする治療だからです。

 

Q4. 手の動脈注射では、どの血管に注射するのですか?

手の動脈注射では、通常、手首にある**橈骨動脈(親指側の動脈)または尺骨動脈(小指側の動脈)**に、極細径の針を刺して薬液を投与します。

どちらの動脈から投与するかは、痛みのある部位や血管の太さ・走行などを確認したうえで判断します。いずれも手や指へ血液を送る主要な動脈であり、ここから薬液を投与することで、血流に乗せて手や指の治療部位まで薬剤を届けることができます。

まれに、手首の動脈が非常に細い場合や、針を刺した際に**強い血管攣縮(血管が一時的に収縮して細くなること)**が生じるなど、手首からの薬液投与が困難なことがあります。その場合には、投与経路は長くなりますが、肘付近の動脈から薬液を投与する方法を選択することがあります。

基本的には手首から行う治療であり、患者さんの血管の状態に応じて、より安全かつ確実に薬液を届けられる血管を選択して治療を行います。

 

Q5. 動脈の中に薬液を注入すると、なぜ手の痛みが改善するのですか?

長く続く手の痛みでは、痛みのある組織に慢性的な炎症が残っていることがあります。その慢性炎症を長引かせる要因の一つと考えられているのが、炎症部位に増えてしまった**病的新生血管(いわゆる「モヤモヤ血管」)**です。

モヤモヤ血管は、正常な血管とは異なる未熟で脆弱な血管で、炎症が続いている場所に増えやすいという特徴があります。また、その周囲には痛みを感じる神経も一緒に増えることが知られており、**「炎症が続く→モヤモヤ血管や神経が増える→さらに痛みや炎症が続く」**という悪循環を形成すると考えられています。

手の動脈注射では、手首の動脈から一時的な塞栓作用をもつ薬液を投与し、このモヤモヤ血管を大幅に減少させます。正常な血管は保たれやすい一方、構造の脆弱な病的新生血管は一時的に血流が遮断されることで退縮しやすいという性質を利用しています。

モヤモヤ血管が減少すると、**慢性炎症や痛みの悪循環が断ち切られ、炎症が徐々に鎮まっていきます。**さらに、異常な血管が減ることで正常な血流や組織環境が改善し、本来身体に備わっている組織の修復・自然治癒の働きも進みやすくなると考えられています。その結果として、手や指の痛み、腫れ、こわばりなどの症状が徐々に改善していきます。

このように、単に一時的に痛みを抑えるのではなく、痛みを長引かせている病態そのものに働きかけることが手の動脈注射の大きな特徴です。そのため、十分な効果が得られた場合には、改善効果が長期間持続しやすいという利点があります。

一方で、局所麻酔薬のように注射直後から痛みを抑える治療ではありません。炎症が非常に強い場合には比較的早く変化を感じることもありますが、多くの場合は徐々に改善していき、治療効果をはっきり実感するまで1か月程度かかることがあります。

 

Q6. 「モヤモヤ血管」とは何ですか?

「モヤモヤ血管」とは、痛みや慢性炎症が続いている場所にみられる病的新生血管(異常に増えた細い血管)を分かりやすく表現した俗称です。正式な医学用語や病名ではありません。

私たちの身体では、組織が傷ついたり、同じ場所に負担がかかり続けたりすると、その場所を修復するために新しい血管が作られます。これは本来、身体に備わった正常な治癒反応の一つです。通常であれば、組織の修復が進むにつれて、必要のなくなった新生血管は自然に減少していきます。

ところが、**負担がかかり続けること、加齢、体質などさまざまな要因によって炎症が長引くと、本来は消えていくはずの新生血管が数か月以上残り続けることがあります。**こうして残った血管は正常な血管と比べて未熟で脆弱であり、慢性炎症を長引かせる要因の一つになると考えられています。

さらに、こうした異常な血管の周囲には痛みを感じる神経も一緒に増えることが知られています。そのため、炎症によって血管が増える血管とともに神経も増える痛みや炎症がさらに続くという悪循環が形成され、痛みが慢性化する原因の一つになると考えられています。

多くの慢性疼痛疾患に、このような異常な血管が関与していること自体は以前から知られていました。実際にカテーテルを用いて血管造影を行うと、痛みのある場所に異常な細い血管が集まり、「雲がかかったような」「墨がにじんだような」「モヤモヤとかすんだような」濃染像として見えることがあります。この特徴的な見え方から、患者さんにも理解しやすい表現として「モヤモヤ血管」という呼び方が用いられるようになりました。

そして、この病的新生血管を微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)によって大幅に減少させることで、慢性炎症や痛みの改善を図るという治療方法が開発されました。「モヤモヤ血管」という言葉は、この新しい治療の考え方を一般の方にも分かりやすく知っていただくために用いられている、親しみやすい呼称でもあります。

なお、脳血管の疾患に**「もやもや病」**という病気がありますが、こちらは正式な医学用語であり、「モヤモヤ血管」とはまったく別のものです。両者に医学的な因果関係はありません。

また、**「モヤモヤ血管」という新しい病気が存在するわけでもありません。**ヘバーデン結節、腱鞘炎、関節炎、外傷後の慢性痛など、さまざまな疾患や病態を「血管」という視点から見たときに、その痛みや慢性炎症に病的新生血管が深く関与している場合がある、という考え方です。

その病的新生血管に直接介入することで、従来の鎮痛薬や局所注射などとは異なる仕組みから、痛みの改善を目指すことができるというのが、モヤモヤ血管治療の基本的な考え方です。

 

Q7. 手の痛みとモヤモヤ血管にはどのような関係がありますか?

手の痛みにはさまざまな原因がありますが、ヘバーデン結節やブシャール結節、母指CM関節症などの関節疾患や、腱鞘炎・ばね指などでは、関節や腱の周囲に生じる慢性炎症が痛みに深く関係しています。

ここで大切なのは、「関節が変形しているから痛い」「腫れているから痛い」とは限らないということです。レントゲンで関節の変形がかなり進んでいてもほとんど痛みのない方は多数おられますし、反対に、変形がそれほど目立たなくても強い痛みを感じる方もおられます。

つまり、関節や腱の形そのものだけで痛みの強さが決まるわけではありません。そこに慢性炎症、血流障害、痛みを感じる神経の過敏化などが加わることで、「痛み」として強く認識されるようになります。

そして、この炎症が長引くメカニズムや血流障害に深く関与していると考えられているのが、モヤモヤ血管(病的新生血管)です。

本来、新生血管は傷んだ組織を修復する過程で一時的に作られるものですが、炎症が長引くと、本来なら消えていくはずの血管がその場所に残り続けることがあります。さらに、その周囲には痛みを感じる神経も一緒に増えることが知られています。

その結果、

炎症が続くモヤモヤ血管が増える痛みを感じる神経も増える血流や組織環境が悪化する炎症や痛みがさらに長引く

という悪循環が形成されると考えられています。

いわば、モヤモヤ血管が痛みのある場所に**「居ついてしまった」状態です。この悪循環が残っているために、本来身体に備わっている修復や自然治癒の働きが十分に進まず、「しつこく痛む」「良くなったと思ってもまた痛む」「何か月たっても治らない」**という状態につながることがあります。

手の動脈注射では、このモヤモヤ血管を大幅に減少させることで、こうした慢性炎症と痛みの悪循環を断ち切り、本来の治癒過程が進みやすい状態へ戻していくことを目指します。

 

Q8. 手の動脈注射は、動脈塞栓術やカテーテル治療と同じ治療ですか?

手の動脈注射は、慢性痛に対するモヤモヤ血管治療として最初に開発された運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)を、より簡便な方法に応用した治療です。

したがって、治療の基本的な考え方は共通しています。いずれも、痛みや慢性炎症を長引かせる原因の一つと考えられている**モヤモヤ血管(病的新生血管)を標的として、一時的な塞栓作用をもつ薬液を動脈内から投与し、病的新生血管を減少させる「微細動脈塞栓術」**という血管塞栓術の一種です。

大きく異なるのは、薬液を目的の場所まで届ける方法です。

運動器カテーテル治療では、手首や足の付け根などの動脈から細いカテーテルを挿入し、X線透視や血管撮影装置を用いながら、痛みのある部位を栄養する血管の近くまでカテーテルを進めて薬液を投与します。

一方、手の動脈注射ではカテーテルを挿入する必要がありません。**手首の橈骨動脈または尺骨動脈に極細径の針を刺し、そこから直接薬液を投与します。**手は体表から動脈へ安全にアプローチしやすく、投与した薬液を血流に乗せて治療部位へ届けることができるため、このような簡便な方法が可能になりました。

つまり、

運動器カテーテル治療と手の動脈注射は、病的新生血管を減らすという治療原理は同じですが、薬液を届ける方法が異なります。

カテーテルや大型の血管撮影装置を必要としないため、手の動脈注射は治療時間が短く、身体的な負担や費用を抑えながら行えることが大きな特徴です。

 

Q9. 手の動脈注射は手術ですか?

いいえ、手の動脈注射は手術ではなく、注射治療に分類されます。

手首にある橈骨動脈または尺骨動脈に極細径の針を刺し、そこから薬液を投与する治療です。皮膚を切開したり、縫合したりする必要はなく、カテーテルを血管内に挿入することもありません。

治療そのものは非常に短時間で、熟練した施設では薬液の投与は数十秒程度で終了します。その後、針を抜いた部分を一定時間圧迫して止血し、問題がなければそのまま帰宅できます。

したがって、手術やカテーテル治療と比べて身体への負担が非常に少なく、日帰りで受けられることが手の動脈注射の大きな特徴です。

 

Q10. 手の動脈注射は保険診療ですか、自費診療ですか?

手の動脈注射は、現時点(2026年)では健康保険の適用となっておらず、自費診療(自由診療)となります。

そのため、治療費には健康保険が適用されず、原則として患者さんの全額自己負担となります。

なお、手の動脈注射は、慢性痛に対する運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)の考え方を応用した治療ですが、運動器カテーテル治療についても、慢性疼痛を対象として行う場合は現在のところ保険適用ではありません。

治療を検討される際には、適応の有無だけでなく、治療内容や費用についても事前に十分な説明を受けたうえで受診されることをおすすめします。

 

2.治療対象となる症状

Q11. どのくらい続く手の痛みが治療対象になりますか?

手の動脈注射の適応は、**「何か月以上痛みが続いているか」という期間だけで一律に決まるものではありません。**痛みの原因や炎症の程度、症状の経過などを総合的に判断します。

一般に慢性痛は、一定期間以上持続する痛みを指し、2~3か月以上を目安とすることが多くあります。手の動脈注射も、基本的にはこうした長引く痛みや慢性炎症を主な治療対象としています。

ただし、手の痛みでは、症状が出てからそれほど時間がたっていなくても、すでに関節や腱などに慢性的な炎症が存在していることがあります。例えば、痛みを自覚してからまだ数週間、場合によっては1週間程度であっても、診察や画像検査などから病態がすでに形成され、進行していると判断される場合には治療対象となることがあります。

したがって、**「2~3か月たつまで治療できない」ということではありません。**症状の持続期間が短くても、ヘバーデン結節や腱鞘炎など原因となる病態が明らかで、炎症が強い場合には早い段階から治療を検討することがあります。

一方、転倒や打撲、捻挫などの明らかな外傷によって急に生じた痛みについては考え方が異なります。こうした急性疼痛の多くは、通常の治癒過程によって数週間から1か月程度で大幅に軽減していくため、受傷直後から手の動脈注射を行う必要は通常ありません。

まずは安静や固定など適切な初期治療を行い、それでも痛みや腫れなどが予想以上に長引く場合に、慢性炎症やモヤモヤ血管の関与を考え、手の動脈注射の適応を検討します。

つまり、治療時期は単純な「痛みの長さ」ではなく、自然に改善していく急性の痛みなのか、すでに慢性化する病態が形成されているのかを見極めることが重要です。

 

Q12. 手を使ったときだけ痛む場合も治療できますか?

はい、**手を使ったときだけ痛む場合でも治療対象となります。**むしろ、手や指の慢性的な痛みでは、安静にしているときにはあまり痛まず、手を使ったときに痛みが出るという症状が一般的です。

例えば、物をつまむ、ペットボトルのふたを開ける、タオルを絞る、文字を書く、スマートフォンを操作する、包丁やハサミを使うなど、特定の動作や手指に力を入れたときに痛むという方は多くおられます。

これは、関節や腱などに炎症がある状態で動かしたり負荷をかけたりすることで、その部分が刺激されて痛みが生じるためです。そのため、「普段は痛くないから治療するほどではない」「安静時にも痛くならないと治療対象にならない」ということではありません。

一方、病態が進行した場合や炎症が非常に強い場合には、手を使っていないときにも痛む安静時痛がみられることがあります。さらに強くなると、何もしていなくてもズキズキ痛む、夜間に痛みで目が覚めるといった症状が生じることもあります。

手の動脈注射では、動作時だけに痛む場合も、安静時にも痛む場合も、いずれも治療適応となり得ます。

治療後の改善には一定の順序がみられることがあり、炎症が強い方では、まず安静時痛や夜間痛などの強い症状が軽減し、その後、手を使ったときの動作時痛も徐々に改善していくことが多くあります。

そのため、治療効果を判断する際には「まだ動かすと少し痛い」という点だけでなく、安静時の痛みがなくなった、痛む動作が減った、以前より強く握れるようになったなど、日常生活の中での変化を総合的にみていくことが大切です。

 

Q13. 安静にしていても痛む場合は治療できますか?

はい、安静にしていても痛む場合も治療できます。むしろ、手や指を動かしていないときにも痛みがある場合は、関節や腱などの炎症が強い状態にあることが多く、手の動脈注射の良い治療適応となります。

通常、手の関節炎や腱鞘炎などでは、初期には手を使ったときに痛む「動作時痛」が中心です。しかし炎症が強くなると、手を使っていなくてもズキズキする、じっとしていても痛い、夜間に痛みで目が覚めるといった安静時痛や夜間痛がみられるようになります。

このような状態では、慢性炎症とともにモヤモヤ血管(病的新生血管)が強く関与していることがあり、手の動脈注射によって病的新生血管を減少させることで、炎症と痛みの改善を図ります。

また、炎症が強い方では治療による変化が分かりやすく、**比較的早い時期から安静時痛の軽減を実感されることがあります。**その後、炎症がさらに落ち着いていくにつれて、手を握る、物をつまむ、ひねるなどの動作時に生じる痛みも徐々に改善していくことが多くあります。

したがって、**「安静にしていても痛いから重症で治療できない」ということではありません。**むしろ、そのような強い痛みがある場合こそ、治療適応について一度評価することをおすすめします。

 

Q14. 夜間に手が痛む場合も治療できますか?

はい、夜間に手や指が痛む場合も治療できます。夜、手を使っていないにもかかわらず痛みが出る場合は、関節や腱などに比較的強い炎症が生じていることが多く、手の動脈注射の良い治療適応となります。

手や指の慢性的な痛みでは、初期には手を使ったときの「動作時痛」が中心ですが、炎症が強くなると、夜間にズキズキ痛む、寝ているときに痛みで目が覚める、朝方に痛みやこわばりが強くなる、といった症状がみられることがあります。

このような炎症の強い状態では、モヤモヤ血管(病的新生血管)が痛みに強く関与していることがあり、**治療後比較的早い時期から夜間痛や安静時痛の軽減を実感されることがあります。**その後、炎症がさらに落ち着いていくにつれて、物を握る、つまむ、ひねるなど、手を使ったときの痛みも徐々に改善していくことが多くあります。

一方、夜間痛や朝のこわばり、複数の関節の腫れなどがみられる場合には、関節リウマチをはじめとする炎症性疾患が背景に隠れている可能性も考える必要があります。

そのため当院では、症状や診察所見から必要と判断した場合には、血液検査などを行い、関節リウマチやその他の炎症性疾患の有無についても確認します。

単に痛みを治療するだけでなく、夜間痛を引き起こしている原因を適切に評価したうえで、手の動脈注射が適しているかを判断することが重要です。

 

Q15. 朝に手指がこわばる症状にも効果が期待できますか?

はい、朝に手や指がこわばる症状についても、手の動脈注射による改善が期待できます。

朝起きたときに「指が動かしにくい」「握りにくい」「手が腫れぼったい」「何度か動かしているうちに楽になる」といった**朝のこわばり(朝の手指のこわばり)**は、手や指の関節・腱周囲に炎症がある場合によくみられる症状です。

こうした症状は、痛みのある部位に慢性炎症が存在し、モヤモヤ血管(病的新生血管)が関与していることを示唆する症状の一つと考えられます。そのため、手の動脈注射によってモヤモヤ血管を減少させ、炎症が鎮まってくると、朝のこわばりも徐々に軽減していくことが期待できます。

実際には、痛みそのものよりも先に、朝のこわばりや腫れぼったさが改善することも多くあります。「朝、手を握りやすくなった」「起きてすぐ指が動くようになった」といった変化が、治療効果を最初に実感するきっかけになることもあります。

ただし、朝のこわばりはヘバーデン結節や腱鞘炎などでもみられる一方、関節リウマチなどの炎症性疾患でも特徴的にみられる症状です。特に、こわばりが長時間続く場合、左右の複数の関節が腫れている場合などには、必要に応じて血液検査などを行い、背景に別の疾患がないかを確認します。

したがって、朝のこわばりがある場合には、単に「年齢のせい」と考えるのではなく、どのような炎症や病態が背景にあるのかを評価したうえで治療適応を判断することが大切です。

 

Q16. 指の曲げ伸ばしで痛む場合も治療できますか?

はい、**指を曲げたり伸ばしたりしたときに痛む場合も治療できます。**手の動脈注射でよくみられる治療対象の一つです。

指の曲げ伸ばしで生じる痛みには、ヘバーデン結節やブシャール結節などの関節の変形や炎症だけでなく、腱・腱鞘・靱帯などの炎症や障害、さらに局所の血流障害など、複数の要因が関係していることがあります。

こうした部位に慢性炎症が続くと、モヤモヤ血管(病的新生血管)が増え、炎症や痛みが長引く悪循環が形成されることがあります。手の動脈注射では、このモヤモヤ血管を減少させることで炎症を鎮め、指を動かしたときの痛みを軽減することを目指します。

どの程度まで改善するかは、病気の種類や進行度、関節の変形や拘縮の程度、症状が続いている期間などによって異なります。すでに関節の変形が高度であったり、長期間動かしにくい状態が続いて関節が硬くなっていたりする場合には、炎症や痛みが改善しても、症状が完全には消失しないことがあります。

一方、罹病期間が短く、関節の可動域が十分に保たれている段階ほど、痛みだけでなく機能面でも良好な改善が得られやすい傾向があります。

そのため、痛みを我慢して指を動かさない状態が長く続き、関節が硬くなってしまう前に治療を検討することが大切です。特に、まだ指を十分に曲げ伸ばしできるものの、その動作で痛みが出る段階は、治療を検討する良いタイミングの一つと考えられます。

 

Q17. 手を握ったり、物をつまんだりすると痛む場合も対象になりますか?

はい、手を握ったり、物をつまんだりしたときに痛む場合も治療対象となります。

こうした症状は、ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症などの手指の変形性関節症でよくみられる典型的な症状の一つです。関節だけでなく、周囲の腱や腱鞘、靱帯などの炎症が痛みに関与していることもあります。

例えば、

  • ペットボトルや瓶のふたを開ける
  • タオルや雑巾を絞る
  • ドアノブや鍵を回す
  • 箸やペンを持つ
  • 洗濯ばさみをつまむ
  • ボタンを留める
  • 包丁やハサミを使う
  • 荷物やバッグを握って持つ

といった日常の動作で痛みを感じる方が多くおられます。

特に母指CM関節症では、親指と人差し指で物をつまむ動作や、親指に力を入れて握る動作で痛みが出やすくなります。ヘバーデン結節やブシャール結節では、指を強く曲げたり握り込んだりした際に痛みを感じることがあります。

こうした痛みの背景には、関節の変形そのものだけでなく、関節やその周囲に続いている**慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)**が関与している場合があります。

手の動脈注射によってモヤモヤ血管を減少させ、炎症を鎮めることで、握る・つまむといった動作時の痛みが軽減し、日常生活で手を使いやすくなることが期待できます。

ただし、高度な関節変形や拘縮がすでに生じている場合には、痛みが改善しても関節の形や可動域そのものが元に戻るわけではありません。そのため、痛みはあるものの手指の動きがまだ保たれている段階で治療を検討することが望ましいと考えられます。

 

Q18. ペットボトルのふたを開けるときの親指の痛みにも治療できますか?

はい、ペットボトルのふたを開けるときに親指が痛む場合も治療できます。

これは特に、母指CM関節症(親指の付け根の関節に生じる変形性関節症)でよくみられる典型的な症状の一つです。

母指CM関節は、親指と他の指で物をつまんだり、握ったり、ひねったりするときに大きな力がかかる関節です。そのため母指CM関節症になると、

「ペットボトルや瓶のふたを開ける」「ドアノブや鍵を回す」「タオルを絞る」「物を強くつまむ」

といった、親指に力を入れながらひねる動作で痛みが出やすくなります。特に病状が進行してくると、こうした日常動作での痛みを強く訴えることが多くなります。

一方、ペットボトルのふたを開ける際の痛みが、必ずしも母指CM関節症とは限りません。痛む場所によっては、ヘバーデン結節などの手指の変形性関節症や、親指周囲の腱鞘炎などが関係していることもあります。

いずれの病態でも、関節や腱周囲の慢性炎症にモヤモヤ血管(病的新生血管)が関与している場合には、手の動脈注射によって炎症を鎮め、動作時の痛みを軽減することが期待できます。

治療によって関節の変形そのものを元に戻すわけではありませんが、**「形が変わっているから痛い」とは限りません。**炎症を十分に抑えることで、変形が残っていても、ペットボトルのふたを開けるなどの日常動作が痛みなく、あるいはかなり楽に行えるようになることが期待できます。

 

Q19. パソコンやスマートフォンの操作で生じる手の痛みにも治療できますか?

はい、パソコンやスマートフォンの操作によって生じる手や指の痛みも治療対象となります。

キーボードやマウスの操作、スマートフォンの文字入力やスクロールなどでは、同じ指や腱、関節を繰り返し使用します。そのため、もともと手指に炎症や変形がある方では、こうした反復動作をきっかけに痛みが出たり、症状が悪化したりすることがあります。

特に、ヘバーデン結節やブシャール結節などの手指の変形性関節症、母指CM関節症、ばね指などの腱・腱鞘の疾患では、パソコンやスマートフォンの操作によって症状を自覚することがよくあります。

例えば、「マウスを長時間使うと親指の付け根が痛む」「キーボードを打ち続けると指が痛くなる」「スマートフォンを片手で操作すると親指が痛む」「長時間使用した後に指がこわばる」といった症状です。

このような場合、単に「手を使いすぎたから痛い」というだけではなく、関節や腱・腱鞘に慢性炎症が生じ、その炎症に**モヤモヤ血管(病的新生血管)**が関与していることがあります。手の動脈注射では、このモヤモヤ血管を減少させることで炎症を鎮め、パソコンやスマートフォンを操作した際の痛みやこわばりの改善を目指します。

一方で、治療によって症状が改善した後も、同じ部位に過度な負担をかけ続ければ、炎症が再燃する可能性があります。そのため、治療後は痛みがなくなったからといって急に手を酷使するのではなく、長時間の連続使用を避ける、適度に休憩を入れる、操作方法や姿勢を工夫するなど、手指への負担を減らすことも大切です。

手の動脈注射によって炎症や痛みを改善するとともに、症状を引き起こしたり悪化させたりする負担を見直すことで、より長期的に良い状態を維持することが期待できます。

 

Q20. 手芸、楽器、スポーツなどによる手の痛みにも治療できますか?

はい、手芸や楽器演奏、スポーツなどによって生じる手や指の痛みも治療対象となります。

手や指を繰り返し使う趣味やスポーツでは、関節、腱、腱鞘、靱帯などの同じ場所に負担が集中し、炎症が長引くことがあります。

例えば、編み物などの手芸、ピアノ・ギター・バイオリンなどの楽器演奏、ゴルフやロッククライミングなどのスポーツは、実際に手や指の痛みを生じるきっかけとしてよくみられます。

初めのうちは「使ったときだけ少し痛む」程度でも、痛みを我慢しながら続けたり、休めば少し良くなるからとだましだまし使い続けたりすることで、炎症が慢性化して治りにくくなることがあります。

こうした慢性炎症にはモヤモヤ血管(病的新生血管)が関与していることがあり、手の動脈注射によってこれを減少させることで、痛みを軽減し、手を使いやすい状態へ戻していくことを目指します。

特に、まだ関節の動きが十分に保たれている段階では良好な改善が期待しやすいため、「もっと悪くなったら治療する」のではなく、痛みが長引き始めた段階で早めに治療を検討することをおすすめします。

手の動脈注射は、手術とは異なり、短時間で行うことのできる身体への負担が少ない治療です。そのため、趣味やスポーツをやめてしまうのではなく、治療を上手に活用しながら、好きなことをできるだけ長く続けていただくという考え方も大切です。

治療後も手指への過度な負担には注意が必要ですが、痛みの状態をみながら活動量を調整し、再び手芸や楽器、スポーツを楽しめる状態を目指していきます。

 

Q21. 手指の腫れや熱感がある場合も治療できますか?

はい、**手や指に腫れや熱感がある場合も治療できます。**むしろ、こうした症状は関節や腱などに比較的強い炎症が生じていることを示唆するため、モヤモヤ血管治療の良い適応となることがあります。

炎症が強い場所では血流が増加し、モヤモヤ血管(病的新生血管)が発達するとともに、周囲の組織にむくみ(浮腫)が生じることがあります。その結果、**「指が腫れぼったい」「関節が赤く膨らんでいる」「触ると熱をもっている」**といった症状が現れます。

手の動脈注射によってモヤモヤ血管を減少させ、炎症が鎮まってくると、**炎症に伴う腫れやむくみ、熱感は改善することが多くあります。**痛みより先に、腫れぼったさや熱感の軽減を実感されることもあります。

ただし、ここで重要なのは、「腫れて見えるもの」のすべてが炎症によるむくみではないということです。

例えばヘバーデン結節やブシャール結節では、炎症による腫れに加えて、骨や関節そのものの変形によって関節が膨らんで見えることがあります。手の動脈注射によって炎症性の腫れやむくみが改善しても、すでに生じている骨・関節の変形そのものが元の形に戻るわけではありません。

そのため治療後には、**「腫れや熱感、痛みはかなり改善したものの、関節の膨らみは残っている」**という状態になることがあります。これは治療が効いていないという意味ではなく、炎症による部分と構造的な変形による部分が異なるためです。

なお、急激に強く腫れた場合、著しい発赤や熱感がある場合、発熱を伴う場合などには、感染症やその他の炎症性疾患を除外する必要があります。その場合は、まず原因を適切に評価したうえで手の動脈注射の適応を判断します。

 

Q22. 手指のこわばりや動かしにくさにも効果が期待できますか?

はい、手指のこわばりや動かしにくさの改善は、手の動脈注射で期待される主要な治療効果の一つです。

手や指に慢性的な炎症が続くと、痛みだけでなく、関節や腱の周囲に腫れやむくみが生じ、**「指がスムーズに動かない」「握りにくい」「曲げ伸ばししにくい」「手全体が重く感じる」**といった症状が現れることがあります。

このような症状には、慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)が関与していることがあり、手の動脈注射によって炎症が鎮まると、腫れやむくみが軽減し、こわばりや動かしにくさも改善することが多くあります。

実際、痛みが完全になくなる前から、**「指が動かしやすくなった」「以前より握れるようになった」「朝だけでなく日中も手が軽くなった」**といった変化を実感されることがあります。

一方、病状が進行して、指を十分に曲げられない、手を握り込むことができないなど、強い可動域制限が生じている場合には注意が必要です。炎症や痛みのために動かしにくくなっている部分については改善が期待できますが、長期間にわたって関節が動かない状態が続き、関節や周囲組織そのものが硬くなっている場合には、炎症が改善しても可動域が完全には元に戻らないことがあります。

こうした重症例では、可動域制限が生じてからの期間が短いほど、動きの回復も期待しやすくなります。

そのため、「まだ我慢できるから」と長期間放置するのではなく、指が動かしにくくなってきた、以前のように握れなくなってきたという段階で早めに治療を検討することをおすすめします。

 

Q23. 握力が低下している場合にも治療できますか?

はい、**握力が低下している場合でも治療できます。**握力が弱いというだけで、手の動脈注射の治療適応外になることはありません。

手や指に痛みや炎症があると、強く握った際に痛むため、無意識に力を入れないようになります。また、関節の腫れやこわばり、腱・腱鞘の炎症などによって指を十分に曲げられなくなることもあります。その結果、筋肉そのものが弱っているわけではなくても、握力が低下して測定されることがあります。

このように、痛みや炎症、こわばりなどが原因となっている握力低下であれば、手の動脈注射によって炎症や痛みが改善するにつれて、しっかり握れるようになり、握力の回復がみられることがあります。

一方、握力低下の原因は手の痛みだけではありません。例えば、頸椎症や頸椎椎間板ヘルニアなどによる神経障害、手根管症候群などの末梢神経障害、筋肉そのものの病気などによっても握力が低下することがあります。

このような場合には、手の炎症を治療しても握力そのものが十分に回復しない可能性があり、原因となっている疾患に対する治療が必要です。

特に、**「痛くないのに力が入らない」「物を頻繁に落とすようになった」「指先のしびれを伴う」「片方の手だけ急に力が弱くなった」**といった症状がある場合には、単なる手の炎症による握力低下ではない可能性も考え、原因を確認することが重要です。

したがって、手の動脈注射が握力低下そのものに必ず効果を示すわけではありませんが、痛みや炎症が原因となっている場合には、その改善に伴って握力の回復も期待できます。診察では、握力低下が手の痛みによるものなのか、別の原因が隠れていないかも含めて評価したうえで治療適応を判断します。

 

Q24. 手に複数の痛い場所がある場合も同時に治療できますか?

はい、手や指に複数の痛い場所がある場合でも、同時に治療できます。

実際、ヘバーデン結節やブシャール結節などの手指の変形性関節症では、一つの関節だけではなく、**複数の指や関節に同時に痛みや腫れが生じることが珍しくありません。**また、関節リウマチなどの炎症性疾患では、手の広い範囲に痛みやこわばりを感じることもあります。

手の動脈注射の大きな特徴の一つは、痛い場所一か所ずつに針を刺す治療ではないことです。

手首の橈骨動脈または尺骨動脈から薬液を投与すると、薬液は血流に乗ってその動脈の支配領域へ広がります。そのため、複数の関節や腱などにモヤモヤ血管(病的新生血管)が存在している場合でも、一度の治療で手の広い範囲に作用させることができます。

例えば、「親指の付け根も痛い」「人差し指と中指にヘバーデン結節がある」「複数の指に腫れやこわばりがある」といった場合でも、それぞれの場所に個別に注射する必要はありません。

したがって、**痛い場所が一か所でも複数か所でも、基本的な治療内容は変わりません。**治療する場所が増えたからといって針を刺す回数が増えたり、治療中の痛みが特別強くなったりするわけでもありません。

これは、関節注射や腱鞘内注射のように「痛い場所を一か所ずつ治療する」方法とは異なる、手の動脈注射の利点の一つです。複数の指や関節に症状がある方、手全体に痛みやこわばりがある方にも、一度の治療で広い範囲の改善を期待できます。

 

Q25. 左右両方の手が痛む場合も治療できますか?

はい、左右両方の手に症状がある場合は、同じ日に両手とも治療することができます。

ヘバーデン結節やブシャール結節、母指CM関節症、腱鞘炎などは左右両方の手に生じることも多く、「右手だけでなく左手も痛い」「両手の複数の指に症状がある」という方は珍しくありません。

手の動脈注射は、手首の動脈に極細径の針を刺して短時間で薬液を投与する治療です。そのため、片手を治療した後に、続けて反対側の手を治療することが可能です。

両手を治療するからといって、治療後に両手が使えなくなるわけではありません。治療後はそれぞれの穿刺部を止血する必要がありますが、通常はその後の日常生活に大きな支障をきたすことはなく、両側を同日に治療することによる大きなデメリットはほとんどありません。

一方、初めて動脈注射を受けることへの不安が強い方や、「まず片手でどのような治療か経験してみたい」という方は、症状の強い側だけを先に治療することも可能です。片側で治療効果や治療後の経過を確認してから、後日反対側を治療することもできます。

ただし、もともと両手に治療が必要な場合には、同日に両側を治療した方が通院回数を減らすことができ、両側治療には割引料金も設定されているため、費用面でもメリットがあります。

したがって、両手に症状がある方では、特別な理由がなければ同日に両側を治療することが合理的ですが、不安の程度やご希望に応じて片側ずつ治療することもできます。

 

 

3.疾患別の適応

Q26. ヘバーデン結節による第1関節の痛みにも効果が期待できますか?

はい、ヘバーデン結節による指の第1関節(DIP関節)の痛みは、手の動脈注射の代表的な治療適応の一つであり、痛みの改善が期待できます。

ヘバーデン結節は、指先に最も近い第1関節に生じる変形性関節症です。関節の変形だけでなく、炎症を伴うことで、痛み、腫れ、熱感、こわばり、曲げ伸ばしのしにくさなどが生じます。複数の指に同時に症状が現れることも珍しくありません。

ヘバーデン結節の痛みには、関節の変形そのものだけではなく、関節周囲に続く**慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)**が深く関与している場合があります。手の動脈注射では、このモヤモヤ血管を減少させることで炎症を鎮め、痛みや腫れ、こわばりなどの改善を目指します。

ただし、治療効果には個人差があり、**関節変形の重症度や症状が続いている期間(罹病期間)などによって改善の程度は異なります。**炎症や痛みを改善する治療であり、すでに生じている骨や関節の変形そのものを元の形に戻す治療ではありません。

実際には、受診された時点ですでに関節の変形が高度に進み、指の可動域まで低下している方も少なくありません。このような状態でも痛みの改善は期待できますが、長期間にわたって変形や拘縮が進行している場合には、症状が完全には消失しないことがあります。

一方、**まだ関節の動きが保たれ、変形が高度になる前の段階では、より良好な改善が期待しやすくなります。**そのため、「もっと痛くなってから」「変形が進んでから」と長期間我慢するのではなく、痛みや腫れ、こわばりが続くようであれば、早めに治療を検討することをおすすめします。

 

Q27. ヘバーデン結節による指の変形も改善しますか?

ヘバーデン結節では、治療後に指の腫れや膨らみが多少目立たなくなることはありますが、すでに生じている骨や関節そのものの変形を元の形に戻すことはできません。

ヘバーデン結節で指の第1関節が太く見える原因には、大きく分けて、炎症による腫れ・むくみ(浮腫)と、変形性関節症によって生じた骨や関節そのものの構造的な変形があります。

手の動脈注射によってモヤモヤ血管(病的新生血管)が減少し、慢性炎症が鎮まると、炎症による腫れやむくみは軽減します。そのため、関節の膨らみがある程度小さくなり、見た目にも多少すっきりすることがあります。

一方、すでに形成された骨棘や関節の変形は構造的な変化であるため、動脈注射によって元の状態に戻るものではありません。そのため、変形が高度に進んでから治療した場合には、痛みや腫れが改善しても、指の形そのものの変化は軽微にとどまります。

ここで重要なのは、ヘバーデン結節の変形が、慢性炎症を伴いながら徐々に進行していくという点です。手の動脈注射は、その慢性炎症を長引かせるメカニズムの一つであるモヤモヤ血管に作用する治療です。

そのため、炎症を早い段階で十分に鎮めることで、**その後の関節変形の進行を抑えられる可能性があります。**ただし、これはすでに生じた変形を元に戻すという意味ではなく、将来の変形進行を抑えることを期待するものです。

したがって、ヘバーデン結節では、「変形してから治す」のではなく、痛みや腫れ、熱感、こわばりなど炎症の症状がある段階で治療することが理想的です。変形が高度に進行する前に治療を受けていただくことをおすすめします。

 

Q28. ブシャール結節による第2関節の痛みにも治療できますか?

はい、ブシャール結節による指の第2関節(PIP関節)の痛みも、手の動脈注射による治療が可能です。

ブシャール結節は、指の中央にある第2関節に生じる変形性関節症です。第1関節に生じるヘバーデン結節と同様に、関節の変形だけでなく、炎症を伴うことで痛み、腫れ、熱感、こわばり、曲げ伸ばしのしにくさなどが生じます。

こうした症状には、関節周囲の慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)が関与していることがあり、手の動脈注射によってモヤモヤ血管を減少させ、炎症を鎮めることで、痛みや腫れ、こわばり、動かしにくさの改善が期待できます。

ただし、ブシャール結節はヘバーデン結節と比較すると、**症状が改善するまでに時間がかかり、治りにくい傾向があります。**特に、長期間にわたって炎症が続き、関節の変形や可動域制限が進んでいる場合には、治療後も症状が残りやすくなります。

第2関節は指を握る、物をつかむといった動作に大きく関わるため、病状が進行して関節が硬くなると、日常生活への影響も大きくなります。また、すでに形成された骨や関節の変形そのものを、動脈注射によって元の形に戻すことはできません。

そのため、ブシャール結節では特に、「まだ我慢できるから」と長期間様子をみるのではなく、痛みや腫れ、こわばり、動かしにくさが気になり始めた段階で早めに治療することが重要です。

関節の可動域が十分に保たれているうちに慢性炎症を抑えることで、より良好な症状改善が期待できます。

 

Q29. 母指CM関節症による親指の付け根の痛みにも効果が期待できますか?

はい、母指CM関節症は、手の動脈注射の代表的な治療適応疾患の一つであり、親指の付け根の痛みの改善が期待できます。

母指CM関節は、親指の付け根にある関節で、物をつまむ、握る、ひねるといった動作の際に大きな力が加わります。そのため母指CM関節症になると、ペットボトルや瓶のふたを開ける、ドアノブや鍵を回す、タオルを絞る、物をつまむといった日常動作で強い痛みを感じるようになります。

母指CM関節症の痛みには、関節の変形そのものだけでなく、関節周囲に続く**慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)**が関与している場合があります。手の動脈注射では、このモヤモヤ血管を減少させて炎症を鎮めることで、親指を使った際の痛みや腫れ、こわばりなどの改善を目指します。

母指CM関節症に対する保存的治療としては、装具、鎮痛薬、関節内注射などがあります。ステロイド注射によって一時的な症状改善が得られることもありますが、効果が永続する治療ではなく、繰り返し投与する場合には腱や靱帯、軟骨などへの影響にも注意が必要です。

その点、手の動脈注射は、痛みを一時的に抑えることを目的とするのではなく、慢性炎症を長引かせるメカニズムの一つであるモヤモヤ血管にアプローチするという異なる考え方の治療です。

変形性関節症全般にいえることですが、**病状が高度に進行するほど治療効果は得られにくくなる傾向があります。**実際には、受診された時点ですでに関節の変形がかなり進行している方も少なくありません。すでに生じた骨や関節の変形そのものを動脈注射で元に戻すことはできないため、痛みや炎症が主体で、関節の機能が十分に保たれている段階で治療することが理想的です。

高度に進行した母指CM関節症では手術が検討されることもあり、術式によっては関節固定術などが選択されます。手術によって痛みの改善が期待できる一方、関節を固定する術式では母指CM関節の動きが失われるという機能上のトレードオフがあります。そのため、手術を検討する場合には、期待できる効果だけでなく、術後の親指の動きや日常生活への影響についても十分に理解しておくことが大切です。

母指CM関節は、日常生活のさまざまな動作に欠かせない関節です。「悪くなってから治療する」のではなく、早い段階から適切に手入れをして、できるだけ長く自分の関節を使える状態を保つという考え方で治療を検討していただくことをおすすめします。

 

Q30. 母指CM関節症が進行していても治療できますか?

はい、母指CM関節症がある程度進行している場合でも、手の動脈注射による治療は可能です。

関節の変形が進んでいても、その周囲に慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)が残っている場合には、これらに対して治療することで、痛みや腫れ、こわばりなどの改善が期待できます。

ただし、変形性関節症全般にいえることですが、**関節の変形や軟骨の損傷が高度になるほど、治療によって得られる効果は小さくなる傾向があります。**また、関節そのものの構造的な障害が強くなるため、一度症状が改善しても、再び負担がかかることで痛みが再発する可能性も高くなります。

手の動脈注射は、慢性炎症を長引かせるモヤモヤ血管を減少させる治療であり、**すでに生じている骨や関節の変形そのものを元の状態に戻す治療ではありません。**そのため、高度に進行した母指CM関節症では、「変形を治す」というよりも、残っている炎症を抑えて痛みを軽減し、できるだけ手を使いやすい状態を維持することが治療の主な目的となります。

これは母指CM関節症に限らず、膝関節や股関節などを含む変形性関節症全般に共通する考え方です。変形性関節症は、構造的な変化が高度になる前に炎症へ介入することが重要です。

したがって、「まだ我慢できるから」と長期間放置するよりも、痛みや腫れが続く、ペットボトルのふたを開けにくくなった、つまむ動作が痛いといった段階で早めに治療を検討することをおすすめします。

すでに進行している場合でも、「もう遅い」と決めつける必要はありません。まず現在の変形の程度や炎症の状態を評価し、どの程度の改善が期待できるのかを見極めたうえで治療適応を判断します。

 

Q31. ばね指に対しても手の動脈注射を行えますか?

はい、ばね指も手の動脈注射の治療対象となります。特に、発症からあまり時間がたっていない早期のばね指では、治療をおすすめしやすい病態の一つです。

ばね指は、指を曲げる腱(屈筋腱)と、その腱が通る腱鞘に炎症が生じ、腱の滑りが悪くなることで起こります。初期には、指の付け根の痛みや腫れ、朝のこわばり、曲げ伸ばしの際の引っかかりなどがみられます。

早期のばね指では、腱や腱鞘そのものの構造的な変化がまだ少なく、炎症が症状の中心となっていることが多いため、手の動脈注射によって炎症を鎮めることで比較的早い時期から症状が改善することも珍しくありません。

一方、長期間放置して病状が進行すると、腱鞘の炎症だけでなく、腱鞘の肥厚や狭窄、さらに腱そのものの腫大や変性などの器質的な変化が加わってきます。この段階になると、炎症を改善するだけでは引っかかりが完全に解消しないことがあります。

そのため、ばね指についても、症状が軽いうち、特に指の動きが十分に保たれている段階で治療することが重要です。

手の動脈注射で十分な改善が得られず、強い引っかかりやロッキング(指が曲がったまま、あるいは伸びたまま動かなくなる状態)が残る場合には、腱鞘切開術などの外科的治療を検討することがあります。

その場合でも、先に手の動脈注射を受けたことによって、**後から腱鞘切開術を行うことが難しくなることはありません。**したがって、早期にはまず身体への負担が少ない手の動脈注射を行い、その効果をみたうえで、必要な場合に手術を検討するという選択も可能です。

また、動脈注射によって周囲の炎症をあらかじめ軽減しておくことは、その後に手術が必要となった場合にも不利になるものではありません。

ばね指は、進行するほど機械的な引っかかりが強くなり治療選択肢も限られてくるため、「まだ軽いから」と放置せず、炎症が主体の早い段階で治療を検討することをおすすめします。

 

Q32. 指が引っかかったり伸びにくかったりする症状も改善しますか?

はい、指の曲げ伸ばしで引っかかる、指が伸びにくいといった症状も、手の動脈注射による改善が期待できます。

こうした症状は、ばね指(腱鞘炎)の典型的な症状です。指を動かす腱と、その腱が通る腱鞘に炎症が起こると、腱や腱鞘が腫れて滑りが悪くなり、曲げ伸ばしの途中で引っかかったり、指を伸ばす際に「カクン」と跳ねるように動いたりするようになります。

発症してからの期間が短く、腱や腱鞘の構造的な変化がまだ進んでいない段階では、炎症や腫れが引っかかりの主な原因となっていることが多いため、手の動脈注射で炎症を鎮めることで、引っかかりや伸ばしにくさまで改善することが期待できます。

特に、罹病期間が短いほど良好な改善が得られやすい傾向があります。「少し引っかかる」「朝だけ伸ばしにくい」「時々カクンとなる」といった早い段階は、治療を検討する良いタイミングです。

一方、長期間症状が続くと、腱鞘の肥厚や狭窄、腱そのものの腫大・変性などの器質的な変化が進みます。この状態では、炎症が改善しても物理的な引っかかりが残ることがあり、動脈注射だけでは十分に改善しない場合があります。

特に、指が曲がったまま伸びない、反対の手を使わないと伸ばせない、強いロッキングを繰り返すといった進行例では、腱鞘切開術などの外科的治療が必要になることがあります。

その場合でも、先に手の動脈注射を受けたことが、**その後の手術の妨げになることはありません。**動脈注射によって周囲の炎症を軽減しておくことも、その後の治療に不利になるものではありません。

したがって、ばね指による引っかかりや伸びにくさは、「完全に動かなくなってから」ではなく、まだ指を動かせる早い段階で治療することが重要です。

 

Q33. ドケルバン病による親指側の手首の痛みにも治療できますか?

はい、ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)による親指側の手首の痛みも治療できます。

ドケルバン病は、親指を動かす腱と、それを包む腱鞘に炎症や狭窄が生じる病気です。親指を動かしたときや、物をつかむ・持ち上げる・ひねるといった動作で、手首の親指側に痛みが出ることが特徴です。

ドケルバン病では、炎症の程度だけでなく、腱鞘の肥厚や腱の状態などによって適した治療方法が異なります。そのため当院では、まずエコー(超音波)検査で腱・腱鞘の状態を確認し、重症度を評価することを重視しています。

炎症が主体で、腱や腱鞘の構造的な変化がそれほど高度ではない**軽症から中等症程度であれば、手の動脈注射による改善が期待できます。**モヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることで慢性炎症を鎮め、親指や手首を動かした際の痛みの改善を目指します。

一方、炎症が非常に強い場合や病状が進行している場合、あるいは**より確実で強い治療効果を求める場合には、運動器カテーテル治療の方が適していることがあります。**カテーテル治療では、原因となっている部位の血管をより選択的に治療することが可能です。

したがって、ドケルバン病では一律に同じ治療を行うのではなく、エコー検査による重症度や病変の状態、症状の強さ、ご希望などを総合的に判断し、手の動脈注射とカテーテル治療のどちらが適しているかをご提案します。

 

Q34. 手首や指の腱鞘炎にも効果が期待できますか?

はい、手首や指の腱鞘炎についても、手の動脈注射による改善が期待できます。

腱鞘炎は、指や手首を繰り返し使用することなどによって、腱とそれを包む腱鞘に炎症が生じる病気です。痛みだけでなく、腫れ、こわばり、動かしにくさ、指の引っかかりなどを伴うことがあります。

こうした腱・腱鞘周囲の慢性炎症にもモヤモヤ血管(病的新生血管)が関与していることがあり、手の動脈注射によってこれを減少させ、炎症を鎮めることで症状の改善を目指します。

特に、ばね指などの指の腱鞘炎で、まだ腱や腱鞘の構造的な変化が高度に進んでいない場合には、手の動脈注射による改善が期待しやすくなります。

一方、手首の腱鞘炎については、炎症が生じている場所や病変の広がり、重症度によって、手の動脈注射よりも**運動器カテーテル治療の方が適している場合があります。**カテーテル治療では、原因となっている部位の血管をより選択的に治療できるためです。

そのため当院では、必要に応じてエコー(超音波)検査などで腱や腱鞘の状態を確認し、病変の部位、炎症の程度、症状の強さなどを総合的に評価したうえで、手の動脈注射とカテーテル治療のどちらが適しているかを判断します。

腱鞘炎は、長期間放置すると腱鞘の肥厚や狭窄、腱そのものの変性などが進み、炎症を抑えるだけでは十分に改善しにくくなることがあります。そのため、痛みや引っかかりなどが長引いている場合には、あまり放置せず早めにご相談いただくことをおすすめします。

 

Q35. 手関節の変形性関節症にも治療できますか?

はい、手関節(手首)の変形性関節症もモヤモヤ血管治療の対象となります。ただし、ヘバーデン結節や母指CM関節症などとは異なり、病状によっては手の動脈注射よりも運動器カテーテル治療を優先した方がよい場合があります。

手関節は、指の関節や膝・股関節などと比較すると、加齢だけを原因とした変形性関節症が起こりにくい部位です。そのため、手関節に変形性関節症が形成されている場合には、過去の骨折や靱帯損傷、長期間にわたる負担などが背景にあることも多く、ひとたび病状が進行すると難治性となりやすく、症状が再燃するリスクも高くなります。

このような進行した手関節の変形性関節症では、炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)が広範囲あるいは複数の動脈領域に存在することがあります。そのため、初回治療から十分な効果を得ることを重視する場合には、病変を栄養する血管をより選択的かつ確実に治療できる運動器カテーテル治療が望ましいと考えています。

一方、手の動脈注射にも役割があります。例えば、カテーテル治療後に残った軽度の症状に対する追加治療や、症状が再燃した際のメンテナンス治療として動脈注射を併用することができます。病状に応じて両者を使い分けることが重要です。

また、手関節の変形性関節症に対して動脈注射を行って十分な改善が得られなかった場合でも、「モヤモヤ血管を標的とする治療そのものが効かない」とは限りません。

動脈注射では、手首から投与した薬液を血流に乗せて広い範囲に届けます。一方、カテーテル治療では血管造影でモヤモヤ血管を確認しながら、その病変を栄養する血管の近くまでカテーテルを進め、より選択的に治療することができます。そのため、動脈注射では治療が十分に及ばなかった病変でも、カテーテル治療へ切り替えることで改善が得られる可能性があります。

したがって、手関節の変形性関節症では、単純に「まず動脈注射」と考えるのではなく、変形の程度、痛みの部位、炎症の広がり、これまでの治療歴などを評価し、最初からカテーテル治療を選択するのか、動脈注射を補助的に用いるのかを判断することが重要です。

 

Q36. TFCC損傷による小指側の手首の痛みにも治療できますか?

はい、**TFCC損傷による手首の小指側の痛みも、モヤモヤ血管治療の対象となります。**軽症から中等症程度であれば、手の動脈注射による症状の改善が期待できます。

TFCC(三角線維軟骨複合体)は、手首の小指側にある軟骨や靱帯などからなる組織で、手関節を安定させたり、手首に加わる衝撃を吸収したりする重要な役割を担っています。

TFCCを傷めると、手首をひねる、ドアノブを回す、タオルを絞る、重い物を持つ、手をついて体重をかけるといった動作で、小指側の手首に痛みが生じやすくなります。

TFCC損傷では、組織の損傷そのものに加えて、その周囲に炎症が長く続くことで痛みが慢性化することがあります。この慢性炎症にモヤモヤ血管(病的新生血管)が関与している場合には、モヤモヤ血管を減少させて炎症を鎮めることで、痛みの改善を図ることができます。

軽症から中等症で、慢性炎症が痛みの主体となっている場合には、まず手の動脈注射を検討できます。一方、**損傷や炎症の程度が強い場合、症状が長期間続いている場合などでは、動脈注射だけでは十分な効果が得られないことがあります。**そのような場合には、初回から運動器カテーテル治療を選択した方が望ましいことがあります。

カテーテル治療では、血管造影でモヤモヤ血管を確認しながら、病変を栄養する血管の近くまでカテーテルを進めて、より選択的に治療することができます。そのため、重症例では動脈注射よりも十分な治療効果を期待できます。

また、カテーテル治療で症状が改善した後に軽度の痛みが残った場合や、時間がたって症状が再燃した場合には、メンテナンスや補助治療として手の動脈注射を併用することも可能です。

なお、手の動脈注射を受けても十分な改善が得られなかったからといって、**「モヤモヤ血管を標的とする治療そのものが無効」とは限りません。**動脈注射では病変への薬剤到達が十分でなかった可能性もあり、より選択的なカテーテル治療へ切り替えることで改善が得られることがあります。

一方で、モヤモヤ血管治療は、**断裂したTFCCそのものを元通りに修復する治療ではありません。**不安定性を伴う高度な損傷など、構造的な問題が症状の主体となっている場合には、整形外科的な治療が必要になることもあります。

そのためTFCC損傷では、損傷の程度と慢性炎症のどちらが痛みの主体となっているのかを評価し、手の動脈注射、カテーテル治療、整形外科的治療を適切に使い分けることが重要です。

 

Q37. 手根管症候群による手の痛みやしびれにも治療できますか?

手根管症候群についても、**軽症であれば手の動脈注射によって症状の改善が期待できる場合があります。**ただし、病状が進行している場合には効果が得られにくく、手術など別の治療が必要となることがあります。

手根管症候群は、手首にある**「手根管」という狭いトンネルの中で正中神経が圧迫されることによって起こる病気**です。正中神経は、親指から薬指の一部までの感覚や、親指を動かす筋肉などに関係しているため、圧迫されると、手指のしびれや痛み、夜間や明け方の症状、細かい作業のしにくさなどが生じます。

軽症の段階では、神経そのものに不可逆的な障害が生じているというよりも、手根管内やその周囲の炎症やむくみ(浮腫)によって、一時的に神経への圧迫が強くなっていることがあります。

こうした炎症にモヤモヤ血管(病的新生血管)が関与している場合には、手の動脈注射によって炎症やむくみを軽減することで、正中神経にかかる負担が減り、痛みやしびれが改善することがあります。

一方、病状が中等度以上に進行すると、手根管内での神経圧迫が強くなり、正中神経そのものに器質的な障害が生じてきます。この段階では、炎症を改善するだけでは十分な神経の除圧が得られないため、手の動脈注射による効果は期待しにくくなります。

特に、しびれが常に続いている、親指の付け根の筋肉が痩せてきた、物をつまみにくい、細かな作業がしにくくなったといった症状がある場合には、神経障害が進行している可能性があります。このような場合には、神経伝導検査などによる重症度評価を行い、必要に応じて手根管開放術などの外科的治療を検討することが重要です。

したがって手根管症候群は、モヤモヤ血管に対する治療を行うのであれば、比較的早期の段階で介入することが望ましい疾患の一つです。

手の痛みやしびれがあるからといって、すべてが手根管症候群とは限りません。まず症状の原因と神経圧迫の程度を評価し、炎症が主体の軽症で動脈注射による改善が期待できるのか、それとも神経の除圧を優先すべき段階なのかを見極めることが大切です。

 

Q38. ガングリオンによる手首の痛みにも治療できますか?

はい、ガングリオンに伴う手首の痛みについても、その原因が周囲の炎症であれば、手の動脈注射によって一定の症状改善が期待できます。

ガングリオンは、関節や腱鞘の近くにゼリー状の内容物がたまってできる良性の腫瘤です。手首にできることが多く、膨らみがあるだけで特に症状のない方もいますが、周囲に炎症を伴ったり、手首を動かした際に周囲の組織が刺激されたりすることで痛みが生じることがあります。

このように、ガングリオン周囲の炎症が痛みに関与している場合には、モヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させて炎症を鎮めることで、手首の痛みが軽減することがあります。

一方、手の動脈注射は**ガングリオンそのものを消失させたり、小さくしたりする治療ではありません。**治療によって痛みが改善した場合でも、ガングリオンの大きさや外見上の膨らみは基本的に残ります。

また、ガングリオンが神経を物理的に圧迫している場合には、痛みだけでなく、しびれや感覚異常、筋力低下などが生じることがあります。このような物理的な神経圧迫が症状の主体となっている場合には、炎症を改善するだけでは十分な効果が得られないため、穿刺・吸引や外科的治療などを検討する必要があります。

したがって、ガングリオンに伴う症状では、**「炎症によって痛んでいるのか」「ガングリオンそのものによる物理的な圧迫が問題なのか」**を見極めることが重要です。

手の動脈注射は前者に対する症状緩和を目的とした治療であり、**ガングリオンそのものに対する根本的な治療ではありません。**症状が強い場合や神経圧迫を伴う場合、保存的治療で改善しない場合には、ガングリオン自体に対する治療を検討します。

 

Q39. キーンベック病による手首の痛みにも治療できますか?

はい、**キーンベック病に伴う手首の痛みも、モヤモヤ血管治療によって症状の改善が期待できる場合があります。**ただし、キーンベック病では手の動脈注射よりも、初回から運動器カテーテル治療をおすすめすることが多くなります。

キーンベック病は、手首にある月状骨という小さな骨への血流が障害され、骨壊死や変形を生じる病気です。病状は段階的に進行し、一定のステージまでは保存的治療を行いながら経過をみることがありますが、高度に進行した場合には外科的治療が必要になることがあります。

キーンベック病の痛みには、月状骨そのものの変化だけでなく、**その周囲に生じる慢性炎症が関与している場合があります。**この炎症にモヤモヤ血管(病的新生血管)が関与している場合には、これを適切に治療することで手首の痛みが軽減することがあります。

ただし、キーンベック病は月状骨への血流障害と骨壊死を伴うデリケートな疾患です。そのため、単純に手首の動脈から薬液を投与するのではなく、血管造影によって手首周囲の血管や病的新生血管の状態を確認しながら、必要な血管だけをより選択的に治療できる運動器カテーテル治療の方が初回治療として適しています。

また、手首周囲は複数の細かな動脈から血液が供給されているため、体表から穿刺できる血管から薬液を投与する手の動脈注射だけでは、病変に対する治療が十分に及ばないことがあります。

そのため当院では、キーンベック病に対してモヤモヤ血管治療を行う場合には、初回はカテーテル治療によって精密に治療し、その後に軽度の症状が残った場合や症状が再燃した場合には、メンテナンス・補助治療として手の動脈注射を併用するという方法を検討します。

なお、手の動脈注射で十分な改善が得られなかった場合でも、**モヤモヤ血管を標的とする治療そのものが無効とは限りません。**動脈注射では病変に十分な薬液が届かなかった可能性があり、より選択的なカテーテル治療へ切り替えることで症状の改善が得られることがあります。

一方で重要なのは、モヤモヤ血管治療は壊死した月状骨そのものを元の状態に戻す治療ではないということです。痛みが改善しても、キーンベック病そのものについては画像検査などによる経過観察が必要です。病状が高度に進行している場合には、整形外科・手外科で外科的治療を検討する必要があります。

したがってキーンベック病では、現在の病期、月状骨の状態、手首周囲の炎症、痛みの程度を総合的に評価し、カテーテル治療、動脈注射、整形外科的治療を適切に組み合わせることが重要です。

 

Q40. 関節リウマチによる手指の痛みにも治療できますか?

はい、関節リウマチによる手指の痛みや腫れ、こわばりなども、手の動脈注射の治療対象となります。

関節リウマチでは、関節を包む滑膜に強い炎症が起こり、その炎症部位にはモヤモヤ血管(病的新生血管)が非常に豊富に形成されることが知られています。そのため、モヤモヤ血管を標的とする治療に反応しやすい病態の一つであり、手指に症状が限局している場合には、手の動脈注射による改善が期待できます。

特に、抗リウマチ薬などによる標準治療を受けているにもかかわらず、特定の手指に痛みや腫れ、熱感、朝のこわばりなどが残っている場合には、局所に残存する炎症に対する追加治療として検討することができます。

手の動脈注射によってモヤモヤ血管を減少させることで、こうした局所の炎症を鎮め、痛み、腫れ、こわばり、動かしにくさなどの改善を目指します。

一方、症状が手指だけではなく、手首、肘、上腕、肩など広い範囲に及んでいる場合には、動脈注射だけではすべての病変を十分に治療できないことがあります。その場合には、血管造影で病変を確認しながら複数の領域をより選択的に治療できる運動器カテーテル治療の方が適していることがあります。

ここで非常に重要なのは、手の動脈注射やカテーテル治療は、関節リウマチそのものを治癒させる治療ではなく、抗リウマチ薬などの標準治療に代わるものでもないということです。

関節リウマチは全身性の自己免疫疾患であり、関節破壊の進行を防ぐためには、DMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)や生物学的製剤、JAK阻害薬などによる適切な標準治療を継続することが重要です。動脈注射を受けたからといって、これらの薬剤が不要になるわけではありません。

したがって、関節リウマチに対するモヤモヤ血管治療は、標準治療と競合するものではなく、標準治療を適切に受けていても残る局所の痛みや炎症に対して、さらに症状の改善を図るための追加治療と考えていただくのが適切です。

特に、薬物治療を行っても手指の痛みや腫れが十分にコントロールできない場合や、局所の炎症をより積極的に抑えたい場合には、治療選択肢の一つとして検討する価値があります。

 

Q41. 乾癬性関節炎による手指の痛みにも治療できますか?

はい、乾癬性関節炎による手指の痛みや腫れ、こわばりなども、手の動脈注射の治療対象となります。

乾癬性関節炎は、皮膚の病気である乾癬に伴って、関節だけでなく、腱や腱鞘、腱が骨に付着する部分(腱付着部)などにも炎症が生じる病気です。手指に症状が現れることも多く、関節の痛みや腫れ、朝のこわばりのほか、指全体が腫れる「指趾炎(ソーセージ指)」などを生じることがあります。

こうした炎症部位では、モヤモヤ血管(病的新生血管)が形成され、炎症や痛みが長引くメカニズムに関与していることがあります。そのため、手の動脈注射によってモヤモヤ血管を減少させ、局所の炎症を鎮めることで、痛み、腫れ、こわばり、動かしにくさなどの症状の緩和が期待できます。

特に、乾癬性関節炎に対する薬物治療を受けているにもかかわらず、手指に局所的な痛みや腫れなどの症状が残っている場合には、標準治療に追加する局所治療として検討することができます。

一方、症状が手指だけではなく、手首、肘、肩など広い範囲に及んでいる場合には、動脈注射だけではすべての病変を十分に治療できないことがあります。その場合には、病変をより選択的かつ広範囲に治療できる運動器カテーテル治療の方が適していることがあります。

ここで重要なのは、手の動脈注射やカテーテル治療は、乾癬性関節炎そのものを治癒させる治療ではなく、乾癬性関節炎に対する標準的な薬物治療に代わるものでもないということです。

乾癬性関節炎では、症状や病状に応じて抗リウマチ薬、生物学的製剤、分子標的薬などによる治療を継続し、関節や腱の障害が進行しないようにすることが重要です。動脈注射によって手指の症状が改善した場合でも、これらの治療が不要になるわけではありません。

したがって、乾癬性関節炎に対するモヤモヤ血管治療は、標準治療を適切に継続しながら、それでも残る手指の局所的な炎症や痛みをさらに改善するための追加治療と考えていただくのが適切です。

 

Q42. 骨折や捻挫のあとに残った手の痛みにも治療できますか?

はい、骨折や捻挫などの外傷後に長く残った手や指の痛みも、手の動脈注射の治療対象となります。

骨折や捻挫などで組織が傷つくと、身体はその場所を修復するために炎症反応を起こし、新しい血管を作ります。これは本来、傷ついた組織を治すために必要な正常な治癒反応です。

通常は、組織の修復が進むにつれて炎症は鎮まり、増えた血管も自然に減少していきます。しかし、外傷の程度が強かった場合や、長期間の固定、繰り返す負荷などさまざまな要因によって、本来は治癒とともに減少するはずの新生血管が残り、モヤモヤ血管(病的新生血管)として慢性炎症や痛みを長引かせることがあります。

そのため、「骨折そのものは治ったと言われたのに痛い」「レントゲンでは問題ないのに手を使うと痛む」「捻挫から何か月たっても腫れや痛みが残っている」といった状態では、モヤモヤ血管が痛みに関与している可能性があります。

手の動脈注射では、このように外傷後も残ってしまったモヤモヤ血管を大幅に減少させることで、慢性炎症を鎮め、痛みや腫れ、こわばり、動かしにくさなどの改善を目指します。

外傷後の慢性痛は手に限らず全身のさまざまな部位に生じますが、骨や靱帯などの損傷が治癒した後にも痛みだけが長く残る場合には、治療に難渋することも少なくありません。こうした外傷後遺症による慢性痛は、モヤモヤ血管治療を検討する良い適応の一つです。

ただし、骨折直後や捻挫直後の痛みは正常な治癒過程に伴うものが多く、すぐに動脈注射を行う必要は通常ありません。また、骨折の癒合不全や靱帯損傷、不安定性などの構造的な問題が残っている場合には、それに対する治療が優先されます。

したがって、外傷そのものは治癒しているにもかかわらず、予想される期間を超えて痛みや腫れが続いている場合に、モヤモヤ血管の関与を考え、手の動脈注射の適応を検討します。

 

Q43. 手指や手首の手術後に痛みが残っている場合も治療できますか?

はい、手指や手首の手術後に長く残っている痛みも、モヤモヤ血管治療の対象となります。

手術では、治療のために皮膚や皮下組織、腱、靱帯、骨などに一定の侵襲が加わります。その後の治癒過程では、傷ついた組織を修復するために炎症反応が起こり、新しい血管が作られます。これは本来、組織を治すために必要な正常な反応です。

通常は、傷が治るにつれて炎症が鎮まり、新しく作られた血管も自然に減少していきます。しかし、何らかの理由で炎症が長引くと、本来は治癒とともに減少するはずの新生血管がモヤモヤ血管(病的新生血管)として残り、術後の慢性的な痛みを長引かせる要因となることがあります。

そのため、**「手術自体は問題なく終わったのに痛みが続いている」「傷は治ったのに手を使うと痛い」「術後から腫れやこわばりがなかなか取れない」**といった場合には、モヤモヤ血管が症状に関与している可能性があります。

手指に症状が限局している場合には、手の動脈注射によってモヤモヤ血管を減少させ、痛みや腫れ、こわばりなどの改善を図ることができます。

一方、手首にも強い痛みがある場合や、病変が手首を含む広い範囲に及んでいる場合には、動脈注射だけでは十分に治療できないことがあります。そのような場合には、血管造影で病変を確認しながら原因となる血管をより選択的に治療できる運動器カテーテル治療の方が適していることがあります。

手術後に痛みだけが長く残る「術後慢性疼痛」は、手に限らず全身のさまざまな部位で起こり得ます。手術によって構造的な問題が修復されているにもかかわらず症状が続き、一般的な鎮痛薬やリハビリなどでも十分に改善しない場合には、治療に難渋することも少なくありません。こうした手術後遺症による慢性痛は、モヤモヤ血管治療を検討する良い適応の一つです。

ただし、術後の痛みのすべてがモヤモヤ血管によるものではありません。感染、再断裂、骨癒合の問題、神経障害、関節の不安定性などが残っている場合には、それらに対する治療を優先する必要があります。

したがって、手術部位そのものは適切に治癒しているにもかかわらず、予想される期間を超えて痛みや腫れ、こわばりなどが続いている場合に、その原因を評価したうえで、手の動脈注射またはカテーテル治療の適応を検討します。

 

Q44. CRPS(複合性局所疼痛症候群)による手の痛みにも治療できますか?

はい、**CRPS(複合性局所疼痛症候群)による手の痛みに対しても、モヤモヤ血管治療による症状の改善が期待できる場合があります。**ただし、CRPSは通常の関節炎や腱鞘炎などとは異なる非常に複雑でデリケートな病態であるため、治療適応や投与方法について慎重な判断が必要です。

CRPSは、骨折や捻挫、手術などをきっかけとして発症することが多く、もともとの外傷や手術の程度からは説明しにくいほど強い痛みが長期間続くことがあります。

痛みだけでなく、腫れ、皮膚の色や温度の変化、発汗異常、触れただけでも強く痛む症状(アロディニア)、関節のこわばりや運動障害など、さまざまな症状を伴うことがあります。

CRPSでは、神経系の過敏化、自律神経の異常、炎症、微小循環障害など複数のメカニズムが関与すると考えられています。その中で、病的新生血管や局所の血流異常、慢性炎症が症状に関与している場合には、モヤモヤ血管を標的とする治療によって痛みなどの症状が改善することがあります。

一方、CRPSではわずかな刺激によって痛みが増強したり、症状が大きく変動したりすることがあります。そのため、通常の手の痛みと同じように一律に治療するのではなく、症状の程度、発症からの期間、皮膚や血流の状態、痛覚過敏の程度などを十分に評価し、薬液の投与方法や治療計画を個別に検討することが重要です。

また、CRPSはモヤモヤ血管だけで説明できる疾患ではありません。必要に応じて薬物療法、リハビリテーション、神経ブロックなど、他の治療を組み合わせていくことも重要です。

したがって、CRPSに対する手の動脈注射は、一般的な手の慢性痛以上に治療経験と慎重な管理が求められる治療です。治療を希望される場合には、CRPSに対するモヤモヤ血管治療の経験がある医療機関で相談されることをおすすめします。

 

Q45. 病名がはっきりしない手の痛みでも相談できますか?

はい、病名がはっきりしていない手の痛みでもご相談いただけます。

手や指の痛みには、ヘバーデン結節、母指CM関節症、腱鞘炎など明確な診断がつくものがある一方で、診察や画像検査を行っても、既存の病名だけではうまく説明できない痛みが実際に存在します。

例えば、「レントゲンでは異常がないと言われたのに痛い」「いくつかの医療機関を受診したが原因がはっきりしない」「検査では大きな問題がないのに、手を使うと痛みや腫れが出る」といったケースです。

このような場合でも、痛みのある場所に慢性炎症や血流障害が存在し、モヤモヤ血管(病的新生血管)が症状を長引かせていると考えられる場合には、手の動脈注射などのモヤモヤ血管治療によって症状の改善が期待できます。実際に、明確な病名がついていない状態で受診され、治療によって症状が改善するケースも少なからず経験します。

これは、モヤモヤ血管治療が特定の病名だけを対象とするのではなく、「痛みや炎症がなぜ長引いているのか」という病態そのものに着目した治療だからです。

一方で、原因が分からない痛みであれば何でも動脈注射の対象になるわけではありません。手の痛みには、神経障害、頸椎疾患、感染症、炎症性疾患など、別の治療を優先すべき病気が隠れていることもあります。

そのため、まず診察を行い、必要に応じてエコー(超音波)検査やレントゲン、血液検査などを組み合わせ、他に治療すべき原因がないか、慢性炎症や血流障害が症状に関与している可能性があるかを評価したうえで治療適応を判断します。

したがって、**「病名がついていないから治療できない」と考える必要はありません。**原因がはっきりしないまま手の痛みが長く続いている場合には、モヤモヤ血管治療の経験が豊富な医療機関で一度相談されることをおすすめします。

 

4.原因・検査・診断

Q46. 手指の痛みにはどのような原因がありますか?

手指の痛みにはさまざまな原因があります。関節の変形だけでなく、腱・腱鞘の炎症、血流障害、自己免疫疾患、外傷や手術の後遺症、神経系の異常などが関係することがあります。

代表的な疾患・病態には、次のようなものがあります。

  • 手指の変形性関節症
    ヘバーデン結節(第1関節)、ブシャール結節(第2関節)、母指CM関節症(親指の付け根)などがあります。痛みだけでなく、腫れ、こわばり、変形、動かしにくさなどを伴うことがあります。
  • 腱・腱鞘の疾患
    ばね指(腱鞘炎)、ドケルバン病、その他の腱炎・腱鞘炎などです。指を曲げ伸ばししたときの痛みや引っかかり、手を使った際の痛みなどが特徴です。
  • 血流障害を主体とする病態
    レイノー現象や、振動工具の長期使用などに伴う振動障害(いわゆる白蝋病)などがあります。冷えや寒さをきっかけに指が白くなる、紫色になる、痛む、しびれるといった症状がみられることがあります。
  • 膠原病・自己免疫疾患などによる炎症
    関節リウマチ、乾癬性関節炎、SAPHO症候群、その他の膠原病・自己免疫疾患などでは、関節の滑膜、腱・腱鞘、皮膚などに炎症が起こり、手指の痛みや腫れ、こわばりを生じることがあります。
  • 外傷や手術後に残る痛み
    骨折、捻挫、靱帯損傷などの外傷後や、手指・手首の手術後に、損傷そのものが治癒した後も痛みや腫れ、こわばりが長く残ることがあります。
  • 感染症後に残る症状
    感染症そのものが治癒した後にも、炎症や免疫反応などを背景として手指の痛みやこわばりが続くことがあります。
  • CRPS(複合性局所疼痛症候群)
    外傷や手術などを契機として、通常の治癒経過から予想される以上に強い痛みが続き、腫れ、皮膚温や色調の変化、発汗異常、痛覚過敏、運動障害などを伴うことがあります。

このほか、手根管症候群などの末梢神経障害や頸椎疾患によって、手の痛みやしびれが生じることもあります。

このように、同じ「手が痛い」という症状でも原因は一つではありません。また、複数の病態が重なっていることも珍しくありません。

一方、これらの疾患のうち慢性炎症が痛みに深く関与する病態では、その炎症部位に**モヤモヤ血管(病的新生血管)**が形成され、痛みを長引かせる要因となっていることがあります。

そのため手の動脈注射では、単に病名だけで治療適応を決めるのではなく、**「現在の痛みに慢性炎症やモヤモヤ血管がどの程度関与しているのか」**という視点から診察し、適切な治療方法を検討します。

 

Q47. 手の使い過ぎが原因の場合、安静だけでは治らないことがありますか?

はい、手の使い過ぎがきっかけであっても、安静にするだけでは十分に治らないことがあります。

一時的に手を使い過ぎて痛くなった程度であれば、負担を減らして休ませることで炎症が自然に鎮まり、数日から数週間で改善することも多くあります。

一方、仕事、家事、パソコンやスマートフォンの操作、手芸、楽器演奏、スポーツなどによって同じ関節や腱に長期間繰り返し負担がかかっている場合には、単なる一時的な炎症ではなくなっていることがあります。

例えば、関節の変形が進んでいたり、腱・腱鞘・靱帯などに変性や損傷が生じていたり、慢性炎症が定着していたりする場合です。このような状態になると、負担を減らすだけでは痛みが十分に改善しないことがあります。

また、慢性炎症が続いている場所では、モヤモヤ血管(病的新生血管)が形成され、**「炎症が続く→痛むため動かしにくくなる→組織環境が悪化する→さらに痛みが長引く」**という悪循環が形成されていることがあります。

この段階では、原因となった使い過ぎをやめても、炎症やモヤモヤ血管がその場所に残ってしまい、痛みがなかなか治らないことがあります。「以前は休めば治っていたのに、最近は休んでも痛い」「使うとすぐに再発する」という場合には、すでに慢性化している可能性があります。

一方で、痛いからといって手を長期間まったく使わないことが必ずしもよいわけではありません。過度な安静が続くと、関節や腱が硬くなり、こわばりや可動域制限につながることもあります。

そのため、長引く手の痛みでは、単に「使い過ぎだから休む」と考えるのではなく、関節や腱にどの程度の変化が起きているのか、慢性炎症が残っているのかを評価することが重要です。

十分に安静をとっても改善しない場合や、休むと一時的に良くなるものの手を使うとすぐに再発する場合には、早めに診察を受け、必要に応じて手の動脈注射などの治療を検討することをおすすめします。

 

Q48. 更年期と手指の痛みには関係がありますか?

はい、更年期と手指の痛みやこわばりには一定の関係があると考えられています。

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、骨だけでなく、関節、腱、腱鞘などの組織の状態にも関係しています。更年期になるとエストロゲンが急激に減少するため、関節や腱などの柔軟性や組織環境が変化し、手指の痛み、こわばり、腫れ、しびれ、動かしにくさなどを自覚することがあります。

こうした更年期前後の女性にみられる手のさまざまな不調を、近年では**「メノポハンド(Menopausal Hand)」**と呼ぶことがあります。

メノポハンドは一つの特定の病気を指す名称ではなく、ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症、腱鞘炎、ばね指などを含め、更年期前後に生じるさまざまな手の症状を包括的に捉えた概念です。

一方、更年期の年代は、長年にわたる家事や仕事、パソコン作業、趣味、スポーツなどによる手指への負担が蓄積してくる時期でもあります。そのため、手の症状をすべて女性ホルモンの減少だけで説明することはできません。

また、手指の変形性関節症などには女性に多いとされる病態がある一方、疾患や年齢層によっては性差が明確でないという報告もあります。したがって、「更年期だから手が痛む」「女性だから起こる」と単純に考えるのではなく、ホルモン変化、加齢、遺伝的要因、手の使い方、慢性炎症など複数の要因が重なって症状が現れると考えるのが適切です。

特に、痛みや腫れ、朝のこわばりなどが続いている場合には、関節や腱周囲に慢性炎症が生じ、モヤモヤ血管(病的新生血管)が関与していることがあります。

そのため、更年期前後に手指の症状が現れた場合も、単に「更年期だから仕方がない」と考えるのではなく、どのような病態が起きているのかを評価し、必要に応じて適切な治療を行うことが重要です。

 

Q49. 妊娠・出産・授乳後に生じた手の痛みにも治療できますか?

妊娠・出産・授乳期には、女性ホルモンの変化や体液量・血液量の大きな変動、育児による手への負担などが重なり、手や指、手首に痛みや腫れ、こわばりなどが生じることがあります。

特に妊娠中から出産後にかけては、腱鞘炎、ばね指、手根管症候群などが生じることがありますが、こうした症状の多くは、出産後のホルモンや体液バランスの変化に伴って時間の経過とともに自然に軽快する可能性があります。

そのため、妊娠中や授乳中に手の痛みが生じたからといって、すぐに手の動脈注射を行う必要はありません。当院では、自然に改善する可能性が高い時期には、原則として積極的な動脈注射治療はおすすめしていません。

手の動脈注射で主に使用されるイミペネム・シラスタチンは、本来は抗菌薬として使用されている薬剤です。妊娠中については、治療上の有益性が母体・胎児への潜在的な危険性を上回ると判断される場合に使用が検討される薬剤です。また、手の動脈注射で使用する量は、通常の感染症治療で抗菌薬として使用する量と比較してごく少量です。

一方、妊娠中は母体だけでなく胎児への影響も考慮する必要があるため、**使用量が少ないという理由だけで積極的に治療を行うものではありません。**症状が非常に強く日常生活に大きな支障をきたしている場合などに限り、妊娠週数や症状、他の治療選択肢などを含めて慎重に検討します。

授乳中についても同様に、薬剤の必要性や母乳を介した乳児への影響を考慮して個別に判断します。出産後で授乳を終えており、それでも手の痛みが長く残っている場合には、通常の手の慢性痛と同様に治療適応を検討することができます。

したがって、妊娠・出産・授乳に関連して生じた手の痛みについては、「治療できるかどうか」だけではなく、「今、本当に治療する必要があるか」を判断することが重要です。

痛みが軽度であればまず自然経過をみることをおすすめしますが、症状が強い場合や長期間改善しない場合には個別にご相談ください。診察のうえ、妊娠・授乳の状況も含めて、適切な治療方針をご説明します。

 

Q50. 糖尿病があると、ばね指や手の痛みが起こりやすいのですか?

はい、糖尿病がある方では、ばね指をはじめとする手のさまざまな障害が起こりやすいことが知られています。

特にばね指は糖尿病との関連が強く、糖尿病のない方と比べて発症しやすく、**複数の指に生じたり、症状が長引いたりすることがあります。**このほか、手根管症候群や手指のこわばりなども糖尿病の方でみられやすい手の症状です。

その背景には一つの原因だけではなく、長期間の高血糖による腱や腱鞘などの組織の変性、慢性炎症、微小循環障害など、複数の要因が関係していると考えられています。

また、糖尿病では組織の修復過程や血管反応にも変化が生じやすく、病的な新生血管が形成されやすい状態となることがあります。そのため、同程度の負担が手にかかった場合でも、炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)が残存し、痛みが慢性化する要因となる可能性があります。

一方、糖尿病の罹病期間が長い場合や合併症が進行している場合には、単純な炎症だけではなく、末梢神経障害や血行障害などが手の痛みやしびれに複雑に関与していることがあります。

このような場合には、モヤモヤ血管を減少させて炎症を改善しても、神経障害などによる症状が残ることがあり、糖尿病のない方と比較して治療効果が得られにくい場合があります。

したがって、糖尿病のある方の手の痛みでは、単に「ばね指」「腱鞘炎」として考えるだけではなく、慢性炎症、血流、神経障害などのうち、どの要因が現在の症状にどの程度関与しているのかを評価することが重要です。

もちろん、糖尿病があるという理由だけで手の動脈注射を受けられないわけではありません。炎症が痛みの主体となっている場合には治療による改善が期待できますが、糖尿病そのものについても適切な血糖管理を継続することが大切です。

 

Q51. 手の冷えや血行不良は、痛みの原因になりますか?

はい、**手の冷えや血行不良も、手指の痛みの原因の一つになります。**ただし、関節炎や腱鞘炎などの慢性炎症によって生じる痛みとは、少し異なるメカニズムで起こります。

手や指は身体の末端にあり、気温の低下や自律神経の働きによって血管が収縮すると、血流が低下しやすい部位です。血流が一時的に大きく低下すると、組織に十分な酸素が届きにくくなり、冷たさだけでなく、痛み、しびれ、こわばり、感覚の違和感などを生じることがあります。

特に、寒い場所で指が白くなる、紫色になる、その後赤くなって痛むといった症状がある場合には、レイノー現象などの血流障害が関係している可能性があります。

一方、ヘバーデン結節、母指CM関節症、腱鞘炎などでは、関節や腱の周囲に生じた慢性炎症や組織の変性・損傷が痛みの主な原因となります。こちらは単純に「血流が少ないから痛む」というものではありません。

ただし、慢性炎症と血行障害は完全に別々に存在するとは限りません。炎症が長期間続くことで局所の微小循環が乱れたり、反対に血流の悪い状態が組織の回復を妨げたりして、複数の要因が重なって痛みを長引かせていることもあります。

また、モヤモヤ血管(病的新生血管)が多い状態は、単純に「血流が良い」という意味ではありません。正常な血管とは異なる不規則な血流が生じ、周囲の炎症や微小循環の異常に関与していると考えられます。

したがって、手の冷えを伴う痛みでは、慢性炎症が主体なのか、血流障害が主体なのか、あるいは両方が関与しているのかを見極めることが重要です。原因によって適切な治療方法が異なるため、診察のうえで治療方針を検討します。

 

Q52. 手の痛みが首や神経の病気によるものか、どのように判断しますか?

手の痛みやしびれがある場合には、**症状の出ている場所や広がり方、しびれなどの感覚障害の有無、筋力低下の有無などを確認して判断します。**中でも重要なのは、症状が特定の神経の支配領域に一致しているかどうかです。

例えば、頸椎症や頸椎椎間板ヘルニアなどによって首から出る神経が圧迫されると、首や肩から腕、手指にかけて、神経の走行に沿った痛みやしびれが生じることがあります。手そのものには大きな異常がなくても、「手が痛い」「指がしびれる」と感じることがあります。

また、手根管症候群や肘部管症候群など、腕や手の途中で末梢神経が圧迫されても、特定の指を中心とした痛みやしびれ、感覚低下、筋力低下などが生じます。

一方、ヘバーデン結節、母指CM関節症、腱鞘炎など手そのものに原因がある場合には、特定の関節や腱に圧痛や腫れがあり、手指を動かしたときや物を握る・つまむといった動作で症状が再現されることが多くあります。

診察では、こうした症状の分布に加えて、手指の関節や腱の圧痛・腫れ・可動域、筋力、感覚、腱反射などを確認し、必要に応じてエコー(超音波)検査、レントゲンやMRIなどの画像検査、神経伝導検査を組み合わせて原因を評価します。

ただし、実際には原因が一つとは限りません。例えば、手指の変形性関節症や腱鞘炎による痛みと、頸椎症による神経症状が同時に存在していることもあります。この場合、首だけ、あるいは手だけを治療しても、すべての症状がなくなるとは限りません。

そのため当院では、「手が痛いから手の病気」「しびれるから神経の病気」と単純に判断するのではなく、症状がどの神経支配領域に一致しているのか、手そのものに痛みの原因となる病変があるのか、複数の原因が重なっていないかを総合的に判断します。

手の動脈注射は、手指の慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)が症状に関与している場合に効果が期待できる治療です。頸椎や神経の障害が症状の主体である場合には、その原因に対する治療を優先または併用する必要があります。

 

Q53. 手のしびれがある場合も動脈注射の適応になりますか?

手のしびれがある場合でも、**その原因によっては手の動脈注射による改善が期待できることがあります。**ただし、しびれだけを主症状とする場合には、積極的な治療適応とはいえません。

一般に「しびれ」というと神経の障害を考えます。実際、手根管症候群や肘部管症候群、頸椎症などによって神経が圧迫・障害されている場合には、しびれが生じます。このような神経そのものの器質的な障害が原因であれば、手の動脈注射でモヤモヤ血管(病的新生血管)を減らしても、しびれの改善は期待しにくくなります。

一方、「しびれ」という感覚の表現にはかなり個人差があります。患者さんが「しびれる」と表現されていても、実際には炎症による違和感、腫れやむくみに伴う感覚異常、血流障害によるピリピリ感やジンジン感などを指していることがあります。

このように、しびれの背景に慢性炎症や血流障害が関与している場合には、手の動脈注射によって炎症や循環状態が改善することで、しびれや違和感が軽減することがあります。

そのため、しびれがあるという理由だけで動脈注射の対象外になるわけではありませんが、しびれ単独の場合には、まず神経障害など他の原因がないかを評価することが重要です。必要に応じて、神経学的診察や画像検査、神経伝導検査などを行います。

一方、しびれだけでなく、痛み、腫れ、こわばり、指の動かしにくさなどを併せて認める場合には、慢性炎症が症状の一部に関与している可能性が高くなります。このような場合には、手の動脈注射を検討する意義があります。

治療後にしびれそのものが残ったとしても、痛みやこわばり、動かしにくさなど、炎症に由来する症状が改善するという部分的な治療効果は十分に期待できます。

したがって、手のしびれに対しては、「しびれがあるかどうか」だけではなく、その原因が神経障害なのか、炎症や血流障害なのか、あるいは複数の要因が重なっているのかを見極めたうえで、動脈注射の適応を判断します。

 

Q54. 診察では手のどのような点を確認しますか?

診察では、問診、視診、触診、動作・可動域の確認、画像検査などを組み合わせて、痛みの原因や炎症の程度、手の動脈注射が適しているかどうかを総合的に評価します。

まず問診では、いつから、どの場所が、どのようなときに痛むのかを詳しく確認します。安静時にも痛むのか、手を使ったときだけ痛むのか、朝にこわばるのか、仕事や家事、スポーツなど特定の動作と関係しているのかといった情報は、原因を考えるうえで重要です。

また、これまでに受けた治療や手術・外傷の有無、症状の経過、関節リウマチや糖尿病などの基礎疾患についても確認します。

視診・触診では、関節や腱周囲の発赤、腫脹、熱感、圧痛、変形などを確認します。どこを押すと痛むのか、炎症が一つの関節に限局しているのか、複数の指や手全体に広がっているのかも重要な情報です。

さらに、実際に指や手首を動かしていただき、関節の可動域、こわばり、引っかかり、握る・つまむといった動作での痛みや動かしにくさを評価します。必要に応じて握力なども確認します。

画像診断では、主にエコー(超音波)検査を用いて、関節、滑膜、腱、腱鞘などの状態を確認します。必要に応じてレントゲンなども併用し、関節変形や骨の状態を評価します。

手の動脈注射を検討するうえで特に重要なのが、エコーによる血流評価です。カラードプラなどを用いて、痛みのある部位に通常より多くの血流信号がみられないかを確認し、モヤモヤ血管(病的新生血管)の関与を推測します。

単に「血流がある・ない」だけではなく、血流信号がどの程度増えているのか、どの場所に分布しているのか、症状のある部位と一致しているのかまで評価します。

このように、手の動脈注射では病名だけをみて治療を決めるのではなく、**「どの組織が傷んでいるのか」「炎症がどの程度あるのか」「モヤモヤ血管がどの程度関与していると考えられるのか」**を総合的に判断したうえで、治療適応や治療方法を決定します。

 

Q55. 治療前にレントゲン検査は必要ですか?

いいえ、手の動脈注射を受けるすべての方にレントゲン検査が必要というわけではありません。

まず診察を行い、症状やこれまでの経過、手指の変形の程度などから、レントゲン検査が必要かどうかを判断します。

レントゲン検査では、関節の変形、関節裂隙の狭小化、骨棘など、骨や関節の構造的な変化を確認することができます。そのため、ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症などの変形性関節症が疑われる場合や、外傷後の骨の状態を確認したい場合などには有用です。

一方、腱・腱鞘の炎症や血流の状態などはレントゲンでは十分に評価できないため、必要に応じてエコー(超音波)検査を行います。エコーでは、関節、腱、腱鞘などの状態に加えて、モヤモヤ血管(病的新生血管)の関与を示唆する血流信号についても評価することができます。

したがって、**治療前にあらかじめ他院でレントゲンを撮影していただく必要はありません。**診察のうえ必要と判断した場合には、当院でレントゲン検査やエコー検査を行い、治療適応を判断します。

 

Q56. MRI検査を受けていなくても治療できますか?

はい、MRI検査を受けていなくても手の動脈注射を受けることは可能です。MRI検査は必須ではありません。

MRIは、関節、軟骨、腱、靱帯、骨髄、神経などを詳しく評価できる有用な検査ですが、手の痛みの診断や動脈注射の適応判断において、すべての方に必要となる検査ではありません。

多くの場合は、症状の経過や身体診察に加えて、必要に応じてレントゲンやエコー(超音波)検査を行うことで、痛みの原因や炎症の程度、治療適応を十分に評価することができます。

特にエコーでは、関節、腱、腱鞘などの状態を確認するとともに、モヤモヤ血管(病的新生血管)の関与を示唆する血流信号についても評価できるため、手の動脈注射を検討する際に有用です。

一方、靱帯や軟骨などの詳細な評価が必要な場合、骨壊死や腫瘍など別の病気が疑われる場合、診断がはっきりしない場合などには、MRIが有用となることがあります。

したがって、**MRIをあらかじめ撮影してから受診していただく必要はありません。**まず診察を行い、MRIによって得られる情報が診断や治療方針の決定に必要と判断した場合に限り、検査をご提案します。

 

Q57. 超音波検査(エコー)では何が分かりますか?

エコー(超音波)検査では、**関節、腱、腱鞘などの構造と、モヤモヤ血管(病的新生血管)を含めた血流の状態を同時に評価することができます。**手の動脈注射の適応や治療効果を判断するうえで、非常に有用な検査です。

まず通常のエコー画像では、関節の変形や滑膜の腫れ、腱・腱鞘の肥厚や変性、炎症に伴うむくみなどを確認することができます。ばね指や腱鞘炎では腱や腱鞘の状態を、ヘバーデン結節やブシャール結節などでは関節周囲の変化を詳しく観察できます。

さらに重要なのが、カラードプラなどを用いた血流評価です。慢性炎症が続いている場所では、通常よりも多くの血流信号がみられることがあり、モヤモヤ血管の関与を推測する手がかりとなります。

単に血流信号が「ある・ない」だけではなく、どの程度強いのか、どの範囲に分布しているのか、実際に痛みを感じている場所と一致しているのかについても評価します。

例えば、関節の変形が強くても血流信号がほとんどみられない場合と、変形は軽度でも痛みのある場所に強い異常血流信号がみられる場合とでは、痛みの原因や治療によって期待できる改善の程度が異なる可能性があります。

このためエコー検査は、単に病名を診断するだけではなく、**「現在どの程度炎症が活動しているのか」「モヤモヤ血管が症状にどの程度関与していると考えられるのか」**を判断するためにも役立ちます。

これらの所見を、症状の強さ、罹病期間、関節や腱の構造的変化などと組み合わせることで、手の動脈注射による改善がどの程度期待できるのか、改善までに時間がかかりそうか、将来的に症状が再燃しやすい状態かなどを、ある程度推測するための参考にすることができます。

また、エコーには放射線被ばくがなく、その場で繰り返し観察できるという利点があります。そのため治療前の評価だけでなく、必要に応じて治療後の炎症や血流の変化を確認するためにも利用できます。

このように当院では、エコーを**「形を見る検査」だけではなく、「炎症や血流まで含めて現在の病態を評価する検査」**として活用し、手の動脈注射の適応や治療方針を判断しています。

 

Q58. 血液検査やリウマチの検査が必要になることはありますか?

はい、必要に応じて血液検査を行うことがあります。ただし、手の動脈注射を受けるすべての方に血液検査が必要というわけではありません。

例えば、複数の関節に腫れや痛みがある、朝のこわばりが強い、左右対称に症状があるなど、関節リウマチやその他の膠原病・自己免疫疾患が疑われる場合には、血液検査を検討します。

必要に応じて、**CRPなどの炎症反応、リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体、MMP-3(マトリックスメタロプロテイナーゼ3)**などを調べます。

当院では、この中でも**MMP-3を参考となる検査項目の一つとして重視しています。**MMP-3は関節の滑膜などで産生される酵素で、特に関節リウマチでは滑膜炎の活動性を反映する指標の一つとして用いられています。

実際の診療では、典型的な関節リウマチの診断基準を満たしていなくても、RF、抗CCP抗体、MMP-3などの一部だけが陽性あるいは高値となっている方に遭遇することがあります。このような場合、直ちに関節リウマチと診断されるわけではありませんが、関節や腱周囲に炎症を生じやすい背景がないかを考えるうえで参考になります。

モヤモヤ血管(病的新生血管)は慢性炎症と密接に関係して形成されるため、当院ではこうした血液検査の異常についても、**慢性炎症やモヤモヤ血管が生じやすい背景を示唆する所見の一つではないかという視点から参考にしています。**ただし、MMP-3などの検査値だけからモヤモヤ血管の有無や「できやすい体質」を直接診断できるわけではありません。

また、症状や全身状態によっては、**貧血や鉄欠乏の有無を確認することもあります。**高度の鉄欠乏や鉄欠乏性貧血は、組織への酸素供給や組織修復、全身状態などに影響し、手の痛みやこわばりなどの症状を悪化させる一因となっている可能性があります。実際に、鉄欠乏を改善することで手の症状が大きく軽減する方もおられるため、疑われる場合には血算やフェリチンなどを確認し、必要に応じて鉄欠乏そのものに対する治療を優先または併用します。

また、通常の変形性関節症や腱鞘炎としては炎症が強い場合、発熱や著しい腫れ・熱感を伴う場合、あるいは手の動脈注射後の経過が通常と異なる場合にも、背景に別の炎症性疾患や全身性疾患が隠れていないかを確認する目的で血液検査をご提案することがあります。

なお、関節リウマチをはじめとする膠原病は、血液検査の結果だけで診断できるものではありません。症状、身体所見、エコーなどの画像所見を組み合わせて総合的に判断します。

過去の健康診断や他院での検査で異常値を指摘されたことがある方、関節リウマチや膠原病などの持病がある方、現在治療中の病気がある方は、**診察時にあらかじめお申し出ください。**過去の検査結果やお薬手帳などをお持ちの場合には、持参していただくと診断や治療方針の判断に役立ちます。

 

Q59. 痛みの原因や病名が分からなくても受診できますか?

はい、**痛みの原因や病名が分からない状態でも、まったく問題なく受診していただけます。**あらかじめご自身で病名を調べたり、他の医療機関で診断を受けてから来院していただく必要はありません。

「手が痛いけれど、どこが悪いのか分からない」「いくつかの医療機関を受診したが診断がはっきりしない」「自分ではヘバーデン結節や腱鞘炎だと思うが、本当にそうなのか分からない」といった状態でもご相談ください。

診察では、症状が始まった時期、痛む場所、どのような動作で痛むのか、腫れやこわばり、しびれなどを伴っているかといったことを詳しく確認します。そのうえで、視診・触診・可動域や動作の確認を行い、必要に応じてエコー(超音波)検査、レントゲン、血液検査などを組み合わせて原因を評価します。

すでに他院で診断を受けている場合や、ご自身で病名を認識されている場合についても、その診断と現在の症状が合致しているのか、ほかの病気が合併していないかを含めて改めて確認します。

例えば、ヘバーデン結節による痛みと思われていても腱鞘炎を合併していたり、手そのものの病気に加えて頸椎や末梢神経の障害が症状の一部に関与していたりすることがあります。複数の原因が重なっていることも珍しくありません。

また、手の動脈注射は、単に病名だけをみて行う治療ではありません。現在の痛みに慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)がどの程度関与していると考えられるのかという病態も含めて治療適応を判断します。

診察後には、考えられる病状や痛みの原因についてできるだけ分かりやすくご説明し、手の動脈注射が適している場合には治療をご提案します。一方、ほかの検査や治療を優先した方がよいと判断した場合には、その理由も含めてご説明します。

したがって、**「病名が分かってから受診しなければならない」と考える必要はありません。**原因を調べるところからご相談いただいて問題ありません。

 

Q60. 他院の画像や検査結果を持参した方がよいですか?

他院で撮影した画像や検査結果をお持ちの場合には、**可能であればご持参ください。診断や治療方針を検討する際の参考になります。**ただし、持参は必須ではなく、資料がなくても受診していただけます。

レントゲン、MRI、CT、エコーなどの画像がある場合には、画像そのものや画像データをご持参いただくと、これまでの病状や関節・腱などの状態を把握するうえで役立ちます。画像診断の報告書のみをお持ちの場合も参考になります。

また、血液検査の結果、健康診断の結果、紹介状、これまでの治療内容が分かる資料、お薬手帳なども、可能であればお持ちください。特に関節リウマチや膠原病、糖尿病などの持病がある方や、過去に炎症反応、リウマチ関連項目、貧血・鉄欠乏などの異常を指摘されたことがある方では、過去の検査結果が参考になることがあります。

一方、「検査結果が手元にない」「以前の画像を取り寄せるのが難しい」という場合でも、受診を延期していただく必要はありません。

当院で改めて診察を行い、必要に応じてエコー(超音波)検査やレントゲン、血液検査などを行ったうえで病状を評価し、手の動脈注射を含めた適切な治療方法をご提案します。

 

5.ほかの治療との違い・治療選択

Q61. 湿布や痛み止めで改善しない場合も治療できますか?

はい、湿布や痛み止めで十分に改善しない場合でも、手の動脈注射による改善が期待できます。

手指の慢性的な痛みでは、湿布や塗り薬、内服の鎮痛薬などを使用しても、十分な効果が得られないことは珍しくありません。特に、ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症、腱鞘炎などで慢性炎症が長く続いている場合には、痛みを一時的に抑える治療だけでは症状が残ることがあります。

手の動脈注射は、単に痛みを感じにくくする治療ではなく、痛みを長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させ、慢性炎症を鎮めることを目的とした治療です。

そのため、湿布や鎮痛薬とは作用する仕組みが異なり、これまで湿布や痛み止めが効かなかったからといって、手の動脈注射も効かないということではありません。

一方、湿布や鎮痛薬によって症状がある程度軽減している場合には、無理に中止する必要はありません。手の動脈注射と併用していただいても基本的に問題ありません。

治療によって痛みや炎症が改善してくれば、鎮痛薬などを使用する頻度が自然に減っていくこともあります。現在使用している薬がある場合には、診察時にお知らせください。

したがって、湿布や痛み止めを続けてもなかなか改善しない手の痛みは、手の動脈注射を検討する一つのタイミングと考えていただいてよいでしょう。

 

Q62. 装具やテーピングで改善しない場合も治療できますか?

はい、装具やテーピングを使用しても十分に改善しない場合でも、手の動脈注射による症状の改善が期待できます。

装具やテーピングは、痛みのある関節や腱の動きを制限したり、負担がかかりにくい状態にしたりすることで、炎症を鎮めることを目的とした保存的治療です。軽症の場合には、これだけで症状が改善することもあります。

一方、病状がある程度進行して慢性炎症が定着している場合には、負担を減らすだけでは炎症が十分に鎮まらず、装具やテーピングを続けても痛みが残ることがあります。

このような場合には、痛みを長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させ、慢性炎症そのものに介入する手の動脈注射を検討する良い適応となります。

特に、「装具を着けている間は少し楽だが、外すとすぐ痛む」「テーピングを続けても症状が改善しない」「手を使うとすぐに痛みが再発する」といった場合には、すでに安静や負担軽減だけでは改善しにくい状態となっている可能性があります。

ただし、装具やテーピングが無意味になるわけではありません。手の動脈注射によって炎症を改善しながら、一時的に関節や腱への負担を減らす目的で併用することで、治療効果を高めることが期待できます。

また、症状が改善した後も、仕事やスポーツなどで手に大きな負担がかかる場面では、再発予防を目的として装具やテーピングを上手に活用することも有用です。

したがって、装具やテーピングで改善しなかった場合でも治療をあきらめる必要はなく、動脈注射で慢性炎症に介入しながら、装具やテーピングを補助的に組み合わせるという考え方がよいでしょう。

 

Q63. リハビリやストレッチで改善しない場合も治療できますか?

はい、リハビリやストレッチを行っても十分に改善しない場合でも、手の動脈注射による症状の改善が期待できます。

手指の痛みやこわばりに対して、適切なリハビリやストレッチは、関節の可動域を保ち、腱の滑りを改善し、手の機能を維持するうえで有用です。軽症であれば、負担の調整とリハビリだけで改善することもあります。

一方、病状が進行して関節や腱・腱鞘に慢性炎症が定着している場合には、リハビリやストレッチだけで炎症そのものを十分に鎮めることは難しくなります。

このような場合には、痛みを長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させ、慢性炎症に直接アプローチする手の動脈注射を検討することができます。

そのため、「リハビリを続けているのになかなか痛みが取れない」「ストレッチをしてもすぐにこわばる」「動かすとかえって痛みが強くなる」といった場合でも、動脈注射によって炎症が改善することで、痛みやこわばりが軽減し、手を動かしやすくなることが期待できます。

また、炎症が強い時期に痛みを我慢して無理に動かしたり、強いストレッチを繰り返したりすると、かえって症状を悪化させることがあります。炎症が強い場合には、まず炎症を十分に鎮め、その後に適切なリハビリやストレッチを行うという順序も重要です。

一方、手の動脈注射によって症状が改善した後には、リハビリやストレッチの役割がより重要になります。関節の可動域を維持し、手の使い方を整え、筋力や柔軟性を保つことは、機能回復を促すだけでなく、症状の再発予防にも有用です。

したがって、リハビリやストレッチと手の動脈注射はどちらか一方を選ぶ治療ではなく、慢性炎症が強い場合には動脈注射で病態に介入し、改善後にはリハビリやストレッチを上手に組み合わせることが効果的です。

 

Q64. ステロイド注射で改善しなかった場合も治療できますか?

はい、ステロイド注射で十分に改善しなかった場合や、一度は改善したものの再発した場合でも、手の動脈注射による症状の改善が期待できます。

ステロイド注射は強い抗炎症作用を持ち、ばね指などの腱鞘炎や一部の関節炎に対して、従来から広く行われてきた治療です。比較的早く症状が軽減することがある一方、効果が一時的で再発する場合もあり、すべての方に十分な効果が得られるわけではありません。

また、ステロイドを同じ場所に繰り返し注射すると、腱や靱帯などの支持組織を脆弱にしたり、皮膚や皮下組織の萎縮・色素変化などを生じたりする可能性があります。糖尿病のある方では、一時的な血糖上昇にも注意が必要です。

そのため、ステロイド注射は有用な治療ではありますが、投与する場所、薬剤量、投与間隔、回数などを適切に管理して使用することが重要です。症状が再発するたびに漫然と繰り返す治療ではありません。

一方、手の動脈注射はステロイドを使用する治療ではありません。痛みのある関節や腱鞘に直接薬剤を注入するのではなく、動脈から一時塞栓物質を投与し、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることを目的としています。

つまり、ステロイド注射と手の動脈注射では**治療の仕組みそのものが異なります。**そのため、ステロイド注射が効かなかったからといって、手の動脈注射も効かないということではありません。

また、ステロイド注射のように腱や靱帯などへステロイドを繰り返し投与する治療ではないため、ステロイドの反復局所投与に伴う組織脆弱化を心配する必要がないことも利点の一つです。

手の動脈注射は即効性を目的とした治療ではなく、モヤモヤ血管を減らし、慢性炎症が鎮まっていくことで徐々に症状が改善します。多くの場合、数週間から1か月程度かけて改善を実感し、その後も効果が長く持続することを目指す治療です。

したがって、**「ステロイド注射を受けたが効かなかった」「一度は効いたが再発した」「これ以上ステロイド注射を繰り返したくない」**という場合は、手の動脈注射を検討する良いタイミングの一つです。

なお、すでにステロイド注射を複数回受けている場合には、これまでの注射部位、回数、最終投与時期などを診察時にお知らせください。腱や腱鞘、関節の状態も評価したうえで、適切な治療方法をご提案します。

 

Q65. ステロイド注射の効果が一時的だった場合にも治療できますか?

はい、**ステロイド注射で一時的にでも症状が改善した方は、手の動脈注射による改善も期待できます。**当院の治療経験では、むしろステロイド注射が一時的に有効だったという経過は、動脈注射の治療効果を予測するうえで参考になる情報の一つと考えています。

ステロイドには強い抗炎症作用があります。そのため、ステロイド注射によって一時的にでも痛みや腫れ、こわばりが改善したということは、現在の症状に炎症が大きく関与していることを示唆する所見と考えることができます。

一方、ステロイドによって炎症が一時的に抑えられても、痛みを長引かせている背景が残っていれば、薬の作用が弱くなるにつれて症状が再び現れることがあります。そのため、「注射直後は非常によく効いたが、しばらくすると元に戻った」という経過も珍しくありません。

手の動脈注射は、ステロイドによって一時的に炎症を抑える治療とは異なり、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることによって、炎症が持続するメカニズムそのものに介入することを目的とした治療です。

そのため、ステロイド注射の効果が一時的だった場合でも、手の動脈注射によって、より長期的な症状の改善が期待できます。

また、当院の治療経験では、**ステロイド注射がまったく効かなかった方でも動脈注射によって改善することがありますが、ステロイド注射で一時的にでも明らかな改善が得られた方は、より治療効果を期待しやすい傾向があります。**これは、痛みの中で慢性炎症が占める割合が大きいことを反映している可能性があります。

一方、ステロイド注射を同じ部位に繰り返すと、腱や靱帯などの組織を脆弱にしたり、皮膚・皮下組織の萎縮などを生じたりする可能性があるため、投与回数や間隔には注意が必要です。

この点でも、手の動脈注射はステロイドを使用せず、関節や腱鞘へ直接ステロイドを投与する治療でもないため、ステロイドの反復局所投与に伴う組織への影響を避けながら、慢性炎症に介入できることが利点です。

したがって、「ステロイド注射はよく効いたが、効果が長続きしなかった」という方は、手の動脈注射を検討する良い適応の一つと考えられます。

また、これからステロイド注射を検討されている段階であれば、病状によっては、ステロイド注射を繰り返す前に手の動脈注射を選択することもできます。どちらの治療が適しているかは、症状や病態、これまでの治療歴を確認したうえでご提案します。

 

Q66. 手の動脈注射とステロイド注射は、どのように使い分けますか?

どちらも手指の炎症や痛みに対して用いられる治療ですが、**作用する仕組みや効果の現れ方、持続性、副作用などが異なります。**当院ではこれらの特徴を踏まえ、原則として手の動脈注射を優先し、必要な場合にステロイド注射を限定的に併用しています。

ステロイド注射は強力な抗炎症作用を持ち、ばね指などの腱鞘炎や関節炎に対して、従来の一般診療の中では有効性の高い治療の一つです。比較的即効性があり、強い炎症や痛みを短期間で抑えられることが大きな利点です。

一方、効果が一時的で再発することも少なくありません。また、同じ場所に繰り返し注射すると、腱や靱帯などの支持組織を脆弱にしたり、皮膚や皮下組織の萎縮などを生じたりする可能性があります。そのため、投与部位、投与量、投与間隔、回数などを適切に管理する必要があります。

これに対して手の動脈注射は、ステロイドを使用する治療ではありません。動脈から一時塞栓物質を投与し、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることで、炎症が持続するメカニズムそのものに介入することを目的としています。

即効性についてはステロイド注射に劣ることがありますが、治療後数週間から1か月程度かけて徐々に改善し、改善後の効果が長期間持続することを目指せることが大きな特徴です。また、関節や腱鞘へステロイドを直接繰り返し投与する治療ではないため、ステロイドの反復局所投与に伴う組織脆弱化を心配する必要がありません。

当院の治療経験では、手の動脈注射のみで十分な改善が得られる方が多いため、まず動脈注射を行い、その経過をみることを基本としています。

一方で、炎症や痛みが非常に強くより早い症状緩和が必要な場合や、動脈注射によって全体としては改善したものの一部の関節や腱鞘に強い炎症が残った場合などには、ステロイド注射を追加することがあります。

両者は治療の仕組みが異なるため、状況によっては組み合わせることも可能です。当院では、先に手の動脈注射によってモヤモヤ血管や慢性炎症を十分に減らしたうえで、必要な場所にのみステロイド注射を追加することで、ステロイドの使用量や投与回数をできるだけ少なくしながら、より高い治療効果を目指すという考え方をしています。

また、炎症が十分に鎮まってからステロイド注射を行うことで、注射時の痛みが軽減したり、ステロイド注射の効果が得られやすくなったりすることも経験します。

したがって、当院では、

「まずモヤモヤ血管に対する手の動脈注射で病態そのものに介入し、必要な場合に限ってステロイド注射の即効性を利用する」

という使い分けを基本としています。

ステロイド注射をすでに何度か受けている方や、これからステロイド注射を検討されている方についても、これまでの治療歴や現在の炎症の程度を確認したうえで、どちらの治療を優先するのが適切かをご提案します。

 

Q67. 手の動脈注射とハイドロリリースは何が違いますか?

手の動脈注射とハイドロリリースは、治療する場所と目的が大きく異なります。

ハイドロリリースは、エコー(超音波)で確認しながら、筋膜や腱、神経などの周囲に生理食塩水などの液体を注入し、組織同士の滑走性(滑り)を改善したり、周囲組織から神経を分離して圧迫や刺激を軽減したりすることを目的とした治療です。

神経や周囲組織の滑走障害・癒着などが症状に関与している場合には有効で、治療直後から症状の軽減を実感することもあります。一方、原因となる病態によっては効果が一時的で、症状が再び現れることもあります。

手の領域では、例えば手根管症候群など、神経周囲へのアプローチが有効と考えられる一部の病態でハイドロリリースが検討されます。

一方、手指の痛みで多くみられるヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症などの変形性関節症や、関節リウマチなどの炎症性疾患では、痛みの主体が関節や滑膜などに生じた慢性炎症であるため、ハイドロリリースが適した病態とは限りません。

これに対して手の動脈注射は、動脈から一時塞栓物質を投与し、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることを目的とした治療です。

つまり、

ハイドロリリース:組織の滑走障害や神経周囲の圧迫・刺激にアプローチする治療

手の動脈注射:慢性炎症やそれに伴う異常血管・微小循環の病態にアプローチする治療

という違いがあります。

そのため、手の動脈注射では、ハイドロリリースでは直接治療することが難しい変形性関節症や炎症性関節疾患に伴う痛み、腫れ、こわばりなどについても改善が期待できます。

また、効果の現れ方にも違いがあります。ハイドロリリースは適応となる病態であれば比較的早く変化を感じることがありますが、手の動脈注射は原則として即効性を目的とする治療ではありません。モヤモヤ血管が減少し、慢性炎症や組織環境が改善していくことで、数週間から1か月程度かけて徐々に症状が改善していくことが一般的です。

なお、両者はどちらか一方が常に優れているというものではありません。神経の圧迫や滑走障害が主体であればハイドロリリース、慢性炎症が主体であれば手の動脈注射というように、症状の原因によって適切な治療が異なります。

複数の病態が重なっている場合には、両者を組み合わせることも考えられます。診察やエコー検査によって痛みの原因を評価したうえで、適切な治療方法をご提案します。

 

Q68. 手の動脈注射とPRP治療は何が違いますか?

手の動脈注射とPRP治療は、どちらも自費診療として行われることのある治療ですが、治療の仕組みや実際の治療方法が大きく異なります。

PRP(多血小板血漿)治療は、患者さんご自身の血液を採取し、遠心分離などによって血小板を多く含む成分を抽出・濃縮して患部に注射する再生医療の一つです。

血小板から放出されるさまざまな成長因子などを利用して、身体が本来持っている組織修復能力を促し、痛みの軽減や組織の修復を図ることを目的としています。

これに対して手の動脈注射は、動脈から一時塞栓物質を投与し、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることで、炎症が持続するメカニズムそのものに介入する治療です。

つまり、非常に単純化すると、

PRP治療:組織の「治す力」を利用して修復を促す治療

手の動脈注射:痛みや炎症を長引かせている異常な血管を減らし、治りやすい環境をつくる治療

という違いがあります。

実際の治療方法にも違いがあります。PRP治療では、まず一定量の採血を行い、採取した血液からPRPを作製したうえで、痛みの原因となっている関節や腱などへ直接注射します。そのため、採血、PRPの作製、患部への注射という複数の工程が必要になります。

特に手指の関節や腱周囲は狭く敏感な部位であるため、患部へ直接注射する際に一定の痛みを伴うことがあります。また、血液からPRPを作製するための専用の医療材料や工程が必要となることから、一般に治療費も比較的高額になります。

一方、手の動脈注射は、手首の橈骨動脈または尺骨動脈から極細径の針を用いて薬液を投与します。複数の関節が痛む場合でも、一つ一つの痛い関節に針を刺していく必要はありません。手全体の血管支配を利用して治療できることは、手指に複数の症状がある方にとって大きな利点です。

また、外来で比較的短時間に行うことができ、PRPのような採血や血液製剤の作製工程も必要ありません。そのため、身体的負担や時間的負担、費用負担を比較的抑えて行えることも特徴です。

PRP治療と手の動脈注射を直接比較した十分な臨床研究は現時点ではなく、どちらが優れていると一概に結論づけることはできません。また、PRPは整形外科領域のさまざまな疾患に用いられていますが、手指の変形性関節症や腱鞘炎などに対する標準的な治療として広く行われているわけではありません。

一方、両者には、ステロイドを繰り返し局所投与する治療ではなく、ステロイドの反復注射に伴う組織脆弱化を避けられるという共通点もあります。

当院ではPRP治療も取り扱っていますが、手指の痛みに関しては、これまでの治療経験、有効性、治療時の身体的負担、費用などを総合的に考え、PRP治療を積極的には行っていません。

特にヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症、ばね指など、慢性炎症やモヤモヤ血管の関与が考えられる手指の痛みに対しては、原則として手の動脈注射を第一選択としています。

ただし、PRPが適している病態もありますので、どちらの治療が適しているかは、痛みの原因や組織の状態を評価したうえで判断することが重要です。

 

Q69. 手の動脈注射と体外衝撃波治療は何が違いますか?

手の動脈注射と体外衝撃波治療は、どちらも慢性的な運動器の痛みに対して行われる治療ですが、治療の方法と標的とする病態が大きく異なります。

体外衝撃波治療は、身体の外から患部に衝撃波あるいは圧力波による物理的な刺激を加えることで、痛みを軽減したり、組織の修復反応を促したりすることを目的とした治療です。

整形外科領域では、難治性の足底腱膜炎に対して一定の条件で保険適用が認められているほか、テニス肘、アキレス腱障害、石灰沈着性腱板炎など、腱や腱付着部を中心とした慢性疼痛に対して自費診療で行われることがあり、一定の治療成績が報告されています。

一方、**手指の変形性関節症や腱鞘炎、炎症性関節疾患などに対しては、体外衝撃波治療は一般的な治療として広く行われているわけではありません。**手指は骨や関節、腱、神経、血管などが非常に狭い範囲に集まっているため、他の部位と同じように治療できるとは限りません。

これに対して手の動脈注射は、手首の動脈から一時塞栓物質を投与し、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させる微細動脈塞栓術です。

つまり、

体外衝撃波治療:患部に物理的刺激を与え、疼痛の軽減や組織修復反応を促す治療

手の動脈注射:血管内からモヤモヤ血管を減少させ、慢性炎症が持続する病態に介入する治療

という違いがあります。

また、体外衝撃波治療では、基本的に症状のある部位を一か所ずつ照射します。一方、手の動脈注射では動脈の血流を利用して薬液を届けるため、ヘバーデン結節などで複数の指や関節に症状がある場合でも、一つ一つの関節に針を刺すことなく、手の広い範囲を同時に治療できることが特徴です。

手指の慢性痛では、ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症、ばね指など、**慢性炎症やモヤモヤ血管の関与する病態が複数の場所に存在することも少なくありません。**こうした特徴から、手指の痛みに対しては手の動脈注射が適した治療となる場合があります。

なお、体外衝撃波治療と手の動脈注射を直接比較した十分な臨床研究があるわけではないため、両者の優劣を一概に判断することはできません。それぞれ得意とする病態が異なる治療と考えるのが適切です。

モヤモヤ血管を標的とする治療には、運動器カテーテル治療と、その技術をより簡便な形に応用した動脈注射治療があります。その中でも、手は動脈注射による治療が行いやすく、実際に多く治療されている部位の一つです。

 

Q70. 手術を勧められている場合でも、動脈注射を検討できますか?

はい、手術を勧められている場合でも、病状によっては手の動脈注射を検討することができます。

一般的に手術が検討されるのは、装具、薬物療法、注射、リハビリなどの保存的治療を行っても十分に改善しない場合や、関節・腱・神経などの構造的な問題が進行している場合です。

ただし、どの段階で手術を勧めるかは、疾患の種類や重症度、医療機関、担当医師の治療方針などによっても異なります。「手術を勧められた=手術以外に改善する可能性がない」とは限りません。

手の動脈注射は、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることで、炎症を鎮め、血流や組織環境を改善し、痛みや腫れ、こわばりなどの症状を軽減することを目的とした治療です。

そのため、これまでの保存的治療で十分に改善せず、すでに手術を勧められている場合でも、症状の中で慢性炎症が占める割合が大きければ、動脈注射によって症状が改善する可能性があります。

一方、手の動脈注射にはできないこともあります。例えば、高度に変形した関節を元の形に戻すこと、断裂した腱や靱帯を修復すること、著しく肥厚・変性した腱や腱鞘を物理的に広げること、強く圧迫されている神経を直接開放することはできません。

したがって、構造的な障害が症状の主体となっている場合には、最終的に手術が必要となることがあります。動脈注射は、すべての手術を回避するための治療ではありません。

それでも、手術を急ぐ必要がなく、炎症が症状に大きく関与していると判断される場合には、**手術を決断する前に、身体への負担が比較的小さい動脈注射を一度検討してみる価値があります。**十分な改善が得られれば、結果として手術を回避または延期できる場合もあります。

また、動脈注射を受けたことで、その後の手術ができなくなることは基本的にありません。動脈注射で炎症や腫れをできるだけ落ち着かせたうえで、それでも構造的な問題が残る場合には、改めて手術を検討することができます。

手術にもさまざまな種類があります。例えば、進行したばね指に対する腱鞘切開術は比較的低侵襲で有効性の高い治療であり、構造的な狭窄が強い場合には無理に手術を避ける必要はありません。

一方、関節固定術のように関節の可動性を不可逆的に失う手術については、痛みの改善というメリットと、術後に失われる動きや日常生活への影響を十分に理解したうえで、より慎重に検討することが重要です。このような手術を予定している場合には、手術以外に症状を改善できる可能性が残っていないかを確認する意味でも、モヤモヤ血管治療を検討する意義があります。

なお、手術を受けた後にも痛みや腫れ、こわばりなどが長く残った場合には、術後に残存した慢性炎症や血流異常が症状に関与している可能性があり、改めて手の動脈注射やカテーテル治療を検討することもできます。

したがって、手術を勧められている場合には、単純に「手術か動脈注射か」という二者択一で考えるのではなく、現在の症状のうち、炎症による部分と構造的な問題による部分を見極め、それぞれに適した治療を選択することが重要です。

 

Q71. 動脈注射を受けると、将来手術が必要になった場合に影響しますか?

基本的には、手の動脈注射を受けたことによって、将来必要となった手術が受けられなくなることはありません。

手の動脈注射は、慢性炎症を長引かせているモヤモヤ血管(病的新生血管)を標的として、一時塞栓物質を動脈から投与する微細動脈塞栓術です。

「血管を塞ぐ治療」と聞くと、**「手の血流が悪くなって、後から手術をするときに傷が治りにくくなるのではないか」**と心配される方もおられるかもしれません。

しかし、手の動脈注射は、手に血液を供給している正常な動脈を恒久的に閉塞させる治療ではありません。標的となるモヤモヤ血管は、慢性炎症に伴って形成された非常に細く構造的にも未熟な病的新生血管です。

治療では、こうした異常血管に作用する非常に微細な一時塞栓物質を使用します。薬液による塞栓作用は一時的であり、使用した物質はその後体内で溶解・代謝されるため、永久的な塞栓物質のように体内に残り続けるものではありません。

一方、構造的に脆弱なモヤモヤ血管は、一時的に血流を遮断されることでその後大幅に減少していきます。これによって、正常な血流をできるだけ保ちながら、慢性炎症に関与する異常血管を選択的に減らすことを目指しています。

そのため、手の動脈注射を受けたことによって、将来の腱鞘切開術や関節手術などが困難になったり、手術方法が制限されたりすることは通常ありません。

また、動脈注射によって慢性炎症や腫れが改善すれば、炎症が強い状態のまま手術を受けるのではなく、より落ち着いた状態で手術に臨める可能性もあります。この点は、手術前に動脈注射を検討する一つの利点となる可能性があります。

ただし、動脈注射を行えば手術後の経過が必ず良くなるという意味ではありません。手術の必要性や適切な時期については、関節や腱などの構造的な障害の程度も含めて判断する必要があります。

したがって、**「将来手術が必要になるかもしれないから、今は動脈注射を受けない方がよい」と心配していただく必要は基本的にありません。**まず動脈注射によって炎症や痛みの改善を図り、それでも構造的な問題が残って手術が必要となった場合には、その時点で外科的治療を検討することができます。

すでに手術を予定されている場合には、手術の内容や予定時期も確認したうえで、動脈注射を行う時期について個別にご提案します。

 

Q72. どの治療から受けるべきか分からない場合も相談できますか?

はい、もちろんご相談いただけます。どの治療を受けるかをご自身で決めてから受診していただく必要はありません。

手指の痛みに対する治療には、湿布や鎮痛薬、装具・テーピング、リハビリ、ステロイド注射、ハイドロリリース、PRP治療、手の動脈注射、運動器カテーテル治療、さらに病状によっては外科手術など、さまざまな選択肢があります。

大切なのは、単純に「どの治療が一番優れているか」ではなく、現在の病状に対して、どの治療が最も適しているかを考えることです。

例えば、同じ手の痛みでも、慢性炎症が主体なのか、関節の変形が進行しているのか、腱・腱鞘の障害が主体なのか、神経の圧迫があるのかによって、適切な治療方法は異なります。

そのため当院では、問診や身体診察、必要に応じてエコー(超音波)検査、レントゲン、血液検査などを行い、痛みの原因、病状の進行度、慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)の関与などを評価します。

そのうえで、**安全性、有効性、身体への負担(侵襲性)、効果の持続性、費用(経済性)**などを総合的に考え、患者さんのご希望も伺いながら適切な治療方法をご提案します。

当院では手の動脈注射を積極的に行っていますが、**すべての手の痛みに動脈注射が最適というわけではありません。**病状によっては経過観察や一般的な保存的治療を優先した方がよい場合もあれば、カテーテル治療や外科的治療の方が適している場合もあります。

また、「できるだけ手術を避けたい」「即効性を重視したい」「身体への負担をできるだけ少なくしたい」「再発しにくい治療を希望している」など、何を重視するかによっても治療の選択は変わります。

したがって、**「自分の場合は何から始めればよいのか分からない」という段階で受診していただいて問題ありません。**病状を詳しく評価したうえで、それぞれの治療のメリット・デメリットをご説明し、適切な治療方針を一緒に検討します。

 

6.   治療方法・痛み・所要時間

Q73. 手の動脈注射はどのような手順で行いますか?

手の動脈注射は、エコー(超音波)で手首の動脈を確認しながら極細径の針を刺し、そこから薬液を投与する治療です。大がかりな処置ではなく、外来で短時間に受けていただけます。

基本的には、次のような手順で行います。

穿刺部を消毒します
手首の治療部位を消毒し、清潔な状態にします。

エコーで動脈を確認しながら針を刺します
エコーで橈骨動脈(親指側)または尺骨動脈(小指側)の位置や太さ、走行を確認します。そのうえで、極細径の針を用いて動脈を穿刺します。

動脈から薬液を投与します
針が適切に動脈内へ入っていることを確認したうえで、モヤモヤ血管(病的新生血管)を標的とした薬液をゆっくり投与します。薬液は血流に乗って手指の末梢まで運ばれるため、痛みのある関節や腱鞘を一か所ずつ注射する必要はありません。

針を抜いて止血します
薬液の投与が終了したら針を抜き、穿刺部を圧迫して止血します。止血が確認できれば治療は終了です。

実際に針を刺して薬液を投与する処置そのものは非常に短時間で、**熟練した施設では数十秒程度で終了することもあります。**消毒やエコーでの確認、止血などを含めても、通常は数分程度の処置です。

カテーテル治療のように血管の中へカテーテルを進める必要はなく、切開や縫合もありません。通常の注射に近い感覚で受けていただける低侵襲な治療であり、治療後は止血を確認してそのまま帰宅していただけます。

 

Q74. 注射する場所は手首ですか、それとも指ですか?

注射する場所は基本的に手首です。痛みのある指や関節に直接針を刺すことはありません。

手の動脈注射では、手首で脈を触れることができる**橈骨動脈(親指側の動脈)または尺骨動脈(小指側の動脈)**に、エコー(超音波)で血管を確認しながら極細径の針を刺して薬液を投与します。

投与した薬液は動脈の血流に乗って手の末梢へ運ばれるため、一か所の動脈から投与することで、複数の指や関節を含めた手の広い範囲に薬液を届けることができます。

そのため、ヘバーデン結節などで複数の指が痛む場合でも、痛い関節を一つずつ注射する必要はありません。これは、関節内注射や腱鞘内注射との大きな違いの一つです。

また、手指の関節や腱鞘は非常に狭く敏感な場所ですが、そこへ直接針を刺さないため、複数の指に症状がある場合でも身体的な負担を比較的少なく治療できるという利点があります。

非常にまれですが、手首の動脈が極端に細い場合や、穿刺時に強い血管攣縮が起こって手首からの投与が困難な場合には、肘周囲のより中枢側の動脈から薬液を投与することがあります。

いずれの場合も、**痛みのある指そのものに注射する治療ではありません。**手首などの動脈から血流を利用して手指全体へ薬液を届けることが、手の動脈注射の特徴です。

 

Q75. 注射する動脈はどのように見つけるのですか?

エコー(超音波)を用いて、動脈の位置を直接確認します。

手首には、親指側を走る橈骨動脈と、小指側を走る尺骨動脈があります。いずれも比較的皮膚に近いところを走っているため、エコーを使用すると容易に確認することができます。

エコーでは、単に血管の場所だけでなく、血管の太さ、深さ、走行、血流の状態、周囲の神経や腱などとの位置関係も確認できます。そのうえで、穿刺しやすく安全な場所を選択します。

実際の注射も、**エコーで動脈と針先を確認しながら行います。**そのため、脈を触った感覚だけを頼りに針を刺すわけではありません。

また、血管の太さや走行には個人差があります。橈骨動脈と尺骨動脈の状態を確認し、より安全かつ確実に薬液を投与できる血管を選択します。

このように、手の動脈注射ではエコーを利用することで、非常に細い手首の動脈であっても正確に位置を把握し、安全性に配慮しながら治療を行うことができます。

 

Q76. 超音波(エコー)を見ながら注射しますか?

はい。当院では、安全性と治療の確実性を高めるため、必ずエコー(超音波)で血管と針を確認しながら注射を行います。

手首には橈骨動脈や尺骨動脈がありますが、その太さや深さ、走行には個人差があります。また、周囲には神経や腱などの重要な組織が存在しています。

エコーを使用すると、**動脈の位置や太さ、走行だけでなく、周囲の神経や腱との位置関係までリアルタイムに確認することができます。**そのため、より安全に穿刺できる場所と針の進入方向を選択することができます。

さらに重要なのが、針先が確実に動脈内に入っていることを確認してから薬液を投与できることです。

手の動脈注射では、薬液を確実に血管内へ投与することが治療効果を得るうえで重要です。エコーで針先を確認しながら行うことで、血管外への薬液の漏出をできるだけ防ぎ、目的とする動脈内へ確実に投与することができます。

また、エコーで周囲組織を確認しながら穿刺することは、神経を誤って刺激したり損傷したりするリスクを低減するうえでも重要です。

動脈は脈を触れることでもおおよその位置を確認できますが、当院では触診だけを頼りに穿刺することはありません。「血管を見つけるところから、針先が血管内に入ったことを確認し、薬液を投与するまで」一連の操作をエコー観察下で行うことを基本としています。

このように、エコーは単に動脈を見つけるためだけではなく、手の動脈注射をより安全かつ確実に行うために重要な役割を果たしています。

 

Q77. 手の動脈注射に造影剤は使用しますか?

いいえ、手の動脈注射では造影剤を使用しません。

治療はエコー(超音波)で血管の位置や走行、周囲組織、針先などをリアルタイムに確認しながら行うため、血管造影検査やカテーテル治療などで使用するヨード造影剤を投与する必要がありません。

そのため、

  • ヨード造影剤にアレルギーがある方
  • 過去に造影剤で発疹やかゆみなどが出た方
  • 造影剤によるアナフィラキシーを経験されたことがある方

でも、造影剤アレルギーがあることを理由に手の動脈注射を受けられなくなることは基本的にありません。

また、ヨード造影剤を使用しないため、造影剤による腎機能への負担を考慮する必要がないことも、手の動脈注射の特徴の一つです。

これはカテーテル治療との違いでもあります。カテーテル治療では血管の走行やモヤモヤ血管(病的新生血管)の分布を詳しく確認するために血管造影を行いますが、手の動脈注射では、エコーで確認した手首の動脈から薬液を投与するため、造影剤やX線透視装置を必要としません。

したがって、**造影剤を使用しないだけでなく、造影剤を使用するための点滴などの前処置も基本的には必要ありません。**外来で比較的簡便に受けていただけることも、手の動脈注射の利点です。

ただし、**造影剤を使用しないことと、治療で使用する薬剤に対するアレルギーは別の問題です。**手の動脈注射では一時塞栓物質として薬剤を使用するため、その薬剤に対するアレルギー歴については治療前に確認します。

過去に抗菌薬をはじめとする薬剤で、発疹、呼吸苦、血圧低下、アナフィラキシーなどを経験されたことがある場合には、**治療前に必ずお申し出ください。**これまでのアレルギー歴を確認したうえで、安全性に配慮して治療の可否や使用する薬剤を判断します。

 

Q78. 手の動脈注射ではどのような薬液を使用しますか?

手の動脈注射では、イミペネム・シラスタチンという抗菌薬(抗生剤)の一種を、一時塞栓物質として使用する方法が最も広く用いられています。

「なぜ痛みの治療に抗菌薬を使うのですか?」と疑問に思われるかもしれませんが、感染症を治療するために抗菌作用を利用しているわけではありません。

イミペネム・シラスタチンは、生理食塩水と混和すると非常に細かな粒子を形成します。手の動脈注射では、この性質を利用して、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を一時的に塞栓することを目的として投与します。

したがって、この治療に必要なのは抗菌作用ではなく、非常に細かな一時塞栓物質として働く性質です。

モヤモヤ血管は、正常な血管と比較して非常に細く、構造的にも未熟で脆弱な血管です。そのため、一時的に血流を遮断することで大幅に減少することが期待できます。

一方、イミペネム・シラスタチンによって形成される粒子は永久塞栓物質ではなく、**一時的に作用した後は溶解・代謝され、体内に残り続けるものではありません。**この性質を利用することで、正常組織への血流をできるだけ保ちながら、病的新生血管を減少させることを目指します。

イミペネム・シラスタチンが広く使用されている理由の一つは、もともと医薬品として長年使用されてきた薬剤であり、全身投与時の安全性に関する情報が十分に蓄積されていることです。また、モヤモヤ血管を標的とした微細動脈塞栓術においても使用実績が蓄積されています。

実際の治療では、イミペネム・シラスタチンを生理食塩水で希釈・混濁した状態にして、手首の動脈から少量ずつ投与します。感染症の治療として通常使用される場合とは、投与目的や使用方法、使用量が異なります。

なお、病態や患者さんの状態によっては、**イミペネム・シラスタチン以外の薬剤や塞栓物質を選択することもあります。**どの薬液を使用するかは、症状、治療部位、既往歴、薬剤アレルギーなどを確認したうえで判断します。

特に、過去に抗菌薬によるアレルギーや薬疹、アナフィラキシーなどを経験されたことがある場合には、**治療前に必ずお申し出ください。**安全性を確認したうえで、適切な薬剤を選択します。

 

Q79. 手の動脈注射は痛いですか?

手の動脈注射は、手指の関節内注射や腱鞘内注射など、痛みのある場所に直接行う局所注射と比べると、治療時の痛みはかなり少ない傾向があります。

その理由は、痛みや炎症の強い関節や腱鞘そのものに針を刺すのではなく、患部から離れた手首の動脈から薬液を投与するためです。また、穿刺には極細径の針を使用し、エコー(超音波)で血管と針先を確認しながら行います。

針を刺す際には、通常の採血や注射と同様にチクッとした痛みを感じることがありますが、穿刺そのものは短時間です。

むしろ患者さんからよく聞かれるのは、針を刺したときの痛みよりも、薬液が手指へ流れていく際の独特な感覚です。

具体的には、

  • 手や指が温かくなる
  • ピリピリ、ジンジンする
  • むずむずする
  • かゆく感じる
  • 手指全体に何かが流れていくように感じる

などがあります。

これらの感じ方には個人差があり、ほとんど何も感じない方もおられます。一方、炎症が強い場合などには、一時的に刺激感や痛みをやや強く感じることもあります。

ただし、薬液の投与時間そのものが短いため、こうした感覚の多くは一時的で、投与が終了すると速やかに落ち着いていきます。

また、ヘバーデン結節などで複数の指が痛む場合でも、**痛い関節を一つずつ注射するわけではありません。**手首の一か所から薬液を投与することで手指の広い範囲を治療できるため、複数の関節に局所注射を繰り返す場合と比べても、身体的な負担を少なくすることができます。

したがって、「手の注射は痛そうで怖い」と心配されている方にも、比較的受けていただきやすい治療です。実際には「痛い」というよりも、「温かい」「ピリピリする」「かゆい」といった感覚として経験される方が多くおられます。

 

Q80. 局所麻酔は使用しますか?

**原則として局所麻酔は使用していません。**手の動脈注射では極細径の針を使用するため、穿刺時の痛みは一瞬「チクッ」と感じる程度であることが多く、通常は局所麻酔を必要としません。

以前は、当院でも穿刺前に局所麻酔を行っていました。しかし、局所麻酔そのものにも針を刺す必要があるため、「麻酔の注射」と「動脈注射」の2回針を刺すことになります。

実際に治療を行っていく中で、極細径の針による動脈穿刺は比較的痛みが少なく、**麻酔注射を追加する方が、かえって治療全体として痛かったと感じる方も少なくありませんでした。**そのため、現在は原則として局所麻酔を行わず、そのまま動脈を穿刺しています。

局所麻酔を使用しないことには、もう一つ利点があります。手首の動脈はもともと細い血管ですが、麻酔薬を周囲に注入すると皮下組織が一時的に膨らみ、血管や周囲組織との位置関係が変化することがあります。特に血管が細い方では、何も注入していない自然な状態の方がエコーで血管を確認しやすく、スムーズに穿刺できる場合があります。

また、麻酔の準備や注射が不要になるため、**治療時間そのものも短くなります。**現在の方法は患者さんからも好評で、麻酔なしで問題なく治療を終えられる方がほとんどです。

もちろん痛みの感じ方には個人差があります。**注射に対する不安が非常に強い方や、局所麻酔をご希望される方には、麻酔を使用することも可能です。**ご心配な場合には、治療前に遠慮なくお申し出ください。

したがって、局所麻酔を使用しないのは単に処置を省略しているのではなく、極細径の針を用いることで、麻酔注射を追加しない方が痛みや身体的負担を少なくできると考えているためです。

 

Q81. 治療にはどのくらい時間がかかりますか?

手の動脈注射は非常に短時間で行うことができ、実際に針を刺して薬液を投与する処置そのものは、数十秒から数分程度で終了することがほとんどです。

治療では、まず手首を消毒し、エコー(超音波)で橈骨動脈または尺骨動脈の位置、太さ、走行、周囲組織との位置関係などを確認します。そのうえで極細径の針を動脈内に進め、薬液を投与します。

血管が十分な太さで穿刺しやすい場合には非常にスムーズに行うことができ、穿刺から薬液投与まで数十秒程度で終了することもあります。

一方、血管が非常に細い場合、血管の走行に個人差がある場合、穿刺刺激によって血管攣縮が起こりやすい場合などには、より慎重な操作が必要となるため、数分程度かかることがあります。

当院では治療時間の短さを優先するのではなく、**安全性と確実性を重視し、エコーで血管や針先を十分に確認しながら治療を行っています。**そのため、状況によってはあえて時間をかけて慎重に処置することもあります。

薬液の投与が終了したら針を抜き、穿刺部を圧迫して止血します。したがって、消毒、エコーでの確認、薬液投与、止血までを含めると、実際に治療室で過ごす時間は処置そのものより少し長くなります。

それでも、カテーテル治療のような大がかりな準備や術後の長時間の安静は必要ありません。外来診療の中で短時間に受けていただけることが、手の動脈注射の大きな特徴の一つです。

 

Q82. 両手を同じ日に治療できますか?

はい、**左右両方の手を同じ日に治療することができます。**身体への負担が比較的少ない治療であるため、両手に症状がある方の多くは同日に両側の治療を受けられています。

治療は左右それぞれの手首で、橈骨動脈または尺骨動脈から薬液を投与します。痛みのある指や関節を一つずつ注射するわけではないため、両手に複数の痛い場所がある場合でも、治療時間や身体的な負担が大幅に増えるわけではありません。

また、切開や縫合を伴う治療ではなく、治療後に長時間の安静も必要ありません。そのため、両手を同日に治療しても、通常は止血を確認した後にそのまま帰宅していただけます。

一方、初めての治療で不安が強い方や、「まず片手でどのような治療なのか経験してから反対側を受けたい」という方については、初回は片側だけ治療し、経過を確認してから反対側を治療することも可能です。

医学的に必ず両手を同日に治療しなければならないわけではありませんので、症状の程度や患者さんのご希望に合わせて治療計画を立てます。

なお、両手に治療が必要な場合には、同日に治療部位を追加することで追加部位に対する割引料金が適用されるため、別々の日に治療するより費用面でのメリットがあります。

したがって、左右両方に症状がある場合には、身体的負担や通院回数、費用などを考えると、同日に両手を治療することは効率のよい選択肢です。

もちろん、「まずは痛みの強い方だけ」「左右を別の日に」というご希望にも対応できます。診察時に症状やご希望を伺ったうえで、適切な治療方法をご提案します。

 

Q83. 複数の指や手首の痛みを一度に治療できますか?

はい、複数の指に痛みがある場合でも、一度の手の動脈注射でまとめて治療することができます。

手の動脈注射は、痛みのある関節や腱鞘を一か所ずつ注射する治療ではありません。手首の橈骨動脈または尺骨動脈から投与した薬液が血流に乗って末梢へ運ばれるため、一度の治療で手から手指にかけて広い範囲へ薬液を届けることができます。

そのため、例えばヘバーデン結節で複数の第1関節が痛む場合や、ブシャール結節、母指CM関節症、ばね指などが複数の指に併存している場合でも、それぞれの指に個別に注射する必要はありません。

「1本の指だけが痛い場合」と「5本の指に複数の痛い場所がある場合」で、基本的な治療方法が大きく変わらないことは、手の動脈注射の大きな特徴です。

一方、注意が必要なのが手関節(手首の関節)そのものの痛みです。

通常の手の動脈注射は手首の動脈から末梢方向へ薬液を投与するため、穿刺部より中枢側に位置する手関節の病変については、十分な治療効果が得られない場合があります。

特に、TFCC損傷、手関節の変形性関節症、キーンベック病など、手関節そのものに病変がある場合には、病状や重症度によって、肘周囲のより中枢側の動脈から薬液を投与したり、カテーテルを用いて病変に関係する血管をより精密に治療したりする方が適していることがあります。

したがって、

複数の指の痛み一度の手の動脈注射でまとめて治療しやすい

手関節そのものの痛み病変の場所や重症度によって投与経路や治療方法を変更することがある

と考えていただくと分かりやすいでしょう。

診察では、どの関節や腱・腱鞘に問題があるのか、症状が手指に限局しているのか、手関節まで病変が及んでいるのかを確認し、通常の手の動脈注射で十分なのか、肘からの動脈注射やカテーテル治療が望ましいのかを判断したうえで、適切な治療方法をご提案します。

 

Q84. 治療後はどのくらい院内で休む必要がありますか?

手の動脈注射は身体への負担が比較的少ない治療であり、治療後に長時間院内で休んでいただく必要はありません。

治療終了後は、まず針を抜いた手首を圧迫して止血します。同時に、体調に変化がないか、薬剤による即時型のアレルギー反応などが生じていないかを確認します。

通常は、止血を行い、お会計などをしていただいている時間が、そのまま治療後の経過観察時間となる程度で十分です。特に問題がなければ、止血と体調を確認した後、そのまま帰宅していただけます。

カテーテル治療のように太い血管へカテーテルを挿入する治療ではなく、極細径の針による穿刺のみであるため、治療後にベッド上で長時間安静にしていただく必要もありません。

また、使用する薬剤は動脈内へ直接投与されるため、投与中から治療直後にかけても患者さんの状態を確認しながら治療を行います。

ただし、過去に重い薬剤アレルギーを経験されている方、治療中や治療後に何らかの体調変化がみられた方などについては、医師の判断で通常より長めに院内で経過をみていただくことがあります。

したがって、通常は治療後のためだけに長い時間を確保していただく必要はなく、止血と体調確認ができれば帰宅可能と考えていただいて問題ありません。

 

Q85. 入院は必要ですか?

いいえ、手の動脈注射のために入院する必要はありません。外来で受けていただき、その日のうちに帰宅できます。

手の動脈注射は、手首の動脈に極細径の針を刺して薬液を投与する注射治療です。切開や縫合を伴う手術ではなく、カテーテルを血管内へ進める治療でもありません。

治療そのものは通常、数十秒から数分程度で終了します。治療後は穿刺部を圧迫して止血し、体調に問題がないことを確認したうえで帰宅していただきます。治療後にベッド上で長時間安静にしたり、一晩入院して経過をみたりする必要はありません。

もちろん、医薬品を使用する以上、非常にまれではありますが、薬剤アレルギーやアナフィラキシーなどの重い反応が生じる可能性を完全にゼロにすることはできません。

そのため治療前には、過去の薬剤アレルギーやアナフィラキシーの既往などを確認し、安全性に配慮したうえで治療を行います。また、治療中から治療後にかけて体調の変化がないかを確認します。

万一、重篤なアレルギー反応などが生じた場合には、院内で必要な初期対応を行い、必要に応じて救急要請・連携医療機関への搬送を含めて適切に対応します。

なお、当院ではこれまで、手の動脈注射によってアナフィラキシーショックを生じ、緊急搬送を必要とした事例はありません(2026年8月時点)。

このように、手の動脈注射は入院を前提とする治療ではなく、通常の外来診療の中で短時間に受け、その日のうちに帰宅できる低侵襲な治療です。

 

7.効果・治療回数・経過

Q86. 治療後、どのくらいで効果を感じますか?

多くの場合、**治療後1か月程度で症状の改善を実感されます。**ただし、効果の現れ方には個人差があり、治療直後から変化を感じる方もいれば、改善までにもう少し時間がかかる方もおられます。

手の動脈注射は、麻酔薬や鎮痛薬によってその場で痛みを抑える治療ではありません。モヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることで慢性炎症が徐々に鎮まり、組織の状態が改善していくことによって効果が現れます。

そのため、**治療後1~2週間は「ほとんど変わらない」と感じることも珍しくありません。**これは治療が効いていないことを意味するものではありませんので、この時点で効果を判断するのは早すぎます。

多くの方では、その後徐々に、

こわばりが軽くなる腫れや安静時の痛みが減る手を使ったときの痛みが改善する

といった経過をたどります。特に朝のこわばりや安静時痛などは、動作時の痛みより先に改善することがあります。

一方、炎症が非常に強く、モヤモヤ血管が旺盛に形成されているような病態では、**治療直後から数日以内に症状の軽減を実感されることもあります。**ただし、これはすべての方にみられるわけではなく、最も一般的なのは治療後数週間から1か月程度で変化を感じ始める経過です。

また、動脈注射による改善は、鎮痛薬や局所麻酔のように**薬の作用が切れるとすぐ元の痛みに戻るという性質のものではありません。**慢性炎症を長引かせている病態そのものに介入するため、いったん改善が得られると、その効果が比較的長く持続することが期待できます。

もちろん、病気の進行度、罹病期間、手の使い方などによっては将来的に症状が再燃することがあります。しかし、「治療直後に変わらなかったから効かなかった」「2週間たっても変化がないから失敗だった」と判断する必要はありません。

手の動脈注射では、まず1か月程度を一つの目安として経過をみていただくことが重要です。その時点で症状の変化を評価し、必要に応じてその後の治療方針をご提案します。

 

Q87. 手の動脈注射の効果はどのくらい持続しますか?

手の動脈注射の効果がどのくらい持続するかには個人差があり、「一度治療すれば必ず何年間もつ」と一律に決めることはできません。

効果の持続期間には、もともとの病気の種類、関節変形や腱・腱鞘の変性の程度、罹病期間、治療後にどの程度まで症状が改善したか、さらに仕事や家事、趣味などでその後どの程度手を使うかといったさまざまな要因が影響します。

ただし、手の動脈注射は、痛み止めや局所麻酔によって一時的に痛みを感じにくくする治療とは異なります。モヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることで、慢性炎症が長引く病態そのものに介入することを目的とした治療です。

そのため、十分な改善が得られた場合には、薬の作用が切れると元の痛みに戻るような対症療法とは異なり、改善した状態が比較的長期間持続することが期待できます。

実際の診療では、半年から1年程度良好な状態が続く方もいれば、数年間にわたって改善した状態を維持されている方もおられ、5年以上経過しているケースもあります。

一方で、手の動脈注射によって、将来新たに生じる炎症や組織損傷まで予防できるわけではありません。

例えば、仕事や家事、スポーツなどで手指に大きな負担がかかり続けたり、変形性関節症そのものが進行したり、新たな関節や腱に炎症が生じたりすれば、時間の経過とともに症状が再燃することはあります。

したがって、「一度治療すれば二度と手が痛くならない」という治療ではありません。

ただし、再燃した場合でも、治療前とまったく同じ状態に一気に戻るというより、「以前ほどは痛くない」「前より軽い症状で済んでいる」と感じられる方が多いのが当院での治療経験です。

また、症状が再燃した場合には、病状を再評価したうえで手の動脈注射を再度行うことも可能です。ステロイド注射のように、反復局所投与による腱や靱帯などの組織への影響を懸念して回数を制限する治療とは性質が異なります。

そのため、手の動脈注射は「一度受けて終わり」と考えるだけではなく、必要に応じて再治療を行いながら、できるだけ良い状態を長く維持して手を使い続けるための治療として活用することもできます。

治療後には、手指の酷使を避ける、適切なリハビリやストレッチを行うなど、再発につながる要因をできるだけ減らすことも、効果を長く維持するうえで重要です。

 

Q88. 1回の治療で改善しますか?

はい、**1回の手の動脈注射だけで大きく改善する方もおられます。**特に炎症が強い病態や、まだ構造的な変化が進んでいない初期のばね指などでは、1回の治療でも十分な改善が得られることがあります。

一方、1回の治療ですべてのモヤモヤ血管(病的新生血管)や慢性炎症を十分に改善できるとは限りません。1回目の治療である程度改善したものの、痛みやこわばり、腫れなどが一部残ることもよくあります。

このような場合には、2回目の治療を行うことで残存しているモヤモヤ血管をさらに減少させ、慢性炎症をより十分に鎮めることが期待できます。当院の治療経験では、1回目よりも2回目の治療後にさらに改善し、より良い状態で安定する方が多くみられます。

そのため当院では、原則として2回の動脈注射を標準的な治療回数と考えています。

ただし、これは「必ず2回受けなければならない」という意味ではありません。1回の治療で症状が十分に改善し、日常生活上の支障もなくなった場合には、2回目の治療を行わずに経過をみることも可能です。

一方、1回目でかなり改善していても症状が一部残っている場合には、2回目を行う意義があります。単に「痛みが我慢できる程度まで減った」というところで終了するのではなく、残っている慢性炎症をさらに鎮め、できるだけ良い状態まで改善させておくことが、治療効果を高めるうえで有用と考えています。

また、関節変形が高度に進行している場合、罹病期間が長い場合、強い炎症が長期間続いている場合などには、2回でも十分ではなく、3回以上の治療を行う意義があることもあります。

反対に、動脈注射を繰り返すよりもカテーテル治療や外科的治療など、別の治療方法へ切り替えた方がよい病態もあります。そのため、単純に治療回数を増やせばよいというわけではありません。

手の動脈注射は、ステロイドを同じ場所に繰り返し注射する治療とは異なり、**反復局所投与による腱や靱帯などの組織への影響を理由に治療回数を厳しく制限する性質の治療ではありません。**必要性がある場合には、病状を確認しながら再治療を検討することができます。

したがって、基本的には、

1回目の治療1か月かけて効果を確認十分改善していれば経過観察/症状が残っていれば2回目を検討

という考え方になります。

当院では2回を標準的な治療回数としながらも、実際の回数は1回目の治療効果や病状に応じて個別に判断し、適切な治療方針をご提案します。

 

Q89. 何回くらい治療を受ける必要がありますか?

当院では、2回の治療を標準的な回数と考えています。

これは、必ず2回受けなければならないという意味ではありません。1回の治療だけで症状が十分に改善し、日常生活で困らない状態となれば、そのまま経過をみることも可能です。

一方、1回目の治療で改善はみられるものの、痛みやこわばり、腫れなどが残っている場合には、2回目の治療を行うことで、さらに症状の改善が得られることが多くあります。

当院では単に「少し良くなった」という状態ではなく、患者さんご自身が治療を受けてよかったと感じられる、できるだけ満足度の高い状態まで改善させることを治療目標としています。その観点から、これまでの治療経験を踏まえると、2回程度の治療を一つの標準とすることが妥当と考えています。

ただし、必要な治療回数はすべての方で同じではありません。病気の種類、関節変形や腱・腱鞘の変性の程度、罹病期間、炎症の強さ、1回目の治療に対する反応などによって異なります。

例えば、炎症が主体で構造的な変化が少ない早期の病態では、1回の治療で十分に改善することがあります。

反対に、長期間症状が続いている場合、関節変形が進行している場合、慢性炎症が強く残っている場合などには、3回以上の治療を行うことで、さらに改善が期待できることもあります。

ただし、改善が乏しい場合に漫然と同じ治療を繰り返すわけではありません。通常の手の動脈注射では十分に治療できない病変がある場合には、カテーテル治療など、より精密な治療へ切り替えた方がよいこともあります。

そのため、あらかじめ一律に治療回数を決めるのではなく、治療後の経過を確認し、その時点で残っている症状や病態を評価したうえで、次の治療が必要かどうかを慎重に判断します。

目安としては、**「標準は2回。ただし1回で終了する方もいれば、病状によっては3回以上が有用な方もいる」**と考えていただくとよいでしょう。

 

Q90. 効果が不十分な場合は再治療できますか?

はい、効果が不十分な場合には、手の動脈注射を再度行うことができます。

手の動脈注射は、ステロイドを同じ関節や腱鞘へ繰り返し注射する治療とは異なり、反復治療によって腱や靱帯などの組織を傷めることを懸念して、治療回数を厳しく制限する性質の治療ではありません。

また、重要なのは、1回目の治療で十分な改善がみられなかったからといって、その時点で「動脈注射が効かなかった」と判断する必要はないということです。

当院ではこれまで、1回目の治療ではほとんど変化を感じなかったものの、2回目の治療後に明らかな改善が得られた方を少なからず経験しています。もちろん1回の治療だけで大幅に改善する方もおられますが、こうした治療経験も踏まえて、当院では原則として2回の動脈注射を標準的な治療回数としています。

1回目である程度改善した方についても、痛みや腫れ、こわばりなどが残っていれば、2回目の治療によってさらに改善することが期待できます。

したがって、1回目で改善した場合だけでなく、1回目で十分な効果を実感できなかった場合にも、病状が動脈注射の適応と考えられるのであれば、2回目を行う意義があります。

一方、2回の治療を行っても十分な改善が得られない場合や、3回目以降の治療を検討する場合には、単純に同じ治療を繰り返すのではなく、なぜ十分に改善しなかったのかを改めて評価することが重要です。

例えば、関節変形や腱・腱鞘の変性が高度に進行している場合、罹病期間が非常に長い場合、神経障害など別の原因が症状に関与している場合、あるいは仕事や日常生活で手指への負担が繰り返しかかっている場合などには、動脈注射による改善にも一定の限界があります。

なお、手指の症状について、動脈注射の効果が不十分だからという理由だけでカテーテル治療へ切り替えることは通常ありません。

一方、手指ではなく**手首そのものに病変がある場合は別です。**通常の手首からの動脈注射では治療範囲が十分でないことがあるため、病状によっては肘周囲からの動脈注射やカテーテル治療を検討することがあります。

このように当院では、1回目の治療効果だけで早期に有効・無効を判断せず、原則2回を一つの治療単位として経過を評価することを基本としています。そのうえで症状が残る場合には、病態やこれまでの治療反応を改めて確認し、追加治療を行う意義があるかを慎重に判断してご提案します。

 

Q91. 痛みだけでなく、腫れやこわばりも改善しますか?

はい。手の動脈注射は痛みだけでなく、手指のこわばり、炎症に伴う腫れや赤みなどについても改善が期待できる治療です。

手指に慢性炎症が続いていると、痛みだけでなく、関節周囲の組織に浮腫(むくみ)が生じたり、赤みや熱感がみられたり、朝起きたときに指がこわばって動かしにくくなったりすることがあります。

手の動脈注射では、慢性炎症を長引かせる要因の一つであるモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させることで炎症を鎮めていくため、痛みだけでなく、こうした炎症に伴う症状も一緒に改善することが期待できます。

特にこわばりは治療効果を実感しやすい症状の一つです。治療後、痛みが十分に改善するよりも先に、「朝のこわばりが軽くなった」「指が動かしやすくなった」と感じられる方も少なくありません。

一方、「腫れているように見える」ものがすべて炎症による腫れとは限りません。

ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症などの変形性関節症では、炎症による組織の浮腫に加えて、骨や関節そのものの変形によって関節が太くなっていることがあります。

このうち、**炎症に伴う浮腫や腫れは動脈注射によって改善が期待できますが、すでに生じている骨や関節の変形を元の形に戻すことはできません。**そのため、治療後に痛みやこわばり、赤みが改善しても、関節の膨らみや変形がある程度残ることがあります。

また、手指の変形性関節症では、**本人が強い痛みを自覚するより前から、骨や関節の変化が徐々に進行していることがあります。**変形が高度になるほど治療によって改善できる範囲にも限界が生じます。

そのため、「まだそれほど痛くないから」と長期間放置するのではなく、指の関節が以前より太くなってきた、朝こわばる、少し腫れている、曲げ伸ばしに違和感があるといった変化が気になり始めた段階で、一度ご相談いただくことをおすすめします。

 

Q92. 変形した関節や曲がった指も元に戻りますか?

すでに生じている骨や関節そのものの変形を、手の動脈注射によって元の正常な形に戻すことはできません。

ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症などでは、慢性的な炎症とともに、軟骨の摩耗や骨の変形などが徐々に進行します。こうして一度生じた骨・関節の構造的な変化は、動脈注射に限らず、薬物療法やリハビリなどの保存的治療によって元通りにすることは困難です。

ただし、関節が太く見えたり指が腫れて見えたりする原因のすべてが、骨の変形というわけではありません。慢性炎症による関節周囲の浮腫や腫れが加わっていることもあります。

この部分については、手の動脈注射によって炎症が鎮まることで改善が期待できます。そのため、治療後に腫れが減って関節が少しすっきりした、指が動かしやすくなったと感じられることはあります。しかし、すでに形成された骨そのものの変形が元に戻ったわけではありません。

そのため、手指の変形性関節症では、変形が高度に進行してから治療するよりも、できるだけ早い段階から対策していくことが重要です。

手指の関節変形は、仕事や家事、趣味などによる手指の酷使だけでなく、加齢や体質などさまざまな要因が重なって徐々に進行します。そのすべてを完全に防ぐことはできません。

一方、慢性炎症が長く続くことも関節変形の進行に関係すると考えられます。手の動脈注射は、モヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させて慢性炎症を鎮めることを目的とした治療ですので、炎症をできるだけ早く落ち着かせることは、将来的な関節への負担を減らすという意味でも重要と考えています。

したがって、治療の目的は「曲がってしまった指を元の形に戻す」ことではなく、痛み、腫れ、こわばりなどを改善し、現在の手をできるだけ良い状態で長く使っていけるようにすることです。

変形が目立つようになってからではなく、関節が少し太くなってきた、朝こわばる、曲げ伸ばしで痛む、以前と指の形が違ってきたと感じた段階で、早めにご相談いただくことをおすすめします。

 

Q93. 長期間続いている手の痛みでも効果が期待できますか?

はい。何年も続いているような手の痛みであっても、手の動脈注射による改善が期待できます。「長く痛んでいるから、もう治療しても遅い」ということではありません。

長期間にわたって痛みが持続している場合には、単なる一時的な炎症ではなく、慢性炎症が続いている可能性が高く、モヤモヤ血管(病的新生血管)が痛みの持続に関与していることが強く疑われます。

手の動脈注射は、こうしたモヤモヤ血管を減少させることで慢性炎症を鎮め、長く続いている痛みやこわばりなどを改善することを目的とした治療です。そのため、長期間続いている慢性痛は、むしろモヤモヤ血管治療を検討する意義のある病態と考えられます。

一方で、治療効果を左右するのは、単純に「何年間痛かったか」だけではありません。

長期間炎症が続くことで、関節の高度な変形、軟骨の摩耗、腱・腱鞘の肥厚や変性、可動域制限などの構造的な変化が進行していることがあります。このような不可逆的な変化が症状の主体となっている場合には、炎症を十分に改善しても痛みや動かしにくさが残り、動脈注射による治療効果にも限界が生じることがあります。

反対に、罹病期間が長くても関節や腱の構造が比較的保たれており、慢性炎症が症状の主体であれば、十分な改善が得られる可能性があります。

したがって重要なのは、罹病期間だけで治療の可否を判断するのではなく、現在どの程度の炎症があり、関節や腱・腱鞘の構造的変化がどこまで進んでいるかを評価することです。

ただし、慢性痛治療の原則として、できるだけ長引かせないうちに治療することが重要です。炎症が長期間続けば、それだけ関節や腱などに構造的な変化が蓄積していく可能性があります。

「まだ我慢できるから」「そのうち治るかもしれない」と何年も放置するより、痛みやこわばりが続いている段階で早めに原因を評価し、必要な治療を行うことをおすすめします。

長年続いている症状であっても、最初から治療をあきらめる必要はありません。診察やエコー検査などで現在の状態を確認したうえで、どの程度の改善が期待できるのかも含めてご説明します。

 

Q94. 治療効果にはどのような個人差がありますか?

手の動脈注射の治療効果には、効果が現れるまでの期間、必要となる治療回数、最終的にどの程度まで症状が改善するかという点で、かなり個人差があります。

効果が現れる時期については、炎症が強い方などでは**治療当日から改善を実感することがあります。**一方、2週間程度してから徐々に変化を感じる方、1か月程度かけて改善していく方もおられます。

また、治療回数についても個人差があります。1回の治療で大幅に改善する方がいる一方で、**1回目ではほとんど効果を感じなかったにもかかわらず、2回目の治療後から明らかな改善が得られる方も少なくありません。**このような治療経験も踏まえ、当院では原則として2回の治療を標準としています。

さらに、病状によっては3回以上の治療を行ってから十分な改善が得られることもあります。一方で、複数回治療しても十分な効果が得られない場合もあります。

こうした個人差が生じる理由は一つではありません。

例えば、関節変形が非常に高度に進行している場合、腱や腱鞘などの組織に強い変性や損傷が生じている場合には、慢性炎症を改善しても構造的な問題が残るため、治療効果が限定的になることがあります。

また、そもそも症状の原因として慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)、血流異常の関与が少ない病態では、動脈注射による十分な改善が得られないことがあります。

反対に、関節や腱などの構造が比較的保たれており、慢性炎症が症状の主体となっている場合には、良好な治療効果が期待できます。

治療後の生活も影響します。仕事、家事、スポーツ、楽器演奏などによって、治癒する速度を上回るような負担が手指に繰り返しかかっている場合には、治療によって炎症を改善しても新たな炎症や組織損傷が生じ、十分な効果を実感しにくくなることがあります。

このほか、罹病期間、年齢、基礎疾患、炎症の程度など、さまざまな要因が治療効果に影響すると考えられます。

モヤモヤ血管を標的とした治療については、**多数例を治療している施設から、およそ70%程度の症例で一定以上の改善が得られたとする臨床成績も報告されています。**ただし、対象となる疾患、治療方法、重症度、治療効果の評価方法などによって成績は異なるため、すべての手指疾患で一律に「70%の確率で治る」という意味ではありません。

また、この数字は**1回目の治療だけで効果があった方の割合を意味するものでもありません。**1回目では変化が乏しくても2回目以降に改善することがありますので、当院では治療直後や初回治療だけで有効・無効を判断せず、経過をみながら評価することを重視しています。

治療前には、診察やエコー検査などから、どの程度モヤモヤ血管や慢性炎症が関与しているのか、構造的な変化がどの程度進んでいるのかを評価し、それぞれの患者さんについて期待できる治療効果をできるだけ具体的にご説明します。

 

8.副作用・治療後・受診方法

Q95. 手の動脈注射にはどのような副作用や合併症がありますか?

手の動脈注射で考えられる副作用や合併症は、大きく分けると、針を刺すことに伴う穿刺部の合併症と、使用する薬剤に対するアレルギー反応があります。

まず、穿刺に伴うものとして最も起こりやすいのが、**穿刺部の皮下血腫(いわゆる内出血)**です。

極細径の針を使用しますが、動脈に針を刺す治療である以上、治療後に手首周囲が青紫色になったり、軽い腫れや圧痛が生じたりすることがあります。多くの場合は軽度で、時間の経過とともに自然に改善します。

また、手首の動脈周囲には神経や腱などがありますが、当院では必ずエコー(超音波)で血管、針先、周囲組織を確認しながら穿刺を行います。そのため、適切にエコー観察下で治療を行うことで、神経を誤って穿刺・損傷するリスクを極めて低くすることができます。

次に、使用する薬剤に対するアレルギー反応があります。

当院で経験する薬剤アレルギーの多くは、発疹やかゆみなどの薬疹です。手の動脈注射で使用する薬液量は、感染症の治療として抗菌薬を全身投与する場合と比較して非常に少量であるため、症状が生じた場合でも軽度であることが多く、薬物治療を必要とせず自然に改善するケースが多くみられます。

一方、医薬品を使用する以上、非常にまれではありますが、呼吸困難や血圧低下などを伴うアナフィラキシーの可能性を完全にゼロにすることはできません。

ただし、当院ではこれまで、手の動脈注射によってアナフィラキシーショックを生じた事例はありません(2026年8月時点)。

治療前には薬剤アレルギー歴を確認し、過去に抗菌薬などで発疹、呼吸困難、血圧低下、アナフィラキシーなどを経験されたことがある場合には、その内容を確認したうえで治療の可否を判断します。

また、「血管を塞ぐ治療」と聞いて、指への血流が悪くなったり、組織が壊死したりしないのかと心配される方もおられるかもしれません。

手の動脈注射は、手に血液を供給している正常な主要動脈を永久的に塞ぐ治療ではありません。慢性炎症に伴って形成されたモヤモヤ血管(病的新生血管)を標的として、非常に微細な一時塞栓物質を使用する治療です。使用した塞栓物質は一時的に作用した後に溶解・代謝され、体内に永久に残るものではありません。

このように、手の動脈注射は身体への負担が比較的小さい治療ですが、注射や薬剤を使用する医療行為である以上、副作用や合併症の可能性が全くないわけではありません。

治療前には考えられるリスクについてご説明し、既往歴や薬剤アレルギーなどを確認したうえで、安全性に十分配慮して治療を行います。

 

Q96. 治療によって手の血流が悪くなることはありませんか?

通常、手の動脈注射によって**手全体の血流が悪くなることはありません。**この治療は、手に血液を供給している正常な太い動脈を恒久的に塞ぐことを目的とした治療ではありません。

手の動脈注射で標的としているのは、慢性炎症に伴って形成されたモヤモヤ血管(病的新生血管)と呼ばれる非常に細く異常な血管です。

治療では非常に微細な一時塞栓物質を使用し、こうした異常血管を一時的に塞栓することで、その後モヤモヤ血管を減少させていきます。一方、橈骨動脈や尺骨動脈など、手指へ血液を供給する正常な主要血管を永久的に閉塞させる治療ではありません。

また、慢性炎症が続いている組織では、単に血管が増えているだけではなく、**正常とは異なる不規則な血流や、動脈から静脈へ血液が短絡する異常な血流(動静脈シャント)**が形成されていることがあります。

こうした異常な血管や血流を減少させることで、炎症が鎮まるだけでなく、**正常な組織への血流や微小循環が改善することも期待できます。**そのため、モヤモヤ血管を減らすことは、単純に「手への血流を減らす」ということではありません。

一方、注意が必要なのが、レイノー症状やCRPS(複合性局所疼痛症候群)など、血管が異常に収縮する血管攣縮を起こしやすい病態です。

このような方では、針による刺激や薬液投与などをきっかけとして一時的に強い血管攣縮が生じ、指先などの局所的な血流が低下する可能性があります。

レイノー症状やCRPSがあるからといって、必ずしも動脈注射を受けられないということではありません。病態を十分に評価し、投与方法や薬液量、治療計画などを慎重に調整して適切に治療することで、むしろ慢性炎症や異常血流の改善が期待できる場合があります。

ただし、このような病態では通常の手の痛み以上に慎重な判断と手技が必要です。そのため、レイノー症状、指先が白くなる・紫色になる症状、CRPSなどがある場合には、必ず事前に申告し、モヤモヤ血管治療の経験が豊富な医療機関で治療の適否をご相談ください。

手の動脈注射は「正常な血流を犠牲にして痛みを治す治療」ではなく、慢性炎症に伴う異常な血管・血流を減らし、正常な組織環境や微小循環を回復させることを目指す治療と考えていただくと分かりやすいでしょう。

 

Q97. 治療後に内出血、腫れ、しびれが出ることはありますか?

はい。手の動脈注射では、治療後に小さな内出血や一時的な手のむくみ、しびれに似た感覚が生じることがあります。ただし、いずれも多くの場合は軽度かつ一過性です。

まず、最も起こりやすいのが**穿刺部の内出血(皮下血腫)**です。

手の動脈注射では血管に針を刺すことが必要なため、内出血を完全に防ぐことはできません。特に、加齢などによって血管が脆弱になっている方、ステロイドを長期間使用されている方、抗血小板薬や抗凝固薬などの抗血栓薬を服用されている方では、内出血が生じやすくなることがあります。

ただし、治療には極細径の針を使用するため、多くの場合は小範囲の内出血にとどまります。青紫色から徐々に黄色っぽく変化しながら、通常は数週間程度で自然に消えていきます。

次に、治療直後に手や指が一時的にむくむことがあります。

これは穿刺部からの出血によって腫れているのではなく、薬液投与や血流の一時的な変化などに伴って生じることがあります。多くの場合は軽度で、数十分から数時間程度で自然に改善します。

このため、治療直後には普段より指輪が外しにくくなることがあります。**指輪をされている方は、念のため治療前に外しておくことをおすすめします。**特に普段から指輪がきつめの方は、あらかじめ外してご来院いただくと安心です。

しびれについては、**神経障害による持続的なしびれが生じることは通常ありません。**当院ではエコー(超音波)で血管や周囲の神経を確認しながら穿刺を行い、神経損傷のリスクをできるだけ避けています。

一方、薬液が手指へ流れる際に、ピリピリ、ジンジンする、しびれるような感じを一時的に自覚することがあります。これは必ずしも神経が傷ついたことを意味するものではなく、多くの場合は治療に伴う一過性の感覚です。

こうした感覚も、通常は数十分から数時間程度で自然に改善します。

したがって、治療後にみられることのある変化としては、

内出血数日から数週間程度で徐々に改善
手指のむくみ多くは数十分から数時間程度で改善
ピリピリ・しびれ様の感覚多くは数十分から数時間程度で改善

と考えていただくと分かりやすいでしょう。

いずれも通常は後遺症を残すものではありません。ただし、腫れが急速に強くなる、強い痛みが続く、指の色が明らかに白い・紫色になる、しびれや感覚異常が長時間改善しないなど、通常とは異なる症状がみられた場合には、速やかに当院へご連絡ください。

 

Q98. 治療後は仕事、家事、運転、スポーツをいつから再開できますか?

手の動脈注射は身体への負担が少ない治療であり、通常は治療当日から仕事、家事、運転などの日常生活に戻っていただくことができます。

治療によって手の運動機能や感覚が低下することは通常ありません。また、局所麻酔や鎮静薬も原則として使用しないため、治療後に手が動かしにくくなったり、眠気が生じたりすることもありません。そのため、一般的な仕事や家事、車の運転について、治療そのものを理由とした特別な制限はありません。

ただし、治療直後は動脈を穿刺した部分を止血したばかりですので、当日は穿刺した手首に強い負荷をかける動作や、激しいスポーツ、重量物を繰り返し持つような作業はできるだけ控えていただくことをおすすめします。

翌日以降は、穿刺部に問題がなければ通常どおりの活動をしていただいて構いません。

一方、ここで重要なのは、「治療後に動かしてもよい」ということと、「痛みがある手を無理に使ってもよい」ということは別だという点です。

手指の痛みの背景には、関節、腱、腱鞘、靱帯などへの長期間にわたる負担が関係していることがあります。治療によって慢性炎症やモヤモヤ血管(病的新生血管)を減少させても、その直後から同じように手指を酷使し続ければ、組織の修復を妨げたり、新たな炎症を生じさせたりする可能性があります。

したがって、仕事や家事を休む必要はありませんが、治療後しばらくは、痛みを誘発するような動作や手指の酷使をできるだけ減らすことが、治療効果を高めるうえでも重要です。

スポーツについても同様です。手をあまり使用しない運動であれば大きな制限はありませんが、ラケットスポーツ、ゴルフ、筋力トレーニングなど、手首や手指に強い負荷がかかる運動については、症状をみながら徐々に再開することをおすすめします。

また、**治療当日の過度な飲酒は避けてください。**飲酒によって血流が変化するほか、穿刺部からの出血や内出血にも影響する可能性があります。

手の動脈注射を受けたからといって、長期間仕事や家事を休んでいただく必要はありません。しかし、もともとの手指の病気を改善させるためには、患部に適度な休息を与えることも治療の一部です。

「動かしてはいけない」のではなく、**「普段の生活は続けながら、治るまでの間は痛みを我慢してまで酷使しない」**と考えていただくとよいでしょう。

 

Q99. どのような人は手の動脈注射を受けられませんか?

手の動脈注射は身体への負担が比較的少ない治療であり、治療を受けられない方は多くありません。

最も重要なのは、治療中に安全な状態を保てることです。手の動脈注射では、エコーで血管や針先を確認しながら非常に細い動脈へ針を刺すため、穿刺や薬液投与の際には手を動かさず、医師の指示に従っていただく必要があります。

そのため、注射に対する極度の恐怖などにより治療中に安静を保つことができない場合には、安全性の観点から治療を行えないことがあります。

また、治療に使用する予定の薬剤によって、過去にアナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応を起こしたことがある場合には、原則として同じ薬剤を使用することはできません。

一方、何らかの**薬剤アレルギーや薬疹を経験したことがあるというだけで、手の動脈注射が受けられなくなるわけではありません。**どの薬剤で、いつ、どのような症状が生じたのかを確認し、使用する薬剤との関係や重症度を評価したうえで治療の可否を判断します。

高血圧、糖尿病、心疾患などの内科疾患がある方についても、それだけを理由に治療を受けられないことは通常ありません。病状や服用薬を確認し、必要な対策を行ったうえで治療します。

また、抗血小板薬や抗凝固薬などの**血液を固まりにくくする薬を服用している方でも、必ずしも治療できないわけではありません。**ただし、穿刺部の内出血や出血が生じやすくなる可能性があるため、服用している薬剤を事前にお知らせください。自己判断で休薬することは避けてください。

そのほか、診察やエコー検査によって血管の太さや走行を確認し、安全に穿刺できるかどうかも治療前に評価します。

したがって、持病がある、薬を服用している、過去に薬剤アレルギーがあったという理由だけで、ご自身で「治療を受けられない」と判断する必要はありません。

治療前に既往歴、薬剤アレルギー、服用中のお薬などを確認し、安全に治療できるかを医師が個別に判断します。ご心配な持病やアレルギーがある場合には、事前にご相談ください。

 

Q100. 手の動脈注射について、治療を受けるか決める前に相談だけでも可能ですか?

はい、もちろん可能です。初診は手の動脈注射を受けることを前提としたものではありませんので、まずは相談や診察だけという形でも問題ありません。

手指の痛みには、ヘバーデン結節やブシャール結節、母指CM関節症、ばね指などの腱鞘炎、関節リウマチ、外傷・手術後の痛み、神経障害など、さまざまな原因があります。

そのため、まず現在の症状やこれまでの経過について詳しく伺い、必要に応じてエコーやレントゲンなどの検査を行ったうえで、痛みの原因や病状を評価し、手の動脈注射が本当に適した治療なのかを判断することが重要です。

診察では、現在どのような状態なのか、動脈注射によってどの程度の改善が期待できるのか、治療方法や治療回数、副作用や合併症、費用などについてご説明します。また、動脈注射以外の治療方法が適していると判断した場合には、その選択肢についてもご説明します。

説明を聞いたうえで、**その日に治療を受けず、一度ご自宅で検討していただいてもまったく問題ありません。**ご家族と相談してから決めたい、他の治療方法と比較してから考えたいという場合にも対応いたします。

もちろん、診察の結果、治療適応があり、ご本人が治療内容について十分に理解・納得された場合には、状況に応じて初診当日に治療を受けていただくことも可能です。

当院では、治療を受けることを最初から決めて来院していただく必要はないと考えています。

まずご自身の手がどのような状態なのか、なぜ痛みが続いているのか、どのような治療選択肢があるのかを知っていただき、治療内容について十分に理解・納得したうえで、実際に治療を受けるかどうかをご判断いただくことを大切にしています。

「自分の症状が手の動脈注射の対象になるのか知りたい」「治療について詳しく聞いてから考えたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。